. 待って待って、まだ晴れているうちに伝えておきたいの .
・荒らし・悪口・なりすましは退場お願いします。
アドバイスや感想はありがたく読ませていただきます!
スレ主の趣味炸裂。 地雷の方はご注意を。
>>2 プロローグ
>>3 登場人物
>>4 第1章
空は黒く染まり、 いつもは輝く小さな光も映さないまま
ざあざあと音を立てる水は遠慮もせずに地面を叩いていく。
最悪な天気と言うべきか、鳴り止まぬ雨は
カフェの裏出口についた小さな屋根の上からも何度も滴り落ちた。
「 はぁ… 」
思わずため息が溢れ出る。
天気予報では曇りまでと言っていたのに、と
内心夕方のニュースに怒りをぶつけながら鞄を自身のタオルで包んだ時、
ふと視界が影になる。
顔を見上げれば、そこには傘を持った背の高い女性がいた___
美月 茅那
高校一年生。 とあるカフェでアルバイトをしている。
この小説の主人公(ヒロイン)ポジ。
???
謎の女性。プロローグにあったように、夜、茅那と遭遇。
(/これ以上はネタバレになるので伏せます。
「 えぇっと…? 」
茅那が苦笑いを浮かべながら何かを問う様に首を傾げれば、
女性はふわりと笑って透き通る声で言った。
「 よければ入ります? 大雨ですし、お疲れでしょう? 」
女性は長い髪をふわりと靡かせ、茅那の手を引いた。
距離を詰められた茅那の顔がどんどんと紅く染まっていく。
茅那は自身の顔を覗く女性に気づくと、隠す様に両手で頬を抑え、
傘のギリギリへと下がり少し距離をとる。
紅く染まる頬を見られるのが恥ずかしい、
こんなに早まる鼓動を聞かれたら困るから。
きっと理由はそんなところだろう。
…でも、何で。同性相手にこんなに胸が高鳴っているのか。
ふと気がつけばもう家の近くまで来ていた。
「 あ、あの。もうすぐ家なので… 」
そう言うと、女性は私の耳元にそっと顔を寄せて言った。
「 今度からは、こんな“俺”みたいな人にもついてこない様に」
そう、低い声でポソリといった。体が硬直して、頭が考えを停止していく。
苦笑いすら薄く消えていく。
多くの雨粒が、棒立ちの私の手に持たされた “ 彼 ”の傘を濡らした。
「 騙された 」
「 は? 」
現在、平日の十二時。
場所は高校の自身の教室で 、今は昼休憩中。
そんな中ポロリと溢れた私の言葉にツッコミを入れたのは
同じクラスと咲良ちゃん。
「 で、騙されたってどうしたの? 」
そう私に問いかけてくれたのは、またまた同じクラスの夏希ちゃんだ。
「 よくわかんない女装男の子に騙された… 」
机に突っ伏し、頭を抑えながらそう言えば 夏希ちゃんと
咲良ちゃんが同時に苦笑いを浮かべる。
「 可哀想に 」
その言葉を二人とも完全に同時に発していた。
そう、この二人が 可哀想に、と言うのには理由がある。
それは私が筋金入りに男の子が苦手だからだ。
「 お姉様タイプだと思っていた…!! 」
そう発狂する私はいたって普通の現代女子高校生だ。
(少し書き方変えました。次回からこれで進行します。
「 まぁまぁ、でも男子と話せたってことでしょ? 」
「 まぁね… 」
男の子と話そうとするだけでテンパってしまう私にとっては大きな出来事で、
それを知っている咲良ちゃんや夏希ちゃんにとって私が男の子と話せたと言うのは
嘘と疑ってしまうほどの出来事だろう。
「 まぁ相手女性だと思ってたしな 」
「 一言余計だよ! 」
夏希ちゃんの問いかけにため息混じりに返した私の言葉をかき消す様に、
咲良ちゃんはそう言った。さらに私がそれにツッコミを入れる。
正直私にとってこれが普通で、別に男の子と
無理に関わったっていいことがないと思っている。
だから…
「 昨日のことは生涯忘れることにするよ! 」
私が人差し指を伸ばした右手を振り上げ、そう高らかに宣言した時、
教室にノック音が響いた。
私は静かに右手を下ろして、席に着くと、
ノック音がした扉へ向かう咲良ちゃんの背中を見送った。
私が自分のお弁当箱を手に取り、箸で掴んだ卵焼きを口へ運ぼうとした時
扉が開く音がして昨日聞いた声が耳に届いた。
「 失礼します 」
ふと聞こえた声は 綺麗に透き通って低い声。
____そう、例えば昨日のお姉様みたいな…
声がした方に振り返れば、昨日のお姉様と
同じ形の傷跡を手の甲に残した男の子が立っていた。
____昨日のお姉様だ…!
内心戸惑いながらも、彼の顔へと視線を変える。
綺麗な顔つきに少し長めの茶髪。
女装が似合うかと問えば、似合うの枠に入るだろう。
____でも、同じ高校の人なんて…
もう会わないって、忘れるって決めたのに…
そう思った時、胸元に大きな痛みが走った。
ズキンッ
「 いッ …!? 」
耐えられない痛みで声が溢れる。
__痛い。
弁当箱を閉じると、私は胸元を抑えながら教室を飛び出した。
教室を飛び出てまっすぐ階段へ向かえば、大きく段を飛ばし、下の階へと急ぐ。
まっすぐ目的の場所へと向かい、ついたと思えばノックもせずに扉を開く。
「 さーちゃん先生、薬! 」
まだひりひりと続く痛みに顔をしかめながら保健の担当先生、佐賀先生に呼びかける。
佐賀先生はカーテンの奥から顔を覗かせると、真っ直ぐ机に向かう。
そしてテキパキと薬の準備をすると、扉に背を預けたまま動けない私に薬と水を手渡す。
受け取るなり、薬を口に放り込んで水で流し込む。
「ぷは…っ、さーちゃん先生ありがと… 」
未だ少量の水が入ったペットボトルから口を離し、
ようやく立ち上がりながら佐賀先生にお礼を言う。
「 …まさか症状が出るとはな 」
佐賀先生はソファに移動した私の隣に座ると、そう呟いた。
「 症状が出るとはなって…さっきの痛みのこと? 」
そう、私は 「どこか痛くなったら保健室に来て薬と言え」としか伝えられていない。
「 あぁ、以前に病院で審査しただろ? そのときお前がとある病気にかかっていることが分かってな。
で、さっきの薬はその発見された病気の痛み止めだ 」
「へぇ、病気って…なんて病名?」
ペットボトルで手遊びをしながら、何も考えず問いかけた。
今日も昨日も今まで通り元気だし、所詮大した病気ではないだろうと考えたからだ。
そんな私の考えとは裏腹に佐賀先生は少し教えるか迷った様に右手を顎にあてていた。
私がじっと佐賀先生の方を見ていると、痺れを切らしたのか先生は
私の両親から貰ったと言う診断結果のコピー用紙を私にくれた。
きっと佐賀先生が近所に住んでいて、私と仲がいいことを知っていて渡して置いたのだろう。
美月茅那と堂々と書かれた一ページ目をめくると、たくさんの文字が視界に映る。
私は病名、と書かれたところを見つけ出すと 声に出して読み上げた。
「 恋病、こいやみびょう…?」
自分自身、鏡を見ずとも笑顔が崩れていくのがわかる。
「 恋をした相手を見たり、接したらどんどんと鬱の感情が精神を蝕んでいく病…。
やがて鬱が全てを蝕み尽くすと、黒く染まった心臓が砂とかして消え、その人は死んでしまう…?」
___嘘。
こころのどこかが否定している。
ぐしゃりと紙がなり、再度視線を走らせる。
そして目に留まったのは…
“ 第一症状、好きな人と会った時に胸元に突き刺される様な痛み ”
私の先ほどの症状が表されている様な文。
___違う。
“ この表情が出れば確実にこの病だと言えます ”
____違う、違う。私はあの人の事好きじゃない、それにこんな病気にもかかってない。
そう否定しているはずなのに、そう考えているはずなのに。
何処か、恋愛ぐらいは普通にしたかったって認めている自分がいた
「 せんせ、…送ってくれてありがと 」
ぼーっとしていた私は気づかないうちに家の前にいた。
なぜか鞄は手に持っていて、佐賀先生の車から降りたところだった。
「 まぁ今回は仕方ないな。しっかり休めよ 」
佐賀先生はそう言って私の頭に手を置くと、薄く笑った。
____いつもは笑わないくせに。
そんなことを考えながら家に入り、自身の部屋へと向かう。
玄関の先に真っ直ぐ伸びた廊下を曲がり、階段を駆け上がる。
階段先の廊下を右奥…、そこが私の部屋だ。
扉を開け、中に入ってすぐさま布団に飛び込む。
投げ捨てるように鞄を退ければチャックが開いていたようで中身が散らばり出る。
面倒くさいと溜息をこぼしながら起き上がり、ノートに手を伸ばせば目に入ったのは
佐賀先生からもらったカルテのコピー用紙。
不貞腐れた表情を浮かべながら手にとって見れば沢山の文字。
想像もしてなかった病名。
「 死にたくない… 」
昨日今日で出会った人に一目惚れして死んでしまうなんて思いもしなかった。
考えたくもなかった。涙でどんどんと頬が濡れていく。
涙は布団にまでこぼれ落ち、灰色の染みを作っていく。
「 だいたい一目惚れなんてどれだけ惚れっぽいんだ私は 」
溢れる涙に起こるようにそう呟く。
____とまれ、止まって。
そう願ってもつぶやいても涙は止まらない。
少しずつ視界が暗く、闇色に染まっていくような気がした
( /起こる→怒る