みんなおかしくなっていく。
今までは普通でつまらない日常だった。
───なのに、何で…。
>>2主人公(後からいろいろと登場人物増えるかもです)
〜主人公〜
城田 麗歌(しろた れいか)
クールな高校1年生。
周りがだんだんおかしくなっていくことに気付いていく。帰宅部で、友達は少ない。
目覚まし時計が鳴った後、目をこすりながらもう片方の手で目覚まし時計のボタンを荒く押す。
「お母さん、また仕事か…」
私は机の上に乗ってある冷めたご飯を口にして言った。
いつも通り制服を着て、いつも通りの道で行き、いつも通りの日常を繰り返す…
はずだった。
「おはよー!」
「おはよー」
挨拶が交わされる中、
私はただ無表情のまま席につく。
窓の方では男子がはしゃいでいる。
いつもと変わらない。
寝ようと思った瞬間、静にドアが開き、理科の先生が入ってきた。
「はい、席につきなさーい」
先生は窓の方にまだいる男子に声をかけ、朝礼を始めた。
時間割を学級委員が発表したあと、先生はプリントを束ねながら話し始めた。
「今日はみんなの大好きな、解剖をやるからね」
先生は手を合わせ、笑顔でそう言った。
解剖…?
この前の理科の授業の時、
「次の授業は細胞研究をやります」
って言ってなかったっけ…。
「先生ー、解剖って何を解剖するんですかー?」
クラスのお調子者が手を挙げた。
「うんとねー、それは秘密よ」
先生は笑いながら言っていたが、目は笑ってなかった。
>>4
静かの‘か’が抜けてました…
面白そうずら〜!
続き待ってるずらね♪
>>6
ありがとうございます😭
頑張ります!
いぬきかなこが描きそうなやつやな。面白そう、
9:あまたん(・∀・)◆YQ:2018/05/09(水) 20:19 >>8
面白い小説にできるように頑張ります(`・ω・´)
何を解剖するのかは分からないが、とりあえず足早に生物室に向かった。
「キィ」という謎の声らしきものが聞こえたが、空耳だろうと思い、気にしなかった。
先生はニコニコしながら机にもたれかかっている。やはり目は笑っていない。
それぞれの机には、
30cm程の蛾が乗っていた。
いや、‘それ’には何故か
─────鋭い歯がついている。
‘それ’はキィキィと鳴き、見る生徒を怯えさせる。
一人の女子が震えながら言った。
「先生、もしかして解剖するものって…」
「ええ、‘これ’よ」
先生はメスを一本ずつ生徒に渡し始めた。
その時、‘それ’は女子の一人の手に噛みついた。
手からは血が出ている。
しかし、その子は何も動じないまま、
「可愛い」と呟いた。
私は「危ない」と思い、その蛾のようなものを引き剥がした。‘それ’は床に落ち、必死にもがいた。
先生は怪我をした女子の手を消毒し、包帯を巻く時、
「城田さんは解剖を行って。手当ては私がやるから」
と、私に言った。
解剖って何をやればいいんだ…。
ホワイトボードには
「教科書p121」
と書かれていたので、そのページを開いた。
とにかく鋭い歯を持つ‘それ’の解剖のしかたが載ってあった。
メスを持ち、
‘それ’を切る。
「ギイイイィィィィ!!!」
‘それ’は気が遠くなる程の奇声を発し、動かなくなった。
その時、チャイムが鳴った。
先生は手当てを終えたようで、すぐ職員室に戻った。
私は深呼吸をして生物室を出た。
気になる…続き楽しみにしてます!
13:あまたん(・∀・)◆YQ:2018/05/11(金) 07:16 >>12
ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
頑張ります
6時間目までずっとあの事を考えていた。
解剖のときに見た‘あれ’は何だったのか。
幻じゃないか、と思う自分と、
ありえないい‘何か’がいた、と思う自分がいる。
バックを肩にかけて教室を出ようとしたとき、
後ろから声をかけられた。
中学校から仲が良い結月だった。
結月は口角を上げ、
「一緒に帰ろう!」と言ってくれた。
私には分からなかった、
この後起きることが。
解剖のことは話さなかった。
どうせ話しても信じてくれなさそうだったから。
部活のことについて話していると、
結月が急に立ち止まった。
「ねえ、これ覚えてる?」
何のことかと考えていると、
結月はいきなり
「ドーン!ドーン!」
と叫び始めた。
思い出した。中学のときにやったやつだ。
とっさに私は
「ドンドンだ!ドンドンだ!逃げろー!」
と言い、全力で走った。
‘ドンドン’というのは、私たちがつくった架空の妖怪のようなもので、夕方にどちらかが「ドーン!ドーン!」と言うと、二人とも全力で走る、ということをしていた。
力尽きるまで走ると、すごく気持ちよかったので、昔は結構やっていた。しかし、部活が忙しくなるにつれ、やる回数も減り、高校に入ってからはやらなくなっていた。
結月も私に追いつき、激しく息切れをしていた。
そして、額の汗を拭って、顔を見合わせて笑った。
息切れが治まると、また結月が
「ドーン!ドーン!」
と叫ぶ。
「あは、ドンドンだ!」
と笑顔で私が言った時、
「こらーっ!!」
向こうからお爺さんが怒鳴りながら走ってきた。
いきなりだったので私たちは沈黙になった。
「ドンドンなんて言ってはならん!」
「え…?」
ドンドンは私たちがつくった架空の生物。
他の人が知るはずなんてないのに…。
お爺さんは結月を指差し、
声を落として言い放った。
「あんた…憑かれとるな」
「何言って…」
結月は途中まで言ったあと、
急に地面にしゃがみ込んだ。
「キャハハハハキャハハハハ!!」
すると、結月は白目をむき、
激しく笑いだした。
「いかん、すぐに祓わんと…!」
お爺さんは携帯でお婆さんを呼びだし、
結月を神社へ連れて行った。
私も行こうとしたが、
「あんたには危険だ」
と止められてしまった。
家に帰ると、お父さんが誰かと電話で話していた。
どうやらあのお爺さんらしい。
そして、お父さんが受話器を置いたときに
「結月に何が起こったの?」
と聞いた。
お父さんはお茶を飲んで、
答えた。
「ドンドンの仕業だ」
「え…?」
‘ドンドン’という言葉に、私は驚いた。
そして立ち尽くしている私を見ずに、
お父さんは続けた。
「爺さんはお前がその友達と『ドンドン』と叫び、遊んでいたのを目撃したそうだな。
ドンドンっていうのは、姿も存在も分からないが、呼んではならないやつなんだ。そいつを呼んでしまったから、あの子はあんな風になってしまったんだ」
私が質問しようとしたが、
「もうそれは話すな」と言われた。
昔した結月との遊びは、
一体何だったのだろうか。
私はお風呂に入り、ご飯をあまり食べずに
寝室に行った。
…何かいる。
何か知らないけど机の横に
ヤギの頭みたいなの被り物した人が立ってる…。
「誰…」
そいつは私に気付き、頭を下げた。
「申し遅れました。私、貴方様の住居に居させていただいております」
「へー…悪魔?」
私は少し興味深くなり、質問した。
「はい」
本で読んだことがある。
バフォメットっていう悪魔に似ている。
「貴方名前あんの?」
「ありません」
彼は窓の外を見ながら言った。
「じゃあ、バフォミンって呼んでいい?」
どうやらバフォメットからとったと分かったのか、彼は素直に頷いた。
…眠れない。
まあ部屋にバフォミンがいるからってのもあるけど、なぜか恐怖心が一段と強い。
「…んあー寝れない」
私はついに飛び起きて、バフォミンを置いて
コンビニへ行こうとした。
玄関のドアを開けようとしたとき、
どこからか奇声が聞こえた。
人の声じゃないな…。
コンビニに入ると、
なぜか店員が段ボールを被っている。
不審に思いながら、コーラを手にし、
レジに出した。
店員は何も言わずに会計を済ませたが、
低い声で「…サー…ビスで、す」と言った。
すると、店員は被っている段ボールを開けた。
すると、その中から大量のハエが出てきた。
店員はその場にバタリと倒れた。
私は恐怖のあまり、叫び声も上げずに
ひたすら走り続けた。
もうハエは追ってこなかった。
「あれ、家と逆方向に走っちゃったか…」
またあのハエの軍団に追われるのは嫌なので、少し遠回りをして帰ることにした。
田んぼのあぜ道をゆっくりと歩く。
後ろから「ベタッベタッ」と何かがついてくる。
私が止まったら、その音はどんどん大きくなる。
怖くなり、走って音が消えるのを待った。
「ドーンドーン」と後ろから聞こえてくる。
あれ、
ドーンドーンって…。
その太鼓のような音は次第に大きくなっていく。
振り向くことすらできない。
音が消え、後ろを見ると
何もいなかった。
ほっとして、前を見ると、
黒い顔のようなものが。
「ミツケタ」──────
気がつくと、自分のベッドに横たわっていた。
隣にはお父さんが「心配したんだぞ」と頭を撫でてきた。
私は起きて、バフォミンを探した。
庭にいた。
「ねえ聞いてよバフォミン」
「はい?」
私はバフォミンに全てを話した。
バフォミンはゆっくりと歩きだし、
呟いた。
「やっぱり、この街がおかしいのか…」
私にはその言葉の
意味がよくわからなかった。
朝になった。
そうか、今日は休日だ。
特に用事はないので、近くの山に
行こうと思った。
ポシェットを持って、私は山に向かった。
「特にやることは無いんだけどなあ…」
休日を何もしないまま過ごすのは嫌だったので、
川で遊ぶことにした。
「昔ここでよく遊んだな…ん?」
白いワンピースをした高身長の女の人がいた。
石を拾っては、よく見つめている。
その人は、綺麗な石を見つけると、
こちらに向かってきた。
後ずさりしてしまったが、
女の人は笑顔で歩いてくる。
「この石、綺麗じゃない?」
確かに綺麗な石だった。
「あ、はい」
少し返事をすると、女の人はにっこり笑って、
どこかへ歩き出した。
つられて私も足が動き、
女の人についていった。
特別美人だったわけではないが、
何かオーラのようなものが放たれてる、
そう感じた。
女の人についていくと、
どんどん山の奥の方に入っていった。
これほど奥に行ったことはない。
私は辺りを見回しながら歩いていると、
女の人はある場所で止まった。
祠のようなものがある。
すると、女の人は祠をこじ開けた。
「え、大丈夫なんですか…?」
何のために祠を開けているのか分からず、
後ずさりをした。
何かが入っている。
そっと覗くと、
小さい木の枝で
「ロクソクサマ」
と書いてあった。
>>25
メモ消すの忘れた…
ロクソクサマって何だろう。
誰かのいたずらだろうか、
だとしたら何でわざわざ祠に入れたんだろう。
女の人は、木の枝の文字をバラバラにした。
…嫌な予感がする。
昼なのに、暗い。
不安になっていると、
女の人は、
「おいで」と私の手を引いた。
私は返事をする間もなく、近くの茂みに隠れた。
すると、声が聞こえてきた。
「アァ…ア…」
人の声のようだ。
私が茂みから出ようとすると、女の人が
私の腕を引っ張って止めた。
その声は大きくなっていく。
私は恐怖で目を閉じた。
声は祠の前で止まった。
ゆっくりと目をあけると、3人の誰かの足が見えた。
しかし、何かがおかしい。
少し葉っぱをどけてみると、
3人の足ではなかった。
‘1人の足’だった。
私にも何が起きているのか分からない。
ただ、目の前に
6本足の化け物がいるだけだ。
化け物は、祠を覗いているようだ。
そして、ゆっくりと引き返した。
ほっとしたが、隣の女の人が話かけてきた。
「ねえ、面白いことしてみない?」
女の人はニヤニヤしながら、
ポケットから鈴を取り出した。
「六足様はね、鈴の音に敏感なのよ」
女の人は鈴をぶら下げた。
チリーン…
嫌な予感が当たった。
6本足の化け物は向きを変え、こちらに向かってきた。
女の人は、私の腕を怪力で掴むと、
一気に走り出した。
6本足の化け物の顔を見てみた。
…あれ、この顔どこかで…
「ほら、走って!」
女の人に言われるまま、私は
走っていった。
息が切れ、後ろを振り返る。
あの化け物はもう追ってこない。
「六足様、面白いでしょ?」
女の人は私をまた川に連れて行き、
去っていった。
私は家に帰り、
ご飯を食べながら起きたことを
振り返ってみた。
六足様とは何なのだろうか。
寝室に行っても
バフォミンはいなかった。
出掛けてるのかな。
私は、あの時
六足様の顔を見た気がする。
「誰だっけ…」
思い出すことができずに、
私は眠りについた。
起きて時計を見ると、6時だった。
「今日は…日曜日か」
昨日はバフォミンがいなかったのに
隣に彼がいることに驚いた。
「…びっくりしたなあ」
「申し訳ございません」
バフォミンはお辞儀をした。
リビングに行くと、一枚メモが置いてあった。
「お父さんは今日から出張なんだ。
今日夜に叔母さんが来るから、朝はコンビニのもので我慢してくれ。 父より」
と、書いてあった。
特にお腹も空いてないので、
あの山に行くことにした。
特に理由も無く、
なぜかあの女の人を探したくなった。
川に行ってみた。
女の人はいない。
「あの人は何だったんだろうな…」
そう呟いてから、山の奥へ
走り出した。
祠を見つけた。
あの六足様とかいう化け物が覗いていた祠だ。
祠をのぞき込んで、中を確かめた。
木の枝で、また「ロクソクサマ」と
記してあった。
誰かが戻したんだろうか。
きっとそうだ。
私は祠に背を向け、
山を下っていった。
最初の方に書くの忘れた…。
コメント大歓迎です!
結月の家に行った。
結月のお母さんが「いらっしゃい」
と出迎えてくれて、
ジュースとクッキーを出してくれた。
「ごめんね、麗歌ちゃん。結月はまだ学校に
行けないみたいなのよ」
「え…どうして?」
結月のお母さんは、結月の部屋を
指差した。
結月のお母さんは、真顔で
階段を上がっていった。
私は結月の部屋のドアをノックした。
うなり声が聞こえる。
「結月?」
「ああああ!!」
うなり声から叫び声に変わり、
私は後ずさりをした。
ドアが少し開き、声がした。
「麗歌…?」
ほうっっっっっとうに失礼な質問ですけど、
アマテラスさん、
はずネジ読者だったりします?
>>35
はい、
それを参考に書いております…。
>>36
やっぱり!
なんか読者仲間で嬉しい...♪ (#^ー°)v
この作品、とっても面白いです!
小説板の中で一番すごいと思います!
これからも頑張ってくださーい!
>>37
ありがとうございます😭
褒めていただき嬉しい限りです!
頑張ります(*^^*)
結月が手招きをして、
私は部屋に入った。
部屋は暗く、床には
ノートが散らばっていた。
「私ね…ドンドンを…調べたの」
そう結月は言うと、勉強机に置いてある
一冊のノートを見せてくれた。
「私たちの、ただの遊びだったのに…!」
彼女は泣き始めたので、
背中をさすってあげた。
こうなったのは、なぜなんだろうか。
この町は
なぜおかしくなったのだろうか。
とっさに私は、結月の家を出て、
帰ることにした。
「ねえバフォミン」
「何でしょうか?」
「何で私のスマホいじる必要があんの?」
今私は、彼にスマホを貸している。
どうしても使いたいと言うもんだから、
いじらせてあげているのだ。
「いや…面白いですね、スマホ」
彼は質問に答えず、
私も質問しなかった。
すると、私を呼ぶ声がした。
玄関に行くと、叔母さんが
荷物をおろしていた。
「久しぶり、麗歌ちゃん!元気?」
「え、まあ…」
叔母さんは、ニコニコしながら
荷物をどかした。
「今日ね、久々にハンバーグを
作ろうと思ってね」
「え、やった!」
私は飛び跳ねた。
「うふふ、じゃあ作るから待っててね」
叔母さんはキッチンへと向かっていった。
私は部屋へ戻った。
今まで起きたことは、
一旦忘れよう。
そう思った。
「麗歌ちゃーん、できたわよー」
ゲームをしていたら、叔母さんの
呼ぶ声が聞こえたので、急いで
リビングの方へ向かった。
…何これ。
「これがハンバーグという物ですか?」
私はあっけにとられながら
首をふった。
目の前に、どう見てもハンバーグじゃない
ものがある。
小牛?いや、違う。
‘顔が人間’なのだ。
「あら、麗歌ちゃん。食べないの?」
「いや…いいです、お腹空いてないんで」
「あらそう。じゃあ、冷蔵庫にしまっておくわね」
いや、やめろよ。
私は心の中でつっこんだ。
良きですねぇ、、、。
こういうジャンルは何でも好きなのでとても良きです。
バフォミン、、、
>>43
ありがとうございます!
バフォミン…(°°)
あの、私も最近書き始めたのでぜひぜひ読んでいただけると、、、!( 明らかな宣伝 )
46:アマテラス◆YQ:2018/06/03(日) 20:10 >>45
はい、読ませていただきます!
私は食欲が一瞬で無くなった。
「食べてもいいですか?」
バフォミンが手を伸ばそうとしたので、
すぐに止めた。
私はゆっくりと自分の部屋に戻り、
机に突っ伏した。
「あー…お腹が、おぇぇ…」
吐き気がした。
すると、後ろからガサガサと音が聞こえた。
バフォミンが箱の中から薬を出してくれた。
「いや、いいよ」
彼は戸惑いながら薬を箱に戻した。
優しいな。
私は、なぜかあの子牛を
観察してみたいと思った。
叔母さんに会うのが
怖くなったので、音を立てずに
リビングへ向かった。
子牛がいない。
リビングでは、叔母さんが包丁を
持ちながら、何かを探している。
「あら、おかしいわね。せっかく
‘切ろうと思ったのに’」
私は冷や汗が出た。
叔母さんは、あの子牛を
切ろうとしている。
私は足早に自分の部屋に戻り、
バフォミンを呼んだ。
「バフォミンバフォミン!」
バフォミンはパソコンで
何かを調べている。
もはやバフォミンはド●えもん...
50:アマテラス◆YQ:2018/06/06(水) 21:29 >>49
ド●えもん、ですね…
「何調べてんの?」
私がパソコンを覗き込もうとした瞬間、
バフォミンの横からあの子牛が出てきた。
「わっ!?」
「ああ、これは件というものですね」
私が驚いた後に、バフォミンが答えた。
件…ってなんか聞いたことあるな。
「しかし、件がいるなんて驚き」
「件じゃない」
バフォミンが話し始めた瞬間、件が喋り出した。
私も口を開いた。
「件でしょ?」
「件じゃない」
件、のようなものは、俯いた。
「いや、絶対件だから」
「違いますー」
「You are くだん」
「No I'm not」
バフォミンが首を傾げ、微苦笑しながら
私たちの会話を聞いていた。
私は件に質問した。
「件じゃないなら、貴方は何なのよ」
件は悲しそうに呟いた。
「…なった」
「え?」
「俺の家族、みんなおかしくなったんだ」
件は涙を目にため、
顔を上げて言った。
「俺だって、もとは人間だ。普通に人間として過ごしていた。
でも…でも、ある日から、家族は変わっちまったんだ」
バフォミンは頷きながら
聞いていた。
「何が起こったの?」
件は泣きながら話してくれた。
「いつもは、姉ちゃんと母さん、父さんと暮らしてた。ある日、変な男がやってきたんだ。『この町の山が危険だ』って言いながら」
私は、何かの視線を感じた。
後ろを向いたが、やはり誰もいない。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない…それで?」
件は号泣し始めた。
私は件の背中をさすってあげた。
「あら、いたわ。『夕食』が」
ドアが開き、
叔母さんが包丁を持って
中に入ってきた。
叔母さんは静かに
近づいてくる。
私は、自分が襲われるわけではないのに、
恐怖を感じた。
「さあ、おいで。小牛ちゃん」
叔母さんは、いつものような明るい声
ではなく、低く籠もった声で包丁を持った手を
振り上げた。
その時───
「アヴァランシェ・ブラスト!『神風竜舞』!」
バフォミンがそう唱えた瞬間、
叔母さんのナイフが飛んだ。
叔母さんは、急に意識が無くなったのか、
その場で倒れた。
「バ、バフォミン…?」
「私の力はこんなものですよ」
バフォミンはニコッと笑った。
叔母さんは、本心で
この件を食べようとしたのだろうか。
──あの声は、叔母さんではない。
そう確信した。
私は倒れている叔母さんを起こそうとしたが、
バフォミンが私の腕をつかんだので
2人と一緒に家を飛び出した。
気付いたら、山に来ていた。
光が少なく、小川の流れる音が
よく聞こえ、不気味に思えた。
まだ家に叔母さんが寝ていそうなので、
しばらくここにいることにした。
「姉ちゃんも、あの男のいいなりになった」
件は、話を始めた。
「『山が危険だから、子供が2人、
犠牲にならなければいけない』ってな。
俺たちが連れていかれそうになっても、
父さんや母さんは止めてはくれなかった」
件は近くにあった小さい石を蹴り、
「何でだったんだろな…」と、呟いた。
「俺より姉ちゃんの方が酷いんだ。
姉ちゃんは化け物になったんだ」
私は石を一つ一つ見ながら
聞いていた。
「その化け物の名前が、『六足様』って
言うんだ。足が6本ある化け物になったんだ、
姉ちゃんは」
「あーっ!!」
私は思い出した。
あの六足様の顔を。
「吹奏楽部で指揮者やってた人!」
バフォミンは拾い上げた石を落とした。
件は少し嬉しそうに顔を上げた。
「そうそうそれ!」
「情報少ないのによく分かりましたね…」
吹奏楽部の合奏を結月と見たことがある。
その時、指揮者だった人が、件のお姉さんであり、
六足様だったのだ。
美人だったから記憶に残っている。
「六足様になった理由って何か分かる?」
件はまた顔を落とした。
「本当は、俺になるつもりだったんだ。
それでも、姉ちゃんは俺を庇ってくれたんだ。
俺はこんなんになっちまったけど、姉ちゃんは
助けようとしたつもりだったんだ」
私は前かがみになり、件に聞いた。
「で、そのお姉さんはどこにいるの?」
件は、眉をひそめて答えた。
「埋められた。蛇と一緒に」
私はショックだった。
殺された、というのよりも、
あの人が化け物になった、ということに。
どうやら、件のお姉さんは
怨念が強く、そのまま成仏するはずが
化け物になってしまったらしい。
蛇は神の使いと称されているので、
少しでも怨念を消すために一緒に埋めたのだ。
だが、それがかえって怨念を強くしたという。
「姉ちゃん…」
件は涙をこぼした。
私は件の背中をさすった。
…なぜかバフォミンがいない。
辺りを見回していると、彼は小川を離れ、
山に登っているのが見えた。
「え、バフォミン」
私は彼を引き止めた。
彼は「行ってみましょうよ」と
子供のように言った。
件のお姉さん…つまり六足様のところに
行きたいんだと言う。
あんな怖いところは、正直行きたくないが、
件はバフォミンの意見に賛成したようなので、
私も行くことにした。
山の奥に進むと、あの祠があった。
木の枝で「ロクソクサマ」と並べてあるのは
相変わらずだった。
私は祠を一周してみた。
あの時とは何も変わっていない様子だった。
「この文字を崩すと、貴方のお姉さんが来る」
私は件に説明した。
「へえ…」
件は理解したのかしてないのか、曖昧な
返事をした。
すると、バフォミンが鈴を持ってきた。
「どうしますか?」
バフォミンは鈴を握った。
「お姉さんを助けたいんでしょう」
件は頷いた。
「姉ちゃんは…確か、あった!」
件は、色が変わっている土を見つけた。
ここにお姉さんがいるらしい。
「では、鳴らしましょうか」
「待って!」
私はあの化け物が怖かったあまり、
鈴を鳴らそうとしたバフォミンを止めた。
「…怖いんですか…。大丈夫ですよ、
私がお姉さんを変えてみせますから」
彼はニコッと笑い、鈴を鳴らした。
すると、
「う…あぁ…」といううめき声を出しながら
『六足様』がでてきた。
六足様は、すぐさま私たちに襲いかかろうと
したとき、バフォミンが十字架を取り出し、
六足様の額に付けた。
「ギュゥゥウウウ!!!」
六足様はすぐに十字架から離れ、
額を手でおさえながら足をしきりに
動かした。
件は、あっけにとられている。
バフォミンは、暴れている六足様の額に
また十字架を押しつけ、ポケットから
翡翠のような色をした石を六足様の口に入れた。
六足様はそれを飲み込むと、ふらふらと
どこかに消えていった。
「…あれでよかったの?」
私は六足様が歩いていった方向を指差した。
「はい」
バフォミンは答えた。
私は胸をなで下ろした。
「お姉さんは、すぐに生き返らせるのは
難しいと思います。そこで、あの石で怨念を
少しずつ消していくのです」
バフォミンは詳しく説明してくれた。
凄いな、バフォミン。
「…でも、貴方はそのままでいいの?」
私は件に聞いた。
「ああ、俺は大丈夫だよ。特に怨念も
無いしね…俺、この山にいることにするよ。
姉ちゃんもいるし…」
どうやら件はここにいることにするようだ。
私たちは頷いた。
「うん、じゃあね…帰ろう、バフォミン」
私はバフォミンを連れて家に帰った。
そこではっと叔母さんのことを思い出した。
ドアを開け、恐る恐る中を覗いた。
靴と荷物が無い…帰ったようだ。
すぐ寝室に行き、寝ようとした。
でも、まだ叔母さんが潜んでるんじゃないか
と思い、バフォミンに守ってくれるよう頼んだ。
そして、私は眠りについた。
次の日、
またあの小川まで行ってみたくなった。
小川のそばでは、あの白い女の人が
横たわっていた。
寝ているのかな、と思い
顔を覗き込むと、寝ているのではなかった。
‘作り物’だった。
目や鼻は楕円形の台に乗せただけのようで、
口の方は糸で何重にも縫われてあった。
あの時、私は誰と山に登ったんだろう。
私は少し怯えながら学校に向かった。
教室に入ると、女子グループが騒いでいた。
「ねえねえ、ちかちゃんのはどうだった?」
「『今日は好きな人と話せる』だってー!」
何の話をしているのか分からなかったが、
少し興味があったので、話しかけることにした。
「あの…何を話してるの?」
一瞬みんなはきょとんとしていたが、すぐ
笑顔になった。
「ああ、このサイトの話!麗歌ちゃんは知ってる?」
女子グループのリーダーのような存在の
美里ちゃんが答えてくれた。
美里ちゃんはとあるサイトを見せてくれた。
『逆さリリーさん』
サイトのトップには、女の人が
逆さになってるイラストがあった。
「…逆さリリーさん?不気味…」
「なんか占いのサイトらしいんだけど、
そのリリーさんの占い、絶対当たるんだよね」
美里ちゃんは自信満々に言った。
なんか、洋介犬さん感あって素敵です…!
楽しく読ませていただいてます!
>>65
ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
頑張ります!
昨日、美里ちゃんは「逆さリリーさん」の占いで、『お小遣いが多く貰える』と出てきたらしく、実際に制服を洗うときにポケットから去年のお年玉が出てきたらしい。
まぐれなんじゃないのかな…。
「まぐれなんかじゃないよ!他の皆もリリーさんの占い当たってたしね」
他の女子も頷く。
美里ちゃんにすすめられ、
半信半疑で占ってもらうことにした。
『れいかさんは好きな人と話せるヨ!』
一瞬ドキッとした。
私には好きな人がいる。
私の席から遠い、七瀬君だ。
嬉しく感じたものの、やっぱり
占いを疑う気持ちもあった。
私は楽しそうに他の男子と話している
七瀬君を見つめた。
すると、七瀬君が急にこちらを向いてきた。
私は顔が赤くなるのに気づき、
すぐに目線をそらした。
そして七瀬君を横目で見てみると、
彼も顔を赤くしていた。
美里ちゃんは、私のスマホをひっそりと覗いていた。
「へえ、好きな人…あ、麗歌ちゃん
七瀬君のこと好きなの?頑張れー」
美里ちゃんはニコッと笑った。
私は照れながら頷いたものの、
美里ちゃんはすぐ無表情になった。
そして、彼女は足を組んで私に目を向けなかった。
美里ちゃんも七瀬君が好きなのかな…
私はこの「逆さリリーさん」を信じてみる
ことにした。
今日は七瀬君と話せるんだよね…
そう思うとドキドキしてくる。
そのせいで授業の内容はほとんど頭に
入らなかった。
授業が終わったとき、急に後ろから
声をかけられた。
「なあ、ここの答え分かる?」
七瀬君だ。
問題集を広げて質問してくれた。
「え…あっ、これは、2√3だよ」
「そっか、ありがと」
七瀬君は口角を上げ、
すぐに自分の席へ戻っていった。
内心、とても嬉しかった。
あんなささいなことでも、
私にとっては今日一番の幸せだった。
視線を感じ、ふり返ると、
美里ちゃんが睨んでいた。
しかし、私と目が合うと、
目をそむけた。
私は家に帰ってから、
ずっとドキドキしていた。
もしかしたら、明日も七瀬君と
話せるのだろうか。
…でも、最近美里ちゃんがこちらを
睨んでくることがある。
美里ちゃんも七瀬君が好きだから…
「たこ焼き食べましょう!」
すると、バフォミンがいきなり現れ、
私は驚倒した。
「たこ焼き、食べましょう」
どうやらたこ焼きを買ってきてくれたようだ。
どうやって買ってきたのか分からないが、
彼は黙々とソースをたこ焼きにかけはじめた。
「…じゃあ私も、いただきます」
たこ焼きを食べたあと、バフォミンは
一枚のメモを見せた。
お父さんが出張らしい。
しばらくバフォミンと2人きりに
なるのだ。
次の日、少し早く家を出た。
正直、あの占いは信じている。
だから早くサイトを開きたかった。
学校につくと、美里ちゃんがもう
スマホをいじっていた。
私はチラッと覗いた。
「Misatoさんは2時間目にいいことが
起きるヨ!」
そう出たとき、美里ちゃんが私に
気づいた。
「あ、麗歌ちゃんおはよ」
美里ちゃんは笑顔で手を振った。
私にはその笑顔が怖く感じた。
「あ…おはよ…」
少し遅れて返事をした。
そして、鞄からスマホを取り出し、
占いを見た。
「れいかさんは曇り空を眺めると
いいことが起きるヨ!」
パッとしない運勢だな…
曇り空とはいっても、
今は快晴で、雲一つ無い。
やっぱり嘘なのだろうか、
『逆さリリーさん』は。
2時間目の前に、七瀬君が
美里ちゃんと話してた。
美里ちゃんが七瀬君にノートを
差し出している。
正直、胸が痛くなった。
私も嫉妬しているに違いない。
美里ちゃんは私を見ると、
蔑むように笑った。
私は、どうなんだろうか。
悩んでいるうちに、
やっと全ての授業が終わった。
私は窓の外を見た。
曇っている。
私ははっと気づき、屋上に行った。
晴れていたはずなのに、やっぱり曇っている。
天気予報でも晴れと出ていたはずなのに。
逆さリリーさんは一体何なんだろうか。
私が空を見上げていると、
後ろから声が聞こえた。
「今日、曇ってるな」
ふり返ると、七瀬君がいた。
逆さリリーさんの占い通りだ…。
「…ああ、そうだね」
遅れて私も言う。
七瀬君と距離が近くなった、と
自分の中では思うが、
本当にそうなのだろうか。
「…あのさ、七瀬君って美里ちゃんの
こと好きなの?」
私は俯きながら聞いた。
七瀬君は首を振ったのが横目で見えた。
「…別に、好きじゃない」
私は驚いて、顔を上げた。
私にも、チャンスはあるのだろうか。
七瀬君は、空を見上げている。
よく見ると、頬が少し赤くなっているのに
気づいた。つられて私も赤くなる。
すると、七瀬君がこちらを見た。
私は恥ずかしさのあまり、
「あ、私帰るね!」
とだけ言ってその場から逃げてしまった。
家に帰る前に、近くのコンビニで
アイスクリームを買った。
アイスクリームを頬張りながら歩いていると、
目の前に突然バフォミンが現れた。
「ん!?」
私は目を丸くした。
「今週は…危なくなりそうですよ、麗歌様」
私は口の端に付いたアイスクリームを舌で
取り、首を傾げた。
「特に、麗歌様の好きな人が危ないです」
「はい?」
私は彼の言っていることがよくわからず、
とりあえずバフォミンと家に帰った。
家に帰って、逆さリリーさんの
占い結果を見た。
『れいかさん、明日は幸せになるけど、失っちゃうよ』
…
意味が分からない。
バフォミンがスマホを覗いてきた。
「占いですか…でも、気をつけて
ください。好きな人が危ないです」
「…七瀬君が?」
「…胸騒ぎがするんです」
バフォミンは心配しているようだ。
七瀬君が事故にでも遭うのだろうか…?
そんなこと、あまり考えないようにしよう。
逆さリリーさんの占いは、
まぐれなのだろうか。
次の日、朝ご飯を少しだけ食べて
学校に行った。
そして、勢いよく教室のドアを開けると、
床が濡れているのに気がついた。
「あ、麗歌ちゃんおはよー!」
美里ちゃんがこちらに向かってきた。
その瞬間、彼女は滑って転んだ。
「だ、大丈夫?」
美里ちゃんは頭をさすりながら
笑っている。
「いや、逆さリリーさんの占いでね!
床を濡らすと良いことがおきるらしいんだよ」
…だから濡れていたのか。
別に納得したわけではないが、
逆さリリーさんの占いだとは分かった。
私は席につき、スマホで
逆さリリーさんの占い結果を見た。
『れいかさん
あなたのすきなひとがしぬ』
私は目を見開いた。
まさか七瀬君が死ぬなんて…
「ん?どうしたの?」
固まっている私に美里ちゃんが
声をかけた。
「いや…別に…」
美里ちゃんに七瀬君が死ぬなんて伝えたら
怒るに違いない。
七瀬君を守らなくては…
でも、事故か殺人かも分からないで、
どうやって七瀬君を守ればいいのか。
私は混乱した。
6時間目の授業が終わるまで、私は
怯えながらちょくちょく七瀬君を見ていた。
そして、全ての授業が終わっていた。
この先、どうなるかは分からない。
だから、用心しなければならない。
「あのさ」
七瀬君が声をかけてきた。
「この後、屋上に来てほしいんだけど」
…
自殺じゃないよね。
自殺だったら私を呼ぶわけじゃないから。
「わ、分かった」
私が返事をすると、彼はすぐに
屋上に向かって走って行った。
屋上に来たとき、七瀬君は
空を見上げていた。
私は緊張しながら、七瀬君のそばに来た。
七瀬君は私に気づくと、
ゆっくりと、私の前にきた。
「ずっと思ってたんだけど…」
七瀬君は顔を赤らめる。
「好きだ」
私は驚くとともに、心臓の鼓動が
速くなるのに気づいた。
これは、告白だ…!
私も言わないと…
「あ…私も、」
そのとき、七瀬君の頭から
赤い液体が噴水のように飛び出し、
彼はその場で倒れた。
その後ろに、
赤く染まったナイフを持った
美里ちゃんが立っていた。
美里ちゃんはナイフを下ろすと、
ポケットからスマホを取り出した。
そして、ニヤニヤと笑った。
「美里ちゃん…?」
美里ちゃんはスマホの画面を私に見せた。
『Misatoさんは友達の好きな人を
殺せばいいことが起きるヨ!』
私は絶望した。
彼女は嫉妬ではなく、『逆さリリーさん』の
お告げによって殺したのだ。
「まだあるんだよ…」
美里ちゃんはスマホを弄ると、
別の占い結果が出た。
『Misatoさんの友達を殺せば
もっといいことが起きるヨ!』
「ほら、逆さリリーさんの言うとおりにすると
いいことが起きるんだよ」
すると、美里ちゃんはナイフを私に向けてきた。
…助けて!
そのとき、急に雷が落ち、
美里ちゃんのナイフを直撃した。
「痛いっ!!」
美里ちゃんは手に火傷を負い、
その場でうずくまった。
「大丈夫ですか?」
後ろを見ると、バフォミンが杖を持って
立っていた。
「…今の、バフォミンが助けてくれたの?」
バフォミンは頷いた。
私は怖かったのと、
バフォミンの優しさで涙が出た。
「だ、大丈夫ですか?」
バフォミンはハンカチで私の涙を拭いてくれた。
私は胸が熱くなるのを感じた。
「あ…先に家帰ってていいよ。」
バフォミンはお辞儀をすると、
翼を広げて私の家の方向に飛んでいった。
美里ちゃんはいつの間にかいなくなっていた。
帰ったのかな。
私はとぼとぼと道を歩いていた。
結局、七瀬君の命はなくなったらしい。
私は布団に顔を押し付けた。
>>82
あ、最後の部分おかしかった。
「道を歩いていて七瀬君の命がなくなったと聞き、私は家に帰って布団に顔を押し付けた」
です。
面白いろい。
85:アマテラス◆YQ:2018/07/04(水) 19:54 >>84
ありがとうございます!
>>85
ワイのも見てみて下さい(しれっと宣伝)
適材適所に改行がされており参考にしたいと思いました。まあ、読みやすいという事です。これからも頑張って(`・ω・´)
>>86
ありがとうございます٩( 'ω' )و
頑張ります!
目が覚めると、朝になっていた。
どうやらそのまま寝てしまったようだ。
「…今日は木曜日か」
私は鞄を持って家を出た。
道の途中で、見たことがある人を見つけた。
結月だ!
「あ、麗歌おはよー!」
結月は私に気づくと、
元気よく挨拶をした。
「おはよう、もう大丈夫なの?」
結月は笑顔で頷いた。
本当に大丈夫だといいけど…
学校につき、教室のドアを開けると、
いつもより静な雰囲気に包まれた。
クラスのムードメーカーがいないのだ。
私は近くの子に聞いた。
「和也は?」
「ああ、和也ね。あいつ多分サボってるよ」
和也は成績が少し良く、
そのため教室を抜け出したりしている。
担任の先生も、よく注意できる人ではないから
注意しきれない生徒は放っといているのだ。
屋上に行ってみると、和也が他の生徒と
話をしている。
そして私を見つけたとき、手を振ってきた。
「あ、麗歌!」
「城田ー」
つられて他の子も私を呼ぶ。
「皆何してるの?」
私は皆のそばに行った。
「あそこの病院で今日の夜肝試しするって話」
私たちが住んでいる場所では、
とある廃病院がある。
昔事件や事故がそこであったから、
今ではもう使われていない。
「麗歌も来る?」
和也が誘ってくれ、結局私も
行くことになった。
肝試しなんて小学校の修学旅行以来だから
とても楽しみだ。
その時、授業が始まるチャイムが鳴ったので、
急いで教室に戻った。
今日は体育のテストがあった。
私は体育ができないから、
我慢して行った。
そうして、やっと昼休みになった。
「麗歌、結月も来ることになったから」
和也が教えてくれた。
結月は肝試しに興味が無いのかと
思っていたから、結構意外だ。
「…それで、何時に集合すんの?」
「9時!」
和也は指で示しながら答えた。
意外と遅いんだな…
まあその方が面白いかもしれない。
私はドキドキしながら
昼休みを終えた。
5,6時間目は美術だったので、
楽に終わることができた。
私はすぐに家に帰り、
結月とのチャットを始めた。
和也と遊ぶのは正直初めてだ。
元々男子と遊ぶこともなかったから…
私が懐中電灯を探しているとき、
本を読んでいたバフォミンが声をかけた。
「お出かけですか?」
「ああ、うん…同級生と肝試しを…」
バフォミンは頷きながら本に視点を変えた。
自転車で行っても病院についてから
置く場所が無いので、歩きで行った。
病院につくと、もう皆がいた。
「んじゃ、行こうか」
「待って、鍵はどうすんの?」
和也はにやりと笑った。
すると、和也は近くの植木鉢の中から
鍵を取りだした。
「ここに隠してあったんだ」
どうやら和也はこの病院で肝試しするのは
初めてではないらしい。
ドアを開けると、中はほこりが舞っていて、
とても綺麗とは思えなかった。
「じゃあここから2つに分かれるか」
結局、私は結月と和也と同じグループになった。
別のグループは、行き先が決まったらしく、
もう先に行ってしまった。
和也はドアに鍵をかけた。
「何で鍵かける必要があるの…」
「いや、誰か中に入ってきたら嫌じゃん」
私はため息をついた。
「ねえ、どこから行くの?」
結月はどうやらはやく進みたいようだ。
「とりあえず、ナースステーションにでも行こうか」
私は結月の手を引き、
ナースステーションに向かった。
後から和也も来た。
ナースステーションは、所々に
蜘蛛の巣がかかっていた。
マスコットらしき縫いぐるみが
こちらをじっと見つめていた。
すると、そばにある電話が鳴った。
「ギャーーー!!!」
結月が悲鳴を上げた。
すると、和也は素早く受話器を取った。
「もしもし?…んだよ、ははは」
どうやら、向こうのグループの一人が
遊び半分でかけてきたらしい。
向こうのグループは今、4回の
病室にいるという。
次に、診察室へ行った。
すると、結月が
お医者さんごっこをやりはじめた。
「では城田さん、お座りください」
「…はい」
私が巻き込まれ、
嫌々お医者さんごっこにつきあう
羽目になった。
和也は腹をかかえて笑っている。
「なんかお医者さんごっこって楽しいね」
どうやら終わったようだ。
結月はお医者さんごっこをやったことがなく、
一度やりたかったらしい。
音が聞こえたと思ったら、
和也が棚から注射器を取り出し、
眺めていた。
結月も和也のところへ行き、
注射器を見た。
「これ…血かな?」
注射器には黒い液体が入っていた。
「え、血じゃないでしょ」
結月は怖いのか、
しどろもどろで言った。
廊下へ出た。
懐中電灯で照らしていくと、
ほこりが宙を舞っており、不気味だった。
私はそのとき、
誰かに肩を叩かれた。
振り向くと、
しゃれこうべを持った和也がいた。
「何、それで驚かせたつもり?」
私は昔よくお化け屋敷に行った。
なので、今となっては驚くこともあまりない。
「っていうか、それどこから持ってきたの?」
「いや…そこの部屋から」
和也は指をさした。
しゃれこうべを戻そうと、
その部屋に入った。
…ホルマリン臭い。
中にはホルマリンに漬けられた
生物が置いてあった。
「…いやーな匂い」
結月が鼻をつまんだ。
興味があったので、
一つ一つ見てみることにした。
赤いテープが張られている瓶を
見つけた。
中はテープで見られない。
見てみたかったので、
恐る恐る爪でテープを剥がしていった。
「な、何して!?」
結月の口を和也がおさえた。
「…聞こえたら嫌だろ、何かこっちに
来たりしたらさあ」
和也が言い終わったと共に、
テープを全部剥がした。
中には、手紙と何かの黒い塊が
入っていた。
瓶から手紙を取り出した。
『この生物は失敗作だ。しかし、なぜ
失敗したのかは我々にも分からない。
こいつは今でも生きている、誰かかか
が育てていひいけばここいつはおさま』
ここまでしか読むことができなかった。
なぜなら、このあとの文字は何が書いてあるか
分からないからだ。
次に、瓶から何かの塊を取り出した。
これがその‘失敗作’なのだろうか。
その塊は、大きい虫のようにも見えたし、
小さい人間を無理やり丸くしたようにも
見えた。
すると、黒い塊はいきなり動き出した。
私は驚きのあまり、
塊を落としてしまった。
「きゃっ!え、何これ」
結月が後ずさりをした。
和也は塊をまじまじと見た。
塊は、どうやら
生きているまま瓶に入れられたようだ。
少し動いている。
「うわ、気持ちわりい」
和也は塊から目を離した。
すると、塊から羽のようなものが
生え、パタパタと動かし始めた。
塊はふらふらと宙に浮き、
窓から飛び去った。
「…何、今の…」
振り返ると、結月が目に涙を
浮かばせていた。
「何泣いてんだお前」
和也はへらへらと結月の肩を
小突いた。
「いやだって怖かったじゃん!」
結月は和也を睨んだ。
この二人、なんだかお似合いだな…
私は二人に見とれていたので、
飛んでいった塊のことは
すぐに忘れてしまった。
会話が済むと、
二人の笑顔が消えた。
違和感があるのに気づいたとき、
『ここにいてはならない』と分かった。
廊下から何かが来る。
こちらに近付いてくる。
動物か?
…いや、何かを引きずっているような
音だ。
私は静かに言った。
「…隠れて!」
和也は結月の腕を掴み、
机の下の収納スペースに入った。
結月は戸惑いながらも、
なんとか隠れることができたようだ。
問題は…私だ。
隠れるところが見つからない。
ズルズルと廊下からの音は
次第に大きくなっていく。
考える暇もなく、
私は廊下から見えないように、
机の下に隠れた。
そして、音は
この部屋の前で止まった。
ドクン、と心臓の音が聞こえる。
まだ廊下にはあいつがいるはずだ。
絶対に油断してはいけない。
あいつは何なのか、まだ
姿もわからないが、
良い奴には思えない。
ドアが開く音が聞こえた。
すると、私は今にも
頭が割れそうなほどの頭痛に
襲われた。
痛い。
ズルズルと引きずるような音は、
私の近くで止まった。
私は、
「見つけるな」と
念じていた。
そして、私の横にいる‘何か’は
ズルズルと部屋を出て行った。
私は少し顔を出して、
様子をうかがった。
もういないようだ。
「出ていいよ、二人とも」
そう言うと、和也と結月が
ゆっくりと出てきた。
「怖かった…けど、いなくなって
よかったね」
結月が言った。
いや…
まだこの病院にはいるかもしれない。
とりあえず、廊下に出た。
あいつはもういないだろう。
結月は和也の腕にしがみつきながら、
私についてきた。
あいつから逃げなければならない。
すると、悲鳴が聞こえた。
人の声だ。
だとしたら、向こうのグループの声
だろうか。
「え、麗歌どこ行くの!?」
結月の質問に答える間もなく、
私は走っていった。
声が聞こえたのは、
ホルマリンがあった部屋の上からだ。
急いで階段を上り、
声の主を探した。
病室に入ると、
別のグループの一人が血を出して
横たわっていた。
「大丈夫!?どうしたの?」
彼は腕から血を流していた。
何かに斬られたようで、
傷が深い。
「包帯持ってくる!」
私はそう言った結月を止めようとしたが、
階段を下っていってしまった。
…大丈夫だろうか…
面白いです!宣伝悪いですけど私のも見てくれると嬉しいです😂
109:匿名:2018/07/21(土) 21:44おもろいっす(ё)b
110:アマテラス◆YQ:2018/07/22(日) 12:02 >>108
ありがとうございます_(._.)_
読ませていただきます😌
>>109
ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
何かあったら心配だ。
私は結月を追いかけていった。
携帯を使おうとしたが、
どうやら圏外らしい。
とりあえず、病室にあった電話を
使った。
「もしもし」
「誰!?」
繋がった瞬間、結月が大声を
発した。
「…私だよ、っていうかそんなに
叫ぶ必要あるの?」
私は苦笑しながら言った。
「いやだって幽霊とかだったら
怖いから!」
彼女は焦っているのか、
早口で言った。
どうやら、彼女はナースステーションの
近くにいるらしい。
急いで行くと、結月が手をブンブンと
振っていた。
「麗歌、麗歌!」
「はいはい麗歌ですよ」
オウムのように言った。
包帯が見つからないようで、
一緒に探してほしいという。
「無かったの?」
結月は静かに頷いた。
「あとさ、さっきあそこの部屋から硝子が
割れたような音がしたんだけど…」
指でさされたところを見ると、
一つだけ色が違うドアがあった。
おそるおそるドアを開けると、
そこには…
「バフォミン!?」
バフォミンがいた。
「誰この人」
結月はバフォミンの存在を
全く知らなかったようだ。
「バフォミンと申します。
よろしくお願いします」
「ぶふっ…」
あまりの意外さに
思わず笑ってしまった。
バフォミンの後ろは窓があったが、
硝子が粉々に砕け散っていた。
「何があった…」
「お伝えしたいことがありまして」
伝言…?
何なんだろう。
「麗歌様のお父様が帰って参りました」
…そんなことか。
重要なことだと予想していたから
ずっこけた。
結月はまだバフォミンが何者なのか
分かっておらず、
私とバフォミンを交互に見ている。
「…麗歌様たちは何をなさって?」
「ああ、同級生と肝試し」
バフォミンはそれを聞くと
深く頷いた。
「そうですか、では楽しんでください」
そう言うと、バフォミンは
窓から飛んでいった。
「あ…あ」
「どうしたの?結月」
結月は窓を見ながら
口を開けている。
「麗歌の彼氏に向いてるね!」
「おいおいやめなさい…」
えへへ、と笑った彼女を見て、
部屋を出た。
…包帯を見つけなきゃ。
…こんなことしてる場合ではない。
「包帯なんてどこにあるのかな」
結月はキョロキョロと見渡す。
「分からないけど…
あ、手術室はどうかな。
包帯は無くてもガーゼがあるかもしれない」
名案だとは思わなかったが、
言ってしまったものは仕方がない。
エレベーターまであまり足音を
立てずに早歩きで進んだ。
エレベーターで地下まで降りると、
手術室のドアが開いていることに
気付いた。
廊下を進むと、
足音が響く。
化け物が来たら厄介だな…。
手術室で誰かが死んだという噂は
聞いたことがない。
だから、いきなり
幽霊が飛び出してきたりすることは
多分ないだろう。
「もうついた?もうついた?」
「あと少し…」
結月は目を閉じながら
進んでいる。
手術室についた。
手術台や器具が
生々しく残っている。
ガーゼか何か傷を押さえる物が
きっとあるはずだ。
何かが足にぶつかったので、
拾い上げた。
消毒液だ。
消毒液も必要だが
まずガーゼがなくてはならない。
「麗歌ー、あった…」
結月の方を見た瞬間、
結月の顔が青ざめるのが分かった。
ズル、ズル…
引き摺るような音が聞こえてくる。
ズルズル…
それは何を引き摺っているのかは
分からない。
私は確かめたくなってきた。
そいつが何なのか知りたいから。
「ちょ、麗歌…?」
私は早足で廊下に出た。
音はどんどん近付いてくる。
私は壁に隠れながら
そいつをちらりと見てみた。
…匍匐前進?
暗くて顔はよく見えないが、
肘で進んでいるのは分かった。
だんだん近付いてくる。
顔がどんな感じなのかは
だいたい分かってきた。
…黒目しかない?
目の部分は黒く、
白目がよく見えなかった。
そして、私との距離が狭まったときに、
もっと恐ろしいことに気付いた。
こいつは黒目しかないのではなかった。
『目が無い』のだ。
私は口元を押さえ、
手術室に向かわずに廊下にあった
ソファの陰に潜んだ。
…あ、結月。
そいつは手術室に向かって
いっている。
わざわざ匍匐前進しているのではなく、
下半身がないから肘で進んでいるのことが
分かった。
…結月は隠れた?
…結月が危ない目に遭ったら私のせいだ。
手術室にズルズルと
そいつは入っていく。
私は入ってきた様子を見計らって、
結月を助けようと後を追った。
手術室に行き、手術台で身を隠した。
向こう側にあいつがいるから、
慎重に結月を助けないと…
…結月?
手術室のドアが少し揺れたのが分かった。
同時に上半身だけの化け物は、
手術室を出て行った。
結月はどこに隠れているのだろう…
私は化け物が去って行くのを
横目で見ながら、結月を探した。
どんなに探しても、いなかった。
どこに行ったのだろう…。
「麗歌?」
手術室の向こう側のドアから
結月がのこのこと歩いてきた。
「どこ行ってたの…!?」
私は結月に抱きついた。
「え?トイレ行っただけ」
「…え?」
…
「うん、ちょうどトイレが近くに
あってさ」
どうやらドアの奥にある廊下を進むと、
トイレがあるらしい。
「麗歌は何で逃げてたの?」
…こいつ、ウザイな。
そこが好きだけど
手術室の奥に行ってみる。
化け物に会った恐怖で
自分の目的が分からなくなりそうだ。
廊下は蜘蛛の巣が
所々にはってある。
近くにあった部屋に入ってみた。
何の部屋かはよく分からないが、
棚の中に包帯が入っていた。
見つけたならすぐに
怪我をした子のもとへ行かなければ…
結月の手を引き、
病室に向かった。
階段を上り、廊下を進む。
廊下にあるドアを開ける、
廊下を進む…。
病室に行くと、
傷を負った男子がベッドで
横たわっていた。
私は傷の上から包帯を
手早く巻いた。
「あ…城田さん、ありがとう…」
「それより、何があったのか
教えてくれる?」
話によると、
背が低い何者かに襲われたという。
暗くてよく見えなかったが、
やはり匍匐前進をしていったらしい。
「…ふふっ」
結月は匍匐前進の化け物の
姿を知らないので、笑っている。
なぜ彼を狙ったかも分からず、
肝試しをやめようということになった。
急いで病院を出ようと、
和也はドアの鍵穴に鍵をさした。
ガチャガチャと鍵を回すが、
なぜか開かない。
和也は動きを止めると、
何かを呟いた。
口パクだったが、
『開かない』と言っているのだろう。
他の人が鍵を回しても、
なぜか開かなかった。
…別の道を探すしかないのか…。
また二手にわかれるのは面倒なので、
皆で出口を探すことにした。
「くっそー…何でだよ…」
和也は髪を掻き回し、
結月は怯えて私の袖を掴む。
非常口から抜け出せるかもしれない。
地図があったので非常口の場所を
見てみたが、結構遠いことが分かる。
地図通りに行けば何とか
たどり着きそうだが、
変な匍匐前進の化け物がいるから怖い。
私たちは足音を立てずに非常口へ
向かっていった。
非常口に着き、ドアを開け…られない。
扉には鍵穴は無かったが、どうやら
災害があったときに自動で開く仕組みに
なっているようだ。
「じゃあ、扉のロックを解除しないと
開かないみたいだね」
結月が名探偵のように言う。
「俺こっち見てみる!」
和也がいきなり走り出した。
同時に、他の皆も行ってしまった。
「え…」
結月は固まってしまった。
…団結力というのはないのだろうか。
「はあ…私たちも皆を追うか…」
私は結月の手を引き、
廊下を進んだ。
バタバタと足音が響いてくる。
化け物に会わないように
静かにしてほしいと念ずるしかない。
めっちゃ面白い!(少し怖いけど)
131:アマテラス◆YQ:2018/08/10(金) 21:32 >>130
ありがとうございます(血涙)
「はあ…」
結月とトコトコと歩いていると、
後ろから音が聞こえてきた。
ズル…ズル…
「えっ…」
結月が立ち止まって後ろを向く。
向こうから、あいつがやってくる。
「ここに入って!」
私は結月をトイレの個室に
押し込み、鍵をかけさせた。
私はあいつを観察したいので
壁の死角に隠れた。
ズル、ズル…
…なんか、様子が変だ。
目が無いとはいえ、
もう少し速く進むこともできるのでは…?
鈍い音と共に、化け物は
壁にぶつかった。
「あうっ!」
どこからか可愛らしい声が聞こえてき、
化け物の中から女の子が出てきた。
どうやら女の子は目の無い化け物の
マスクをし、わざわざ大人用の上着を
着て、化け物に見せかけていたようだった。
「ママァ…」
女の子は泣いてしまった。
どうしようかと迷っていると、
キッズ携帯を取り出し、電話をかけ始めた。
すると、向こうからお母さんらしき人が
走ってきた。
「利香…!」
女の子は利香というらしい。
でも、何でこんなことを…。
「おい、何やってんだ」
向こうからいかつい男の人が
やってきた。
「泣いてないで、さっさと立て」
男の人は利香ちゃんの髪を掴み、
無理矢理立たせた。
「もうやめて!
この子は奴隷じゃないのよ!」
「うるさい!」
鈍い音が聞こえたかと思うと、
女の人はその場で倒れた。
「これも仕事のためなんだよ!」
利香ちゃんは号泣している。
「新聞のネタにするために仕方なく
やっていることなんだよ。何しろ
ここは俺が元々いたところだからな」
男の人は元々この病院の医者で、
今は新聞記者?をやっているようだ。
「でもこの子を使わなくてもいいでしょ?」
「何をしようと俺の勝手だ!」
鈍い音が鳴り響く。
ついに、女の人は何も言わなくなった。
「ママー!!」
男の人は利香ちゃんを睨むと、
向こうへ去って行った。
「ママ…うっ…」
私は利香ちゃんに近付いた。
「ママが、ママが…」
でも、私にはどうすることも
できない。
利香ちゃんのお母さんは
体の至る所にアザがあった。
よっぽど父親からの暴力が
酷かったのだろう。
結月が辺りを見回しながら
私たちのところまで来た。
「えっ、えっ」
結月は個室に入っていたため、
何が起きたのか分からなかったようだ。
「ママーーー!!」
利香ちゃんは走っていってしまった。
すると、和也がみんなと
向こうから走ってきた。
「解除できたぞ」
和也が解除できるほど
非常口が柔だとは思わなかった。
結局、私たちは利香ちゃんのお母さんの
死体をどうすることもできずに
肝試しを終えてしまった。
家に帰り、寝室に行くと、
机にたこ焼きが置いてあった。
「お帰りなさいませ!」
バフォミンがまたたこ焼きを
買ってきてくれていた。
「ただいま」
私は少し微笑んでたこ焼きを
頬張った。
気がつくと朝になっていた。
疲れてそのまま寝てしまったらしい。
気晴らしに外へ出ると、
近所の人と警察が集まっていた。
「あ、麗歌ちゃん!ほら」
近所のおばさんが手招きをした。
私はみんなに近付くと、
なぜ近所の人が
集まっているのかが分かった。
お父さんが死んでいる。
警察によると、今朝殺されたという。
とっさに家に戻って新聞を見た。
どうやら最近通り魔がここら辺に
いるらしい。
私は父親が死んだことを
認められなかった。
バフォミンに泣きつくと、
優しく私の頭を撫でてくれた。
「通り魔がまだ捕まっていないなら…
まだ警戒しなければいけませんね…」
バフォミンは翼を広げて外に出た。
「何か買ってきましょうか?」
断ったけど、一瞬で彼はコンビニで
おにぎりを買ってきた。
すると、物陰から何かが飛び出してきた。
「『ヘル・アロー』…!」
バフォミンはそう唱えると、
何者かは数メートル先に吹っ飛んだ。
「いったいなあ…何すんのよ!」
吹っ飛ばされた人をよく見ると
着物を着ていて、
猫耳と尻尾が生えている。
「はっ、すみません…
通り魔が出ると聞いてつい…」
バフォミンは深くお辞儀をした。
「まったく…」
私はその猫耳の女性と目が合った。
「あんた、あたいが見えるのかい!?
あたいは夜巡(よめぐり)!あんたは?」
夜巡と名乗る女性は私の手を握った。
「れ、麗歌…」
「それより貴方、人間じゃないようですね」
バフォミンが夜巡さんを見つめる。
「ああ、あたいは猫又だよ」
「猫又、ですか…」
「何か文句ある?」
「い、いえ…」
夜巡さんは結構気が強い…。
「あたい住む家が無いのよねー、
だからこうやってトボトボ歩いてんのさ」
「あの…よければうちに来ませんか?」
私がそう言うと、夜巡さんは
顔を輝かせて頷いた。
バフォミンは唖然としている。
その時は肝試しのことなんか
忘れていた。
あとからあの真相が分かるなんて
思いもよらなかった。
「ここが麗歌んちかー!
広くて綺麗ね」
夜巡さんは部屋を隅々まで見ている。
恥ずかしいけど仕方がないことだ。
「あんた家族いないの?」
「うへっ!?」
急に聞かれたもんだから
思わず変な声が出てしまった。
「あまり聞かないでくださいよ、
麗歌様のショックは大きいんですから」
そりゃそうだ。
私は幼い頃にお母さんを亡くしている。
そしてお父さんが殺されたから、
ショックは大きい。
夜巡さんは少し俯いた。
「結構最近変なこと起きてるんですよね…」
夜巡さんはお菓子をムシャムシャと
食べている。
「変なことって?」
「なんていうか…怖くて危ないことが
起きている気がするんです」
私の語彙力で説明するのは
難しかったが、
夜巡さんは理解してくれたようだ。
「ま、麗歌に何かあったら
あたいが守るからね」
─私を守ってくれる人がいる。
そう思うだけで嬉しかった。
「そうですよ、麗歌様。
私たちがついてますよ」
なんとなく、
バフォミンがイケメンに見えた。
「ふわ〜、眠くなってきた」
私がそう言うと、
バフォミンは布団を敷いてくれた。
「あ、ありがとう…」
二人に見守られながら、
私は眠りについた。
しばらくしたら目が覚めた。
トイレに行きたかったわけじゃないが、
何かに起こされるような感覚があった。
バフォミンと夜巡さんがいない。
「もしかして夢の世界だったりして」
私は部屋から出た。
変な空間だ。
別に暗闇ってわけではないが、
どこか複雑な色の空間だ。
「うっ…」
私は光に包まれた。
気がつくと、商店街のような場所にいた。
店のようなものが並んでいるが、
何の字かわからない。
日本語ではない。
「お母さーん」
前から子供が走ってきて、
私とすれ違った。
振り向くと、
子供は女の人と手を繋いで歩いて行った。
あの女の人、私のお母さんに似ているな…
面白いなあ
147:アマテラス◆YQ:2018/08/30(木) 13:02 >>146
めちゃんこ嬉しいです!
ありがとうございます!
変な夢だな…。
すると、急に肩を叩かれた。
後ろを向くと、
魚の頭をした人間がいた。
「…ブハハハハハハハ!!」
私は大笑いしてしまった。
でも、だんだん魚人間を見ているうちに
笑えなくなってきた。
「ニゲナサイ」
そう言うと、魚人間は消えた。
逃げるって、何から…?
そう考えていると、
べちょ、と私の頬に何かが付いた。
血、だ。
上を向かない方がよさそうだ。
べちょべちょと
私の周りに肉片と血が落ちてくる。
私は声も上げずに逃げた。
後ろから何かが追ってくる音が
聞こえた。
これは、本当に夢なのか?
駅のようなものを発見し、
即座に入っていった。
後ろからは何も追ってこない。
ほっとして、電車に乗り込んだ。
電車には誰もいない。
ただアナウンスが聞こえるだけだった。
「本当にどこなんだろ、ここ…」
窓から外を覗いてみたが、
トンネルの中なのか、風景なのかも
分からないくらい暗かった。
もしここが別の世界だったのなら…
この世界に食べ物があったら食べてみたいし、
店があったら入ってみたい。
私は恐怖というよりは
観光に来ているかの気持ちだった。
電車はまだ駅に着かない。
今スマホを持っていない状態だったから
すごく暇だった。
私はその場で眠りについた。
はっと我に返ると、
駅に電車が着いていた。
とりあえず降りる。
至って普通の街、に見えるが…
月があり得ないくらいに大きい。
息を呑み、その街へと向かった。
しかし、人間がいない。
化け物がうじゃうじゃいる。
化け物は私を通り過ぎる度に
二度見をする。
「はあ…こんなときにバフォミンが
いたらなあ…」
私は近くの店に入った。
http://ha10.net/up/data/img/26332.png
下手ですが、だいたいキャラのイメージはこんな感じです。
手前の黒髪の子が麗歌で、右の子が結月です
「バフォミン…うーん…」
店に入ったとき、
奥から男の人?が小走りできた。
バフォミン?
「いらっしゃいませ!」
「いるのかよ!」
思わずこけそうになった。
「え?」
その人はよく見るとバフォミンとは違って
羊の被り物をしている。
「バフォミンのライバルか?」
私も自分が何を言っているのか分からない。
羊の人は混乱している。
「まあ、いいや…」
私は椅子に座った。
「あ、何かお飲みになりますか?」
そうか、ここは飲食店だったのか。
「あ…はい」
私はこの状況がよく分かっていない。
だから何を答えたらいいのかも分からない。
羊の人はお辞儀をしてから店の奥へ行った。
この世界が夢ではないのなら、
地球よりも技術が進んでいるのだろうか。
それとも、何かがこの世界を支配しているの
だろうか。
考えると頭が混乱する。
「お待たせしました」
羊の人がテーブルの上に禍々しい色の
飲み物を置いた。
「何これ」
置かれた飲み物をまじまじと見る。
何かが飲み物の中で浮き沈み
しているようだ。
「ドルチェ・ヴァンパイアです」
ドルチェって音楽の世界では
「優しい、柔らかい」という意味らしいが、
どうもそうには見えない。
とりあえずストローに口をつけ、
ジュースを吸ってみる。
見た目と違って甘かった。
「…美味しい」
「そうですか、ありがとうございます!!」
羊の人はスキップをしながら
店の奥へ戻っていった。
店の中隅々を目で確かめる。
私は寝るときあまり夢を見たい人だ。
でもこんなに鮮明に見える夢は
初めてかもしれない。
奥からまた羊の人が出てきた。
アイスクリーム、をくれた。
どうやらサービスらしい。
食べるとほんのりイチゴの味がした。
しかし、どうやって
元いた場所へ戻るべきか。
アイスクリームを食べながら店を出る。
…怖い。
危険を感じた、というよりかは
自分の存在に恐怖を覚えた。
生暖かい風が吹き、
思わず後ろを振り返る。
さっきまで明るかった場所がなぜか暗い。
気のせいだろうか?
気にせずに街を歩き、また後ろを向く。
特に何も変化はない。
ほっとして前を向くと、
「こんにちは」
人形がいた。
「や…ギャアア喋ったあああ!?」
人形が喋ったのを間近で見ると
恐怖しか湧いてこない。
人形は首をかしげ、こちらへ歩いてくる。
…来ないでほしい。
「何で逃げるの?」
私の足元にやってくると、
これでもかというくらいに首を曲げる。
ポキッ
首が外れた。
私は声が出ないまま固まっていた。
「やだ、いっけなーい」
人形は首を付けて元通りになった。
「あなた、名前は?」
人形に問われるも、うまく声が出せない。
「…ひぇっ」
勇気を出したら変な声が出た。
人形はクスクスと笑っている。
「言わないと、刺すわよ」
人形は一瞬で真顔になり、
目を見開いてナイフを私に突きつける。
「麗歌!麗歌!」
私は自分の名前をすかさず言った。
そのとき自分の名前に感謝をすることができた。
「麗歌ね、私はレイラ。
人間と話すことがあんまり得意じゃないの」
「え、この世界に人間がいるの?」
私が問うと、レイラはナイフを腰にさした。
「そりゃいるわよ。来て」
彼女は私の手をとり、走り出した。
息ができなくなるほど走ると、
レイラは私の手を離した。
「見て、あそこ」
レイラは細道を指差す。
誰かいるようだ。
ニット帽を被り、マスクをしているから
男か女かも分からない。
本当に人間なのだろうか。
気がつくと、レイラはその人のもとへ
行っていた。
「麗歌ー!こやつ人間だったわよー!」
こやつって言ったよな今。
「あなた、名前は?」
ナイフを突きつけるレイラ。
ナイフ好きだなあの子。
「言うからナイフを下ろしてくれ」
レイラが舌打ちをして腰にさすと、
その人はため息をついてニット帽を整えた。
そして「優」とだけ名乗った。
性別が分からない。
「あの…非常に失礼ですが
性別はどちらでしょうか」
私が尋ねると優さんはマスクと
ニット帽を外した。
「男!?」
私は思わず叫んでしまった。
レイラはぽかんと口を開けている。
口パクで「てっきり女の人だと」と
言っている。
優さんは男性だった。
言葉では言い表せないくらい
整った顔をしている。
七瀬君よりかっこいい、と思ってしまった。
屑だ、私。
「んで、何のよう?」
はっと我にかえる。
「この世界について何かご存じですか?」
優さんはうつむいてスマホを取り出した。
私もつられて取り出す。
圏外、ではなかった。
でもやっぱり電話をするのはやめよう。
きっと誰も信じてくれないだろうから。
「麗歌、お腹空いた」
レイラが私の袖を掴む。
可愛い、と思った。
「私お金ないわ今…」
そう言うと、レイラはむっと
頰をふくらます。
ふと優さんの方を見ると、
なぜか私の方をチラチラ見ながら
スマホをいじっている。
怖いくらいに真剣にスマホを
いじっている。
何か分かったのだろうか。
優さんは動きを止め、
スマホをパーカーのポケットに入れた。
「ここは君が創り出した世界、
とでも言っておこうか。
ま、そのうち元の世界へ戻れるよ」
と彼は言った。
「そのうちっていつよ!?」
レイラが優さんに殴りかかろうとしたので、
必死で止めた。
私が、創り出した世界…?
どういうことなのかさっぱり分からない。
私がこの世界にあるものを望んだわけでも、
誰かに会いたいとも思っていないのに
なぜ“私の世界”が生み出されてしまったのか?
「要するに、君の好奇心から生まれた世界
っていえば分かるかな」
私の好奇心から生まれたのであれば、
優さんも私が創り出したのか…?
急に恥ずかしくなってきた。
多分私の顔は真っ赤だろう。
そうこうしている内に、
空は明るくなっていた。
レイラは「来たわね」と呟く。
優さんもそれにあわせて頷く。
「来たって、何が」
私は宙に浮き、空へ吸い込まれた。
目が覚めた。
全身は汗でびしょ濡れになっている。
怖かった、ただそれだけだ。
着替えて外に出る。
「せっかく会った人もすぐにまた
会えなくなっちゃうんだよなあ…」
石を蹴る。
電信柱にコツンと当たる。
その瞬間に自分だけ
この世にいてはならない存在なのかなと思った。
周りが変わっていくのを感じ、
背筋が凍り付く。
いずれ私もその世界に巻き込まれ、
自分ではなくなるのだろうか。
時が経つのが早いな、と
改めて感じる。
その時が流れているうちに
何が起きてこうなったのだろうか?
「ん?」
悲鳴が聞こえた。
何かあったのだろうか。
嫌な予感がして一目散に
声がした方向から逆の方向に走った。
悲鳴が大きくなっていく。
「…気持ち悪い」
誰かが叫んでいるのであれば、
助けた方がいいのだろうか?
そのとき、後ろから叫び声が聞こえた。
後ろから…!?
『目の無い女』が叫びながら立っていた。
どれくらい走ったのだろうか。
気付けば知らない場所にいた。
耳をすませると、叫び声が耳に入ってくる。
「け、警察を呼ばないと…」
「もしもし?警察ですか?
目が無い人が追いかけてくるんですけど」
「何を馬鹿なことを言ってるんですか?
イタズラなら切りますよ」
何度も説得したが、仕舞いには
切られてしまった。
なぜなら、女の声は聞こえるのに
一定の距離まで近付かないと姿が見えないからだ。
ブツブツ愚痴を言いながら家まで歩く。
どうせならもうあの女に捕まってもいいのでは?
そう考える自分がいる。
親も失い、地獄のようになってしまった日々は
もう過ごさなくてもいいのではないか?
「腰が痛い…」
背中を反らす。
あまり運動しなくなったので
体が鈍ってきたようだ。
「キャアアア」
悲鳴を無視する。
はやく家に帰りたい。
「麗歌様!なぜそんなにむあえぶえす!?」
バフォミンが来てくれたが、
焦っているのか、
正直何を言ってるのか分からない。
「ああ、なんかもう疲れちゃって」
適当に答えると同時に悲鳴が聞こえる。
「妙な雄叫び…」
バフォミンがボソッと言うと、
手から光を出した。
「おお…」
中二病かと思ったが、
まあ悪魔だからそれくらいできるだろうと
自分を安心させた。
悲鳴が近くなってくる。
バフォミンは光を向こうへ放った。
同時に目の無い女が現れる。
「あ」
一瞬申し訳ない気持ちになった。
「あ、ええ…」
女はあたふたしている。
バフォミンが横でフンと鼻で笑った。
「すみませんでした」
女はそれだけ言うと、
走り去ってしまった。
私は思った…
「何がしたかったんだ」と。
「ま、まあ一件落着したことだし、
帰ろうか」
そう言うと、
バフォミンと笑いながら
家に帰った。
「おかえり」
夜巡さんがエプロン姿で
玄関に来る。
「お風呂にする?ご飯にする?」
それとも、と言いかけたところで
「お風呂」と即答した。
バスタブに浸かりながら考える。
家の中なら安全なのではないか?
バフォミンもいるし、
化け物に会うこともない。
変な夢は見るが、
外よりかはマシだと思う。