自分のキャラの過去話、裏話
スレッドにかけない小説のような話をどこかにあげたい人はここに書き込んでみてください
正直スレ主が欲しかっただけですがご自由にどうぞ
『悪夢の始まり』
ダンッッ
100万ドルの夜景だとか、世界でも有数の絶景だとか、そんな場所を見向きもせず、ただただ祈りながら、男は次の場所へと飛び込んだ
事は数十分前、長期任務を終わらせ、本部に連絡を入れようとした時だった
俺が通知を入れようと、隠密任務ということもあり電源を落としていたインカムをつけた時、焦りを隠せない部下の声が聞こえた
『─むら─さ─!…─叢雲さん!奥様との連絡がっ…!』
嫌な予感はしていた
そしてインカムから聞こえたその言葉を聞いて、弾かれるように俺は駆け出し、己がいたビルの窓を蹴破って、街に溺れるようにその身を『転移』させた
「っ、!!」
『転移』した先の壁を蹴り、焦りにふらつきながら自分の家の前の地面に足をつけた
己の『右手』を伸ばし、玄関の扉に触れる
嫌な予感が強まっている、どうか、どうか、どうか、どうか
ガチャンッッ
「っゆき!ぶじっ!!……か…、…」
まず目にはいったのは、いつも出迎えてくれた愛しい妻ではなく、数人の、武装をした人間
『な、─なぜ─!!しに─み…─!』
『はや─る─!』
何か言っている、でも、そんなもの、次に目に入ったものを見ては、聞こえなくなった
床に滴る血
床に散らばる、剥ぎ取られた爪
服を脱がされ、あらゆる所にむち打ち跡が残された拘束された体
おかしな方向に曲がっている指
血が染み込んだ髪
いつも笑みを浮かべていた、彼女の面影を残さないほどに傷だらけにされた顔
今はもう動かない肉塊
それが愛しい妻だと気がついた時には、もう己の理性は途切れていた
気がついたら、武装した奴らはもう人間とは言えない程に切り刻まれて、床は血がないところを探すのが困難な程に流れていた
「……ゆき」
そんなものは気にせず、ちゃぷ…と血の海を鳴らしながら彼女『だった』ものにふらりと近寄る
いつだって、名前を呼べば振り向いてくれた
「……ゆき」
いつだって、名前を呼べば微笑んでくれた
「…ゆ、き」
彼女の頬に触れた
生ぬるい、べたりとした血がつく
「…ゆき」
「ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき、ゆき」
ふりむいてくれない
ほほえんでくれない
なんどよんでも
なんどよんでも、めをあけてくれない
「……………………………………………」
血
温かさが奪われていく
「…ゆ、き」
答えない
「………ゆき…」
いくら抱きしめても、名前を呼んでも、広い部屋に響く声は、自分の耳にしか届かない
いつも暖かかった雪の腕は、いつまでたっても、俺を抱き返してはくれなかった
あれから時間が経った
数時間前?数日?わからない
どうやらいつまでたっても連絡が入らない俺を探しに、GPSをつたって家を探しあてた同僚が、あの惨状をみて色々としてくれたらしい
雪を病院へ運ぼうとするけど、何を言っても反応しない俺を、ボスが気絶させたらしいから、詳しくはわからない
そして、医務室で目を覚ました俺にボスがつげた
どうやら、雪は妊娠していたらしい
名前も性別も分からないわが子、おれが長期任務の際に発覚したそうだ
最後まで、腹だけはと守っていたらしいが、その我が子は生まれる前に息絶えていた
雪を拷問した敵組織は、雪から俺の情報を引き出そうと、痛めつけたらしい
そのさいに、雪が放ったことばは次の言葉だけだったそうだ
『あなた、あしたはあめだそうですよ、かさをわすれないでくださいね』
そう笑って、彼女は息絶えたそうだ
全て遠き理想郷
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