きみのための物語

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1:◆RI:2020/11/01(日) 20:49

自分のキャラの過去話、裏話
スレッドにかけない小説のような話をどこかにあげたい人はここに書き込んでみてください

正直スレ主が欲しかっただけですがご自由にどうぞ

101:◆.s:2021/10/22(金) 01:58


「 …ぁ、が___っ 」

( …手足は 自由、だから "もがく" 歌姫。
__けれど、それは 鎖 …硬くて、首に巻かれて… )


____それを引き千切れる炎神も…


『 さァてェー、時にィ …エーット,ダレダッケ?
セィラフサン? あァなたナ!メちャいけませェんよ 』


『 ヒー、ロー。であァる以前に此処って何処でェすか?』


八百屋? (大根と人参両手に看板背負って)

空港? (旅行姿)

学校? (学生風)

それとも憩いの場ッッ!? (女装。)



       違ァう!!


『 "せェぇェんじょォう"でェすよ!"戦場!!" 』


_____背後に燃える炎が道化師の顔に影を作る

102:◆.s:2021/10/22(金) 01:58

『 "ルール!? 安全!? モラル!? ウマイ飯!?"
 そォんなモノだァれが保証してくれるんでェすかッッ!? 』

ぱっ。

____道化師が鎖から足を退け…



[がぎゃりぃっ!] 「ぅあ"…___っ」


____地に足がつく少し前で鎖を掴んで止める

…ついでに歌姫の目の前___



『 後ィろでピーヒャラ歌ァってりゃワテシが見逃ァしてくれる…
と!でも思ォいまァしたかァ!? 残念ッッ 』

『 敵は平等なァンですよ!! …そ。
 あなたがたが好ゥきなねェアハ!ハ!ハ!ハ! 』



___っや … やめろっ…!


『 !!! !!! …ァ、"!"付けるの疲ァれる。
 ま 置いといて ォォやおや。 』

103:◆.s:2021/10/22(金) 01:58

____…脚を引き摺り …地べた這ってでも…


( 近くまで …戻って来ていた炎神が必死で声を出す )

「__っ…(ぇん… がみ…!)」



「 お… オレ… と …たたかえっ…! 」

『 まァだ起きてたんですねェ、少ゥ年クン。
… ま いィでしょ。… ネ?ネ?セィラフサン? 』


[ぎりぃっ]___鎖にナイフを刺し …固定する


『 あァなたこォんなコト …言ィってませんでした?? 』


____酸欠で視界の揺らぐ歌姫など尻目に
 軽い足取りで炎神へと道化師は脚を運ぶ


「…っぐ…!」
『 ト・モ・ダ・チ だァいじ。…なんて!
なァんて綺麗な言葉ですかねェェ… …それで 』


____っ…!


[きんっ]


『 ペチャクチャ綺麗事言ってればこの少年は救えましたか?? 』


_____炎神の真横に座り… ___ナイフを背中に向ける

104:◆.s:2021/10/22(金) 01:59

「 っ…!…ぅ…__! 」

( 精一杯に、もがく もがく…けど
鎖は固く …冷たい、現実を突き付けるように )


『 言ィっときまァすが。ワテシは正しい事ォしか
しちゃいないィんでェすよ!!ワテシは__


___っだ …だまれぇっ!  『あ?』

「 … ぉ、…オレぁまだ生きてんだぁっ
勝ったみてぇに… 言うんじゃねぇーっ!!!」




_____言葉を …炎神が遮る



『 … まァ、こォーゆー事ですねェ … あァなたは結局。
他人に頼らなァいとなァんにも出来やしないィンです 』


______…ぎりっ

(___…歌姫は強く、鎖を握る)



『 だァから教えてあァげますよ …

 こ☆の ジ ョ ー カ ー 。が 』



(__…地べたで歯を食い縛る炎神)

「 (っだ…駄目だっ…!チカラが入らねぇ…っ!) 」


『 "チカラない"…"にんげェん"の … 』


『 げェぇんじつ を _____ ねぇェッッ!!! 』






_____(セラフ 覚醒に続く)

105:◆RI:2021/10/22(金) 12:31

      Canticum, haec vox in aeternum
「─────『歌よ、この声をどこまでも』」

それは声であった

鎖に繋がれ、縛り上げられていたはずの喉を無理やりに開いたその声は、ただひとつ、なんの抑揚も感情もなく、その場に落ちる雫のように響き渡った

「─ァ?」
「…せ、ら…?」

その言葉に、その場にいた2人が反応を示す、ありえない、と、違う意味を持った同じ言葉を考えながら



『──始まる、destroy、終わりの音が鳴り響いた─』


ぶわりと、空気が揺れる

歌、それは歌だった、歌のはずだった


「っぐ!?」


轟音、爆音、歌と呼ぶには、歌姫の、あの美しい歌とよぶには、それはあまりに暴力的なそれは、振動とともに地面を揺らす

カランッと、その振動によって鎖を固定していたナイフがおち、ガクンと彼女の体が崩れ落ちる

──ことはなく、ゆらりと、彼女は傾いたからだをおこし、顔を上げる

『─邪魔をしないで』

目を見開いていた、目線は1点に、うたっていた、

『異常』

それこそが、現状の彼女にあう、唯一の言葉である

106:◆RI:2021/10/22(金) 12:31

『──like an Angel─細胞の奥から、叫ぶように歌う破滅を─!』


焦点が揺らぐ、その顔に感情はなく、その瞳に色はない
ステージ上の『歌姫』とはまるで違う、ただ歌うのみの機構

『─Evil,Evil─あなたも─Evil,Evil─本当はきっと願っているんでしょ』


自身の
身体強化
状態異常回復
欠損部修復
防御力強化
攻撃力強化
リジェネ付与

対象の
身体能力低下
状態異常付与
防御力低下
攻撃力低下



「っっ──!!セラフ!!!」

ぞっと、その言葉の羅列に、あまり覚えない恐怖を感じた

たしか、セラフ入っていたはずだ、異能を発動する時のデメリットを



【わたしのいのう、うたうえばうたうほど、せいしんりょくが、なくなる、ちゅうい】


いっていた、そうだ、セラフはいっていた!
あの歌に異能が含まれているのなら、彼女の精神力は今も削られ続けている
なのに


『でも、いや、いや、嘘つきまだ、まだ』



彼女は、歌い続ける、永遠に


ガンッと、鈍い音が鳴る、それは彼女が壁にアビリティブレードを突き刺した音である、


神の純潔、そう名付けられた彼女の武器、その本質は重力操作


『足りないや─ねぇ、痛みが』






『─滅びは快感』


それを突き刺した壁が、振動によってくだけ、

─浮く

そこでようやく、彼女の人形のような無表情に口角が上がった『笑み』が見える



一瞬の隙もなく、乱れもなく、無数の瓦礫が、道化に襲いかかる


「─あ、は」


暴走
セラフ・パライバトルマリン

正常調整────────────不可

107:◆RI:2021/10/28(木) 20:08

『パライバトルマリンの煌めき』




「セラフは本当に歌が上手だね」

いつだったか、──に言われた言葉だった

優しく頭を撫でながらそう告げられて、とても幸せだったことを覚えている

歌うことが好きだった、──が褒めてくれるから、いや、ほかのことだってもちろん褒めてくれるのだけれど、

でも、自分の好きな事を褒めてくれるのはほかの何を褒められることよりも嬉しかった







アイドルになれたのは、本当にただの幸運だった

街でたまたま、話しかけられて、そういう事務所のスカウトをうけた

そこでたまたま、私の歌が絶賛されて、たまたま流れにのっただけ




はじめてヴィランに遭遇したのは、少し私が人気になってきたときの、ライブだった

大勢の人、私のファン、みんながヴィランに襲われる、それは私も例外ではなく、その時の私は、まだ逃げるしかできない群衆のひとりだった

結果としては、死人が出る前に、駆けつけたヒーローによって、事件は集結した


私は何も出来なかった

みているだけ


誰も私を責めやしなかった

むしろ、この事件がトラウマになっていないかとすら心配され、精神的治療として休みをいいわたされた

あたりまえだ、相手はヴィランで、私はただの一般人なのだから

108:◆RI:2021/10/28(木) 20:08

正直に言うと、気に食わなかった

いやだって、だって、おかしいじゃないか

私のライブに乱入して、私のファンを傷つけて、あれは笑っていたのだ

ヒーローがくるまで、その状況を、今後許しておかなければならないだなんて、絶対に嫌だ



ならば、どうしたらいいかなんて、ひとつしかないのである





「っげほっ、げほ、」

初めは酷いものだった、私の異能は戦うのにはあまり向いていないから、対応できるようにするには歌い続けるしか無かったけど、そうすれば精神力を永遠と削られる

「…っ、…」
だから、はやく、なれないと

109:◆RI:2021/10/28(木) 20:09

「あの!私と!ヒーロー活動をしていただけませんか!」
「!」
ヒーローの真似事をし始めて、だいぶたったころの握手会で、それは起きた
いつも来てくれていた人が、私の手を撮った瞬間に、そう叫ぶように告げた言葉は、私にとっては驚愕の一言だった
一応、アイドルをしていたから、ヒーローの真似事のことは公表していなかったし、そもそも私を誘ってメリットがあるのか、なんて考えていたのだけれど

「っ…!」
「───、ふふ」


その後、オフの日に握手会で告げられた場所を覗いてみれば、私を見た途端にその人はひっくりかえっていたから久しぶりに笑ってしまった



灯莉と出会って、アビリティブレードを手に入れてからは、灯莉に教わりながらも、ヒーロー活動をするようになった
まぁさすがに大きく動くことになるから、アイドルと兼任する、と言った時には色々とあったのだけど、ファンたちもお世話になった人達も、最後には応援してくれた


「やはり、あなたの歌は素晴らしいですね、セラフさん」
「…、んふ、ともり、またほめる」
「あたりまえです、すごいものはすごいと言います、それは、ファンとしてもですが、ヒーローとしてだって、あなたの歌は本当に素晴らしい」
「………」

素晴らしい、らしい、私の歌は、あまりにまっすぐ言われるから、少し目を逸らしてしまった

歌は私にとって、生きる意味で、生きる手段

わたしの、そんざいいぎ

110:◆RI:2021/10/28(木) 20:09

「駄目だよ、セラフ」
「え」

ヒーロー活動を始めて、アイドルとしても有名になって
久しぶりに、──のところに行ってみれば、一言目にそう言われた

「…なに、が?」
「むちゃしてるでしょ?」

驚愕、なんで分かったんだろう、あかりにも、しずきにもばれてなかったのに

「聞いてるよ?ヒーロー活動してるんだってね、でも無理だけはだめ」
「…うん」

──の言葉に、素直に頷くしか無かった、頭が上がらないほどお世話になったから
しゅんとしているわたしをみて、──は少しして笑って、私の頭を撫でた

「セラフは頑張り屋さんだからね、でも大丈夫、セラフならできるから、むちゃしなくても、きっと大丈夫」

──ほんとかなぁ、できるかなぁ

「できるできる、僕が保証する、セラフはすごい子だもん」

──そうかなぁ、わたし、すごくないよ

「すごいよ、セラフは、だって今まで、ずっと頑張ってきたでしょ?それはすごい事なんだよ、なかなか真似出来ないことなんだから」


「だから、がんばって、でもむりはしないで」



「お兄ちゃんのかわりに、幸せになるんだよ、セラフ」




───うん、分かった

「まかせて、おにぃ」

111:◆RI:2021/10/28(木) 20:09


おにぃは、昔から体が弱かった
いつも病室のベッドから動けなくて、それでもいつも優しくて、いつだって、だれよりも強かった



「おうえん、してる、から、ね…せらふ」



それだけ告げて冷たくなったおにぃの手をずっと握っていた



「────うん、まかせて」






「セラフさん!あたらしい仲間ですよ!」

「セラフさん、…その、技の訓練に、お付き合いしていただきたいんですが」

「こーねこちゃん、今日も元気だなぁ」

「せらふ、今宵も良き歌であったぞ」


「セラフ!お前の歌やっぱすげえな!」

112:◆RI:2021/10/28(木) 20:10

─────────歌

それは私の存在意義、私という存在の全て



「『─いま、いま、いま、誰かの声が聞こえる─』」


歓声、喝采、それが私の証、私が生きているという証明


スピーカーから流れる音、熱い照明の光、暗闇に光るサイリウム、ファンの私を呼ぶ声、それら全てに私は目を向ける

生きている、私は生きている

身体中に認識させられる『生』という感覚

その感覚に体が、心が、声が興奮に震える



─あぁ、わたし、いま、いきてる




『おうえんしてるからね、セラフ』



どこまでもどこまでも、歌え


遠い場所にいるあなたに、届くように


「おまたせ、あんこーる!」

113:鷹嶺さん◆XA:2021/10/31(日) 11:03

『BITTER END』

 
 諸悪の根源ベテリゲイーゼとの最後の戦いから半年の時が過ぎ、世界は平穏を取り戻しつつあった。 





 今日は久しぶりの雲一つない快晴、こんな日はあの頃のように外でお弁当を食べたくなる。 
 お弁当箱におにぎりと卵焼きとジョーの好きなミートボールと他にも色々詰め込んで、新調したばかりのパーカーに袖を通し、冴月は玄関の扉を開けた。 

 外は少し風が冷たいけれど穏やかな日射しが心地良い。自然と足取りも軽くなる。 

 向かう場所はそう遠くない霊園。花と木がたくさんあって何より静か、冴月のお気に入りの場所だ、もちろんお気に入りの理由はそれだけではない。 

 30分ほど歩いて霊園に着いてみれば、緑の髪の少女が一人、陽だまりのベンチで寝息を立てている。どうやら彼女も考えることは同じらしい。 
 無防備に陽光を浴びる少女の頬、アイドルなだけあって綺麗な肌だと感心しながら指でつつく、いつかの仕返しだ。 

「ん〜……あ、さつき、おはよう〜」 

「おはよう、セラフちゃん。あなたも此処に来ていたのね」 

 横たえていた体を起こし、猫のように伸びをするセラフの隣に腰を下ろす、前から思っていたことだけどこういう仕草が本当に猫みたいだ。 

「うん、いいてんきだから。さつきは?」 

「お弁当を食べに、あなたも食べる?」 

 セラフはその問いに当然とばかりに首を縦に振る、冴月はミートボールを一つ箸で掴みセラフの口へ運んだ。 

「みためどおり、おいしい」 

 それから冴月とセラフはお弁当を食べながら、世間話に花を咲かせた。 
 横目でおにぎりを頬張るセラフを見ているともう会えないジョーのことを思い出してしまう、あぁ、あれからもう半年か。 
 こうして二人並んでお弁当を食べて、セラフが乱入して灯莉に呼び出されてスコーピオンに遅いぞと怒られて、『黒き神仙』と戦って……。 
 とても辛かったけど、それと同じくらい幸せだったあの日々はもう戻っては来ない。 

「ありがとう、セラフちゃん、ジョーのためにこんな素敵な場所を見つけてくれて」 

「じょーはせかいをすくったひーろー、これくらいとうぜん」 

 セラフは胸を張って言う、実際にあれこれしてくれたのは灯莉さんだけど、お金はほとんどセラフが出したと聞いている。 

「それに、ここならだれにもじゃまされずにひなたぼっこができる」

「そうだね」

 それだけ言って冴月は立ち上がり歩き出す、色とりどりの草花に囲まれた墓碑が立ち並ぶこの霊園は、彼には似つかわしくないくらい綺麗な場所だ。
 本当に似合わないなぁ、そんなことを思いながら、冴月は一つの墓碑の前で足を止める。


「ひどいよ、ジョー。こんな世界に私を置いていくなんて」

 冴月は墓碑の前に膝をつき、冷たい墓碑に手を当てて囁く。

「ずっと一緒だ、って言ってくれたのに」

 頬を涙が伝う。

 「私の幸せはあなたにしか守れないのに――!!」

 零れ落ちる滂沱の涙を止めることはもう誰にもできなかった。


冴月ルート完

114:◆cE:2021/11/01(月) 21:56

「箱庭の友愛」

ここは、どこ…わたしは、わたし…

「…ず、ゆず!…ゆずっ!」

そんな顔しないで、泣かないで、悲しまないで。わたしは雪梅じゃないから笑顔にすることも守ることもできないの。

「なか…ない、で……しゅ…めい」

「……っ!泣いて、ませんっ!あなたがっ、ゆずが勝手にどっか行ったりするから!怒ってるんです!」

うん。分かってるよ。ずっとずっとわたしのこと、ボクじゃない「ゆず」のこと待っていてくれてたんだもんね。

「あなた意識も不明な重体だったんですよ。また、あなたを今度こそ命がなくなるかもって……わたしの唯一の友だちをまた、なくしてしまう、かもって、」

ごめんね。そうだよね。わたしたちは小さい頃からずっとお互いを守ってきた…。わたしがわたしじゃなくなってるときだって。

「あり、が…と 」

「無理して喋らなくていいんです!今はゆっくりっ」

だめ、今じゃなきゃ駄目なんだ。ずっと待たせてきたんだから。

「 しゅう、めい…ボクとわたしと……もういちど、朋友に、なって……くれる? 」

「そんな、馬鹿げた質問もう一度したら今度はぶん殴りますからね、そんな、そんな言われなくたって当たりまえじゃない!」
「今も昔も変わらずわたしはあなたのゆずの朋友…ですよ」


もういちど、最初から

115:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:17



[____ Modifying ]



  ワタシハマモルタメニウミダサレタ

 ワタシハシメイヲマモル ワタシハセカイヲマモル



[____ Modifying ]



  チカラヲモチスギタオマエタチハイズレホロビル

 ダカラワタシハオマエタチヲハイジョスル ハイジョスル


   コノセカイニオマエタチハフヨウダ


[____ Modifying ]



  コノセカイカラキエロ キエロ! イレギュラー!


      キエロ ___"エンガミジョー"。


[____ Modifying ]

[____ Modifying ]

[____ Modifying ]

116:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:23


 ハイジョスル ハイジョスル ハイジョスル__


[____ Modifying ]


 ハイジョ__ セヨ ハイジョセヨ ハイジョセヨ

     ハイジョセヨ ハイジョセヨ ハイジョセヨ!




_______歌よ




[____ Modify... ]

[____ …error ]


 __ …ジリツハンノウプログラムニイジョウヲカクニン


 "フメイナオンセイ"。__イジョウノゲンインヲトクテイ



[____…error]

117:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:30


 __サイケイサン __イジョウノゲンインハ

   アノウタゴエ アノいれぎゅらーノモノ__カ


[____…error]


[____…error]


[____…error]





 __アリえナイ タカがニんゲンノコエガ




_____この声を … 


[Error[!]]


_____ニンゲンノ … コエガ



  …ワタシハマモルタメニウミダサレタ

 ワタシハマモルタメニウミダサレタ

  ___…ソウダ … ワタしハまモるタメニうミダされタ



[___[!][!] __feed error[!] ]


[ systems checks[!]error[!]
 Modifying [!]program[!] ]

118:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:36



____…マもる __タめに うみだサれた


[____… error[!]]
[___原因を解析中]







____… そうだ まもるためにうみだされた

___…まもるためにうみだされた




__… まもるために …うみだされた


_… マチ、 … シゼン、… ニン、ゲン … ヒトビト



____ワタしハしメいヲマモル ワタシハセカイヲマモる




_____「どこまで… ___も」





…うた __ごえを



 [___[!]feed error[!]] 


[___原因を解析中 ___一時停止]





… マもり ____た… かっ__た

119:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:44



__… いつまで ___いつまでくりかえす


[___…自立反応プログラム[!]__]



_…もういい __ヒトはくりカえす ヒトはマなバナイ…!



_…だが __ それで … それをくりかえして


… __まもれなかった



__________






… いまでもワスれたこトは …なイ



… __わたしは 


____ … セラフ …


____…あなたの … ___



______… … 街並みで __…笑うあなたの…



___… かぜのおとを ___… … あなたの こえを



… … あなたのうた … もういちど ____






___ … ききたい



 … ___わたしの …てに あわせて


___ … わたしの ___はくしゅ …に __わらって




… __ … …みんなと ____いっ …しょ ___に





[ __________[ 再起動 ] ]

120:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:50


[______[ 再構築… ]]


___… …あなたの手も …随分冷たくなった


___… … みんな …みんな … 


___… … … … だから … もう


___… … … … 眠りなさい … 目を閉じろ




___… … … … …あの声がまた …聞きたい





___… … … … … あのうたが …聴きたい




________[ 再構築完了 ___起動 ]




____……荒廃した世界を 人類を再生する


____……お前たちは … 力を持ちすぎたものは




         不要だ。

121:???◆.s セラフ:2021/11/02(火) 22:52

[____ Modifying ]


___修正プログラム 最終レベル



[____ Modifying ]


____全システム チェック終了



[____ Modifying… "START" ]




       戦闘モード …起動

122:◆Qc:2021/11/13(土) 00:06

『新月』[シンゲツ]
────一度『死んだ』月族が所属する。
────彼らは元よりも強大な戦闘力を身につけている······が、再び現世に舞い戻った時、自我を擁しているかも怪しい。
────今確認されている『新月』は······ソウゲツ族の3人か······葬、想、碧······ふむ。
────心苦しい者もいるかも知れないが、他の月族にも通達する。


彼らを見つけ次第、捕縛すること。その際抵抗があれば、もう一度殺しても構わない。


──────────────────


とある街に双月はいた。······で、その彼女の目の前には、どう見ても······想月がいる。
「「······で、想月。こんな事が『カグヤ』の会議で決定されたんだけど。どうするの?」」
「······それって、議長······つまり命月さんの独断ですよね?」
「「わたしにはそう聞こえた。だから捕縛はしないよ。······それより、他の二人は?」」
「わかりません。あそこから出てきた時······いつの間にか居なくなってました」
「「そっか。······困ったな······」」
ほとんど同じタイミングで眉を寄せる双月。相変わらず不思議だな、と想月はぼんやりと考えていた。
「「······とりあえず、わたしはしばらくこの街にいる予定だから······そうだね、ここにいるといいよ。ちょっと今厄介な依頼を受けてるんだけど」」
「依頼······?」
「「雑兵を蹴散らしたり強い敵と戦う依頼······だね。もしかしたら想月にも協力してもらうかもしれないよ」」
そこで想月は自分に備わった能力を思い返した。······祈れば災害が訪れる。確かに雑魚を蹴散らすには最適かもしれない。······だが、『魂の消耗』は未だ日常を苛んでいる。ましてや戦いなどどうだろうか?······その思考を知ってか知らずか、双月は四つの目で想月を見つめる。
「「······なるべく早めに他の二人も見つける。それまで······待ってて」」
二人同時に微笑むといっそ不気味に見えた。······が、意思は伝わった。

······どれほどかかるのか想像もつかない······が、それまで。精一杯生きていこうと想月は誓うのだった。

123:◆RI:2021/11/17(水) 23:21

『いい子の秘訣』



「夢は本当にいい子だなぁ」

そう言って頭を撫でられる、その暖かい手が好きだった

「夢はいい子ね、じゃぁ今日は夢の好きな物作っちゃおうかしら」

そういって髪を梳かれる、その優しい手つきが好きだった




まま!ゆめおさらあらった!

「あら、ありがとうゆめ」

ぱぱ!ゆめテストで100点とったよ!

「お、ほんとうかい?さすが私の娘だ」





ママ、この間のコンクール、金賞だったの

「あら、そうなのねぇ」

パパ、この間の大会、優勝したんだよ

「そうかい、それで夢、今度の集まりなんだが…」




─褒められたかった、ただそれだけ

小さい頃、パパとママに褒められて、認めて貰えたことが嬉しかった


もっと頑張れば、もっと褒めてもらえるんだって思って、色んなことに目を向けた


でも、こんなのじゃだめ


パパとママ、…いや、春夏秋冬の家の人は、みんなすごい人ばっかりだった

オリンピック選手に世界的に有名なデザイナー、ハリウッドにも出る女優俳優や、政治家、社長

パパとママも、その1人

でも、私は違う

知ってる、私には、そんな才能はないって、それでも、頑張れば、努力すれば、きっと

死にものぐるいで取り組んで、死にものぐるいで努力して

そうすれば


「───え?」
「だからね?夢、私たち海外出張に行くことになったから、1人でおうちを任せたいの」

なに?それ

「本当は夢にもきて欲しいんだけど、お仕事が忙しくてね…あっちでも家に帰れそうにないの、それに海外で1人にさせるよりかは、日本にいてもらう方がまだ安全でしょう?ほら、生活だってこっちの方が慣れているし」

「一人暮らしってことになるな、安心しなさい、もちろん仕送りはするよ、たくさんね、好きなものを買うといい」

まって、まって、だってわたし、まだ

「ゆめはしっかりした子だから、きっと大丈夫よね、お料理だってお洗濯だってできるし、私の手伝いをしてくれるから、ゴミ出しなんかも分かるでしょう?」

「夢なら安心だよ、なんたって私たちの娘だからな」





「…うん、わかった、ゆめできるよ」


そう、いい子、私は2人の子供だから、できるよ


1人でご飯食べるのも寂しくないよ

1人で帰るのも寂しくないよ

1人でいるのも寂しくないよ




だから、かえってきたら、いっぱい────

124:◆RI:2021/11/18(木) 23:09

『運命になった日』

「っは゛、ぁ…っ」

口から血が溢れるのを無視して、迫る攻撃をギリギリのところでよける

「っ、げほっ」

だがそれのお陰でさらに体が重くなる、まずい、まずい

雛も凛も、俺と同様自分のところに必死で他を助ける余裕はない

夢は結界のなかに閉じ込めておいたから、外から干渉されることがないのが唯一の救いか、戦闘に集中できるのはたすかる、けど

「(っこれ…絶体絶命じゃないですかね…!)」

怪我は重症、これ以上動き回れば致命傷にだってなりうる
そもそも出血の量が不安だ、致死量に到達していないことを願うしかない

敵の数は減るどころか増援によって増える一方、もう詰みだろうとしか言えない状況に、もはや笑みさえこぼれてくる

「っにぃ!/兄様っ!」
「!」

一瞬にも満たないであろう、思考の停止
その隙を、戦場が見逃すはずがなく、目の前には既に妖魔の首魁が立っていた

「(かいひ、ふか、うけながし?むり)」

絶対的な死の感覚、脳を埋め尽くす言葉、それでも、この攻撃を免れる策は浮かんでこない

必死に体を動かそうとする俺を嘲笑うかのように、そいつは俺に向かい、刃をむける





あ、し ぬ






「っ……!!」


次の瞬間、俺を襲ったのは、敵が繰り出した一陣ではなく、暖かい、水のような


「っは」


霞んだ視界をみひらく


ももいろのかみ

くろいふく


・・・・・・・・・・・
わきばらをつらぬくそれ

あか

あか

あか


「っゆめっっっ!!!!」

うしろから、ひめいのような、こえがきこえた

それが、いもうとのどちらのほうなのか、はたまたりょうほうのこえだったのかは、わからない




ずるりと、わきばらから、てきのぶきが、ひきぬかれる

あふれるあか、あか、あか


「…ぁ……ゅ……、ゆ、……め…」

りかいできない、したくない、どうして、どうして


「……す、ぃ……れ…さ…」
「っ!!」

かぼそいこえが、あのこのこえが




「……ょ、か…、た」

べしゃりと、その言の葉を吐いた瞬間、彼女の体は、自分が作り出した血溜まりへと落ちた
なおも広がる赤色は、どうみたって、もう



ぎぎぎぎぎ、と、音が鳴る
今にも事切れてしまいそうな彼女に、トドメをさそうとする、悪意


ぶちんと、奥底の、なにかが切れる音がした

125:◆RI:2021/11/18(木) 23:09

「……、」

目が覚めると、知らない天井だった


なんて、よくありがちな導入を使うことになるとは思わなかった、なんてことを考えながら、薬品の匂いと白いカーテンから、ここが病院か、それに近いどこかなのだと理解する

なにがあったんだっけ、目覚めたばかりのぼやけたあたまは、それ以上の思考をうまくまわしてくれない


どうにか思い出そうとして考えていたら、ガラリと音がしたような気がした

「おはようゆめ〜、今日は天気がいいから、カーテン、を…」

ベッドの周りに掛けられているカーテンを開けて話しかけてきたのは、わたしのともだちだった
そちらを見やる私を見て言葉をとぎらせ目をみひらくひなたんは、色んなところに包帯を巻いていて腕なんかは折れているのか、首から支え布で吊り下げられていた

「……」
名前を呼ぼうと、口を開くも、そこから出たのはかすれた空気だけで、その時ようやく自分が人工呼吸器をつけていることに気がついた

「ゆ、──っ!ゆめ!起きたのか!?意識は!!どこか変なところはっ!?」

そんな私をみて我に返ったように駆け寄り、まくし立てるように声をかける
声が出ないからがんばって首を振って応答すれば、ほっとしたように肩を下ろすのが見えた

「っ、…あと少しで、死ぬかもしれない所だったんだ、駆けつけてくれた甘音さんが、治療できる子を手配してくれたからどうにかなったけど…ほんとに、しんでたかも、しれないんだぞ…」

どんどん語尾が小さくなっていく言葉を紡ぐ彼女と、死にかけていた、というそれでようやく、自分がなにをしたのか、何があったのかを思い出した



睡蓮さんが、危なくて、気づいたら、結界から抜け出して

そう思って、自分のお腹の方を見る、服は患者服らしいものになっていて、傷は見えない

「…傷は、残らないよ、治療してくれた子が頑張ってくれた、でもほんとに致命傷くらいの傷だったから、当分は絶対安静だぞ」

私が考えたことに気づいたのか、ひなたんは安心させるように頭を撫でてくれる、暖かいその手に、さっきまで寝ていたのに、瞼が落ちそうになる

「…いいよ、ゆめ、寝よう、大丈夫、また明日も来るよ、凛にも甘音さんにも声掛けておく」

あれ、?、すいれんさんは─?









「───ごめんな、夢、今のにぃを、夢に合わせるわけにはいかないんだ」

沈んでいく意識の中、その言葉が響いた

126:◆RI:2021/11/18(木) 23:10

それから、毎日色んな人が私の病室にきてくれた
ひなたんはもちろん、りんたんも、甘音さんも、私を治療してくれたらしいしおりちゃんも、

でも、睡蓮さんだけは、いつまで経っても、私の前に現れなかった



かたん、と、なにかおとがきこえた

その音に目を覚ませば、まだ夜中なのか、部屋はくらい、音の主を探そうと目線を動かす


「…ぁ、…」

そうしてみつけたのは、私の手を握りしめて、顔を伏せている彼の姿

「…………」

すいれんさん、と声を出そうとするが、寝起きだからか上手く出てこない
久しぶりに会えた彼は、暗闇のおかげで顔が見えない

「………なんで」

この無言をどうにか出来ないものかと思考していると、声が聞こえた

「…なんで、おれをかばったんですか」
「──」

その声は、今まで聞いたことがない声色だった、初めてであった時ですら、こんな声は聞かなかった

「……たのむから、もう、おれのまえで、けが、しないでください」

ぐ、と彼の震える感覚が手を伝ってわかる
ようやく暗闇に目が慣れてきて、彼の顔が見える

「い、やなん、ですよ、もう、あたまが、ぐちゃぐちゃ…に、なって」

声が、体が、震えている


「…あなた、が、うごかなくて、かたをゆらしても、よびかけて、も、…うごか、なくて、しぬかも、しれないって、そう、そうおもうと、…っなんだか、ずっと、じぶんじゃなくなるみたいで…!」

「……」

怯えているんだろうと、思った
こんなにも、こんなにも取り乱す彼は見たことがない、こんなにも弱々しい彼は、見たことがなかった

─そして、わかった

「…すぃ、れ…さ」

「っ」

ひゅ、と息を飲む音、びくりと揺れる肩が見える

「………こわ、ぃ、ん…で、すか」

「──は」



「…わた、し、が、しぬ、の、…こわい、ん…で、すか…?」

127:◆RI:2021/11/18(木) 23:10

声は聞こえない、でも、影の合間から見える瞳が、見開かれるのが見える

「…わた、し、が、……ゆめ、が…こわいん、です、ね」

握りしめられている手が強くなる

「…ゆめ、いきて、ます、よ、すいれん、さん」
「……ゆ、め」

漏れ出たような声が聞こえる

「…しんぱ、させ、て…ごめ、な、さ……でも、…だいじょ、ぶ、…だいじょうぶ、です」

固く握りしめられている手を、力が入らないながらも、それでもと必死に力を入れて、握り返す

「あなたの、ため、なら、…ゆめは、ずっと、ずっと、そばにいます…ずっと、ずっといきつづけ、ます」


「だから、あんしんして、ほしい、な

───すーたん」

ぽたぽたと、てがぬれるかんかくがする


はじめてみたなぁ、なんておもいながら、腕を動かして、あめがふるその顔に、手を伸ばした

128:◆cE:2021/11/18(木) 23:57


「……っ!」
 そのまま顔のわきすれすれに刀を突き立てる。やっと見つけた、わたしの憎い人。すべての元凶。何十年もころそうと考えてきた。でも、できなかった。だって、だって、彼は憎いけど、でも……もうあの計画を企てた人じゃない。その子孫になる。

「あなたには、罪はないものね…でもゆるせないの、ごめんなさいね」

 なにも知らずに箱庭で育てられたかわいい男の子。震えてなにも言えない彼の脇に刺さった刀を抜き、その場を去ろうとしたらそっと震える手で裾を引っ張られた。

「……先代が、あなたになにを、やったかしりません…!で、ですが、僕にできることなら、なんでもやります!ので、許してとはいいません、ですが、」

 先代とは違って根はいい子だとは、聞いていた。かわいいそうなこ、でも、でも、そんな同情なんかはいらない。父さんもわたしも、お父さんもお母さんも、弟だって、たかがこんなもんで浮かばれるはずがない。

「いらない、今日のことは忘れて平和にくらして。それだけでかまわない」

 そのままその場を後にし、月が照らす夜道を歩く。小さい頃から今までずっと生きる糧でどんな辛い訓練も乗り越えられたのは復讐をずっと考えてたから。

「これで、よかった…ん、だよね、ねぇ、」

 その声に答えてくれる家族はもう誰もいない。神様を嫌った日以来に流した涙は色々な感情が混ざっていた。やっぱりわたしは運ってものにも、神様ってものにもどうにも嫌われてるらしい。

「どうしたら、よかったんだろうねぇ……あーあ」

 その声は誰にも聞こえず夜の街に消えていった。

129:◆Qc:2021/11/23(火) 23:30

『新月』




月族にとって、死は終わりではない。······むしろ、新たな始まりとなる場合の方が多い。······十五月族の中でも人数は最大であるソウゲツ族、その長たる双月はそのように考えている。
人数が多いこと、それ即ち新月となる者も多いということである。双月が確認できている中でも、既に5人······その中には、五位だった壮月も含まれている。
······新月になった者は、強大な戦闘力を手に入れる代わりに自我を失う、という。だが、双月はそれも信じていない。想月と話してわかった────元通りの彼女だ。
何処から自我を失う云々の話が出たのかはわからないが、この際それは関係ない。
重要なのは、十五月族のトップがそれを信じており、······捕縛、拘禁を命じたということだ。
あぁ、嘆かわしくは当代の『月の巫女』がまだ見つかっていないことだ。あと1年早ければ────


いや、やるしかない。見つけ出して護るしかない。他の月族でも、新月となった者は誰でも。
トップと敵対したら双月でも瞬殺されるのは請け合いである。······しかし『天人』の協力は見込めない、『兎』も気まぐれな彼らが力を貸してくれるかはわからない。
······ただ、他に······協力してくれそうな者は······?




【Prologue─1】

130:鷹嶺さん◆XA:2021/11/27(土) 22:45

冴月の過去part1



 ある休日の昼下がり、鐡 冴月は翌日に迫った彼氏との初めてのデートに胸を踊らせていた。どこに行こう、何を食べよう、何を話そう、もしかしてキスとかされちゃたりして、そんなことばかり考えて勉強にも手がつかない。
 ついさっきも妹にたかがデートぐらいで浮かれすぎだと言われたばかりだ、彼氏すら居ない美月に何が分かると言いたいが、浮かれているのは冴月自身も自覚していた。
 ふと窓から空を見上げると、清々しいほどに青い空。

「気分転換か」

 そう思い立つと、冴月はカーディガンに袖を通し、ポケットに財布とスマホを突っ込むと階段を降りて暖かい日射しに吸い寄せられるように玄関扉を開けて外へ出た。
 ただの気分転換、何かをするわけではない、日向ぼっこをしている野良猫に出会えればラッキー程度の外出、行くあてもなく冴月は歩き出した。


 「こんな所まで来ちゃった」

 歩き始めて十分ほど、冴月はスーパーマーケットの前に辿り着いた、普段なら自転車で行く距離だ。
 ここまで来たのだから何か飲み物でも買って帰ろうか、そう思った時だった。
 突然の身体を押されるような感覚に思わずよろけてしまう、そして何かが身体の中に浸透していく気味の悪い感覚、なんだこれは?
 見れば周りの人達も一様に首をかしげていた、どうやら冴月に限ったことではないようだった。

 「空が、空が紅いっ!!」

 その感覚の正体を考察する間もなく何処からか誰かの声が響いた、冴月も周りの人達も先程の異常を忘れて空を見上げた、空が紅い。
 夕焼けにはまだ早すぎる、それになんだか気分が悪い、イライラしているような感じだ。
 さっきの気味の悪い感覚はこれのせい? でも紅い空とどんな因果関係が……

「ぐわぁぁぁぁ!!!」

 それは何の前触れもなく起こった、冴月の前方で空を見上げていた男が叫び声を上げた、男は振り返り冴月に異形に変化した右腕を振りかざした。
 冴月は呆然と見ていることしか出来なかった、男の異形の右腕によって冴月の身体は地面に叩き付けられた、理解不能、なんだこれは? わからない。

 「シネェェェ!」

 男の右腕が冴月の首を絞める、苦しい、やめて、どうして私がこんな目に会わなきゃいけないんだ!
 冴月の中にあった恐怖と混乱は理不尽への怒りへと変わりそれは憎悪へと変わった。

 「……死ぬのはお前の方だろ」

 身体の奥底から沸き上がる何か、それは凪いだ水面に落ちた小石が波紋を生むように、冴月の身体の隅々にまで駆け抜けた。
 全身が作り替えられていく、男は目を見開いていた、そう異形に変わったのは彼だけではなかったのだ。
 男が手を離そうとした刹那、冴月の身体から飛び出した金属質の棘は男の腕を貫いた。
 
 「――■■■■■■!!!!」

 声にならない悲鳴、男は地面にのたうつ。
 冴月は男のことなど最早どうでもいいと、重たい身体で立ち上がり歩き出した。

「――帰らなきゃ、美月が危ない」

131:◆Qc:2021/11/27(土) 23:52

『唯一の失敗』




震える手に、乾いた音が響いた。······決定打にしてはあまりにも味気ない音だった。
しかし、彼は喜べない。
水滴に塗れたスコープを覗けば、まるで触手のような手足を持つヴィランと、黒髪の女性が折り重なって倒れる様子が見えた。


「······························あぁ」

────杭のような雨が降っている。
痛い。酷く痛い。全身が痛い。心も身体も精神も自尊心も、何もかもが抉られてゆく。
それ程······敵ごと恋人を撃ち殺したという事実は、彼の全てを奈落へと叩き落とした。
土砂降りだった。空を見上げれば、一片の青空の気配すら感じられない、極限の灰色だった。黒でないだけまだマシだった。もし空まで黒かったら、彼は二度と上を向くことはできなかったであろう。

「■■■■■······」

一歩、二歩と踏み出す。······その時何を呟いたかは忘れてしまった。······忘れるくらいである。どうせ大した事ではあるまい。
無人のビルの屋上から飛び降りた。無傷で着地する。······そして、程なく現場にたどり着いた。
吐き気を催す程の血の泥濘、確かに恋人は死んでいた。
遠すぎた。最後の言葉すら聞けなかった。どんな表情をしていたのかもわからなかった。······ただ、一つ確かなことは、

「······おい、■■······」

普段の気障ったい振りをかなぐり捨てて、その顔に言葉を降らせる。
それほど······

「······なんで、そんな顔してるんだよ」

······死体となった彼女は、心底安心したような表情を浮かべていた。





あれから10年余りの年月が過ぎた。
その間、弟子を取ったことと、ヴィランと戦う『ヒーロー』の存在を知り、その集まりにしれっと交ざった事以外、彼はずっと孤独だった。······いや、孤独を望んでいるようにも思えた。
また修行を重ねるにつれ、彼の狙撃能力も向上した────それこそ10年前の状況を余裕で回避できる程まで。
······しかし。
それで、時を巻き戻せる筈がないのだ────




「······ようヒーロー。いや、王子様と言った方が良いか?まあいいか。······なぁ、大切な人との時間は宝だぞ。何があっても守り通せ」

10年後の自分に全てを託す。
誰かを護る誰かに、一人でも多く届ける為に。
弱すぎた自分と、もう向き合わないように────

132:◆RI:2021/11/28(日) 23:08

『化け物と呼ばれた紛い物』

『お前は霜星、神代霜星、これから、そう名乗りなさい』

俺には、はじめ、名前が無かった

父には捨てられ母は死に、天涯孤独となっていた俺を見兼ねたように、父の姉……俺から見れば叔母となるあの人が、俺に名前を与えた

幾星霜の時を越え、生まれ落ちた神の依代

それが俺の名前の意味らしい、難しいことはよく分からないので、他にもなにか言われていたような気もするが、正直なところ覚えていない

結局のところ、どれだけ叔母が俺に目をかけてくれようと、結局は俺は一人孤独なわけで、神だの、妖だのといわれても、周りから見れば化け物には違いがなかった
まぁ間違ってはいないのだろう、確かに俺には、人の血など一滴たりとも交じってはいないのだ
それなのに、この見た目だけは妙に人間らしく、そしてその赤髪が、周りの人間には奇妙に思えたらしく、どこまでも中途半端な俺はどこまでいってもこどくなままだった

133:◆RI:2021/11/28(日) 23:08

まぁ、そんなことは1ミリたりとも気にしたことがないのだが


呑気に飯を食いながら適当に過去を振り返る
正直散々な目にあったとは思う
村八分なぞ当たり前だし、汚れ仕事はこちらのほうへ、顔がいいからと慰め者にされたこともあった気がする、流石にその時はぶん殴ったが
今食べている飯だって、燃費が悪くて仕方がないというのに、「死なないから」という理由で何日も削られたことさえある、いや、削られたというかそもそもないにひとしかった

年月が流れて村が亡び、また次の村に行けば、前の村と同じようなことをする、なんとも愚かなものだと思ったが、まぁいつか死ぬという結末が決まっている奴らだと思えば、むしろ哀れみさえ覚え、抵抗も、文句の一つもつかなかった


まぁ、それから何とか生き延びてやったわけだ
俺を捨てた父には、どうだと胸を張ってやりたいし、俺を残して死んだ母には、立派だろうと自慢したい
正直、どちらの顔ももう覚えていないから、そんなことは叶わないのだけれど

134:◆RI:2021/11/28(日) 23:08

ある日のこと、おれはとある村から外れた場所で、座り込んでいた老婦人を助けた
なんでも怪我をしたらしく、背負って彼女の家へと向かえば、心配した様子で家の外をうろついていた老人…彼女の夫がこちらを見て駆け寄ってきた

老婦人を下ろしその場を去ろうとすれば、その老夫婦はなにかお礼がしたいと、そちらも貧しいくらしであろうに、俺を家へと招き入れた

初めて、ただの人からの優しさに触れた
奇妙だろう赤髪もきにすることなく、老夫婦は俺に対して感謝のみの感情を抱いていて、それがあまりにも心地よくて、



つい、そこに何日も長居をしてしまった

135:◆RI:2021/11/28(日) 23:09

目を疑った

そこに生はひとつたりとも存在しなかった

かわりにそこにあったのは、変わり果てたふたつの肉塊と、血溜まり





当たり前、だった

なぜこの夫婦はこんなに遠く、村に外れた場所にいたのか、俺がいちばんわかるはずだった

村から、除け者にされていたのだ、優しいが故に、老いているが故に

それに加えて、俺という化け物が入り浸っているという事実を、村のものたちはどう見ただろう







"きっとやつらは除け者にした俺たちにあの化け物を仕向けるつもりだ"

"殺される、殺される"

"そんなのはいやだ、どうすれば、どうすれば"



"………そうだ"



"殺される前に、殺してしまおう"

136:◆RI:2021/11/28(日) 23:09

「ひ、ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「たすけて、たすけてぇ!」
「ころさないで!おねがい!!ころさないでぇ!!」

うるさい、雑音が多くて、みみがいたい
うごきまわって斬りづらい、四肢をまず落とそう、その方が楽だ
こどもは……いいだろう、この村の悪意は大人たちだけだ
血がついた、汚い、醜い、あぁ、やっぱり

嫌な色だ

血の雨が降る
血の海に浸る
あれだけ白かった服が、真っ赤に染ってしまった
……もったいない、せっかく老夫婦が洗ってくれたのに



ようやく、うるさい音がやんだ
………そうだ、忘れていた、帰らなければ

137:◆RI:2021/11/28(日) 23:09

山を登り、2人が眠っている家へとはいる
眠る2人を、零さないように外へ運び、優しく土で埋めてやる

すまなかった

俺が山などに行かなければ

俺がこの家に来なければ

きっと2人で、細々と、けれど幸せに───


そこまで思って、思考を辞めた、
もう戻らないことを思ったって、意味が無いのだ
2人の墓に手を合わせる、人間の真似事だが、きっと意味はあるのだろう




それからずっと、孤独に生きた

悪を斬り、善を救う、それだけの為に生きてきた

そのためだけに俺は生き、そのためだけに、俺は死ぬのだろう

何度血を被ったかわからない
俺の髪は、人を着る度に赤く染ってゆく

神になどなれない、妖になどなれない、
ましてや、人間になど、絶対に─

138:◆RI:2021/11/28(日) 23:09

幾星霜の時が流れた
時代は変わり、建物などは神秘を失った鉄の塊とかしてゆく

紛い物とはいえ、神性を少なからず持つ俺としては、なんとも生きづらい世の中へと変わっていった

まぁ死ぬことは無いのだけれど、それでも神秘が足りないのを飯で補っていたというのに、食料は底を尽き、補う物が取れない現代ではこれはかなり厄介な事柄だった

ふらりと揺れるからだをどうにか引きずりながら、少しでも神秘がある場所へと歩を進め、ふと、視界に鳥居が目に入った
長い階段にはどうにも苦戦したが、ようやく境内に踏み入れたところで─俺の体は力尽きたように地面に倒れた


ここに居る神には申し訳ないが、もう動けない、仕方がない、このまま少し神秘を受けて、動けるようになったら────








「…………………人が、倒れてる」

139:鷹嶺さん◆XA:2021/12/03(金) 23:36

冴月の過去part2

 紅い空の下、冴月は走った。
 幸運なことに一歩進むごとに重い身体にも慣れてきた、どんなに人間離れしていても自分の身体であることに変わりはない、ということだろうか。
 どうしてこんなことに、いくら考えても何も分からない、だから今は前に進むことだけを考えよう、冴月は地面を蹴った。

 街が燃えている。

 人が死んでいる。

 怪物が暴れている。

 この街に平和と呼べるものはどこにもなかった。
 それでも、自分の家族は、家族だけは助かるかも知れない。そんな淡い期待はいとも容易く打ち砕かれた。
 
「――美月、あなたもなの?」

 紅い空を見上げ立ち尽くす妹の姿。

「お姉ちゃん、助けて……」

 けれど、その姿はもはや人では無く。

「なんでこんな姿になっちゃったの……助けてよお姉ちゃん」

 背中から樹木を生やし、全身を蔦で覆われた異形であった。

「…………」

 冴月は言葉を失った、脳が凍り付いたみたいだ、こんな姿になってしまった妹に掛ける言葉など思い付くはずもなく、ただただ美月を見つめることしか出来ない。
 こんなときお父さんとお母さんなら何て声をかけるだろう、とそんなことを思った。そして冴月は気付く、両親は何処へ行った?
 最悪の事態を想像し、妹に問い掛ける。

「ねぇ美月、お父さんとお母さんは?」
 
「死んだよ」

 あぁ、想定していた返答だ、自分の家族だけは無事なんてそんな都合の良いことあるはずないか。

「そう、あなたが殺したの?」

「違うっ! わたしじゃない! わたしじゃない! わたしじゃない!」
 
 美月は狂ったように叫んだ、いや美月は狂っていた、止まらない絶叫、それに呼応するように背中に生えた樹木は枝を伸ばし、鋭く尖った槍となって吹き抜ける風のような速度で襲いかかる。人間の身体など容易く貫くだろう。
 しかし、それは相手が生身の人間ならばの話だ、身体の金属化という異能を得た冴月には掠り傷すら与えられない。

「くっ、美月やめて……」

 冴月の声は異形と化した美月には届いていない、こうなってしまえば実の姉だろうと関係ないのか。

「どうして止めてくれなかったの! お姉ちゃん! どうして!」

「お姉ちゃんのせいだ、お父さんとお母さんが死んだのは、お姉ちゃんが家に居なかったから、全部お姉ちゃんが悪いんだ」

 美月は叫ぶ、大粒の涙が頬を伝い地面を濡らす。
 冴月の元へ無数の蔦が殺到する。

「私に押し付けないでよ」

 冴月は静かに激昂していた、四肢を刃に変化させ美月の繰り出す蔦を切り裂いていく。

 もはや、美月に冴月を止める手段はなかった。
 そして怒りに身を任せ二人は激突した、金属の刃と樹木の槍が火花を散らす。

 美月の繰り出す樹木の槍は冴月の身体を貫けない、蔦の縛鎖は容易く切り裂かれる。
 けれど、冴月もまた美月を貫けない。
 冴月と美月、姉妹同士の剣戟は日が傾くまで続いた。
 しかし、その均衡は突然崩れ去った、美月の胸から鮮血が迸る、冴月は目の前にいるのが妹ということさえ理解していなかった、この時冴月はまさしく怪物であった。
 血に染まった右腕を引き抜く、美月は力無く頽れた。その姿に冴月はようやく我に帰る、けれど全てが遅かった。

「美月?」

「ごめんね、お姉ちゃん……許してくれる?」

「謝るのは私の方だよ、美月は何も悪くないんだから」

「……よかった」

 美月は微笑んでゆっくりと目を閉じた。
 
「おやすみ、美月、ごめんねダメなお姉ちゃんであなたのこと助けられなくて」

 動かなくなった美月の身体を抱き締めて、語りかける。
 

 そして、冴月は誓った、こんな私にもし次があるなら、その時は絶対に大切な人を守り抜くと。

140:◆Qc hoge:2021/12/06(月) 21:55

ふしぎなせかい
すべてがひっくりかえり
すべてがもとどおりに
とうめいだったりにじいろだったり
あるいはきんいろだったり
なんにもみえなかったり
それでも
おかしくはない
そんなせかい
ふしぎなせかい


「──楽、決着をつけに来た」

「······へえ。また来たのか······今度こそ折れるかと思っていたのに」

「······折れない身体にしたのはそっち。今度の私は、これまでの私じゃない」

「それ······ライバルとしてまた負ける奴のセリフだぞ、お前──でも」

神はいった
なにかにきづいた

「でも、その脇差は······駄目だなぁ?」

女性におそいかかる壁
ふしぎないろをした壁
でも、それは
女性からとびでた弾によって
ひっくりかえり、もどってゆく
神はめをみひらいた
たのしそうだった


女性は脇差をぬく
下からのかべをとびこえて
女性はあの銃もマジックハンドももっていなかった
もはやひつようなかった

「これだから面白い······あぁ本当に!」

神はわらう

「人間の可能性は······やはり面白い!!」

あおい剣がうかぶ
それにたいするはしろい脇差
げきとつした

脇差がかった
一瞬あと
脇差は神のどうたいを両断した
──そう、神殺し。




麗花が脇差に付着した不思議な色の血液を払うと、途端にその空間が消えていくのを感じる。
······それと同時に、彼女の身体もゆっくりと消えていく。

「······やりやがったな」
······両断したはずの楽が、いつの間にか現れていた。
「······これでいいんだろ?」
彼は挑発的な笑みを浮かべていた。まるで麗花を誘うように。······その笑みで逆上した者は数知れない。
しかし、麗花はそれでいい。これでいいのだ。


彼女は何も言わずに消えていく。······後には真っ白な脇差が遺されていた。

「······っはー······面倒だな。まったく」
もはや残滓となった麗花に、楽は触れる。そして、神たる所以の力を行使し──
地獄に落とした。

脇差は月に投げられた。




 

141:◆Qc hoge:2021/12/06(月) 21:57

『神は死なない。』
『ただ、赦し、認めるのみである。』

142:◆Qc:2021/12/20(月) 01:50

『聖王』と『月の巫女』








今からおよそ16年前。




18代目『聖王』ベルハルト・ハーツクライン······彼は無窮の空間の中にいた。······音もなく、空気もなく、場所によっては重力もない空間······そう、宇宙である。
だが彼は生きていた。······いや、むしろ健在だった。

「驚きましたね」

その摩訶不思議な人間に相対するのは、こちらも人間に見える女性であった。彼女は『月の巫女』······月の住人達をまとめあげる存在である。

「まさか単身月に乗り込んで来るとは······本当に人間は······いや、『教会』とは不思議なものです」
「······」
「蒼月、想月、葬月······時空を歪ませ、あの子たちを葬ったのも貴方達でしょう。流石の私でも怒りますよ」
「············」

二人は静寂の原野で、互いに得物を持ちながら相対している。······月。それがこのフィールドの名称である。
ベルハルトの後ろには何も無い。······対する月の巫女の後ろには、遠く遠く、うっすらと人らしき影が見える。それだけで分かるだろう。方や庇護、方や侵略。······もしくは、献身と使命。
まるで対照的であった。

「さて、流石に予想外でしたが······貴方は我々の敵です。ここで死んで貰いましょう」
「······それは此方の台詞だ。······お前達は我が名に誓って駆逐する。悪魔に滅ぼされる筋合いなど······皆無だ」




戦いは数日の間続いた。空気が無いのにも関わらず、互いに人の域を超越した攻撃を繰り出し、相手にかすり傷程度のダメージを与える。それだけ、双方共に手練ということである。
そして決着がついた。
相討ちだった。

最後には多大なエネルギーが戦場から溢れ出し──その光は地球でも観測された。
指揮者を失った月の組織はしばらく混乱することとなる。······だが、『教会』も聖王を失ったことで月と同じように弱体化した。

あれから年月が過ぎた。月は未だに次代の巫女を見出していない。······さあ、内乱など起こしている場合ではない。
更なる災厄が迫っている。

143:◆.s hoge:2021/12/23(木) 16:23



 : 裏手より火の手が …殿!


 「 敵は最早目と鼻の先に! 」

(__戦況は、もとより総崩れ 本陣へ差し迫る
 井守門左衛門の長槍を眼にすると 欣之は遂に
 床几より腰を上げた…が)

 

 「: 今更、逃れられん …手遅れよ 」



 けたたましい蹄の音はごうごうと本陣との距離を狭め
 今にも幔幕が破られ、我が身に槍が突き入れられんと
 している中で 不思議と欣之の心は落ち着いていた

 
 

144:◆.s:2021/12/24(金) 03:34



 怒号が迫ってくる、残された時は少なく
 しかし 策を打てる余力など無かった
 …命はあるまい、余裕とも取れる落ち着きは
 欣之にとっては静観から来るものだったが
 立ち上がり しかし無様に慌てず敵の方角を
 見据える欣之の姿を、家臣たちは一歩を退かず
 守る覚悟に追いやった。___誰もが、死ぬ覚悟だ


( …欣之は今、昔の記憶に思いを馳せていた

世の広さに憧れ 村を飛び出したあの日
定盛に拾われ 死に物狂いで上を目指した城の日々
戦場以上に打ちひしがれては 何度も拳を叩いた
…それでも諦められずに労を重ねた苦難の馬回り集…)


( __不意に 巳冶姫の顔が眼に浮かんだ
  最後まで、戦場へと向かう自分を引き留め
  あまつさえ定盛に懇願さえしてみせた巳冶姫を
  …ただ、残して死ぬことになる …だというのに
  おれは 巳冶姫の愛に応えてやる事も出来なかった )


( …そこまで思うと、今更巳冶姫へ詫びたいと
切に願う気持ちが心に現れた …自分は 今日、死ぬのだ
そう理解している筈だったが …自分の気持に嘘は出来ぬ)


_______思考を遮るように轟音が響く



 破れた幔幕を越え …足軽の一隊が姿を現す
 …僅かに遅れ、欣之の前に躍り出ると
 馬を降りた一騎の武者は名乗りを上げた


「:鹿沢家家臣、井守門左衛門!
 欣之義虎殿!お覚悟召されよ! 」



_____鬼の井守が欣之を見据えていた

145:◆cE hoge:2021/12/24(金) 22:46

「それはきっとはじめての色」

 昔から、目にうつるものが嫌いだった。
 お父さんもお母さんも顔がもやがかかって見えない。その色からはお姉みたいなあったかい色は見えない。くろくて、しってるこの色は嫌いって色。ぶきみ、いらない。いらないこ、なんだね、らん…。

 三歳になった日、お姉と二人きりになった。お父さんとお母さんは遠いところにいったんだって。お姉はすき。お姉もわたしのことがすき。でもらんはらんがきらい。だから、約束した。その人はらんと同じだけど違う。守ってもらわなくてもいい。嫌いならんが消えるかもって思えるから。ほら、今日だって、黒くてもやがかかって
「……らんのかお、みえないなぁ」


 「……人が倒れてる」
 その一言というか、お姉の気まぐれで住むことになる人…なのかな。嫌な色ない。これは確か後悔の色。お姉はせらふさんとか学校で忙しくて居ないことがおおい。そういう時はそうせいらんの相手をしてくれる。色んな遊びを教えてくれるし、話さなくても気が楽。表情にはでないけど、色んな色が浮かぶから、ふふ、たのし、いな。顔を洗って鏡を見つめる。相変わらず黒くてみえないけど、きっと無表情のまま、それが気味悪がれたんだっけ…あ、なに、このあっかいいろ
「……色が、増えた?」

 そうせいが、三日ぐらい帰ってこない。お姉は仕事で帰ってこれるか怪しいって言ってた。やっぱらんの相手するの疲れちゃったのかな、そんなことを思いながら縁側にお茶をもってく。
「……あ、」
 無意識に用意した二つの湯呑みを見つめる。はやく、帰ってこないかな…。そんなふと思い浮かんだ考えを振り払うように頭をふる。そうせいはここに住んでるわけでも、家族って訳じゃないのに。波打つ水面にうつる自分の顔。相変わらずはっきりは見えないけど…。そっと浮かぶ水色。
「……らん、そうせいがいなくて、さみ、しいの?」

 最近、自分がよくわからない。寂しくもなんともなかった、はずなのに。ぐるぐるもやもや。よくわからなくなって、お姉のとこにいこうとし彼の服ををぎゅっと掴む。
「行っちゃ…いや」
 
 え、なに、これ……彼の目に移るらんは、この色は、なに

146:◆Qc:2021/12/29(水) 05:32

「······悪い、駄目だった」

彼はそう言った。······その時、何を思っていたのだろうか。······いや、彼だけではない。真っ先にそれを伝えた二人──アーミチェスとシヴァ。
二人はしばらく無言だった。
雨に濡れたスコーピオンを、放心とも失望とも希望とも歓喜とも絶望とも知れない表情で見つめていた。

「······そうか」
やがて、アーミチェスが首を振りながら言った声が聞こえる。
「タランテラの白衣は毒の繊維を用いている······それでもか」
「······初耳なんだが」
「彼女と何年の付き合いだと思っている。確かにお前は恋人だろうが······こっちは18年だぞ。おい、死体はどこだ」

スコーピオンは無言で首を振った。なぜなら、
「······教えてください」
「······」
「教えてくださいよぉ、先ぱぁい!」
「死体損壊は重罪だぞ」
「軍隊来ない限りは罪じゃないですよ。さっさと教えてください。殺しますよ?」
これである。要するに、シヴァが爆発する可能性を考慮して······信頼出来る『葬儀屋』に恋人の死体を預けたのだった。

「ちぇー」
「不貞腐れるなよ。······あいつも覚悟はできていたんだろ。やってた事がやってる事だったからな」
「······覚悟か。お前が言えることか、スコーピオン?」
「正直キツいな。······あぁ」
「だろうな。しばらく休業するといい。幸い彼女は緊急時マニュアルを遺していた。しかも更新日は4日前だ」
アーミチェスは何処からか小さなノートを取り出した。······彼の言った通り、その表紙には4日前の日付が記されている。
そしてそれを躊躇なく開いて読んでいく。遠慮も何もあったものでは無い。

「随分用意がいいんですねぇ。ひょっとして分かってたのかも?」
「それはないだろう。スコーピオンが居る以上自分が殺されるなど想定外だった筈だ······いや、責めている訳じゃない。私達も油断していた。多分何度やっても同じだろうさ」
「············」
どうやら目的のページになかなかたどり着けないらしく、ほぼサイボーグの友人は紙を捲りながら口を動かす。
口調からは分かりにくいが、恋人を喪ったスコーピオンを気遣っているのは明白であった。

「そうですか。······ところでどうします?弔い合戦でもします?」
「どうやって?我々の戦力で?流石に分が悪いだろう。············いや、待て。確かに合戦になりそうだな······」
アーミチェスが丁度開いたページ、そこになんらかの情報があったらしい。······感情は違えど、······一人の人間を慕って集まった三人を繋ぎ止めるかのように、それは存在していた。

147:◆Qc:2022/01/18(火) 20:40

「人ってどうしてすぐ死にたいとか言うんだろうね。本当に死ぬ人もいるしさ」
「別にいいのでは。私は仕事になるので歓迎したいのですが」
「こっちは過労になるんだよ。······はぁ、そのメンタル羨ましいよ」
「結構簡単に身に付きますよ。一日体験でもしてみます?」
「やだよ」
「でしょうね。······」
「······うん、ところで何の用かな?『神の手』だって暇じゃないんだよ?」
「依頼が入ってまして。貴女の協力も必要なんですがね」
「はぁ」
「そんな顔しないでくださいよ。折角同じ世界に転生した縁じゃないですか」
「それとこれとは話が別だよ。そもそもただの医者に何ができるって?」
「つれないですねぇ。私は知ってるんですよ、あの能力を持ってることくらい」
「そっか。で?」
「名前はタランテラ」
「············!?」
「数日前······まぁ伏せますが、死亡」
「なんで?」
「なんでも触手のヴィランにやられたそうな」
「······」
「機械と破壊神······それと十中八九蠍も。その依頼で、死体を預かってます」
「えー······嫌だなぁ。そもそも結構失敗確率高いんだよ?」
「時間は幸いかなりあります。また二、三か月したら来ますね」
「あ、ちょっ······」

148:◆RI:2022/01/27(木) 00:29

『愛の存在証明』

「愛とは、なんなのでしょう」

少女から零された疑問、それを生涯、彼女は理解するはずは無い、そういう機能は与えられず、そういう意図は生み出されない、そうして生まれたのが、リィン・レイ・フォーティアである

少女は生まれながらにして死を待つのみの生命体だった

鉱石人形
個体名称:紅結晶

それが彼女の名前であり、リィン、という名はあとから加えられた過剰情報だ、彼女は観賞用のドール、見られる以外に価値をもたらすことはなく、与えられた愛に答える必要も無い

そういう生態のはずだった、そういう性質のはずだった
誰より、その事は少女がいちばんわかっていた

だからこそ



「リィンっっ!」

その行為は、信じられないものだったのだ

149:◆RI:2022/01/27(木) 00:30

「─────」

彼女は微笑む、命を捨てて
彼女は微笑む、寿命を捨てて


『これ、ずっとつけておいてね』
『...?雲雕様、これは...?』
『君の寿命を多少なりとも伸ばしてくれるもの、改良の余地はあるけどね』
『、──』


手渡したはずの、肌に離さず持っておけと伝えたはずの贈り物は、彼女の手がら空に投げ出されている

『ちなみに、それつけてる間、俺と君の感覚リンクされるから、君が死ぬと俺は死ぬし、俺が死んでも君は死ぬよ』
『!?!?!?』

そうだ、そういったはずだ、『浮気』がなんだと理由をつけて、唯一の繋がりを手放さないよう、雁字搦めにするように、彼女の願いを糸に紡いだ呪いに限りなく近いそれ

でも、それでも


『────あ、ありがとうございます...!』

残り10年もない命の灯火を消させないように、なんて、建前だけのそれでも、彼女は素直に受け取った、嬉しそうに頬を緩ませ、生が育まれることに歓喜した



・・・・・・・・・・・・・・
君はそれを喜んでいただろうが



なのにどうして

150:◆RI:2022/01/27(木) 00:30

「りぃーさん!!」
「りぃちゃん!!!!」

彼女はどうして自分の目の前にたっている?
彼女はどうしてそれを外している?


─彼女はどうして、血に濡れている


『感覚リンク』『寿命』『俺が死んだら』『君が死ぬならば─』


情報の海が勢いよく脳に流れ込んでくる
こんなもの、いつもなら直ぐに処理しきれるというのに、目の前の光景は、まるでスローモーションのように脳の回転速度を低下させる

理解できない
わからない
でも、だけど、それでも、そんな自分でも分かった



「───、─」

口から血を流す彼女の微笑みは、安堵からくるものだということ

その安堵は、自分に対して向けられたものだということ

そして、彼女は、自分を殺させないためだけに、喉から手が出るほど欲した寿命を投げ捨てたということ



彼女は俺の盾となった

151:◆RI:2022/01/27(木) 00:31

「く、れない、けっしょう」
「─はい、うんちょうさま」

返事はいつも通り丁寧に、だけど待とう白い服は、脇腹を中心に、じわじわと赤い花を咲かせていく
美しい、本能的にそう思う、そして同時に、感じたことの無い感情が理性を蝕む

脇腹を抑えながらも少女は微笑む、痛覚などはない、痛みなどは存在しない、ただ、儚く壊れていく

真っ白な彼女を赤く染める、パパラチア、俺のパパラチア


「ごめんなさい、うんちょうさま」

鈴のような声で彼女は紡ぐ

「─あなたさま、いがいに、こわされてしまって、ごめんなさい」

赤い花弁は散らぬことを知らず、白い真珠は塗りつぶされていく

「ごめんなさい、ごめんなさい、どうか、どうか、あぁ」

それ以上は言わないで欲しい、伝えないで欲しい、知らないフリをして欲しい

伝えてしまえば、もう終わる、この関係はもう終わる、それは、それは、君の灯火が消えることと同義で───


「いとしいあなた、ともにいきられぬことを、どうかおゆるしください」

152:◆RI:2022/01/27(木) 00:31

微笑みは絶えず、目の前に残るのは無機物たる宝石のみ

最後に伝えられたのは愛だった、自分たちがどこまで行っても理解できなかった愛だった

知らないものだ、知りえないものだ、彼女には、自分には

なのに、なのに、どうして


彼女は理解した、そのために必要な機能も性質も持たぬまま、彼女は理解し、最大限にそれを伝えた

そして自分も理解した、愛などというまやかしを、証明された、されてしまった

             ・・・
「───ずるいじゃないか、リィン」

ずるい、ずるい、ずるい

理解した、理解したのに、彼女はいない、彼女は目覚めない

愛を与える場所も、愛を告げられる相手も、愛を通じ合う事ももう、もう、もう



「、ぁァ」

声が滲む、視界がぼやける、おかしい、おかしい、こんな感覚は初めてだ、なんて疎ましい、なんて憎らしい、なんて─

─なんて、愛おしい

「っ、りぃん...!」

置いていくなんて酷いじゃないか、勝ち逃げだなんてずるいじゃないか



あいしてる、あいしている、どうか、どうか


「だれのものにもならないでくれ、──!!」


君の愛がどうか、俺だけのものでありますように

153:◆rzo.:2022/01/28(金) 08:09

ちょっとどうしてもなにか感想を伝えたくなってしまって、、

RIさんの話なんですけど、、ただたまたま読んだだけなんですが凄く感動しました。素敵なお話読ませていただきありがとうございました。

154:◆rzo.:2022/01/28(金) 08:09

もし乱入など禁止だったらすみません…

155:◆RI:2022/01/28(金) 18:37

わざわざ感想をありがとうございます〜!!!モチベに繋がりますので大変嬉しいです、乱入等は荒らし以外に規制などありませんので、よろしければまた、私、もしくはほかの皆の話を楽しんで下さいませ!

156:◆RI:2022/01/30(日) 00:46

『どこかの誰か』

https://i.imgur.com/oYeVcsi.jpg
https://i.imgur.com/Frhh7Gy.jpg

157:名を捨てし者 hoge:2022/01/30(日) 22:10

>>156
これは画像が葉っぱでは見れないようにしてあるのかな?

158:◆RI:2022/02/06(日) 02:30

「君はきっと、僕を呑み込みたいんだろうね」

「─は?」

目の前の男に告げられたそれは、微笑みながら告げるなどありえないはずの、自分の目的だった

「俗に言う『ヴィラン』というものなのかな、いや、悪と決めつける訳では無いけれど、正義だというにはいささか問題があるんじゃないかな、どうだい?ベテリー」

「─なぜ、知っている」

「なぜというと、やはり目的は間違っていないのかな?それは残念、僕はまだこの体を捨てるつもりは無いんだけどなぁ」

「っー!何故知っていると聞いている!!応えろディユ!!」

問いかけてもはぐらかすように微笑むそれに、苛立ちを覚え、叫ぶように問う

「─怒らないでおくれ、ベテリー、綺麗な顔が歪んでしまっているよ」

それでもなお、目の前のこいつは私に微笑む

「…そうだね、なぜしっているのか、というと…

なんとなく、だとしか言えないね」

「は─」

息を飲む、なにを、なにをいっている?目の前のこいつはなにをいっている

「だってきみ、僕にはじめて声をかけてきた時、すごい顔をしていたじゃないか」

そんなはずは無い、ポーカーフェイスは完璧だった、バレる要素などひとつも

「瞳、捕食者の瞳だった、笑っていた、僕を見て

次の獲物を見て、わらっていたんだろう?」


恐怖を覚えた、
目的がバレたことに?違う


その事実を知っていて、私と過ごす日々に一切のそれを悟らせなかった、そしてなおも、微笑み、その事実を世間話のように告げるこの男の異常性に、だ

生かしておくべきではないと、本能でそう思った

気がついた時にはそいつに向けて手を向け、異能を放っていた

伸ばしていない方の手で頭を抑える、息が荒い、動揺するな、と下を向きながら己に命令する

どうしようも無いこの感情は、やはり己が三次元の人間だと悟らされる

それに歯を食いしばり、やはり壊さねばと己の意思を再確認する

「─べテリー?」

ひゅ、と息を飲む

「どうしたんだい、ベテリー、気分が悪いのかな」

─なぜ

なぜ、この男は平然としている

なぜこの男は負の波動に呑まれていない

なぜ、なぜ、なぜ

「ベテリー?」

男がわたしにてをのばす

なんでもない、脅威などなにもないはずのそれが、あまりにも恐ろしく、力強く払いのける

「っ─化け物め─!」

吐き捨てるように告、気に食わないが、逃げるようにその場から立ち去る


『初めまして、ディユ・パライバトルマリン、─ベテリゲーイゼという、仲良くして貰えるかな?』
『─あぁ、もちろんだよ、よろしくベテリゲーイゼ、…ベテリーとよんでも?』


───ディユ・パライバトルマリン

私に笑みを向けたもの、私に優しさを向けたもの


私に恐怖を与えた、五次元の人間

「っ─!」

あいつの微笑みが、脳裏に焼き付いて、離れない


「げほっ…」

咳き込む、じわりと体の中で何かが蠢くような感覚がある

「…………」

赤く染まった手のひらを見つめながら、考える

『っ─化け物め─!』

「……これは、長い戦いになりそうだね」

血に汚れた手を気にすることも無く、両手を交差して握りこむ
祈る、祈る

どうか、妹が巻き込まれませんように
どうか、親友が巻き込まれませんように

「───」

どうか、『友』が、これ以上道を踏み外しませんように

「ベテリゲーイゼ、君に、光があらんことを」
どうか、君が、闇に消えてしまいませんように

159:名を捨てし者 hoge:2022/02/06(日) 03:12



『 ──────人は死んで、全てが完成する。


 今迄に積み上げて来た物...例外無く全て破滅に終わる。
   財産も名誉も権力も美貌も友情も恋愛も

    死んだら全て手放さなければいけない
      あの世には何も持っていけない 

     だからこそ最期まで役に立て 
       全ては未来への為に

          _____英雄譚より一部抜粋 』



いつまでアンタの事を覚えてるんだろうな、もしかすると私しか覚えてないかもしれない。…少なくとも、あっちにいる奴等は全員 ...アンタの声は忘れてちったみたいだね ...顔も朧気にしか思い出せてないみたいだ。
……あぁそう泣くな、私がついてんだろ?



    本当、アンタは哀れだったよな。
味方からの流れ弾に当たって死んだ…そこまでなら、憐れて死を悼まれる筈だった。…そう、"だった"よな

──────“....でも、でも ...現実ってのは、残酷だよ“


 …あぁ、そうだな。滅茶苦茶残酷だな?
 アンタが死んだのは何も悪くないってのに…
...アンタを撃った流れ弾のせいで戦闘に敗北した…
原因は誰になるかって言う責任のなすり付け合いで、出たのが...."邪魔な奴が一人いた"って結論。



理不尽な死亡だった、なのに責められるのはアンタだけ....で、最終的に親にまで責任はいって、批判の嵐。.....両親共に残念だが ...もう、アンタよりも先に獄の世界行きだ。



   同調圧力と、袋叩き。
  ………アンタが死んでも、今なお続いてるこの負の連鎖。



...さて、そんな前置きは置いといて、まだ魂だけが残ってるアンタに聞きたいんだよ
 ..良く復習は何も生まないって言うけれど、一つ生むもんがある .... ....【 爽快感 】 ...と、私は思う。


  どぉだ? ...私と一緒に、色んな奴に復讐をして
    ...悔いなく、一緒に獄へ行かね?
...ま、もしかしたらそれが世直しにもなって、半ば軽くなるかもしんないし...。



───────"...やる、やり切ってみせる、絶対にあいつ等の苦痛に歪む顔を見て ...パパやママを安心させる...そして、もう二度と私みたいな残念な人が生まれないように、思い知らせてやるんだよ... ...悪い事をすれば必ず自分に返ってくる、って!"

お〜〜、その意気その意気 ....んじゃ、宜しく頼もうか? ......大事な大事な契約主様?


    それはとあるだらけ切った悪魔と
    "正義"を誓った死者の .....物語。

                (続かないよ!)

160:◆cE hoge:2022/02/07(月) 02:17


 変わったと思う。家族から見ても他人から見ても。そんなことを告げたとしても彼は何を言ってるんだいとその考えを馬鹿げたものと一蹴するのだろう。そんなことを考えながら工夫茶を入れる。飲んでくれる彼は今日も美味しいと笑ってくれるだろうか。そんなことを考えおもわず笑みをこぼしながら、先程まで考えてた人物が現れ思わず目を見張る。

「やぁ雪、お茶も入れてくれるとは俺のこと大好きだな」
「お兄様のためじゃないことを分かってての発言ですわよね…ちょ、なに勝手にのんで!」

 自由奔放で無邪気子どもみたいといえば聞こえがいいがその中身は最悪だ。そんな彼が何か一つに執着を見せてるのだから…。ため息をつきながらお茶を一口に含む。香りは最高だが舌に広がる泥の味に少しだけ落胆を覚える。春蕾様はほめてくれるけど本当に美味しいのか…そんなことをもんもんと考えていると彼は声をかける。

「春は俺と同い年だよね…」
「あら、お兄様が世間話が出きるなんて、はじめて知りましたわ」
「最近…覚えてみるのも悪くはないかなって思ってね、ほら実験体の緊張を和らげるにも」
「嘘」
「ほんとなんだけどなぁ、次期当主候補様」
「白々しいですわね…ほんと、それで結局何を言いたいのです?」

 兄の思っていることはよく分からないが考え方は一緒なのだ。思わず舌打ちをしてしまうほどに。そんなところに血の繋がりを感じ嫌になる。ただ唯一彼と違うことは人の心があるか否かだったのだから。

「今まで人とちゃんと『会話』をするということがなかったからね、練習さ」

 そういいながら実験データを楽しそうに眺める兄を見て思う。変わったのは愛ゆえなのにそれをいったところで彼はそれを理解できない。

「こんなところで油を売ってる暇がありましたら、リーさんのところへ行っては?」
「……?なんで、紅結晶の名前がいまここで出るんだい?」
  

「失くなってから後悔してもしりませんわよ」
「馬鹿だなぁ、雪は」
「俺が紅結晶に執着してるのは壊れるまでと決まってるのに、後悔もなにもするわけないじゃないか」

 ケラケラと笑い頭を撫でてくる彼はおそらく本気でそう思っているのだろう。冷めた紅茶は泥のように苦い風味が広がる。味覚を失った理由も彼がこうなった理由も一緒だから憎むに憎めない。だから私はこの兄が嫌いなのだ。


「それでも、後悔することがないように行動はしてくださいませ、お兄様」



『最愛の憎らしい同類の君へ』

161:◆Qc:2022/02/14(月) 00:34

『――御伽先生』


少女が、手紙を書いている。
一行目、相手の名前だけを書いた、もはや紙切れのような手紙であった。
「貴女に贈ります」という声と共に、虚空へとそれを放る。


返信は早かった。彼女の能力のお陰で、相手からも即座に手紙が届く。
『どうしたの?石鎚さん···いや。篝ちゃん。
この形で連絡を取ってくるなんて、久々だね』
それを読んですぐ、二枚目に筆を走らせる。


『また兄がメール見てたらいけないので···すいません。
先生、少し質問があるんですが、時間は大丈夫でしょうか?』

『···いつもながらプライバシーも何もないね、帳くんは。
まあそれはいいかな。
時間ならたっぷりあるよ。···仕事就いてないからね。···いつも思うんだけど、どうしてまだ先生なんて呼んでくれるのか、不思議だよ』

『···だって、私にとって、御伽先生はいつまでも先生なんです。
えっと、質問なんですが···私の父について、何か知っていることはありますか?』

『···照れるよ、それ。私以外にはその論法使わないでほしいかな···
して、篝ちゃんのお父さんのこと?なんで私に···前言ってた商人さんに頼めばいいと思うんだけど』

『えっ?
いや、駄目です···最近あの人怖いんですよ···もう先生にしか頼めないんですよ』

『······篝ちゃん。明後日私の家来てね?
それはともかく、ちょっと調べたんだけど、篝ちゃんの家ってその筋では超有名な諜報組織みたいだね』

『えっ?
えっ???
初耳なんですが』

『···あー、これは···あんまり他人と関わらないが故に気付かれなかったパターンかな?一応ヒーロー組織にも有能な情報屋いたはずだけど···それとも篝ちゃんがポンコツ過ぎてその一族だと認識されなかったかな···?』

『あの、要点だけお願いします。明後日用事入れますよ?』

『はいはい。それで、その中にえげつない人がいたみたい。二つ名は「血煙」』

『煙···お父さん···?』

『お、ビンゴかな。良かった。
すぐに知れたのはこのくらいだね。これでいいかな?』

『···はい、ありがとうございます。
でも、妙なんですよね······うち、家庭崩壊してるんですよ』

『前にも言ってたね。···確かに妙だね。それほどの組織が内部崩壊するなんて···ましてや身内。なんかそういう徴候はなったんだよね?』

『···はい。』

『うーん···まあ、また何かあったら連絡してきてね。先生、頑張るから』

『はい···ありがとうございます!明後日、待っててくださいね』

『えっ?もう一回手紙送ってよ』

162:◆Qc:2022/02/14(月) 02:52

バレンタインデー チョコ貰った時の反応一覧(男性陣少ない問題)


スコーピオン
相手がタランテラ:「···毎年、ありがとな。いつもながら変な物は入ってないよな?」
それ以外:「お、ありがとうな子猫ちゃん達。ゆっくり明日以降の糧にするさ」

葬月:「チョコってマジか?···まあ貰うけどさ。ありがとな」

帳:「······あれ、チョコ?···親とか、妹以外から貰ったのは久しぶりだな。感謝しとくな」

163:◆Qc:2022/02/14(月) 02:55

>>162追記
アーミチェス:「ふむ。チョコレートか···機械の体でも消化できるか見物であるな」

164:◆RI:2022/02/14(月) 22:20

バレンタイン反応集

叢雲
対他人「え?あ、オレ嫁いるんで、無理」
対雪「…………ありがとうございます、雪さん、…………………ところで今回はどこ壊しました?」

嫁以外に貰うことは天変地異がおこっても無い、頑張る嫁は可愛いので例え度を超えたメシマズでも死ぬ気で食べるし壊れたキッチンは直す



対他人「わぁい義理チョコあざーっす、え、ほんとに義理なんで?えぇ…」
対綴「綴さんこれ焦げてますよ、え、いやいや食いますけど、いやですー、もう俺のッスよこれ」

意外と貰っているが全部義理、相棒から手作りの焦げたチョコを貰ってわざとダメ出ししつつ絶対に渡さない



対他人「うん、みんなありがとう、でも貰うのは1人だけって決めてるから…ごめんね」
対栞「しおちゃ〜ん?お呼びの頼で〜……!チョコ!俺宛?…ふふふ、だよね、…ありがとうしおちゃん、」

断りつつも丁寧さで人気を下げない徹底ぶり、彼女からのチョコは貰える前提で考えているしもちろん貰える


ジン
対シキ「お前これ何入れたん????」

何を入れたかわかったもんじゃないので毎回聞く、今年は目の色が変わる薬だった、ちなみに聞くだけ聞いて毎回普通に食べる


霜星
対他人「……ちょこれぇと、あぁ、西洋の菓子か、あぁ、ありがたく受け取ろう」
対藍「らん、らん、今日はちょこれぇととはこんなにも美味いのだな」

洋菓子に馴染みがないため楽しげ、最初の年は誰からも受け取るが、運命が嫌がれば彼女からしか受け取らないようになる



陰「……」『ありがたく受け取ろう、感謝する』
陽「は?チョコ?へーああバレンタインとかいう…!!!おれまだおひいさんにチョコもらってねーじゃん!!!ありがとな教えてくれて!!!!じゃ!!!!」

陰は丁寧に受け取り食べてくれる、陽はあの子しか眼中に無いため受け取ってくれない、ちなみにあの子もべつにチョコは用意してない



表「え、僕にチョコ?嬉しいなぁ、ありがとう、大事に貰うね」
裏「きも」

受け取る時は有象無象に見せている表なのでしっかりと受け取るし丁寧に対応するが、人が居なくなる、家に帰ると裏に切り替わりさっさと捨てる、他人のもんなんか食えるか、安全なものは親友に押し付ける、親友と並んで学園ツートップのチョコ獲得数



「まじ!?チョコもらえんの!?やった〜!めちゃくちゃ嬉しい!ありがとな!…あ!ホワイトデーまじ期待しといて!3倍にするから3倍!」

まさに模範解答、正しい反応、甘いものも好きなのも合わさってこのイベント時は機嫌がめちゃくちゃいい、親友と並んで学園ツートップのチョコ獲得数

165:◆cE:2022/02/14(月) 23:23


『箱庭の純愛』

「…様?、婚約者様、風邪引いてしまいますわ」

 肩を優しく揺すられる感覚でうっすら目を覚ます。彼女の少し困った顔がみたくて狸寝入りを続ける。能力を使って彼女みたまんま…だが。少しして諦めたようにため息をついたあと肩にふわりとブランケットがかけられる。しばらく悩んだように俺の前に置いてあった椅子を隣に持ってきて座り、俺のほほをつついたり髪の毛をいじったりして楽しそうに微笑む。俺のいるところでやってくれないかなぁ、なんて。

「ふふ、こうして触れられるのも私だけの特権ですものね」

「好きだといってくれて、一緒にいられて私とても幸せなんですよ、春蕾様」

 ______あぁ、寝てるふりなんてやっぱもったいない、能力じゃなくて実際に彼女の顔を見ないとそうおもって目を開けると顔を真っ赤にしてこちらを困ったようにみる姿がうつる。

「そういうの、起きてるときに言ってくれないかなぁ?お姫さん?」
「……っ!、え、あ、いつからおきてて?」
「起きてくださいって肩揺らしたあたりから?」
「最初からじゃないですか!もう…」
「ねぇ、お姫さん」
「……なんです?婚約者様」
「今日は名前で呼んで二人でいたいな?俺」
「……春、様」
「チュンじゃなくて、ほら雪梅?」
「…はい、春蕾様」

166:◆.s:2022/02/22(火) 13:12



 PM11:20 某海域…

この日 ヴェコネロ率いる無法の船団は依頼を受け、
蜂蜜酒を運ぶ大規模な輸送船団を襲撃する事となる


__詳しい説明を受けるべく甲板に集まり
  雁首を揃えた無法者共へ頭領はまずこう言った

 〖コイツが仕事ッて事ァ忘れんな〗
_______

 〖…大砲に鉄砲を積んだ船は4隻、
 燻るよォな甘い酒を積んだ船はァ2隻ある
一隻は酒船を沈めて構わねぇが…〗

(話はまだ続くが …その前に頭領は手下を見回す、
…運の悪い事に余所見をしていた1人が拳を受けて
失神する羽目となった、皆は震えて話に集中する
…慎重な頭領は話を聞かない手下を許すことはない)


 〖 よォく聞け… 絶対にお守りの船を二ィ隻沈めろ。
  …それも二隻以上は沈めねェ "二隻だけ"だ 〗


  __________

167:◆.s:2022/02/22(火) 13:33


 AM 5:00 __輸送船団への強襲が始まる



 __それにしても… あの、お頭?

 
 「 なんで酒船も、護衛もその… 」

( 開戦からずっと前線を張る大型船を眺める頭領
…その隣で冷や汗を流す側近は、恐る恐る口を開く )

 〖 中ゥ途半端にしか沈めねェのか知りてェか? 〗

「[ギクッ]よ よ よ よくお分かりで… 」

_____

 あの後、誰も頭領には疑問を投げられなかったが…
内心では殆ど全員が不満を抱いているのは明確だった
頭領の怒りを買うと脅したり透かしたりして、手下達を
纏めるのもかなり苦労するが、文句は言えない

だがそうしなければならない理由は聞きたい
_____


 〖…依頼は護衛専門の傭兵集団からのモンだ〗

 __聞き、側近は首をかしげる


 「 なんでそんな所から… 」


 (__一隻の護衛船が炎上している )

〖 おォかた今 不幸な海の日を迎ェてらッしャる
 警備会社のお偉方とシノギ削ってんだろォさ
 大ァ事な船に荷物を、護衛ごと沈められちゃァ
 面目も丸潰れ。…早い話"生き証人"を残せッつーコト。〗

168:◆.s:2022/02/22(火) 16:36


 (__満身創痍の獲物を前にして
  無法者どもは黙ってなどいられない
  乗り込み、手当たり次第に奪い始めた)

 「 やれやれひでぇ話だ、やつら
  そんなんでカタギだってんですか 」

〖 だァから稼げんェの。お偉方で足引っ張り合ってくれりャ
 上手いこと戦争も広がる、仕事も舞い込む。お徳って奴よ!
 ___俺サン火祭り大歓迎!ハッハーッ! 〗

  ____ …で


 〖 アレ3隻目? 〗

 「はい?」


___3隻目の護衛船に手下が乗り込んでいる
 慌てる船員に向け、やにわに銃をぶっぱなしていた

   「!!」

  〖3隻目だな〗

169:◆.s:2022/02/22(火) 17:59


(念を押された事を破る手下達の姿に
側近は青ざめ、卒倒しそうになった
なんたること。この人を怒らせるつもりか)

「 すぐに止めさせますっ 」

〖 いやァ良いよ 〗


___えっ?


( 振り返った側近は 既に手遅れであったと気付く )


    [(砲撃音)]が響いた。

170:◆.s:2022/02/22(火) 18:19


( 二隻、残った護衛船と一隻の輸送船が離れていく
…護衛船のうち一隻は煙を上げていたが、まだまだ
簡単には沈みそうにない __だが獲物は残っていた )

 機動力を失った残る二隻の船に無法者の視線が集まる

 __だが、全員凍り付いたように動かない


 ( 側近も同じに、…たった今 違反を犯した手下を
  自ら吹き飛ばした頭領を前に… 思わず自分の首が
  繋がっているかどうかを確かめずにはいられない )


 〖 …不幸な事故だったな あァ、そうだろォ〜? 〗

 [ __目の前に砲口が見せ付けられている…!! ]


  ___っは
  
 「ハイハイ❗ははいはぁ〜っ!じっじじじじこじこッ
 (う 撃たれるゥ〜〜っ)」


(不幸な側近はこの世の終わりを垣間見てしまったように…)


   __さァ〜て


〖 野郎共ォっ! 弔い合戦と行くぞォッ!!
  纏めて切り刻んだれやァァッ! 〗


 (__怒号を上げて出ていく頭領を見送る側近は)

「(あだ …あ、あんたが殺っちゃったんだけどな〜っ)」


   ___言葉にならない声を叫ぶだけ

171:◆cE hoge:2022/03/06(日) 20:56


「あは、随分と熱烈に歓迎してくれるね、俺そんなキミに恨まれるようなことしたっけ?」

 その声にも答えてくれない相手は目に憎悪を浮かばせてこちらを睨む。あぁ昔こんな表情浮かべたらうちのジジイに死ぬほど怒られたな。大人しく手を上げながら銃口を頭に突きつけてくる相手を改めてまじまじとみてふっと笑みがこぼれる。あぁ、お前にはなんも思わないな。それなのに、命がかかっているというのに、こんなときになっても考えることがキミのことなんて。

 パァンと弾丸が俺の頭を撃ち抜く。

 あぁ、俺はキミに何かして上げられただろうか。一時的な延命措置しかしてあげられなかったな。それなのにキミは自分から死んでしまって。あの時どれくらい俺が焦ったか分かっているのだろうか。いや、分かるわけないか、分かられてたまるか。こんなになるなら全世界から俺たちの記憶も消せるなんかを作っとけばよかった。

 想像より早くそっちにいくけど、キミは相変わらず笑ってくれるのだろうか。それとも怒るだろうか…。正面から怒られたのはキミが初めてだったから。でも笑って迎えてほしいな。自分の血とだんだんと歪んでいく視界の中最後の力を振り絞って声を出す。

「…かはっ、はは」
「りぃ…ん、…おれは…キミだけをずっと、あいして…る」

 やっと、言えた。あぁもう怒らないでよ、リィン。俺はキミの笑った顔が一番好きなんだから。

172:◆RI:2022/03/07(月) 02:36

たった1人の大事な人、私の親友が、目の前で、酷いことをされていた
だから、だから、私は、ゆるせなくて、そのかはいんじにんんがにくくって、ちかくにあった、包丁で、なんどもそいつが動かなくなるまで刺したんだ
赤いものがかかるのも、生ぬるいそれが冷えていくのも気にしないで、なんども、なんどもなんども

『·····は、つ』

はっとなってたまきちゃんに包丁をすててかけよった、私の馬鹿、こんなやつほってたまきちゃんをたすけなくちゃいけないのに
泣いて泣いて焦る私を見て、ほとんどめもかすんだたまきちゃんが、うすくわらった


『─は、は、·····はつ、は、ひーろー、だ、にゃあ』



「ひーろー」「ひーろー」「ひーろー」
耳を塞いで、なんども言葉を繰り返す
あの日呼ばれた言葉、たまきちゃんが望んだ言葉


「──行ってきます、たまきちゃん」

私は今日も、あの子のためにヒーローになる

173:◆RI:2022/03/14(月) 03:46


彼はマフィアのボスの愛人の子供として生まれた、
彼は愛人の顔によく似ていた
彼はボスに愛された

愛された

愛された

愛された

愛された愛された愛された愛された愛された愛された愛された

愛人のように、恋人のように、ペットのように、奴隷のように

家族でもなく、子供でもなく、そう、まるで、自分の母親のように、愛された

何故か、その美しい顔が、愛人に似ていたから

何故か、その細い体が、女のようだったから

笑えと命じられたら笑った、泣けと命じられたら泣いた

そうしなければ叱られるから、殴られるから、仕置をされるから

逃げられないから、愛から逃げられないから

だから

20歳になった日、母親が死んだ日、ほんとうに、ぼくは、絶望しました

母親に向けられていた分の愛が、愛が、愛が、





かおが、うごかなく、なりました

わらえない、わらえなくて、ひどく、ひどく、しつけられました

いたくて、こわくて、だから、だから、ひっしに、ひっしに、かおを、うごかそうと

おとうさんは、とめてくれませんでした、だから、だから、だから


「おとうさんはしにました」


だから、「彼」は「語った」のです


物語の語り部として、父親の物語を紡いだのです


死にました

おとうさんはしにました

終わりました

そうすれば、おとうさんのぶかたちが、ぼくをころそうとしてきます

「〇〇さんはしにました」

語りました

「〇〇さんもしにました」

「〇〇さんも」

「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」「〇〇さんも」


「みなさんはしにました」


みんな居なくなりました、何も感じませんでした、顔は動きません、なにもわかりません

わかりません

─────わからなく、なりました








「何度能力をつかっても、この記憶だけは、消えてはくれず、「彼」のなかに、ずっと残り続けています。

おしまい。ご清聴ありがとうございました」

174:◆rDg:2022/03/14(月) 23:10

      白い祝福 [とある姉弟]
___________________



「 ...お姉ちゃん、ちょっと今、平気? 」

   ___仕事の合間の休憩中、大好きな弟からの呼び掛け ... ...一気に日常へのモードへ。


   「 勿論平気っ!どうかした? 」

  剣の手入れなんか後回しにして ..何だか少し恥ずかしそうな弟へ視線を向ける ....頬の火照り具合が少しえっ


   [ ずいっ ]


  「 こ、これっ!いつもお世話になってる、から! 」


   ( ...ハートや剣、盾の形に切り取られた白のマシュマロ ...チョコソースやカラメル付き )


 「 .......っっ!は〜もう!良い子!滅茶苦茶良い子!
  ほらこっち来て良いよ頭撫でてあげるからっ! 」


( ...一瞬止まった後に、喜んで、笑って、手招きして
  ......ちょっと傷ついた手で、頭を撫でる )


    ___知ってるのかな、マシュマロの意味

       あなたがきらいだって


  ....いや、アーテルの事だから分かって無さそう!
 単に好きな物を込めたんだよねっ! ...それに


    ...弟からどう思われようと 「 ...私は



  [ はむっ ...んっ ]

  ( 盾型のマシュマロのみ食べた後 ....__くちうつし )



    この世で一番、アーテルが大好きだから!!」


  [ __バタンッ ...シュゥウウウウ ]


 「 ..へぁ!?あ、アーテル!?なんで!?熱!?ちょっ、ちょっと〜〜〜〜ッッ!!? 」



  ( 姉も気付かない ...途中から、声に出てた事なんて )

175:◆.s:2022/03/20(日) 00:15


 : 川が広く見渡せる、ランチ向けのスポット
____________________________________


  …チュン チュン


 ___ん


 ( 冬の気候を 僅かに含んだ、肌に冷たさの残る空の下
  彼は気まぐれに目を開けて …明るくなる雲の合間を見た
  __春を告げる鳥が陽光に照らされながらやって来る )


  「 あー、寝そびれた …まったく
   なんだってわしの近くで鳴いてくれてんの 」


 ( …何処かへ飛んで行くいたずらな鳥を意味なく咎めて
  眠るきも失せた土手から体を起こし、彼は川を見渡す )


     ___今は午前過ぎを経たばかり
     昼食スポットとして人気のこの場所に…
   __今日は珍しく誰も居ない、…彼好みの空気

       「 …ふぁ 」

176:◆.s:2022/03/20(日) 00:29


 ___静かな場所 …見渡せる川に、…遠くを飛ぶ鳥達
  さっき、起こされた眠気が心地好さに戻るのを感じ

  「 …… … 今度は起こすなー … 」


 ( 雀に、…ひとつ挨拶をして また土手に寝転がる… )


    ____________ぉーぃ


   ___ぉーーいっ


( …眠れない… 一回目で、…僅かに聞き間違いを期待して
 続いて、近付いてくる二回目で __心地のよい眠気を諦め
 … 三回目が聞こえる前に、まぶたを擦って体を上げる…
  ____本っ当に大きな声だ …馬鹿らしくすら思う )


    「 おーーいっ! …ふぇーとだろーっ! 」

    「 あーうっさ… …聞こえてるって 」


   ___生きた目覚まし時計みたいなヤツが来た



    「 よっ、また寝てたんか? 」

  「 …分かるんだったら起こすな ジョー …だる 」

177:◆.s:2022/03/20(日) 00:44


( どかどかと土手の静けさを破りながら、…現れたのは
 炎神、…炎神 ジョー。良い意味でも、悪い意味でも、
 とにかく声が大きいんで、眠い時は会いたくなかった )

  ___今も「わりぃ」と軽口に笑いながら
    手に下げた籠から、包み紙を取り出した…


 「 しっかし、おめぇいっつもここに居るよな 」

 「 …うるさ、… そんなのわしの勝手じゃん なんか悪い?」

  「 いやー、よく飽きねえっなって! 」

 ( …話の途中で、包み紙の下から現れた
  黄色いシェルに肉や野菜やチーズを挟んだ
  サンドイッチ?…を齧り、ぱりぱり音を立てる… )


 「 おめーこそいっつもわしに声掛けてるだろ
  …おかげで最近はぜんっぜん眠れね、ばか 」

     ____で


  「 それ、なに?… じゃんくふーど? 」

178:◆.s:2022/03/20(日) 00:53


 (ぱり …小気味のいい音を鳴らして、…口についた
  ソースを拭い 炎神はにかっと笑ってそれを見せる)


 「 "タコス"ってんだ!うめーぞこれ。
  …あと、ふぁすとふーどっつーらしい 」

 (「冴月から聞いた」と、…取り出す二つ目の包み紙 )

  [じー]

 「 へー… ワシにもちょっとくれ 」

  「 んぁ いーよ?ほれ 」


 ( …その "タコス" は大部分が欠けた状態。
  シェルも、ミートも… 満足する量は無いもの
  ___たべかけ。 )


   「 …ぶっとばすぞ 」

  「 ははっ わりぃ。」

179:◆.s:2022/03/20(日) 01:05


( 剥いた包み紙の下からは、…玉蜀黍色で素焼きのシェル
 シーズニングが効いた香りの濃いミートに、トマトと
 レタス、…からい匂いのソースと ぱら撒かれたチーズ )

 「 …なんっか、… はんばーがーみたい 」

  _____ばりっ …


 ( …珍しく、炎神は黙ってフェイトの反応を待っていた
 自分のシェルを残さず食べきり、…感想を待つその表情は
 味に対するレスポンスを確信したような様子がある … )

 ( …けれど、あんまり反応が良さそうにないフェイトの
  …表情に不思議な顔をした、…何処か辛そうな表情 )


「 …たべづら、… ハンバーガーのほうがいーな。これ 」

180:◆.s:2022/03/20(日) 01:26


 「 …ぇー、… 味はどーだ?」

( 取り繕うようにティッシュを渡そうとする炎神、…
 だが、フェイトは受け取りつつもまだ嫌そうな顔 )

「 …からい、あとチーズも味薄い
 肉もなんだこれ 歯ごたえわっる… 」


 「 ……… 」

( __炎神は考えるヒトの仕草… )


 「 …なに、… 気にしてんの? 」

 「 あぁ… これな 」


 「 オレが作ったんだ 」

181:名を捨てし者:2022/03/29(火) 03:51

妖怪変劇

時は明治。源 芹生 (ミナモト セリフ)といふ、とある演劇少女が、演技の臺詞創りをきつかけに、創作活動に魅せられた。
ちょうど少女には敬愛する物書きがいた。一つ年上の幼馴染Aである。Aは顏も頭も惡く、ぶっきらばうで、友も戀人もおらず、醜い人閧ニして嘲け避けられた。
しかし、救いやうがないわけではない。Aには、ただひとつ創作の才だけはあつた。Aは世閧ェ需要する物語を數多く産み出し、おかげで人竝みより幸bノ生きていた。
不思議なことに、演劇少女は、Aと對照に、顏はよく、學もあり、友もおり、戀人もいるといふのにも関わらず、Aの作品に嫉妬していた。この少女には、ただ一つ、創作における文才だけが、無かつたのである。演劇少女は、自分のステイタスなんかよりも、創作だけがしたかつた。
そんな演劇少女は、ある日、Aが最高傑作だと言う作品を見せてもらうことになった。作品を拜見すると、少女は瞳を煌びやかせて、嘆息する。

「はあ… Aくん、超すごい……」

その作品は、極めて創造性に富み、多くの創作者が目指すであらう頂きに、見事辿り着いていたのだ。誰もが書きたいものをAは軽々、書いているように見えた。

「なんでうちには、才能無いんやろか…」

しかし、それ故に、少女は嘆いた。かようなものが一たび野に放たれたのならば、己を含む多くの創作者が居場所を失つてしまうと。創作大恐慌が起こつてしまうと。
その日、演劇少女はAの傑作を盜み出でて、十日閧ルど讀んだ後、焚書した。

Aは、最高傑作の紛失に即座に気づいた。しかし、いつも自室を掃除させている母のせいだと憎んだ。まさか幼馴染の可憐な少女が、しかも毎晩お世話になつている、あの少女が傑作を盜んだとは、Aの童貞拐~が思はせなかつたからである。
しかし、一月經っても傑作を再現できないAは、我武沙羅に筆を振るふ。憎い母には拳を振るふ。かく日々を過ごし、一年が經つ。結局Aは傑作を書けず、生氣を失つていた。
そんなAの心情と對照的に、世閧ナは一つの小説が大流行していた。Aは半ば無關心で、試み程度に小説を拜見すると、見覺えある文體、見覺えあるシナリヲ、見覚えあるセリフ。恐る恐る著書名を確認する。

_____源 芹生

そういうことか。そういうことだつたのか。つひにつひに、あの演劇少女が傑作を盜作したのだと最悪の理解に及ぶ。
理解の次にやつてきたのは少女への憎惡。
世閧ェAを忘れるうちに、Aにはその憎しみが殺意とゐふ名前である事を自覺し始める。
Aは一本の斧で殺意を実行することにした。ある日の夜が更ける頃、まずは、少女の家族を慘殺。Aは、次に、部屋の隅で怯える演劇少女を犯した。さて殺そう。Aが手に取つた斧。演劇少女は、流石本職が演劇なだけあつて、Aに渾身の涙に、渾身の台詞で持つて、渾身の懇願をして、許しを乞う。しかし、Aは許さない。
かくして、殺意を完遂させたA。立ち上がると鏡に映つたのは、醜惡を極めた化物、俗に言ふ立派な妖怪だつた。

182:通行人B:2022/03/29(火) 04:15

>>181
うーんおもろい 天才やね

183:◆Qc:2022/04/13(水) 23:43

『輪廻族』のコミュニティ。
この世界に転生してきた輪廻族に対して、円滑な順応を行いやすくする為の集まり。······と言っても、その人数は3人。
どのような世界でも輪廻族の捜索が難しい中、よくこんなに集まったなとニルは思った。
「······で、リナちゃんは······相変わらず酒場開くのかな?」
「はい!せっかくまた人間に転生できましたし!」
「······ちなみに前世は?」
「珍しく人だったんですよ!でもその前はー······犬でしたね。その前はたんぽぽで······」
「その特性まだ消えてなかったんだ······はぁ。まあ過労死しない程度にね······と言ってもこの世界じゃそれも無理な相談かぁ······」
ここは寂れた廃屋の中。ニル、エルの二人はもう一人の輪廻族と集まって色々と話をしていた。
どうやらそのもう一人の話によると、ここをどうにかリフォームして酒場にする、という。この少女にして珍しいことではなかった。

「あ、でも今回は前世で出会った人とまた会えましたから······」
「······なんで?」
「なんでも次元の隙間に落っこちた、らしいです。今寝てますけど······起こしてきますか?」
「いや、いいかな······ところで前の世界っていうのは?」
「凄い剣豪達がいる世界でしたね······あの人もその一人だったんですよ。向こうでも変わらず寝てましたけど······」
「······相変わらずリナの経験談は飽きないなぁ。植物とか動物とかに転生することがあっても······それで釣り合いが取れてるんだから」
ニルの呟きに、相手は苦笑しただけで何も言わなかった。

「······じゃあ、そろそろ私は行くね。これからオペが三つ入ってるんだよね」
「エルさんの方が過労死しませんか······?」
「自信ないかも······」
とだけ言って、エルはさっさと出ていった。
事実彼女は恐ろしく有能で、多忙だった。適当に散歩に出たり面会時間を確保できるのも、彼女の能力と切り詰めた睡眠時間の賜物だった。
「(······どうもこの世界はきな臭いなぁ······他の輪廻族と出会える日は······来るのかな······?)」




しかし。その数時間後、彼女は思いがけない対面をすることになる。
勿論それは、『四人目』の輪廻族であった。

184:◆Qc:2022/04/18(月) 01:34

>>183
病院に戻ったエルは、救急車からの電話が入ってきたのを見ると即座に受け取った。······しかしその内容が地獄であった。
というのも、

「······穿通性······頭部外傷······だって······?」
『それだけではありません、心臓付近の胸部にも銃創が······』
「······嘘でしょ························患者の名前は」
『夜村夢花。何やらアイドルっぽい女性みたいですが······流石の先生でも、これは······』
「じゃあなんで搬送してるのさ?」
『············低音処理は施してあります。爆速でかっ飛ばしていますので······あと5分で到着します。準備を』

その声を残して電話は切れた。近くの窓を開けて耳を澄ませば、風に乗って救急車のサイレンの音が聞こえる気がする。
──エルは振り向き、ただならぬ雰囲気に怯える他の医者に向けて高らかに呼びかけた。




「最近暇だったでしょ?」






「どうして生きてるんだこの患者······」
「トラウマになりそうです」
「揺らすな!中央オペ室に運ぶ時間はない!緊急オペ室に運べ!」
「CT室には!?」
「そんな時間あると思うか!?ゴッドハンドが何とかしてくれる!急げ!」
一階が急激に騒がしくなった。と思えば超高速で通り過ぎていく真っ赤なストレッチャー。
珍しく静かな時間帯に、この病院始まって以来の危篤患者が運ばれてきたのは幸いだったろう。

「前口上とかいいからさっさと始めちゃおうか。私は脳の方の処理するからみんなは胸部の方お願い······」
『わかりました』
「あ、この子救急隊員さんによると身寄り居ないみたいだから、皆が最善と思った施術をマッハでやって」
そう言いながらも高速で手を動かしていくエルに対し、何かを言おうと思った壮年の医者が口を開く。
「······見捨てる、というのは?どう考えても患者の体力保ちませんよ······」
「あなたは······うん、もう医者やめていいよ。体力尽きる前に、全部終わらせれば、良いんだよ······!」

カラン、と音がした。······脳内に入り込んだ銃弾が取り除かれ、器に落とされた音である。
それを聞いては他の医者も一言もなかった。ただ眼前の作業に集中するだけである。

「心停止しました······!」
「こっちは大丈夫直接マッサージして!人工血管の移植は!?」
「既に縫合も済ませてあります!」
「よし!拍動安定したら教えて」
頭部は既におおよその処置を終えているようだった。エルは患者の頭部を見ながら、どこからか持ってきたメモ帳に何かを書いている。
「損傷部位は······こことここかぁ······深くなくて良かった。これならリハビリさえすれば多分日常生活に支障は出ないはず······後は脳ヘルニア起きても良いように薬はこんな感じで······感染症誘発したらこうすればよし······と」
「拍動再開しました!」
「おっけー······耐えてくれたね。輸血絶やさないように。あと人工呼吸器も持ってこよう。あとは──」

と、言いかけたときだった。
今まで整っていたエルの姿勢が、大きく揺らいだ。
そのまま彼女の身体は、何の抵抗もなく横に倒れていく。

185:◆Qc:2022/04/18(月) 23:02

>>184
まるで泥に沈んだかのような眠りだった。
言おうとしていた、叫ぼうとしていた言葉は言えずに、逆に喉に何か空気とは違うものが挟まるのを感じた。


言おうとしていた言葉。何だったっけ?
ああ、そうだ。

あとは、
あとは、あとは──
「······状態に、······っ!ゴホっ······!」

······休憩室の最奥。まるで戦場のような病院の中、一番上等なベッドや布団があるというのは専らの噂である。
そこにエルは横たわっていた。······どうやら倒れた時にここまで運ばれたらしい。
患者はどうなっただろうか。······丁度メモ帳を手に持っている時に倒れた為、気の利いた医者が居れば何とかなるだろう。
それよりも問題なのはあの後に控えていた3件のオペだが······と、そこまで思考を回した時、研修医が入ってきた。

「あ。ちょっといい?」
先程の手術の時には当然居なかった顔である。
「は······はい、なんでしょうか」
少々怯える彼の様子を無視して、エルは質問を始めた。
「私がここに運ばれてきたのは何時くらい?」
「分かりませんが······19時に僕が来た時······休憩室に沢山の先生が詰めかけていたのは覚えてます」
エルは時計を見た。······現在時刻は4時。つまりざっと9時間くらいは寝た、というより気絶していたことになる。
「そっか······オペはどうなったかわかる?」
「えっと······先生含めて院内総出で行った緊急オペのことですか?」
「そうそれ。穿通性頭部外傷の方」
「先生が倒れた後、シマダ先生が他の方々をまとめて無事に完了させたそうです。いつ容態が急変してもおかしくないので今はICUに入れてるみたいです」
その報告を聞くと、エルはほっとしたような表情を浮かべた。ただそれも一瞬のことで、次には不敵な笑みを浮かべる。
「へぇ、シマダ先生がねぇ······他のオペは?」
「移植手術でもないですし······どれも緊急性はないので保留にしてありますが」
「患者に説明は?」
「しました。エル先生が過労で倒れたと言ったらどなたも口を揃えて『待ちます』と······」
「······結局私がやるんだね。まあいいけど······」
布団を整えながらエルは呟く。······9時間も眠ったおかげか、目の奥に油汚れのようにこびりついていた疲労が多少消えた気がする。
「報告ありがとね。オペは明日中に全部やるから······今はあの患者に集中するよ」
「わかりました。伝えておきますね」
そう言って研修医は駆け出していく。
その後ろ姿を見送りながら、エルは『輪廻族』としての記憶を少しずつ紐解いていく。
······彼女が今まで出会ったことのある輪廻族は10人を優に越している。······が、同じ世界に、同じタイミングで転生した人数はこの世界の3人より多かったことはない。
勿論一つの人生で出会える人の数から言って、そんなものはほとんど参考にならないことは承知している。
だが──どうしても信じられなかった。

あの重症を負った患者──夜村夢花といった──が、輪廻族であるらしいということが。

186:鷹嶺さん◆lIlJ.:2022/05/02(月) 00:11

『プリクエル/流れる水の魔法少女』
 
【プロローグ】
 
 三日月邸の門扉が夏の日射しに焼かれている、金属製かつ黒い重厚な門扉は迂闊に触れれば火傷しかねない。
 七月の頭だが気温はすでに三十度を超えていた、私は麦わら帽子に白いワンピース、それにサンダルという出で立ちだが、暑いことには変わらない、もはや服装で調節出来る範疇を超えている。
 私は垂れる汗を拭い三日月と書かれた表札の下にあるインターホンのボタンを押した、すぐにインターホンのスピーカーから少年の声が響いた。
 
「雨流様ですね、どうぞお入りください、姉がお待ちしております」
 
 声の主は三日月獅王(みかづき れお)、私を招待した三日月織姫の弟だ。
 獅王が言い終えると門がゆっくりと開いた、私は言われるまま玄関扉へと進む、門から玄関扉までの距離は天櫻路家と比べて十歩ほど遠い、さすがは天下の三日月だ。
 
 私がこんな金持ちの豪邸に呼ばれる理由は一つしかない、先日の一件についてだろう、あの時三日月織姫は改めてお礼がしたいと言っていた。
 
「雨流様、暑い中お越しくださりありがとうございます」
 
 扉を開けると獅王が深々と頭を下げて出迎えてくれた。
 
「私に頭は下げなくて良いよ、あと様付けも無し、私の事はアイナって呼んでくれ、君のお姉さんもそう呼んでいるよ」
 
「は、はい分かりました」
 
 三日月邸に入ると玄関にまで冷房が効いていた、汗が一気に引いていく。月々の電気代が気になるのは私が庶民だからだろう。
 
「あ、それからこれ二人で食べて」
 
  私は獅王に紙袋を渡す、中身は五百円分の駄菓子の詰め合わせ。
 
「これは……!」
 
 中身を一瞥するなり少年の目がキラリと輝く、頬も僅かに緩んでいる、嬉しさを隠しきれていないようだ。やっぱりかわいいなぁ獅王は。
 
 そんなかわいい獅王に案内され私は応接室に通された、高級そうなカーペットが敷かれ、これまた高級そうなソファーとテーブル、窓際には花瓶台が一つ置かれその上には向日葵の生けられた花瓶が乗っている、いかにも金持ちの屋敷の応接室と言った部屋だ、この部屋の物だけでちょっとした車くらい買えてしまいそうだ。
 私はソファーに腰を降ろし三日月織姫の登場を待った、真実の魔法少女三日月織姫が応接室に姿を見せたのはそれから一分ほど経ってからだった。

187:鷹嶺さん◆lIlJ.:2022/05/06(金) 01:03

「待たせてすまない、アイナ先輩」
 
「いや、私も今来たところだよ」
 
 織姫は私の向かいに腰を降ろし、話したくてうずうずしていたのかすぐさま口を開いた。
 
「それじゃあ早速だが先日の」
 
「あの時お礼は要らないって言ったんだけど」
 
 人を襲う怪物であるナイトメアと戦う魔法少女の世界で助け助けられはよくあることだ、毎回お礼なんてもらっていられない。
 
「まぁ、最後まで話を聞いてくれたまえ、先輩。今日アイナ先輩を招待した理由はお礼がしたいからだけではないんだ、情報共有がしたくてね」
 
 織姫の言葉が真剣味を帯びる、情報共有、魔法少女(わたしたち)の間で共有するような情報なんてそう多くはない。
 
「クラウン?」
 
「あぁ」
 
「そう、詳しく聞かせて」
 
 織姫の肯定に私は身を乗り出していた、クラウン・ナイトメア、大勢の人間を食らい成長した上位個体、クラウンの出現は魔法少女にとって死活問題に他ならない。
 
「あの夜、あの場所には二体ナイトメアが居たんだ」
 
 織姫はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
 
「一つは先輩も知ってる奴、もう一つは蛸みたいな触手のある奴だ、そうだな順を追って話そうか。あの夜、私は触手のナイトメアと戦っていた、その時はまだクラウンではなかった、例えるなら羽化寸前のサナギかな、で、触手のナイトメアなんだが奴は確実に一人は魔法少女を食ってる、クラウンに進化するのも時間の問題だよ」
 
「決戦の刻は近いってことね」
 
 私の呟いた言葉に織姫は静かに頷く、真実の魔法少女である彼女の言葉なら信用に値する。
 
「間違っても一人で、なんて考えるなよ、先輩?」
 
「分かってる、紅姫と撫子も連れていくさ」
 
「……あぁ、そうしてくれ、クラウンとの戦いに戦力の出し惜しみなんて不要だからね」
 
 私は首肯し、前回のクラウン戦を回想する、あの時は私と織姫を含む四人掛かりでなんとか撃破することが出来た、辛勝だった。
 今回はどうだろう、紅姫と撫子は魔法少女一年目、当人は強くなったと思っているようだが、私から見ればまだまだ未熟だ、不安は残る。
 
「織姫、今の私達でクラウンに勝てると思う?」
 
「勝つ、それに紅姫も撫子も先輩が思っているより強い」
 
 織姫は自信たっぷりに即答した、満面の笑みを浮かべている、どうやら負けるとは微塵も思っていないようだ。
 私も強気に行きたいけれど、どうしても脳裏に最悪の情景が浮かび上がる、それだけ後輩達を失うのが怖いということなのだろう。
 
「……ねぇ織姫。もし私に何かあった時は、後輩達のこと任せていいかな?」
 
「どうした、最強の魔法少女らしくないよ、アイナ先輩?」
 
「もしもの話、こういうのって予め決めておいた方が良いだろ」
 
「わかった、もしそうなった時は私が責任を持って面倒を見ようじゃないか」
 
「ありがとう」
 
 三日月家に支えてもらえるなら何も心配は要らないはず、頼りにしているよ織姫。
 
「ところで、せっかく来たんだしプールで泳いでいかないか?」
 
 織姫は突然立ち上がり言った、水着なんて持って来ている訳ないし、何より。
 
「私、泳げない」
 
「大丈夫、足の着く深さだし、それに水着も二人分ある」
 
 どうやら向こうは準備万端のようだ、ここまでされたら断る理由もない。
 
「わかった、どこで着替えれば良い?」
 
 それから私達は夕暮れまでプールで遊んだのだった。

【プロローグ完】

188:◆RI:2022/05/10(火) 00:15

『黄泉比良坂を上るまで』


「ヘーイ!!」
「えっ!?あっうそ!!!」
「え〜この勝負、命の勝利〜」
「くっっそ…!!!あともうちょいだったのに…!」
「あい変わらず雑魚w」
「は?殺そ」

夕方、生暖かい風が窓を通してカーテンを揺らす、自分たち以外にはもう誰もいない教室の中、笑い声とカードを切る音が聞こえる

「次何やるよ、ババ抜きは景雑魚いし」
「は〜〜〜????潰しますけど、俺ハンデしてただけだし、ボコしてやるよ」
「やってみろ〜〜!!!上等迎え撃ってやるぞ!!!」
「カードもまともに切れない雑魚どもがなんかゆーとりますわ」
「「は??????」」

喧嘩腰に言い合いながらも、所々に笑い声が零れでる
とうの昔に下校チャイムはなり終わり、静まり返った校舎に響く自分たちの声はどこか寂しさを覚える
こんな時間まで教室にいるのは久しぶりだ、なんたっていつもはみんな部活でさっさと放課後は教室を出ていく、そういえば、こんな風に3人集まって遊ぶのも久しぶりなのかもしれない、気にしたこともなかったから、忘れていたけれど

「(でも)」

でも、今日集まれてよかったと思う、だって、もう終わるのだから

また明日、そう言って別れて、明日会う日はもう終わる


明日は、俺たちの、卒業式なのだから

189:◆RI:2022/05/10(火) 00:15

ガラガラッ

「おい!長谷川!夕彩月!春夏秋冬!まだいたのか!」
「うおっ!やっべみっちゃんじゃん!」
「やべーみっかった」
「みっちゃんいうな!先生だつってんだろ!、…、まぁ、帰りたくない気持ちもわかるが、下校時間もすぎてるんだ、暗くなる前に帰れ、ほら」
「うえ〜い…」
「みっちゃんタイミングさぁ…」
「みっちゃんいうな!ほらほら、帰れ!」
「けち〜!」

担任が声をかけてきたことによって、ようやく時計が18時を回っていたことに気がついた、怒る担任をからかいながらもトランプを片付ける
くっつけていた机を離し、背もたれにひっかけていた上着を着て、気だるげに荷物を背負う

「あーやだやだ、かえりたくね〜、最後だしとめてよみっちゃん」
「何言うとるか、さっさと帰れ、明日はしゃんとしろよまじで」
「てぃーぴーおーはわきまえてますぅ〜〜」
「嘘じゃん」
「は?嘘じゃないし」

その場の流れで教室を出て、職員室に戻る担任も一緒に軽口を叩きながら廊下を歩く、夕焼けは橙色に世界を染め、自分たちの影は奥へと伸びる

「…にしても、お前らも卒業か」

担任が呟く

「…、え、なにみっちゃん」
「感傷にひたってんの?ようやく俺たちの大切さわかった?」
「可愛くねぇなお前らは、問題児共」
「ひっでぇ」
「そりゃねぇよ」

日差しが眩しくて、担任の顔は見えない

「でも、お前らの騒がしさが無くなるのは、たしかに寂しくなるかもな」

──────、

190:◆RI:2022/05/10(火) 00:15

「なんかみっちゃん、しんみりしてたな」
手を振って校門を出る俺たちを見送る担任を後ろ目に、景が告げる

「……明日、卒業式かぁ…」

足元を見下ろし、そのへんにある小石を蹴り飛ばす、それは思っていたよりも強くはね、あらぬ方向へ飛んで、ポチャンと音を立てて溝に落ちてしまった

「……」

少しの沈黙が冷たい、騒がしい自分たちが、こんなにも静かになったことはあまり無い、と思う

今歩いている夕暮れの帰り道を、もう3人で歩くことはないのだろう
懐かしさを覚える景色が、本当に「思い出」になってしまう

「なぁんか」

頭の後ろに両手を回し、命が口を開く


「─────ずっと高校生だったらいいのにな!」



「…、命?」
「…ずっとそうだったら、みっちゃんまたからかえるし、……お前らとも、また、帰れるし」
「………」

口元を書きながら目を泳がせる命は、照れたようにむぐむぐとくちをうごかしている

「……デレ期?」
「ちっげぇ」
「デレ期遅くない?もう高校生活終わんのに」
「うるさいなおまえら!!!今のナシ!!前言撤回!!」
「大体さ」

「また3人で集まればいいじゃん」

詩弦の言葉に、ぎゃーっと荒ぶっていた命が固まり、目を見開く
そんな様子を見ても詩弦は素知らぬ顔でそのまま言葉を続ける

「二度と会えないわけじゃないんだから、また適当に集まってここにまた来ようよ」

「…詩弦」
「それはそうだな、大学みんなバラバラだけど、どーせ集まってるだろうし、いつものおばちゃんのコロッケ食いながら散歩しよ」
「…景」
「それともなに?お前はもう合わないつもりだったの?命」
「─────」

わざと言わせようとしているのだろう、ニヤニヤとした2人の目線が命にへと集中する

「……ん、なわけないだろ、っ全員無理やり連れてきてやるからな!!!時間無視していくからな!!!」
「それはちょっと」
「プライベートとかあるし」
「はぁあーー????お前らなぁ??????」
「んはははっ」
「んふふふっ、はーっ、ほんと笑う」
「この野郎ども……!……っふふ、っははは!」

人通りもある帰り道に笑い声が響く、微笑ましそうに自分たちを見る周りの目にも気が付かず、つつきあいながらも足を進める

「また明日」と言えなくなっても、「また今度」に変わるだけ

191:◆RI:2022/05/10(火) 00:16

「あ、そうだ、明日の卒業式!誰が1番でかい声で返事できるか競お!!」
「お、サッカー部なめんなよ命!声出しとかよゆーだからまじ」
「運動部全体声出ししてるから俺らにも全然分があるんで、舐めてかかると負けるぞ景」
「そうだぞけーい!さっきもババ抜き負けたんだから絶対次も負ける」
「はあ〜ん?殴り合いか??いいぜやってやんよ!!」

どれだけたっても、自分たちは変わらず、馬鹿をする

「じゃ!最下位は明日、卒業式の後にコロッケ奢りな!!」
「上等!」
「絶対負けないからな!!」

また明日、そしてその後も、また

「あー!」

きっと3人で

「明日が楽しみだな〜っ!!」

きっと















キキーーッッッ!!!


ガゴンッッッッ!!!!






「──は?」

きっと

俺たちは、ずっと、一緒なのだから

192:◆RI:2022/05/10(火) 00:16

「─────、─」

あかい、まばたきをする

橙色しか映さなかった視界に、異質な赤が流れている

「──、は、…?」

あかい、まばたきをする

鉄の匂いがむせ返る、誰かの悲鳴が聞こえる

「な、…、は……、?」

あかい、まばたきをする

何度も瞬きをしているはずの瞳が霞む、目の前の景色が何も見えない



あかい、まばたきをする
そこに命はいない

あるのは、命だったはずのそれをつぶすトラックと、そこから流れる赤、赤、赤


「みこ、」
「み、こ、…と…?」

脳が理解を拒む
言葉にしようが、自分たちは信じられない、信じたくない

でも、でも、むせ返る血の匂いが、叫び続ける有象無象が、朱くてらす夕暮れが、それを、その光景を、現実だと知らしめる

193:◆RI:2022/05/10(火) 00:16

すべて、見えていた

「え」という驚愕の顔を浮かべた命の体が、ぐしゃりと嫌な音を立てて吹き飛ぶ様を

飛沫を上げる血、折れた四肢、見るに堪えない潰れた体、飛び散るガラス、血、血、血、血、──即死であるのは、明らかだった

そう、正しく認識した瞬間、日常の情景が、一瞬にして地獄に変わる

ついさっきまで生きていたものが、友人だったものが、また明日と、声をかけあったものが、あまりにも無惨な姿で目の前に転がる

周りの声も、ざわめきも、もう耳には届かない
届くものは唯一、動かなくなった命を嗤うかのように早まる、己の鼓動だけ


先程まで話をしていた友人が、無慈悲にも、世界に潰された

ひゅっ、と、喉の奥から、隙間風のような歪な呼吸音がきこえる
どんどんと高鳴る胸の鼓動と連動するように呼吸もどんどんと荒くなり、正しい呼吸の仕方をもう思い出せない
その代わりにというように混み上がってくる気持ち悪さに、頭がクラクラとする、酸欠のせいもあるのだろうが、そんな事を考えるほどの脳は、もう残ってはいない

「み、こと、みこと、みことっ」
となりで、みことの名前を呼ぶ声が聞こえる

「みこと、なんで、しんだ?みことが、なんで、なんで、しんだ?しんだしんだしんだ、みことが、みことがしんだ?なんで、なんでなんでなんで、またあしたってなんでみことなんでしんで、しんだ、しんだ、みことが、─みことがしんだ」

もはや文章とは言い難い言葉の羅列は、狂気のように彼の声をうわずらせる、片手で目を押え、見えるもうひとつの瞳は目を見開いたまま、友だった肉塊に釘付けにされ、ぼろぼろと雫を流している

194:◆RI:2022/05/10(火) 00:17

「──────、」

あぁ、と思う

なぜ自分は今、ここにいるのだろうと、そう思う

数分前には同じ道を歩いていたのに、どうして、どうして命だけ?

どうして命だけがしんだ?どうして命だけが死ななければならない?どうして?


『明日が楽しみだな』

「─────────」

あぁ、と思う

そうだな、命

明日は、卒業式、だったものな

ひとりだけ、先に行ってしまうのは、さびしいものな

かちゃりと、赤い海にひたった鋭い硝子の破片を手に取る

「それならおれが、あいにいってやろうな、…ずっといっしょと、やくそく、したものなぁ、?」

尖った部分を喉に突きつけ、ガラスをにぎりしめる、持つ手が斬れ血がでようとも、一欠片も痛みなど感じない

自然と、そして歪に口角が上がることが分かる、だんだんとぼやける視界と流れる暖かいものが、酷い現実を隠してゆく

「まっていろ、みこと、すぐにそちらにいくからな」

そういって、もう、何も見ないように瞳を閉じて、硝子を喉に─────

195:◆RI:2022/05/10(火) 00:17

目を覚ました

「───────」

    ・・・・・・・・・・
────目を覚ましてしまった

結局、自分は死ぬ事は出来なかった

周りの大人たちに取り押さえられて、残った友人と共に、命とは別で呼ばれた救急車にのせられた
何かを叫んだような、酷く暴れてしまったのだろうと、痛む喉と関節で察する
そして2人して気絶してしまったのだろう、薬品の匂いと白いカーテンの先に友人が、同じように、そしてぼうっとしながら、起き上がっていた

「…………し、づる」
「………うん」
「…、み、……っ、…」

声が出ない、あいつの名前を呼べなかった

「…、…まだ、」
「……?」
「……………まだ、日付、変わってないって」
「……え、」
「………明日、そつぎょう、しき」

卒業式
あいつがいない卒業式

『誰が1番デカい声で返事できるか競お!』

「っ…!!」

唇を噛む、歯を食いしばる、何が競うだ、何が卒業式だ、どうして、どうして、どうして!


「なんで、命だけっ!!」

怒りを向ける矛先は自分しかいない、勢いのままに自身の足を殴っても、なにが晴れる訳では無い、ギリギリと軋む歯がかけてしまったとしても、気にする気にも慣れそうにない

ただあるのは失意と、後悔と、怒りと、悲しみだけ


「…………おれ、」

隣からくぐもった声が聞こえる、ハッとそちらを見やれば、ベッドの上で、足を引き寄せ、三角座りのようにして顔を膝に疼くめる友

「おれ、もう、いやだ…」
「……し、づ」
「……そつぎょうしきも、だいがくも、このさきのぜんぶ、もう、いやだ」

「────おれは、ずっと、さんにんで、ずっと、いっしょにいられればよかったのに」

顔は見えない、でも、声色で、その言葉が本心なのだと、はっきりとわかる、なにより、なにより、そんなことは自分だって一緒だった

「…………あした、そつぎょうしき、けいはいく?」
「……………」
「……おれ、でかいこえで、へんじ、できそうにないや…」
「……、…おれ、いきたくない」
「……おれも」


『は?なにいってんのお前ら』

196:◆RI:2022/05/10(火) 00:18

「「─は?」」
なん

こえ、

こえ、こえ

しってるこえ、ききたいこえ、いま、いま、いま、
ききたかったこえ


『お前らがやんなかったら僕1人で虚空に叫ぶことになっちゃうだろ!!!行けよ卒業式!!叫べ!!』

「な、ん」
「は、?」


ふわふわ、ふわふわ
りかいふのう、りかいできない
ふわふわ、ふわふわ、浮いている

『……、よ、なんか…幽霊になったっぽい、僕』

いつもの声、命の声、聞きたかった声、取り戻せないはずの声
見た目はいつも通り、ちょっとふわふわ浮いていて、ちょっと体が透けている

でも

『!?おい!?おいちょっ!!!』

考える時間など惜しいほどに、体は真っ先に、愛おしい友に手を伸ばしていた



『……いやいやいや、幽霊なんだから透けるに決まってんじゃん、馬鹿なの?そりゃあベッドから落ちるよ』

「「…………」」

ほんとうに、せめて、抱きしめさせてくれ

197:エンジュ◆6E:2022/05/11(水) 21:53

「さぁ……終わらせよう、僕達の滅びを。始めよう、僕達の裁きを」
「了解、祝福者の接続の許可をマザー」

「アーカイブより返答……『ようやく終わるのですね』接続権限を付与、対象範囲―全ての滅亡因子―」

「パニッシュメント・イブ……いいえ、『ミライ』接続開始」

「―語られる幻想の有象無象
   騒がしい都会の喧騒
 影に潜み爪を研ぎ、今宵も命を喰らう―」
「……接続『狂う夜の獣の王(ルナティック・クラウン)』

「―嘆きの音色を奏でて、破滅の言葉を唱えて
 放たれた鉄矢をその身に受けても、歌姫はなお謡う
  憎しみさえもあなたが教えてくれた心だから―」
「……接続『ただ一人に捧げる子守唄(ディープナイトメア)』」

「―飛び交う鉛の殺意
 汚される命、空、光
 失い、奪い、そして枯渇する
  絶望した生者が死神を気取る―」
「……接続『鉄の鴉は骸をつつかない(アームドクラウズ)』」

「―如何なる者も彼を理解せず
 如何なる神も彼を救済せず
 如何なる時も彼を罰さず
 乾いた土に咲く花に、降り注ぐのはそれらの血
 己が虚無でないと教えておくれ―」
「……接続『妖刀―現(うつつ)』」

「世界の滅びを望む意思(テツクズ)よ、継承者はここにいる!!
 無限の火種よ喜べ、僕らはおまえが望むよりずっと愚かだぞ!!」
「さぁ、叫んで。終わりゆく世界とこれから始まる世界の神の名を……!!」

『機械仕掛けの継承者―デウス・ネクス・マキナ』

198:マリン:2022/05/11(水) 22:28

「うぅ.....」

また俺は魘される。
一番見たくないあの光景が何万年経っても
頭から永遠に離れない

「幸せだったわ...ありがとう、マリn」

ザシュ(斬られた音)

「ラ...ラナ....ラナイザ!!!!」

一番人生でショックだった過去の記憶
妻が目の前から、産まれる筈だった子供達が
目の前から消された事

「ラナイザっ!!!!はぁ!はぁ!....はぁ...はぁ...」

見たくないのに強制的に見される悪夢
どうして俺だけが大切な人ほど、目の前から
消え去れるのだろう。
何故、俺だけ....愛を与えてくれないんだ
そしてまた俺は眠りに堕ちる、抵抗出来ない過去の
記憶に縋りながら

199:◆RI:2022/06/26(日) 02:52

「あ、あであ、アデアの、へや、片付けようと思ったら、ベッドの下に隠し扉があって…」

そこからこれが、と、アルクが出してきたのは

「…はこ…?しかも鍵ついとるやん」

桃色の、小さな鍵穴が着いた箱、こんなものは見た事がなかった

「鍵は見つかんなかったんだけど…ユースなら開けられるかなと思って…」
「…あー、うん、ちょおまって」

そう言うとユースは服の中からピッキング用の針金を取りだし、カチャカチャと鍵穴に差し込む、数分後、かちゃんという音が小さく鳴り響いた

「─あいた」

そういうと、皆がゴクリと喉を鳴らし、その様子を見たユースが、恐る恐る蓋を開く、中身は


「────────え」

中身は、

「…こ、れ」

中に入っていたものは、

「……これ、俺があげた、栞…」
「これ…俺があいつに渡したペンやん…」

箱の中に、綺麗に整頓され、丁寧にしまい込まれていたのは、どれもこれも、俺たちが彼に贈ったものばかりだった

大切に保管されているそれは、まるで宝物のようで
手に取る度にその時の情景を思い出す

「──あ」
皆が思い思いの物を手に取る中、俺もまた、1つ目を引かれるものを見つけた

黒い手帳

「これは…」

そうだ、これは、俺が、アデアの幹部就任時に渡した手帳だった

渡してから1度も持っているところを見た事がなかったから、とっくに捨てているものだと思ったが…

「……」

ぱら…とページをめくれば、そこには日付と、お世辞にも上手いとは言えない字の羅列が刻まれていた

その日付は、俺が、アデアに、この手帳を渡した日のものだった

200:◆RI:2022/06/26(日) 02:52

7/6
あるでぃあからてちょうをもろうた
なにかけばいいかわからんっていうたら、にっきでもかけっていわれたから、かいてみる
じのれんしゅうにもなるやろやって
つづけれるようにがんばる

「────」

日記、それは日記だった
それは、今までのあであの全てが描かれていた

7/7
きょうはたなばたなんやって、あるくがいうてた
おねがいをかみにかいてささにつるすんやって
そんなんでかなうんやろか
おりひめとひこぼし?とかいうんはよくわからんかったけど、またしりたくなったらきいていいって
やさしいなぁ

7/8
きょうはなるとめれるがたたかっとった
ふたりともけがしとるくせにやめへんからいしすがとめにはいってた
めっちゃおこられとる、おもろ

7/9
きょうはサイドとじのべんきょうした
じかくのむずかしいねん、でもとりあえずみんなのなまえはちゃんとかけるようになった
おれえらすぎ、サイドにもほめられた、やったー


そういえばアデアはここに来た当初は、話すことや読むことは出来るが、文字を書くことが得意ではなかった、手帳を渡したのだって、練習にちょうどいいだろうと考えたからだ

最近ではこの頃の拙い文など感じさせないほどに上達し、彼の報告書にはほとんどミスがなかったことを思い出す

パラパラとページをめくって行けば、その成長過程がはっきりとわかり、彼の努力をひしひしと感じさせた

ある日には新しく就任した仲間の話を
ある日にはいつものような喧嘩の話を
ある日には己が参加した戦争の話を
ある日には、他愛もない、日常の話を

この手帳には、アデアが在ったという痕跡が、これでもかと詰め込まれていた、


そして


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