あなたの目に、ふととある店が映り込む
まだ昼だと言うにもかかわらず、その店は『星空』を体現させたような見た目で佇んでいる
昼間の中の星、常識の中の非常識、普通の中の異常
生き物とは、そんな非日常に好奇心をくすぐられるものだ
カランコロンと扉を開く
『いらっしゃいませお客様、どうぞ、お好きなお席へ』
開いた先に視界に飛び込むものは、あまりに美しい『星』であった
(異形と人間が共存している世界線、普通の町と何ら変わりなく、異形という『異常』と人間という『平常』が混じりあって蠢いている
マスターは星の異形頭
参加者は人間でも異形でもなんでもOK)
(荒らしはスルー定期
なりすまし、誹謗中傷等は他のお客様のご迷惑になりますのでおやめ下さい)
カランコロンと扉に施されたベルが鳴る
外に出てきた誰かは、扉のプレートをいじっているようだ
そしてもういちどベルが鳴りひびく
かけられたプレートには
《OPEN》
『珍しい、ここにも店が経ったのか』
(カランコロン。軽快な音を立てて扉を開ける、黒髪赤目の三白眼の男がいた)
『おや、いらっしゃいませお客様、お好きなお席へどうぞ』
(店の奥から声が聞こえる、出てきたのは…あたまがなく、かわりに『星』が浮いている『異形』だった)
『えぇえぇ、良い場所に建てられました、どうぞご贔屓に』
『おう、そーさせてもらうわ。』
(コーヒー、ブラックで。そう流れるようにつぶやくと細いが筋肉質の腕で椅子を引き、少し乱雑に座る)
『はい、かしこまりました』
(呟き声をしっかりと耳に入れ、手際よくコーヒーの用意をしてゆく)
『……どうぞ、お客様、コーヒー、ブラックにて』
(そう、綺麗なカップにつがれた一杯のコーヒーを差し出す)
『ごゆるりと、おくつろぎ下さい、ここは【夜】、ですので』
『ありがとよ』
(片目を瞑ると、代金はいくらだろうか、と首を傾げる)
『あぁ、代金でしたら…こちらのメニューにて、まぁお客様は来店おひとり目でございますし……サービスにしておきましょう、お代は結構です』
(感情は残念ながら分からないが、ゆるゆると手を振る様子から、のほほんとした性格なのがわかる)
『その代わり、先程も言いました通り、ご贔屓にしていただければ』
『あぁ、普通にうめぇしな。』
(こく、と飲み込むとニヤッと笑って)
『それは良かった、光栄にございます』
(胸に手を当て、紳士的に頭を軽く下げる)
『…趣味として始めたものですが、気に入っていただける方がいらっしゃるなら、よかった』
『おう…なんかありがとな。』
(くぁ、と大きくあくびをしてまた来るわ。と扉を開けて羽を取りだし空を飛ぶ)
『おや』
(飛び去って言った彼をおってゆるりと扉から顔を出す、飛び去る際に舞い落ちる羽がまるで)
『驚いた、人間かと思っていましたが…まるで天使のようだ』
…誰かいねえのか?
(トントン、と扉を叩く。ボロ布のような服を身にまとった浮浪者のような男)
『おや、いらっしゃいませ、ようこそ当店へ』
(お好きな席へお座り下さいと、机を拭きつつ告げる)
ああ、すまねえな…あんた『異形』か。
神さんにでも会ったみてえだ…
(目を丸くしてエトワールの頭を見つめながら、言われた通りに空いた席に座る)
店主さん、水はタダか? 見ての通り…一文無しでよ。
(ニヒルな笑みをこぼす)
『おやおや、お褒めいただき光栄です、ええ、お代はいりませんよ』
(片手を胸に当て、軽くお辞儀をする)
『少々お待ちくださいね』
(そう言うと、グラスにコポコポと音を鳴らしながら水を注いでゆく)
『どうぞ、あ、こちらもオマケしておきましょう』
(と、引き出しから包みに入ったクッキーを取り出し、水に添える)
…クッキー…はは、ありがてえなあ…
(数日ぶりに見た食べ物を遠い目で見つめ、注がれた水をちびちびと飲む)
『どうやらおつかれのご様子ですね…、少しお休みになってはいかがでしょうか』
(ここは『夜』ですので、と店の奥を指さす、底には小さなプラネタリウムを思わせるような空間と人が寝られるほどに大きなクッションが置かれている)
ほー…変わった店だな。ん、ごちそうさま。うまかったぜ。
(クッキーと水を全て咀嚼し、お礼に一つ頭を下げると言われた通りに店の奥へ向かう。ぼすっ、とクッションが音を立てて体を沈み込ませる)
…なぁ、よお。星の店主さん。
『はい、なんでございましょう』
(無い首を傾げながら、問いかけに反応する)
俺の話を…聞いちゃくれねえか。
もう誰も知らねえ、くだらない身の上話をよ。
(目を伏せて追憶の表情)
『…ええ、勿論、そういったことも、私の役目ですので』
(そう言うと手袋を外し、パチンと指を鳴らす、するとふわりとベルモントの周りへと、宇宙に打ち上げられた衛星の様なものが飛んで行った)
『【星】は忘れませんので』
…ああ、なんか夢みてえだな。こんなに綺麗な星は初めて見たぜ。
(自身の周りを浮遊する星に目を瞬かせながら、すっと目を細めゆっくりと口を開く)
……俺ぁ、元軍人だった。
『おや、それは…』
(人間の軍人、となると…)
『大変なことで…』
そりゃあ大変だったが、成り行きでも食いっぱぐれはないから悪くなかったぜ。
ここからちと離れちゃいるが俺ん国じゃあんまり激しい戦争はなかったしよ。
だが…そんな俺でもやべえって時があった。それが最初で最後だったんだ。
ちょっとした戦争だった。そこで軍の友人がよ…俺を流れ弾から庇って…
そいつは「花は嫌いだから代わりに煙草を手向けてくれ」って言ったよ。
それから俺は軍をやめて…あいつの墓には5箱の煙草が並んだ。
だがそれっきりだったんだ。今や小さい花一つも買えやしねえ。
(ふるふり、と力なく首を振って笑う)
『…良いご友人だったのですね』
(片付けを終え、相手のいる場所へと近づく)
『………わざわざ茶化す必要はありません、笑う話でも無いでしょう、あなたにとって、笑っていないとやっていけない場合は別ですか』
(無理をなさらず、と、高い位置から顔を覗き込む、プラネタリウムと混ざって、その顔は大きな惑星のようだ)
……あぁ、キレーだなぁ…
(擬似的な星々とエトワールの輝きが視界で淡く光り、眩しさに双眸を細める。そうしていると、やがて汚れた頬を滴が一筋伝った)
俺は、どうしたらいいのか…何回も考えたんだ。
それでも…こいつは誰にも売れなかったよ。
(ふいに懐から古ぼけた煙草を取り出す)
『…ええ、ええ、私は『星』でございますから』
(己も近くに座り、答える)
『……煙草、ですか』
戦場じゃ毎日のように人が死ぬ。
星みてーに散りばめられた死にいちいち構ってる暇はねえさ。
その権利も資格も、俺にゃないって知ってても…時々あいつのことを考えちまう。
こんな俺を見たらあいつは笑うだろうな…なんて。
なぁ…あんたはどう思う? 星の店主さんよ。
(煙草の箱をぎゅうと握り、エトワールを見やる)
『…人間の戦争は、私にはよく分かりません、勿論感情も、ですが、ええ』
『きっと笑ってくれましょう、あなたの背中を押すように』
(そういって、指を鳴らす、するとその空間に浮かぶ星たちが、美しくその光を増す)
『権利なぞ、『想う』ことに、必要がありましょうか』
『身勝手で、良いのですよ』
…っ、あーあ…俺だせーな。なんだって……
(エトワールの言葉に心が揺さぶられ、ポツリと煙草の箱の上に涙が落ちた。)
あぁもう…ぐ、ありがとう、ありがとう…
(何度も何度も涙を流す)
『いいえいいえ、良いのですよ、存分に、今はまだ、私しかおりませんゆえ』
(落ち着く声で、なんども告げる)
……ぅ、うあぁ、…っぐ……
(溢れ出る涙を必死に拭う)
あんた、あんたに…これを譲りたいんだ…あいつの魂が、落ち着けるように。
きっと星になれるように…
(嗚咽を上げながら、震える手でエトワールに煙草を差し出す)
『…ええ、分かりました、お預かりします、ですが、いつかはまたあなたの元へとお返ししますよ』
(受け取り、そう告げる)
『星になるのは、あなたと共に、いつかの先の未来、あなたが土産として、星と共にどうか持って行ってあげてくださいな、そのほうが、きっと、』
(喜びますよ)
あぁ、……ありが、とう…
(すぅ、と次第に瞼が落ちていく。長い間まともな環境で衣食住をしていなかったベルモントにとってこの場所はまさに楽園そのものだった)
『……良い夢を、あなたに、星の祝福があらんことを』
(瞳が隠されてゆく彼にそう告げる)
すぅ…すぅ…
(いくつもの光が瞬く星空の下、ベルモントは寝息を立てて完全に夢の中へと落ちた)
『……』
(眠った彼から少し離れ、数分後、布を持ってきてふわりとかけてやる)
『さて、準備でもしましょうか』
(そう、受け取った煙草を大事にしまい込みながら、店の奥へと入り込んだ)
「 ……?、ありゃ、こんなとこに店なんかありやしたかねぇ 」
( ふと視界に映り込んだ店を見て不思議そうに首を傾げながら不思議そうに呟き。手元にある書類と時間を見て、ふっとため息をつきながらそっと扉を押して。人気がない店内と星のような景色に少し感動したように瞳を開き。少し困った表情を浮かべて小さな声で呟き )
「 …こういうのって勝手に入っていいんでしたっけ? 」
『おや、いらっしゃいませ、……待ち合わせでしょうか?』
(入ってきた客の手元の書類を見て、仕事の打ち合わせなどだろうかと考えつつそう告げる)
「 …待ち合わせ、というよりおつかいって感じですねぇ……うちのお嬢さん変わりモノでして 」
( あははと乾いた笑いを零しながら、恐らくむすっとした表情で待ってる自分の主人を思い浮かべ少し苦い表情を浮かべて。書類から視線を上げれば比喩とかではなく星のような人を見かけ少し驚いたように目を開き、失礼と思ったのかすぐに少し困った笑みを浮かべて )
「 いらっしゃいませって事はあんたがこの店の方でよろしいんですよねぇ…いやぁ驚きました、お星さまみたいですねぇ……気ぃ悪くしたらすいやせん 」
『おや、ご存知ではありませんでしたか、私は『異形』です、『星の異形頭』と言いましょうか、そういう種族なのですよ』
(ですから、お星様というのは正解です、お気になさらず、と声をかける)
「 そういう情報はすこーし疎いんですよぉ… 」
( 異形と言われて少しきょとんとするものすぐに笑顔を浮かべて。あはっと乾いた笑いをこぼした後そういえば注文と思い、少し黙った後少し首を傾げながら注文をして )
「 コーヒーのブラックでお願いしても……? 」
『そうでしたか、では私が初めででしょうかね、なんともお恥ずかしい、……かしこまりました、少々お待ちください』
(特に恥ずかしそうな素振りは見せず、準備を始める)
( 久々にコーヒーが飲めるのが嬉しいのか少し表情をほころばせた後近くの席に座り、手元の書類をまた確認して。少し困ったように頭を掻きながら小さな声で少し不穏な事を呟き )
「 ……バラバラは少し刺激があれですかねぇ、なら不自然なほうがいいか? 」
『…………』
(客から聞こえてくる声に、何がバラバラなんだろうかと思いつつ、邪魔をしないよう静かにコーヒーを注ぐ)
『お待たせ致しましたお客様、こちらに置いておきますので、お好きなように』
(そう彼の斜め前程度の場所にコーヒーを置く)
( ことりと置かれたコーヒーにはっと書類から視線を上げ、視線を少し動かすとあったコーヒーに嬉しそうに表情を綻ばせ、一口飲んでほうっと一息をつき )
「 ……めちゃくちゃ美味しいです、いやぁもう久々に飲みましたよぉ、いつもお嬢さんにあわせてるので 」
( ふっと笑みを浮かべて心底嬉しそうに呟き。ふと手元の時計を見た後、ぎゅっと眉根を寄せた後そのままコーヒーを飲み干して )
「 もう少しゆっくりしたいんですがもう時間ですねぇ……お代はいくらです? 」
『えぇええ、何時でもいらっしゃってください、また珈琲をお入れ致しますので、お代はこちらとなります』
(会計の札を私、レジの方へ)
「 …えぇ、ごちそうさまでした 」
( お代をきっかり払い、そのままお辞儀をしてドアを開ければ、少し尊大な態度で無表情だが少し不機嫌そうな少女が一人。それを見てうげぇとした表情を浮かべたままその少女に駆け寄る )
「 初( うい )、遅い… 」
「 すいませんって……それよりもお嬢さんどっちの事件の方がお好みです? 」
「 …不自然な連続殺人、謎は面白くないと意味がないだろ? 」
「 さようですか、はいはい 」
( そう言って二人は夜の街に溶け込んでいった )
『…………』
(不穏な単語が聞こえたが、深入りをするものでは無いだろう、客を見送りつつ、次に来るであろう客への準備を始める)
……ん、俺…寝ちまってたのか。
(いまだ瞼の上で光る星空をぼやける視界でとらえ、ゆっくりと目を開ける。)
はぁ…
(ふと、手の中の喪失感に気付く。それは大切な煙草の面影。むなしく宙をかく指を見つめてベルモントは笑い、昨日の出来事を思い出した。)
ありがとうよ、星の店主さん。
(奥で準備をするエトワールの邪魔をしないように、軽い体を起こすと静かに入り口へ向かう。)
…また、な!
(パタン。そう言って、扉が小さく閉じた。心なしかその足取りは昨日よりも軽い。)
…ここは……店?
(不思議な様子で店を見つめる年端もいかない少年が一人。青い髪を無頓着に伸ばし、足には膝までの分厚いブーツ。どこか普通の少年とはいいがたい雰囲気をまとっている。)
(またまた参加させてもらいます!レポートお疲れ様です!!)
58:◆RI:2021/02/13(土) 23:14 「んむ、んー?あぁ、客かね」
(そんな少年に向けて、店の中から声が聞こえる)
「はろう、ここのマスターは少々店の裏に回っているよ、その辺のテーブルかカウンターで待つといい」
(そう、ショートケーキを頬張りながら少年の方を向き、手を振りつつ言葉を告げる先客がいた)
(ありがとうございます〜、いらっしゃいませ!)
(ちょっと、このスレの基本設定に追加して、クロスオーバーと言いましょうか、あらゆる世界線を混合している世界線に存在している店という設定を付け足そうと思います。分かりにくかったらごめんね)
(これからもご贔屓に)
ん…そうか…変な店。
ところで、手をかしてくれ。
おれは『鉄足』だ。
(入り口の前、開いた扉に手をかけたまま先客をじっと見つめる。
鉄足と呼んだ足はどうやら義足のことらしい。段差を上がれずにいるようだ。)
(多重世界線めっちゃいいと思います!)
「おやおやおや、それは大変だ、いいだろう、『お兄さん』が力を貸そう」
(言っても非力なのだがね、と、口にケーキを運んでいたフォークを置き、相手の側へ行き支えてやる)
「いやぁ、先客がいてよかったねぇ、『お姉さん』に感謝したまえよ、少年」
…よく分からない奴だ……おれもアンタも、”同じ“半端者か?
(支えられた体にぐっと力を入れ、段差を上がり、店に入る。
感謝もしない粗暴な態度で店内を何度か見渡し、やがてカウンターの一席に座った。)
アンタの名前は?
(幼い少年らしからぬやけに大人びた口調で尋ねる)
「はっはっは、礼は尽くしておいた方がいいぜ少年、確かに僕は半端者にも近いが…うん、完成体にも近いのだよ、そして覚えておきたまえ」
(自分も再び、座っていた席へと戻り、ショートケーキを1口口に含むと、そのままピッと、フォークを彼の方へ向け)
「僕は『シキ』、シキ・アクアティーレ、ここの常連客様だよ」
(そう、名を告げた)
シキ、か…覚えといてやる。
(向けられたフォークの刃先に少し驚いた素振りを見せるが、すぐに元に戻る。
床につかない足を揺らすでもなくそのままにして、肘を机につくと再び尋ねた)
常連客って…アンタ、ここの店長どんな奴か知ってんのか?
こんな変な店で、来る客も変だからきっと店長はもっとおかしい奴だ。
「知っているに決まっているさ、そして、店主は常識的な方だよ、安心したまえ」
(まぁ僕にくらべれば、どんな奴も常識人だがね、と笑う)
「そのうち帰ってくるだろう、見た目に驚き、中身に肩を落とすといい、案外つまらないやつかもしれないぜ?」
(なんちゃって、と、ペラペラと回る口に再びショートケーキを含む)
…やっぱり変だ……
(少し目を丸くしてシキを見つめる。その瞳には少しの期待と好奇心)
アンタは、おれの足…なんとも思わないのか?
(そういうと、自身の『鉄足』に目線を落とす)
「?いや、他者への興味はごまんとあるけれど、義足だろう?それ、なら僕もたまに作るし、べつに特殊なだけだろう」
(興味もある、好奇心もある、だがそれだけだ、好意も悪意も持つことは無い、いや、好意には近しい感情なのかもしれないが、『研究者』は興味を持った対象に『情』など持たない)
「思うことはあれど、同じ店に来た客同士、流石に手も口も出したりしないさ」
(そういうと、またひとつ、ショートケーキを食べた)
おれ…アンタの前じゃ普通ってやつだな。
あーあ、ほんと変な奴。喉乾いてきた。なんかない?
(初めて少し笑い、その笑みを隠すように正面を向く。
わずかだが子供らしい表情が垣間見えた。)
「お、いいねぇ、良い顔だ、……そろそろ来る、飲み物でも頼むといいさ」
(そういうと、店の奥から足音が聞こえてくる)
『おや、お客様がいらっしゃっておりましたか…お待たせ致しました、ご注文をお受け致します』
(そうすると、ひょこりと店の奥から『星』が現れた)
星…!?
え、なんだそれ…かぶりもんか?
(目をパチクリとさせ、行儀悪くカウンターに身を乗り出して『星』の店主を凝視する。)
『おや、異形頭をご存知ありませんでしたか、私は『異形』の種族の1つ、『異形頭』という種族の中の星の異形頭というものでして…』
「はっはっは!いい反応だねぇ!初々しい!」
(身を乗り出し尋ねる客に少々驚きつつも説明を行う、その横でケラケラと常連客は笑っている)
異形って…本の中だけかと思ってた。
しかも星なんか見たことないし…って、シキ、笑うなよ!
アンタが普通だって言ったんだろ!?
ったく…とりあえずなんかくれよ。
(ふてくされた顔でエトワールに向き合い、手のひらを差し出す。くれ、のジェスチャー)
「はーっ、はーっ、げほっ、っあー、エトワール、飲み物も頼むよ、喉が渇いているそうだ」
(大笑いしつつ膝をたたく、そのまま過呼吸のような呼吸をし、咳をひとつつくと、店主に注文を入れる)
『はい、かしこまりました、シキ殿は追加のご注文はございませんか?』
「む、そうだなぁ…では次はモンブランを頼むよ!ここのデザートは絶品だからね!」
『かしこまりました』
』
なんだよ、まだ食うのかよ、食い意地はった奴だな。
まったく…子供だからって舐めてるな。
(少し火照った頬を隠すようにしてうつむく。ぶつぶつとぼやきながらシキをじとりと睨み)
「ん〜?子供扱いはお気に召さないかい?…でもなぁ、お兄さんからしたら大人も子供も平等にガキというか孫というか…こればっかりはねぇ」
(すまないすまない、と、悪びれる素振りもなく軽い謝罪を口にする)
平等…そうか? おれでも?
…まあいい。それよりアンタいくつだ?
(どこか達観しきっているようなシキの口調に、訝しげな色を浮かべて見つめる。)
「………………………………」
(ニコニコとした笑顔を崩すことは無い、が、沈黙)
「………うん!やっぱ思い出せないね!いくつだったかなぁ…えーと…」
(腕を組み考える素振りを見せる、が、あまり真面目に思い出そうとは思っていないらしく、さっさと考えるのをやめてケーキの隣に添えてあった紅茶を啜る)
「ま、年上とだけ覚えておきたまえ、少年」
…そうか…
(思い出す気がない相手から目をそらし、少しだけ微笑む。)
星の店長、そろそろか?
『ええ、お待たせ致しました』
(客の言葉に答えるように、できたサンドイッチを差し出しお冷を添える)
『シキ殿もどうぞ、紅茶のおかわりは?』
「うむ!頂くとしよう」
サンドイッチ…
(もぐ、とサンドイッチを小さくかじる。美味しさに思わず顔がほころび)
…うまい。
(どんどんサンドイッチを頬張る。やがてぺろりと平らげ、水を一口飲むと改めてエトワールとシキに向き直った)
「、おや、なにかね少年」
(新しく来たモンブランを頬張りつつ、こちらを向く少年に、に、と微笑みを向ける)
『?』
(こちらも紅茶をつぎつつ首を傾げる)
変な客に、星の店長。
ここなら…もしかしたら、おれも…
『普通でいられる』
(その言葉を紡ぐ前に、口を閉じる。不可能だと分かっているから。
その資格がないから。)
…いや、なんでもない。ただ、本当に、…その、ありが____うぐっ!?
ハァ、ハァ……
(ぱたた、と音がして何かが床に落ちる。己の胸を押さえ、見開いた双眸の先には床を濡らす赤い血があった。それはクラズマの口からぽたりと垂れている、紛れもない『血』)
『!お客様!』
「おや、おやおやおや」
(ガタリと、椅子から立ち上がり彼の方へ)
「あらぁ、手も口もも出さないと言ったから『視』てもなかったが…悪手だったかもしれないねぇ、少年、意識は明瞭かい?」
(背中を擦りつつ問いかける)
…離れてくれ、頼む。
(深くうつむき、背中をさすられながら弱々しく告げる。赤い血の中に透明な雫が混ざった)
分かってたんだ、本当は。
おれが普通を求めちゃいけないことくらい。
…どこまでいっても、罪人なんだ。
この体は許してくれない。
(嗚咽を上げて肩を震わせながら涙を流す。何かを背負っていたタガが外れたのか、少年はようやく少年らしい素振りを見せる)
「………うーむ、僕より悪いことしてるかい?きみ」
(心底疑問そうに、首を傾げつつ来ていた白衣の袖で少年の口元の血を拭い、逆の袖で流れる雫をふいてやる)
「泣くのはいい、だが普通を求めることになんの権利がいるのだろう、お姉さんのようなやつに比べれば、皆普通だ普通、エトワール、ひ弱なお兄さんの代わりに彼を休憩所にでも運んでおくれ」
『かしこまりました、お客様、少々お体触れます』
(そういい、体を抱えあげようと手を伸ばす)
ッ!ダメだ!!
(伸ばされた手を強く払う。その瞬間、申し訳なさそうに目を細めるが、刹那のこと。
再びうつむくと静かに言葉を紡ぎはじめる)
……シキ、アンタはすごい奴だよ。
でもおれはそんな風に割りきれない。
……もう、生きてたらいけないんだ。
殺してくれよ。
「……なーにしたらそこまで悲観的になるのか、お兄さんにはわからないなぁ、あのねぇ、君を殺したら僕も罪人になってしまうだろう?興味がないことは無いし今更だが」
(少年の前にしゃがんで己の頬に手を添えながらそう告げる)
「大体、罪人ってのはお姉さんみたいなのを言うんだぜ少年、比べてみるかい?」
(そう言って、ガシガシと彼の頭を撫でる)
…おれが、みんな殺した。
行く先々で、見るのは血溜まりばっかりだ。
…シキ、アンタは……
(涙に腫れた目にわずかな希望を宿して、シキをまっすぐ見つめる。
この罪過を許してくれるのか。糾弾しないのか。もう八つ裂きにされてもおかしくない自分を。もう一度、手を伸ばし――)
……フフ。
(刹那、目が深紅に染まった。上がった口角、そこに先程までの面影はない)
「…殺した、ねぇ」
(目を細め、それだけを呟く、『別に大したことでもない』、そう、己のいた監獄を思い出しつつ、そう、呟く)
『シキ殿!』
「む、」
(そして、目の前の彼の様子に細めた目を開く)
……『災厄の器』、やはり…フフフ、恨まれては困りますね。
24時間のうち5分だけと、そういう制約なのですから。
まだ完全権限には遠い…が、今はまだ受肉で十分でしょう。
この肉体はそれに相応しい。…さて、
(立ち上がり、深紅の双眸で二人を射抜くように見つめる。右手をかざすと、手のひらの上にぽうっと淡い光が輝き、砂時計を形作る。それを自身の足元に置き、にこりと笑った)
今宵、再びこの少年に罪を重ねましょう。
罪過に苛まれ、やがてこの身が絶望に朽ち果てる時、私は完全顕現するのですよ。
「エトワール」
『既に』
(短い会話とも呼べないうちに、店主は己の店の鍵を閉める、もちろんCLOSEの札もしっかりと)
「こまったなぁ、僕ってば、戦闘能力とかないんだけども?」
『右に同じくでございます、ですが、まぁ、どうにか致しましょう』
(1人は変わらず飄々と、1人は自らの周りに星をうかべる)
「……呼んだら来るかなぁ、『彼』」
(ポツリと、そう、呟いた)
『最悪の災厄 その名を呼ぶことさえ憚られる
全てを殺戮せんと行進する 古に語られる最悪の邪神』
『――悪神ロキ』
さあ、始めましょうか。
私の『復活』を、あなた方の死で祝うとしましょう。
(砂時計の中で砂がチリチリと落ちていく。
その傍らで、クラズマ――否、悪神ロキは笑う。
青い髪の後ろで背から禍々しい『翼のようなもの』が6本伸びる)
「神さまじゃねーか、おもしろい、ぜひ研究したいね」
『シキ殿っ!』
「あーはいはい、真面目にやるとも、がんばりまぁす」
(呑気さが揺るがない様子で、笑っている、興味の為の驚きはあれど、恐怖など無い)
使役、弐。
『ラインの黄金』
(そう呟くと、6本の翼の内の1本が前に広がる。
指をすっとかざし、翼を広げると黄金の炎が幾筋もの槍になって二人に襲いかかった)
『シキ殿!』
「……………………」
「叢雲くん」
【はぁ〜いよっと】
(防御も回避もしない代わりに、名を呼ぶ、その名の主は『先程まで何も無かった場所から現れ』、『右腕』で腰に携えた刀を襲いかかる槍へと振るった)
ん…?
なんでしょう、また新たな死に体が私の復活を祝いにきましたか。
あはは、懲りませんね。そして妙な妖術を使う人間だ。
だが、申し分ない。
準備運動を欲していたのですよ。
(眸を細め、笑みを作る。斬られた槍はパラパラと崩れ地に落ち、やがて黄金の炎を出せばすぐに消えた。)
【あれぇ〜〜??シキさぁん?あれ人外じゃねーの、おっそろし、おじさん死ぬの嫌だぜ〜?】
(ブンっと、刀を振り、さやに納める、そして両手で、『曼珠沙華』『霞』を引き抜く)
「はっはっは、叢雲くんなら斬れるだろうあれ、曼珠沙華で、血は僕のをやる」
『あの…私の店でスプラッタをやるのは少々…』
――星の異形頭に、妖術士、刀使い…
ああ、フルコースだ。
ならば…全て平らげるのが礼儀でしょう。
もう一度『焼きなさい』。
(弐の翼が再び羽ばたくと、今度は巨大な黄金の槍が全員に向かう。)
「むーらくーもくーん、最悪僕じゃなくてエトワールを守りなさい」
【最初からそのつもりです、よっと!】
(タンっと地面を蹴り槍に刀を振るう)
「え!!君僕の護衛任務だよなァ!!」
『私はあまり気は乗らないのですが…叢雲様、ご助力を』
(そういうと店主の周りに浮いていた星が、悪神に向かい飛び交い、爆発を起こしてゆく)
――ふふ、いいですね。
とても『美味』です。
(切断された槍が無数に裂け、小さな槍となって叢雲に向かう。
爆発で起きた硝煙から姿を現したのは、深い傷を負った少年。
それでも悪神は笑みを崩すことなく一枚の翼を広げた)
使役、肆。
『神々の黄昏』
(詠唱が終わると、近くの棚が中のグラスごと倒壊した。刹那、治っていく傷。
笑ったまま叢雲の運命を見守る)