どうも、美音です!
また新しいスレを立ててしまったw
今回は恋愛物(?)でーす。
最初の方はカゲロウデイズっぽくなるかもです。
感想、意見などあったらじゃんじゃん書いてください!
>>2登場人物
>>3小説スタート
登場人物
一之瀬 瑠偉(いちのせ るい)
主人公。
人と関わることを面倒臭いと思っている。
勉強が得意。
園田 鈴(そのだ すず)
瑠偉の恋人。
優しくて温厚な性格。
いつもポニーテールにしている。
多分、これ以上は出てこないはず、です。
小説
ジャリ、ジャリ。
僕の道を歩く音が響く。
いかにも、『手抜き』という道。
まあここは、それぐらいで充分だろう。
だって、『墓地』だから。
なんで僕が墓地の道を歩いているかって?
そんなの簡単さ。
今日は鈴の月命日だからだよ。
そう思って、″なんか″笑った。
鈴がいなくなったのは、5ヶ月前。
まだ、僕たちは14歳だった。
もう僕は、15歳になろうとしている。
まだまだ肌寒い季節だけど。
鈴と一緒に、15歳になりたかった。
中学を一緒に卒業したかった。
じゃあ今から、鈴がいなくなった理由を話そうか。
〜5ヶ月前〜
その日、僕らは散歩がてらに公園に行っていた。
世間で言う、デートってヤツだ。
事件が起こったのは、その帰り道。
僕たちは、好きな曲について話していた。
そうそう、言ってなかったね。
僕らには、好きな曲があるのだ。
「あの曲の良いところは、主人公の過去だよね。」
鈴はそう言って、後れ毛を払った。
僕はびっくりした。
だって僕の好きな部分とは違ったから。
まあ違うのは問題ないけど。
だけど僕は、主人公の過去は嫌いだった。
あの部分は好きではない。
「そうかな。僕は全部だけど。主人公の過去も、未来も。」
そうなのだ。
全部好き。
鈴はムキになっていたのか、滅多に出さない大声を出した。
「なにそれ。そういうのって、本当の好きって意味と違うじゃん。そこがあるから、
いいんでしょ、普通。」
その言葉に僕は、ムッとした。
そうだった、僕は人と関わるのが好きではないのだ。
話し合いなどやっている場合ではない。
まあ僕は、鈴のことが好きだが。
「そう?全部好きって言うのじゃないと、その曲が好きってことじゃないと思うけど。」
僕は言った。
鈴は予想外の反応をした。
「煩い!いいでしょ、別に。もう行くから。」
鈴は走っていって、横断歩道を渡ろうとした。
しかし、見てしまったのだ、僕は。
右から、トラックが来ているのを。
「鈴、危ない!行っちゃだめだ!」
鈴は僕の言うことを聞かなかった。
遠くで鈴のポニーテールが揺れた瞬間。
キキーッと凄まじいブレーキの音。
鈴は倒れていた。
僕は遅かった。
鈴は即死だった。
それ以来僕は、楽しくない毎日を過ごしていた。
小説
だいたい鈴と出会う前は、一人だったが。
鈴と出会ってからは、人の『優しさ』と言うものを知ってしまった。
しかも鈴が、大切な人だったから。
余計に悲しみは深かった。
もう僕は、鈴の笑顔を写真でしか見れない。
過去の笑顔しか見れない。
その場で楽しんで見せる、あの鈴の笑顔を、僕はもう見れない。
鈴のいない毎日なんて、実に退屈だ。
いつも鈴は、笑って僕に話しかけてくれた。
だけど今、その笑顔を僕は見れない。
鈴の声を聞けない。
あのゆらゆら揺れるポニーテールも。
時々、上目遣いに笑う姿も。
僕はいっそ、鈴のいる世界に行きたいと思った。
自殺でもしようか?
それもそれでいいかもしれない。
だって今の僕の毎日は、楽しくないし、僕を必要としている人物もいない。
だったらいない方が周りにとっては、微笑ましいことなのかもしれない。
そんなとき、鈴のお母さんと出会った。
「あぁ、瑠偉君じゃない。鈴のこと、まだ信じられない?」
そんな風に言われて、胸を突かれた。
だって、僕はただの『恋人』。
でもお母さんにとって鈴は、大切な一人娘なのだ。
それなのに、僕を気遣かってくれている。
「はい。でも僕はただの……」
続けようとした僕を、お母さんが遮った。
「良いの。あなた家族の一人よ。だから、気遣わなくて良いの。それより瑠偉君。
自殺しないでね。鈴が死んだからって、自分も逝こうなんてダメよ。鈴の分まで
生きて。鈴もそれを望んでる。」
そうか、そうだよ。
「はい。わかりました。」
僕はそう言ってお母さんと別れた。
そうだよ、なんでこんな単純なことに気付かなかったのだろう。
僕は鈴の分まで生きる。
例えそれが、退屈だったとしても。
さあ、僕がここを歩いている意味がわかったかな?
僕は自殺なんかしていない。
普通に、平凡に、退屈に過ごしている。
鈴の墓の前に着き、手を合わせようとしたその時。
「瑠偉。」
鈴の声が聞こえたような気がした。
小説
思わず後ろを振り向く。
そこにはなんと。
鈴がいた。
「すっ、鈴?なんでこんなとこに……って鈴、生きてたの?!」
僕は思いっきり叫んだ。
「まあまあ。そう驚かないで。今から私が来た意味を話すから。」
鈴はそう言って微笑んだ。
「行こ。」
鈴はそう言って歩きだそうとした。
「待ってよ。どういうこと?」
僕は鈴の腕を掴んだ。
「だからその疑問も、今から話す中に答があるから。」
小説
はぁ……。
僕は仕方なく鈴についていった。
鈴はあの公園に僕を連れてきて、ゆっくりとベンチに越しかける。
「あのね………。私が何故『こっちのセカイ』に来たかっていうと。」
鈴はそう言って長い睫毛を伏せた。
その様子もあの日と変わっていなくて。
僕は胸が痛んだ。
それにしても『こっちのセカイ』なんて、いかにもあの世からきたようだ。
まあ現に、あの世から来たんだろうけど。
「それは、何か忘れ物をしているから。」
は?
忘れ物って、そんな理由であの世に行ったものは帰って来られるのだろうか。
だったら、昔飼っていたハムスターのマリーだって餌とか遊び道具を忘れているじゃないか。
そうしたら戻ってくるだろう、普通。
「忘れ物って、何?どういう意味?」
僕は聞き返した。
鈴はにっこり笑って言った。
「それは私にも解んない。だからこうやって『こっちのセカイ』をうろついてるんだよ?」
まあ、それはそうかもしれない。
ただ、どういう忘れ物なんだろうか、それは。
「で、何か思い当たるもの、例えば大切にしてた物とかないの?」
僕は唸りながら言う。
まさか鈴が帰ってきて一緒に忘れ物を探す事になるとは、夢にも描かなかった。
「そういう類いじゃないと思うな。もっと精神的って言うか?」
鈴も一緒になって唸る。
精神的、なるほどな。
鈴は中々、頭の切れるヤツだ。
かと言って成績やテストの点数は良い方ではない。
まあ普通、或いは平均的だろう。
「じゃあ鈴の精神的な感じで、思い当たるのはない?」
僕はまたしても唸りながら聞く。
「あはは、解んないや。」
鈴は照れながら俯いた。
まあ、無理もないだろう。
もし解っていたなら、こんなに迷って考え込むことは無い。
「じゃあ鈴は、しばらく『こっちのセカイ』に留まるの?」
僕が聞くと、鈴は照れ笑いながら言った。
「うん、って言うか見つけないと戻れないし?まあ瑠偉とも居たいし。」
素直に言われて、僕は赤くなった。
面と向かって人に、『居たいし。』と言われたのは初めてだった。
「あ、あぁまあ、そ、そうだよね。」
赤くなりすぎて曖昧な返事をしてしまった。
「じゃあ今日は……もう行こうか。」
鈴はそう言って立ち上がった。
「そうそう、忘れ物が見つかるまで、瑠偉ん家に居候しても良いかなぁ………?」
鈴はえへへ、と笑った。
「うん、全然いいよ。」
だっていきなり鈴の家に行ったって、びっくりさせるだけだし。
「あ、言い忘れてたけど私の姿は瑠偉にしか見えないんだ。」
「ええええええええええええっ?」
僕はびっくりしすぎてしりもちをつきそうになった。
「ごめん。だから居候させて?」
うん、それは解った。
その日から、長い長い鈴の忘れ物の探す旅が始まろうとしていたーーーーーーーーーーーー。
小説
「ねぇ、学校の皆はどうしてる?美羽ちゃんとか、春陽ちゃん、元気?
先生は変わらない?」
そのあと、鈴から質問責めにされた。
「えーっと、皆は変わらないかなぁ。館林はこの間風邪引いて休んでたけど、今は
普通。金山は風邪も引かないし休まないし元気だよ。」
僕は一生懸命答えた。
なにしろ、人と関わるのが好きではない僕が誰かが元気だとか解らないから。
「えっと先生は、相変わらずだよ。でもこの頃、ちょっとハゲてきたかも?」
「うっそー!?マジで?見たいなぁ、皆笑ってるでしょ!」
鈴がはしゃぎまくる。
こんな鈴は久しぶりに見た。
小説
そんな日々が続き、もう鈴が来てから1週間が経とうとしていた。
そんな中、忘れ物は全く持って解らない。
「ねぇ瑠偉………、ノート貸して。」
鈴がいきなり話しかけてきた。
「へ?いいけどなんで?」
ノートって……、何か思い当たるものが出来たのだろうか。
「いや、ちょっと宿題やろうかなって……………。」
「は?」
僕は鈴に冷たい反応をしてしまった。
何故宿題をやるのだ?
鈴はもう勉強なんかしなくて良いはずだ。
だって僕にしか見えないし、忘れ物が見つかったら鈴は帰るのだ。
「だって……、勉強しないとダメかなって思って。瑠偉とか皆は頑張って中間テストの
勉強してるのに、私は何もしないでふらふらしてるんだよ?同じ15歳なのに。」
鈴は、頑張り屋なのか。
そういうことなのか。
納得はしにくいが、まあ『皆と同じ様に勉強したい』という意味だろう。
「解ったよ。でもこの5ヶ月間、新しいこと普通に習ってたし。鈴解るの?」
僕がそう聞くと、鈴は笑った。
「いや、だから気付かなかったの?授業中ずっと、私居たんだけど。」
へっ?
「え、嘘、知らな……」
僕が言い終わる前に、鈴が愚痴り始めた。
「っていうか、瑠偉の隣の村田美零さん?なんか瑠偉にめっちゃ話しかけてるよね。
気持ち悪い。」
え、それはどういう意味なんだろうか………。
「休み時間に春陽が美羽たちと話してて、聞いちゃったんだけど。村田さんって瑠偉の
こと好きらしいよ?近くに私が居ることにも気付かずに、本当にムカつく。」
「まあ、落ち着いて………。村田さんのことは片付けとくからさ。」
鈴ってこんなに愚痴るヤツだったのか……。
>>8
訂正です。
○「休み時間に春陽ちゃんが美羽ちゃんたちと話してて、聞いちゃったんだけど。
村田さんって瑠偉のこと好きらしいよ?近くに私が居ることにも気付かずに、
本当にムカつく。」
です。
小説
僕は鈴をなだめようとしたのだが、鈴はふてくされたままだった。
まあ気持ちは解らなくもないのだが。
「瑠偉、なんか怪しい。」
「いやいや、僕村田さんに反応してないし!?しかも話しかける内容解ってる?」
「そーじゃなくて、態度!なんか村田さんニヤニヤしてるんだもん。」
「そんなことないと思うけど。」
「瑠偉?あんた何叫んでるの?」
母さんが階段を上がって来る音がした。
「やっば………」
鈴が口に手を当てた。
「瑠偉?ちょっと。」
母さんが部屋に入ってきた。
「い、いやぁあの、もうすぐ学園祭じゃん?だ、だから劇の練習をしようと……。」
なんとかごまかした。
まあ確かに、劇をやるのは本当だが、僕は木の役をするのだ。
言葉などあるはずが無い。
「そうなの。鈴ちゃんがいなくなったから変になっちゃったんじゃないかと思ったわ。」
母さんは疑わしそうにしたが、すぐに戻って行った。
「ふぅ…………。」
小説
「ごめん、ついつい大声出しちゃった。」
鈴はそう言って部屋の奥に行った。
と思ったら。
鈴は居なくなっていた。
「す、鈴!何処?」
「ごめんね。今日はもう帰る。」
「か、帰るって何処に?」
僕は思わず聞き返した。
だって鈴には、帰るところなんてない筈だ。
「うん?私、『こっちのセカイ』にいる間は眠くならないし、不老不死なんだ。
だから夜中は此処から居なくなるよ。」
鈴の声はだんだん薄くなり、ついには消えた。
「鈴………。」
僕は一人、呟いた。
朝。
鈴はなんと、僕の椅子に座り何かをやっていた。
「な、何やってんの?」
僕は覗き込んだ。
そこには、鈴らしい几帳面な字で埋め尽くされた一枚の紙があった。
「勉強、やってた。」
鈴、本当にやってたのか………。
「丸付けしてよ。瑠偉得意でしょ、勉強。」
鈴に言われて僕は、愛用している赤ペンを出した。
「えーっとねぇ………。これとこれが違う。」
「え………。同じ様にやったんだけどなぁ。」
「まあこれ、応用問題だしね。ここはこうやって…………。」
「なるほど!」
僕は久しぶりに、鈴に勉強を教えた。
「行ってきます。」
僕はそう言って、鈴と家を出た。
小説
「いい、絶対授業中は話しかけないでよ。変人に思われるから!」
家を出た瞬間、僕は鈴を見て言った。
「解ってるって。」
鈴はそう言ってあくびをした。
あれ、眠くならないのにあくびは出るんだ。
「さあ、学校まで走ろう!」
え!?
「いや、時間的に充分余裕だと思うけど?」
「良いの、良いの!」
はぁ……。
でもなんか、この感じ。
懐かしい。
忘れ物が見つからないのは問題だけど、鈴と過ごせるなら良いのかもしれない。
僕は先を歩く鈴の姿を見つめた。
揺れるポニーテールは変わらない。
このまま、ずっとずっと続けば良いのにな。
小説
「ん?どうしたの、瑠偉。」
鈴が微笑んだ。
「なんでもないよ。」
僕はそう言って、鈴に駆け寄った。
あの日と変わらない、鈴の笑顔は。
もしかしたら明日、忘れ物が見つかって。
見れないかもしれない。
そうしたら僕は、今までと同じつまらない毎日を過ごすことになる。
だから一日一日を、大切にしていなければならない。
「速く行こうよー!」
「うん。」
事件はその日、起きた。
休み時間のこと。
例の村田さんに話かけられたのだ。
「一之瀬君。」
僕はギョッとした。
同時に、僕の背中に当たる鈴の視線が凍りつくほど痛い。
「ん、何?できれば手短にお願い。」
鈴の視線をビシビシと感じる。
「鈴ちゃんの事なんだけど………。」
へっ?!
途端に僕に刺していた鈴の鋭い視線が、ふっと緩んだ。
「いやぁ、なんか鈴ちゃんが亡くなってから、一之瀬君退屈そうだなぁって。」
村田さんは、僕の事を心配していたのだろうか?
「だから、私が鈴ちゃんの代わりになろうかなって。」
は。
また、鈴の視線が鋭くなる。
「そ、そんなのは良いよ。僕は鈴の代わりなんか要らない。」
そう言いながら、次の教科の準備をする。
「え?あ、うん。そ、そうだよね。ごめん、私変な事言っちゃって。」
村田さんはそう言って、席を立った。
「ふぅ…………。」
鈴の事といい、村田さんの変わった質問といい、この頃変わった事が多い。
そういえば鈴は、何処に行ったのだろうか。
その辺を見渡すが、鈴の姿は見えなかった。
探すのも大変そうだったから、僕はまず授業に行くことにした。
授業が終わり、教室に戻るとまた、村田さんに質問された。
「あの………。やっぱり私、一之瀬君と付き合いたい。」
来た………。
鈴に鋭い視線を向けられると思い、僕はゾクッとする。
けれど、感じることは無かった。
「あ……。ごめん、その話はやめてもらえる?」
僕は俯きながら言った。
「え?でもあれでしょ、つまんないんでしょ?だったら私が……」
僕は村田さんの言っている事が耳障りで、僕は怒鳴ってしまった。
「煩いな。ちょっと黙っててくれない?鈴の代わりとかどうでもいい。まず
あんたみたいな奴と付き合いたくなんかないし、あんたと付き合ったら鈴が
悲しむと思うんだけど。」
村田さんはびっくりしたようで、しばらく固まっていた。
「瑠偉………。」
背後で鈴の声が聞こえたような気がして、思わず振り返った。
でもそこに、鈴の姿は無かった。
更新遅れました、すいませんw
小説
僕はしばらく固まっていた。
「い、一之瀬君、どうしたの?」
背後で村田さんの声がした。
でも僕には、鈴の声しか頭に無かった。
仕方ないから、そのまま4時限目を過ごした。
もちろん、村田さんが一切話しかけることはない。
それはそうだ、僕が怒鳴るなど珍しいことなのだから。
その日は、鈴が現れることなく終わった。
朝、僕が目覚めると、鈴は僕のベッドの横にある椅子に座り、窓の景色を
みていた。
「鈴……。昨日はごめん。」
僕の口からは、そんな言葉が出ていた。
鈴は驚いたみたいだった。
「え?あ、全然いいよ。まあ村田さんが悪いと思う……、うん。人のせいには
しにくいけど。」
「まあでも、いいんじゃない?鈴は悪くないし。」
それは本当だ。
「じゃあ今日は……、学校に行くの?」
「そりゃあもちろん!」
鈴はそう言ってにっこりと笑った。
数日後、もう随分と話していなかった村田さんに話し掛けられた。
「い、一之瀬君、あの、この間はごめんね。ちょっと私がおかしかった……。」
「え?あ、別にいいよ、まあ。僕もかっとなっちゃったし。でも鈴の問題には
今後、一切触れないでね。」
僕はそう言ってから、窓の外の景色を見る振りをして、鈴を見た。
鈴は笑っていた。
風になびく髪や、優しく笑う目は、あの日とちっとも変わっていなかった。
「うん。それはもう覚悟として一之瀬君に話しかけたから。」
村田さんの少し悔しそうな声が、耳に入った。
「いやぁ、村田さんも結構いい子だね。」
放課後、鈴が空を仰ぎながら言った。
「まあね。僕が怒鳴ったからちょっと僕に対する印象が変わったんじゃない?」
ちょっと笑いながら言った。
「うん。そうだね。」
鈴の声が、悲しそうに僕には聞こえた。
「鈴?」
僕は鈴を振り返った。
「瑠偉……。もし私が忘れ物を見つけて、『こっちの世界』から消えたら、村田さんと
付き合いたい?」
鈴。
「そんなこと言わないでよ。 大丈夫だから。僕には鈴しか見えてないよ。
消えても見えてるから。そばに感じてるよ。心配しなくても、大丈夫。」
そう言ってから、息を吸い込んだ。
鈴は驚いていたみたいだったから、僕は笑った。
大丈夫だよ、心配しなくても良いんだよって。
僕も鈴が戻っていったら悲しいけど、それでも頑張るんだ。
そうすれば、鈴も笑っていてくれると思った。
「ありがとう。」
鈴は微笑んだ。
「じゃあ、今日は帰ろうか。僕たちは、1日1日を大切にしていくだけで良いんだ。
そうすれば、このことは一生忘れないよ、きっと。」
うん、僕たちは。
きっと。
忘れないよ。
一生無いよ、こんな経験は。
季節はもうすぐ、クリスマスになろうとしていた。
「ねぇ、瑠偉。クリスマスパーティーやらない?」
鈴がそんなことを言ったのは、クリスマス1週間前だった。
「鈴、どうやってそんなことをするの?」
僕はおかしくてしょうがなかった。
まあ鈴が奇想天外な発想をするのは、珍しくないことだったけど、2人でパーティーは
僕の想像を超えていた。
「笑わないでよ、本気なんだから。」
「じゃあ、具体的に教えてよ、やり方とかさ。」
僕は鈴の話を聞く事にした。
「えーっとね、そんなに豪華じゃないんだ。2人だから。」
うん、まあそれはわかってるけど。
「それに瑠偉のお母さんたちに怪しまれないようにしないといけないしね。
お菓子とか、後はプレゼント交換かな。そういうミニパーティーやろうよ!」
なんか、意外と楽しそうかも。
「いいよ。じゃあお互い内緒で色々準備しないとダメだね。」
僕は勉強の準備をしながら言った。
「24日で良い?」
「うん。」
僕はこの時、まだ知らなかった。
鈴と過ごす楽しい日々が、もうすぐ終わる事を。
クリスマス当日、僕は部屋に入った。
飾り付けは鈴がやっておいてくれた。
僕はケーキとプレゼントを買って来たのだった。
「あ、お帰り、瑠偉。」
なんか、楽しいな、鈴が居ると。
「ねぇねぇ、何のケーキ買って来た?」
鈴は箱を楽しそうに開ける。
「わぁ、美味しそう!私、こっちのチョコがいいな!」
「いいよ。」
鈴がケーキを取り出している間に、僕は買ってきたプレゼントの中身を確認した。
包装は大丈夫そうだった。
ケーキを食べ終わって、鈴はニヤリと笑った。
「プレゼント、交換しようよ。」
待ってました!
僕と鈴は、それぞれ買ってきたプレゼントを出す。
もちろん、包装したままの。
僕は、鈴のポニーテールに似合う様な白いリボンを買った。
「瑠偉、いつもありがとう。メリークリスマス!」
「鈴もね。メリークリスマス!」
僕たちはいっせいにプレゼントを交換した。
鈴は、シャープペンをくれた。
僕は、鈴が戻っていっても大丈夫だと思った。
「わあ、可愛い!」
鈴はリボンに大喜びしてくれた。
その次の日だった。
鈴が消えたのは。
また明日になれば帰って来るだろうと思ったが、鈴は帰って来なかった。
1週間後、僕の机に手紙が乗っていた。
なんだろうと思って開くと、そこには鈴の几帳面な字が埋め尽くされた便箋が
出てきた。
「す、ず………?」
手紙と一緒に、匂袋が入っていた。
鈴の残した手紙は、こうだった。
『瑠偉へ
今まで一緒に過ごしてくれて、ありがとう。瑠偉と過ごした日は絶対
忘れないよ。いつまでも、私の宝物。
瑠偉、私は忘れ物の意味が解った。それは、瑠偉と楽しいクリスマスを
過ごす事だった。それは私の夢でもあった。だけど、叶う前に私は
こっちの世界から消えて、あっちの世界に行った。だから、願いが叶わ
無くてこっちの世界を漂うようにさまよっていた。
でもそれも、あの日で終わり。
私はこっちの世界から消えた。だからもう、瑠偉とは会えない。
でも私はいつまでも忘れないよ。だから前を向いて進む。
瑠偉も同じ。私が居なくなったからって、落ち込んだら駄目。
私、嬉しかったよ。白いリボン。最後に最高のプレゼントを
貰った。瑠偉には、御礼に匂袋をあげる。私の形見にしてください。
瑠偉には会えないけど、楽しい日々は私の心からいつまでも消えない。
ありがとう、瑠偉。
ひとつだけ、これを忘れないで。
私が消えても、見えなくても、ずっと一緒だから。
今までありがとう、さようなら。
鈴』
僕は涙が溢れ出た。
「す、すずっ………、うう………。」
だけど最後の言葉で、ハッとした。
『消えても、見えなくても、ずっと一緒だから。』
そうだね。
ずっと一緒なんだよね。
今日も僕は鈴の言葉を勇気に、毎日頑張っている。
傍に鈴がきっと居るって、信じながら。
僕の毎日は、相変わらず平凡だ。
だけど、鈴に出会う前よりは全然ましだし、あの鈴の言葉があるから。
『見えなくても、一緒だから』。
僕は。
前を向く。
未来を信じる。
ありがとう。
鈴。
そして、僕にこんなに幸せな未来をくれた神様。
ありがとう。
一応完結です。
短かったですねw
というか読者の方がいなくて本音のところ寂しかったですw