緑と虹の草原である。花びらに、ちょうちょうが止まった。
花は言った。
「ちょうちょうさん、ようこそおいでませ。好きなだけ蜜を吸って行っていいのですよ」
ちょうちょうは喜んだ。
それを見て、誰にも見えない放射能が愚弄するように言った……誰にも聞こえない声で。
「馬鹿め。この草原はすでに俺様に一面が汚染されているんだぜ?」
一秒後、そこは荒れ地だった。
1
ナマズは地震を起こすと言われている。
ナマズからしてみれば、それは全く生理的なものなので、
息をするのがやめられないように、
意識をすれば地震を起こさなくてすむ、というような
性質のものではないのだった。
2
やがてナマズ・ネットワークというシステムが研究者によって
開発された。
ナマズの体にとりつけた装置によって、
ナマズが地震を起こしそうになると、それがすぐにわかるのである。
3
やがて浮遊装置が開発された。
それを使うと、なんだって、ぷかぷかと宙に浮かせることができるのである。
それによって、人も物も、国中の全てが宙に浮いた(宙に浮くと、移動が
楽になったりする)
よって、地震が起こっても、もはや関係がないのだった。もはや誰も揺れる地面に
立っていないのだから。
4
浮遊装置の具合が悪いらしく、ある日、全てのものが地上に降り立った。
人々はそのまま倒れた……立つための筋肉が、衰えていたのである。
その時、ほこりかぶった古い研究室で、ナマズ・ネットワークが警報を鳴らした。
ゴールデンホールデンという妖精ほど、巧妙な泥棒はいない。
ゴールデンホールデンは、魔法を使って、物の内側から盗って行くいくのである。
すると表面的には何も変わっていないので、盗られた側は、ほとんどの場合そのことに
気づかないのだ。
パンの内側、将棋盤の内側、ドアの、パソコンの、お金の、頭の……。
人々は気づかぬうちにスカスカの生活を送るようになっている。