遠い遠い、どこかの場所。亜空間。
その中に、黒い球体が浮かんでいた。
球体の中はさらなる闇が広がっていて、闇の中に男が二人。
一人が何かを思いついたように、高笑いする。
「ははは!次なるターゲットが決まったぞ」
「……まだ、飽き足ら無いのですか?」
もう一人の男は、高笑いした男に少し呆れ気味だ。
「ははははははは!!まだ満足できぬわ!次なる場所は……」
呆れ気味の男は、高笑いが止まらない男にもはや止めようともせず、
彼のさらなる目的を聞き届けた。
「……なるほど。そういう事でしたら、早速向かうとしましょう」
球体は異常な加速を始め、異空間を抜けていく。
「次なるターゲットは、人間界。地球」
……光が止んだその瞬間、
破壊され尽くした会場の中に、桜の花びらが吹雪く。
「あ……?……あ!?」
花びらの発生源に、大柄な男は驚きを隠せない。
なぜなら、そこに立っていたのは。
「これ、私なの……?すごい、変身しちゃってる!」
先ほどまでターゲットにしていた、無謀でか弱い少女であったからだ。それがほんの少ししかわからないほど、見た目が変貌していた。
長く伸びた髪。ピンクと白のドレス。神々しい雰囲気。
先ほどとは、ほぼ別人であった。
「力がみなぎって、今ならなんでもできそうだよ!
えっと、どうしたらいいの?」
『何でもいいわ!とにかくあのドリル怪人を倒すのよ!』
「わかった!やってみる!」
頭の中に響く声と会話をしながら、子供を一旦そばに置いた千春は、
ドリルの怪物へ拳を向けて飛びかかった。
「ぎゅうううう……う!?」
怪物は、分厚く硬い装甲でパンチを受け流す筈だった。しかし、ダメだった。
「なっ!」
パンチが命中し、怪人が吹っ飛ばされると同時に、
大量の桜が渦巻く。
男は、それに目を奪われていたのではない。
ただの人間が、なぜここまで怪物にダメージを与えるのか。
今戦えば、自分も無事では済まない……そう思った。
「ふっ、はあっ!」
千春は、 人間離れした反射神経で……
打ち込まれるドリルアームを全て回避する。
「やああっ!」
隙ができたところに、無駄のないフォームと強い気合で
後ろ回し蹴りを浴びせた。
桜が舞い、怪物は地面に倒れ込んだ。
『さあ!ブレスレットのボタンを押して必殺技を決めて!』
「うん!」
千春は、頭の中から話しかけてくる謎の生物の指示を受け、
「ボタン……これかな!」
メダルの挿入口の逆に、一枚の花びらを模したボタンがついている。それをグッと押し込む。
「行くよ!……サクラ・ブルーミングストーム!」
ブレスレットから放たれる光が、怪物をロックオンして離さない。
「はあああああ!」
空いた左手から、とてつもない量の花吹雪が放たれた。
「どり、どり、ドリル……」
意外と静かな断末魔をあげて、花吹雪に包まれながらドリル怪人は消えた。
「厄介なガキだ。ナニモンだあいつは……」
生き残った大柄な男は、いつの間にか姿を消す。
消えるその瞬間に見せた表情は、疑問に打ちひしがれている目をしていた……。
「はー……あ。今の、私がやったの?」
変身を解いた千春は、謎の桜生物に疑問をぶつける。
「そう!あたしは妖精。名前はチェリーって言うの。
あなたには、とてつもないパワーを与えちゃったんだけど……
それで、地球を救って欲しいの!」
「ん、地球を、すくう……え?
……ええええええ!?」
チェリーと名乗る妖精から発せられた言葉は、
千春を驚かせるには十分すぎるものであった。
面白いですね!
魔法少女ものですか?