>>ALL
「さむわん」
( それが精一杯に出した声でした。
夜の街中。店々が立ち並ぶ街道。前、横、後ろ、どこを見ても人、人、人。カボチャ色のランプで賑やかに照らされるこの道の中央には、わたしという比較的静止体がぽつんと立っているのです。その静止体は、腕が二本ついていて、脚も二本ついている。何の感情も現れもしない顔も首の上に乗っかっていて、比較的静止体として、静止するという仕事をしっかり果たしていると言えるでしょう。
「 …さむわん 」もう一度だけ言ってみました。
大人の人の顔がこちらへ、フッと視線を落としますが一瞬です。その後はすぐにわたしの視界から消え失せていくのです。わたしは相変わらず、比較的静止体。自分は静止したいわけじゃない。
街のみんなが川の流れみたいに前後ろどちらか一方に進んでいるだけで、わたしだけが訳あって進んでいないだけ。比較的に静止しているだけで、静止したいわけじゃないのです。
実は、街中で仲間とはぐれてしまって前後ろどちらに進んだらいいのか分からないのです。
泣きそうです。泣けませんけど )
>>66 ▽ コノアちゃん
【 絡みますね!宜しくお願い致します〜! 】
あら…。迷子、…かしら?
( 街道沿いの小さな出店にて、焼き菓子を購入しており。ここのお菓子は本当に美味しいの。紅茶によく合うのよねぇ。そう上機嫌に、紙袋を抱えていざ帰路につこうとしたが、少し止まり。一瞬空いたその人混みの中に、じっと佇む少女を見たのだ。こんな夜に、ひとりだけだろうか。暫く待って周囲を見るが、少女に話しかける人なぞいなく。また、微動だにしないその様子に徐々に心配になってきて。心配そうに頬に手を添え上記を呟くと紙袋を抱え直し、街道の前後の流れを崩す様に横に横断して。道行く人に小さく謝りつつ、自分よりも背の低い、可愛らしい少女の側まで無事行くことができれば少し屈んで。成る可く警戒されないように、そして怖がらせないようにと微笑むとひと言、声をかける。真ん丸なその瞳をじぃ、と見つめては、再び口を開き )
こんばんは。 何かお困りかしら?