【first東京本部】
東京と言ってもその地域全体が高層ビルに囲まれ発展している訳ではなく、都心から離れた郊外にある小さな寂れた工場の下に無機質なコンクリートによって作られた地下拠点が隠されており、そこはfirstの東京本部として用いられている。
狼谷
「……今回は少しばかり良い情報が手に入ったな……
これを上手く使えば八咫烏にも手痛い一撃を与えられるかもな?
しかし……ボスは何処にいるんだ?」
張り巡らされた地下要塞の一角、二十畳程の広さの部屋があり、部屋の隅にはテーブルや椅子、武器や弾薬の入った木箱が積み重ねられている中、巨大なガトリングに腰かけながら緋染の到着を待つ男がいた。
ボス達は取引のために此処から少し離れた廃工場に向かったのだが、それにしては時間がかかり過ぎている。彼の異能ならどれだけ長くとも一時間で帰って来る筈なのだが、五時間以上が経過した今でも帰って来ない。
何かあったのかと不信に思い始めるものの、時間潰しのために手にした黒いファイルの中の書類に再度目を通し始める。
悠矢「・・・・・仕方が無い、これはまた、別の機会にとっておくか・・・・・」
タンッ・・・・・!
(氷華に対して、これ以上何を言ったところで自分の身が危うくなるだけで何も得しないと察した悠矢は、小瓶をスーツの内ポケットにしまうと、地面をタンッと強く蹴って氷華の乗っている氷塊へと飛び移る・・・・・
悠矢からすれば、送迎用の乗り物的な感じなのだろう・・・・・)
【本部にて】
桜空「げほっ・・・・・お、おーい・・・・・誰かいるかー・・・・・」
(片腕を押さえながら、吐血混じりの咳をしながら、ファーストのボスである桜空が本拠地へと戻ってくる・・・・・
ただでさえ片目は視力を失っているのに、戦いのダメージで視界がぼんやりとする今の桜空は、暗闇を歩く雛鳥も同然、かなり弱っているのが声の張り方だけでもわかるほどだ・・・・・)
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