氷華
「…………え?」
このまま何事もなく場を立ち去ろうとしていた最中、夕渚のかけた言葉に驚き、立ち止まる。
12の頃に八咫烏に入るまで……いや、両親が殺害されてから一度も女扱いされることが無かった……奪い奪われが当たり前、多くの者の悪意に晒され続け、一秒たりとも気が抜けない過酷な環境に居た自分を……まるで普通の人間に対してかけるような言葉を口にした事に対して微かに困惑してしまう。
夕渚「・・・・・どんなに強くても、どんな能力を持っていても・・・・・例え、どんなに悪い人の対応に慣れていたとしても・・・・・誰だって一人の人間、命は一つしかありませんし、命を落としたらそこでおしまいですから・・・・・」
(最初は、誰だって一人の人間だから、夜道に悪い人に襲われてもおかしくはないので気をつけてくださいと言葉をかけるつもりだった・・・・・
だが、これは自分基準で考えた場合・・・・・悪人の対応をするという、いつ命の危険に晒されてもおかしくはない相手の立場を考えていうなら、声に出した通りに言葉を変えて、相手基準での言葉にした方が伝わりやすい・・・・・そう思った・・・・・
誰だって一人の人間、命を落とせばそこで終わり・・・・・
氷華の脳裏に、今に至る原因となったあの日の惨劇が過ぎる・・・・・)
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