【氷華の見てきた悪】
悪人A
「いいのか!?俺を殺ろうとすればコイツらも全員道連れだ!!」
他者の命を何とも思わず、微塵の躊躇いも葛藤もなく、自分が追い込まれた時に平気で他者を道連れにしようとする悪……
悪人B
「俺が犯罪を繰り返す理由?そんなもん、楽しいからに決まってんだろ!!」
己の享楽の為だけに他者の苦痛や悲しみを意にも介さずに犯罪行為を繰り返す身勝手な悪……
悪人C
「ギャハハハハハッ!!殺戮と破壊はいい!これ以上に楽しいことは他に無い!!」
殺戮や破壊を楽しいと言って繰り返す悪……
このいずれも言葉による和解や説得と言うものが通じず……それどころか歩み寄ろうとしたところを反撃のチャンスとして利用しようとする者ばかりだった……それも、このような悪は決して少数派と言うわけではなく、寧ろ大多数を占めていた。
氷華
「悪は生きる意味も価値もない。
理不尽な悪が命を奪う……だから私がそれを終わらせる。
全ての悪を滅ぼして……誰も悲しまない、誰も何者にも脅かされない世界を作る……私の力はそのために在る。」
自分が人より強く生まれた理由。
それはこのような悪を根絶するものであると言う決意をより固めるものとなった。それを夕渚との話の中で思い出す……
夕渚「・・・・・そう・・・・・ですね・・・・・その通りです・・・・・人は、失ってからでないと気づけない・・・・・」
(かつて、自分も目の前で大切な妹を奪われた・・・・・
両親と自分は助かったが、今でもあの時の両親の悲惨な叫びは覚えている・・・・・
「やめてぇっ!!!!!うちの子に手を出さないでぇぇええええええええぇぇえっ!!!!!」
「この人間のクズ共・・・・・!!!!!外道共がああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
家に入ってきた不審者達は、敢えて両親と自分の目の前で、妹の頚動脈を切り裂いた・・・・・
両親には我が子を失う悲しみを、そして自分には、姉という立場である事を理解した上で姉でありながら何も出来ずに目の前で妹を失うという絶望と悲しみを与えた・・・・・
「・・・・・一つ・・・・・教えてください・・・・・目の前で大切なものを奪われていても何も出来なかった人間は・・・・・・悪゛て゛す゛か゛・・・・・?」
ずっとあの日から、友達や先生の前では明るく振舞ってはいたものの、一人の時は泣くことが多かった・・・・・
両親もあの日から、笑顔は全て作り物になってしまった・・・・・
自分は、ただただ奪われるだけで何も出来なかった・・・・・ずっと、罪悪感に押し潰されそうになりながら生きてきた・・・・・
だが、先生や友達は勿論のこと、両親にこんなことは聞けない・・・・・
夕渚は、背を向ける氷華に、涙混じりに目の前で大切なものを奪われながら何も出来なかった人間は悪かどうかを氷華に尋ねる・・・・・)
>>285