夕渚「・・・・・そう・・・・・ですね・・・・・その通りです・・・・・人は、失ってからでないと気づけない・・・・・」
(かつて、自分も目の前で大切な妹を奪われた・・・・・
両親と自分は助かったが、今でもあの時の両親の悲惨な叫びは覚えている・・・・・
「やめてぇっ!!!!!うちの子に手を出さないでぇぇええええええええぇぇえっ!!!!!」
「この人間のクズ共・・・・・!!!!!外道共がああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
家に入ってきた不審者達は、敢えて両親と自分の目の前で、妹の頚動脈を切り裂いた・・・・・
両親には我が子を失う悲しみを、そして自分には、姉という立場である事を理解した上で姉でありながら何も出来ずに目の前で妹を失うという絶望と悲しみを与えた・・・・・
「・・・・・一つ・・・・・教えてください・・・・・目の前で大切なものを奪われていても何も出来なかった人間は・・・・・・悪゛て゛す゛か゛・・・・・?」
ずっとあの日から、友達や先生の前では明るく振舞ってはいたものの、一人の時は泣くことが多かった・・・・・
両親もあの日から、笑顔は全て作り物になってしまった・・・・・
自分は、ただただ奪われるだけで何も出来なかった・・・・・ずっと、罪悪感に押し潰されそうになりながら生きてきた・・・・・
だが、先生や友達は勿論のこと、両親にこんなことは聞けない・・・・・
夕渚は、背を向ける氷華に、涙混じりに目の前で大切なものを奪われながら何も出来なかった人間は悪かどうかを氷華に尋ねる・・・・・)
>>285
氷華
「……それを悪と呼ぶのなら……私は大悪党になるわね。」
かつて両親や弟が襲われている頃……
自分は惨劇が起こる事を知らず、弟の誕生日のために街へ買い物のために出掛けていた……もし、惨劇が起こると知っていればこの命をかけてでも戦っていたのに……
強く生まれたにも関わらず、自分は守るための戦いすら出来なかった。帰った頃には既に両親は殺害され、弟の消息もわからなくなっていた……家を襲った強盗達は仲間割れを起こしたのか、二人死亡していたものの、弟の生存も絶望的な状態だ……
夕渚の言葉から自分に近い境遇をしてきたのだと知ると、氷華は憎悪と憤怒の感情を再び瞳の奥に隠し、氷の瞳に戻すと夕渚の方へ振り返り、守れるだけの力がありながら、その戦いすら出来なかった無力と無能の極みだった自分は悪どころか大悪党になるだろうと応える。