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素鴉
「エイト……ナイン………テン。」
桜空の渾身の一撃を受けて倒れた素鴉だったが、目を瞑ったまま、自分でテンカウントを行い、カウントダウンを負えると、額を抑えながらゆっくりと上体を起こす。
その様子から、まだまだかなりの余力を残していることがわかり、安堵した完全武装した鴉達が一斉に桜空に向けて銃を構え、トリガーに指をかけて集中砲火を行おうとしたものの……それを素鴉は「つまらねぇ事をするんじゃねぇ」と一喝して阻止する。
素鴉
「痛たた……お前の勝ちだ。
拳を通してお前が殺人衝動や破壊衝動にかられ、私利私欲のままに戦う悪党じゃないって事がわかった……だからなのかは知らないが……こうして土を付けられたが悔しくないな。」
素鴉は最初から桜空の殺害に気乗りしなかった事もあり、戦いの中で敢えて桜空の攻撃を避けずに受けていた……そして、素鴉はその身をもって桜空の闘志と覚悟を知り、桜空が生きる事と、自分の敗北を認めた。
素鴉
「………餞別だ、コイツを持って行け。
今のお前にはコイツがあった方がいいだろ?」
素鴉は自分の右腕の鉄甲を外し、それを桜空に向けて投げ渡そうとする。
その鉄甲は触れた異能による作用や干渉を打ち消す対異能力者用の防具なのだが、空間移動を封じられたアジトの中であれば、桜空の身を守る最高の防具となってくれるだろう。
自分の立場を省みずに桜空の味方をするその姿は狼谷とも重なって見えると思われる……
桜空「・・・・・さっきまでと違って、随分気前がいいじゃないか・・・・・」
(右腕の鉄甲を受け取ると、随分気前がいいと言いながら装着する・・・・・
桜空自身も、戦っている時から薄々感じていた、今目の前にいる男は、どことなく狼谷と似ている部分があると・・・・・
そして、相手がまだまだ余裕そうなのを見ると、自分としては全力を出したつもりだったのだが、やはり相手の方がまだまだ実力は上だと思い知らされ、最初からやはり勝てるはずはなかったのだということを悟る・・・・・)
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