>>590
《ドゴオォォォォォォォォォォォッ》
巨大ムカデは中川の生成したジャンプ台も破壊し、乗用車並みの速度で通路を埋め突くするような巨体を蠢かせて迫り続ける……
巨大ムカデが行うのは突進し、進行方向にある全てを破壊する事。
単純だが、圧倒的な巨体を誇る巨大ムカデがそれをやれば、左右や上空へ逃れる事が出来ず、先に進み続ける事しか出来ない、災厄そのものとなる。
ムカデの攻撃の矛先は中川一人であるのだが、少し動くだけで通路が崩壊し、触れるモノを全て叩き潰している事から周囲へもその被害が及んでしまっている。
更に……発電室の入口は合金で中川の異能の対象外である人工の特殊合金で出来ており、ロックされてしまっている事からこれ以上逃げるのは困難だろう……
>>591、593、594
(悪人と同じになる、か)
その程度で済むなら喜んで殺そう。
悪人を懲らしめてはい終わりってやってたら、犯罪行為の再発を誘発してしまう。信じる信じないの問題ではない。再発の可能性が残っているという点が重要なのだ。どれほどきつく言い聞かせても、またやる奴はやるのだ。その時被害を被った人達にどう弁明するつもりなのか。
世の中は桜空一人が生きているわけではない。彼一人自己満足に浸ったところで、悪人による被害がなくなることはないのだ。
(悪人を見つけ次第ぜ〜んぶ警察に突き出すか、大将自身が再発時の被害全てを賠償してくれるんなら話は別だけどな)
そこまで突き抜けた覚悟を示せるならば、彼の言葉に従い己の行動を本気で鑑みてもいい。
「おおっと! あんま感傷に浸ってる場合でもねえな! てか本人いた!」
眼前には堅牢極まりない扉。能力で操作しようとしても1mmも動かせない。後方には蜈蚣怪獣。その外骨格はこちらの攻撃では傷一つつけられない。
万事休すか。
「!?」
その時だった。なんと桜空が拳打で蜈蚣を損傷させたのだ。
「た、大将……あんたいつの間にそんな戦闘民族みたいになっちゃったの……」
あまりの事態に、ロクなリアクションがとれない。
「っと、再生能力持ちかよ」
目ざとく蜈蚣の様子に気付く。無惨に砕かれた外骨格だが、既に治癒が始まっている。
「気になることはあるが、今はこいつをぶちのめすのが先決だな」
傷口の箇所に駆け寄り、掌に砂利を握り締める。
「っ……でりゃああああ!!!」
そして流れるような動きのピッチングフォームで、砂利を投げ付けた。
無論ただ投げたわけではない。指弾の時と同じように、能力で砂利の一つ一つを加速させ、ショットガンと同等の威力と範囲を持たせた。