桜空《・・・・・あの笑い方・・・・・まさか・・・・・》
(桜空はあの癖のある笑い方に、どこか聞き覚えがあったものの、確信が持てなかったのと、今は狼谷達の救出が最優先すべきことである為、引き止めずに中川の後から目的地へと辿り着くと、表情が凍りつく・・・・・
狼谷は片腕を失い、他の皆も多くが瀕死、もしくは既に事切れていた・・・・・
桜空は、ただただ唖然としていたが、狼谷のお前らだけでも逃げてくれという言葉を聞いた瞬間に、表情が変わり狼谷の胸ぐらを掴む・・・・・)
>>614、615、616
狼谷
「……!!
何をしているんだ……!?
お前は早く逃げろ……!お前は敷地の外に出れば後は異能で逃げれるんだ、俺のことはいいから早く行け……!!」
狼谷は既に命を捨てる覚悟が出来ていた。
いや、最初に八咫烏に離反すると決めた時から命を失う覚悟はあった。
ましてや、それが自分の認めた男を守るためのものであるのだから何の後悔も無い……
桜空が脱出しようとする動きに合わせて自分が全力で剱鴉に攻撃することで桜空、中川、紀の三人だけでも逃げられるだけの時間を稼ごうと考えていた。
自分の命を捨てても、勝ち目の無い相手に対しても決して折れること無く挑みかかるその姿は、どれだけボロボロにされようと、どれだけ殴られたり罵詈雑言を浴びせられようと、桜空達を守ろうとしていた薫の姿を想起させるかもしれない……
>>617、618
「…………」
いつもの余裕が消え失せ、険しい表情のまま思考に浸る。
正直なところ、ここでどうするのか決めかねていた。
一斉に立ち向かうなら狼谷の激しい制止が入るだろう。実際自分の推測でも返り討ちに遭う可能性は高い。逆に全員で撤退するのも、同じく狼谷が反対するので駄目だ。
かといって、彼の要望通り囮になってもらうとしても、今度は桜空が割って入る。
堂々巡りというやつだ。どこか違う視点での解決策が要る。
「…………」
考え抜いた末、行動に移る。
剱鴉の背後の空間にナイフを生成。距離の空いた状態なので通常よりも遅いが、そこは必要経費だ。そして生成が完了すると同時に、彼女の背中へ飛ばす。一連の行動はその場から動かず、僅かな身動ぎすらなく完遂してみせた。
桜空と狼谷の衝突が避けられないのなら、いっそのことそれを利用する。彼らの口論という行動をデコイとして、敵の気が逸れたところに後ろから不意討ちを行う。
これが隆次の考えた結論だ。