>>811
【中川vs樹木使い】
樹木使い
「……………なッ!!」
手数でも物量でも此方が勝っている上に、じきに霞鴉が紀を仕留めて此方へ増援に来る。そうなればもはやこの優位性が崩れることは無く、圧勝できると考えていた矢先、生成した無数の枝の全てが瞬く間に焼き尽くされて行くのを見て驚愕する。
予め、バオバブの樹のように水分を樹木の中に蓄え、更に周囲の濃霧から水分を常時補充することで山火事に合おうとも耐えきれる程の耐火性能も備えていたのだが、それも3000℃の業火を前に意味を成さず、瞬く間に燃え散って行く。
樹木使い
「ぐ………ああぁぁぁぁぁぁッ!!!」
樹木と一体化していた事が仇となり、地中に伸びていた樹木本体と、樹木と一体化していた両腕を介して樹木使いの全身にまで炎が燃え移り、地面を転がりながら全身を覆う炎を必死で消そうとする。
こうなった以上、もはや勝敗は決した。
中川が巻き起こした炎によって周囲の建物にまで燃え広がり、窓ガラスや建物の壁をも焼き焦がし、風と共に周囲へと炎は勢いを止めること無く燃え広がって行く……
悪とされる組織を潰して回っていた鴉達と、街や、そこに住む人々を危険に晒し、実害を出してまで正義とされる鴉を倒そうとする中川……
この様子を端から見ればどちらが悪なのか判別できる者はいないだろう……
【あれ?そう言えば自然界にあるモノしか操れないんじゃなかったんですか?合金とかは明らかに人工になっていますよw】
「ん?」
(なんで火事なんか起こってんだ!?)
周りを見ると、建築物まで火が燃え移っていた。
「いやなんでそんな広ーく燃えてんの!?」
今しがた燃やした範囲はせいぜい半径5m以内。それがどうして離れた位置にある建物まで燃え広がっているのか。
『何故か』炎が燃え広がり、
『何故か』それに自分は気付かず、
『何故か』スプリンクラーなどの消火設備は作動しなかった。
「枝か? あいつの枝がそこらじゅうに張り巡らされてたのか!?」
「……ああもう! 考えてる暇はねぇ!」
即座に土を覆い被せ、消火を行う。酸素の供給さえ絶ってしまえば簡単なものだ。
「だが規模がそれなりにデカい、ちょいとしんどいな」
暫くの間、隆次は消火の為駆け回ることになる。
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「ふぃ〜っやぁっと終わっ……!?」
「うっ……ぐ……!!」
一段落ついた途端、形容し難い脱力感が襲ってくる。
堪らずその場で膝を付き、やがて倒れた。
「あぁ〜やっぱキッツ……」
無理に体を動かそうとすればする程、余計に重くなるような感覚。
たったあれだけ、たったあの量でこのザマだ。もし数分以上かつトラックみたいな大容量を使っていたらどうなっていたことやら。
「能力を切った瞬間ダレるってわけじゃねえのは、助かるっちゃ助かるが……」
『合金』などというある種原子操作、分子操作にも片足を突っ込む領域である以上、寧ろこの程度の代償で済んでいると考えるべきなのか。
そして合金以外でも、完全に無条件というわけではない。一気に大量に使えばすぐ疲弊するし、地震や地割れなんてのは土台不可能。要は合金を使えば消耗度合いが極端に大きくなるのだ。
(こうしてる間にも、二人が危ねえかもしれねえってのに!)
直ぐに助けにいけない自分に歯噛みする。
(にしても……)
(もしそこらじゅうに張り巡らせてた枝が燃えてたんなら、そもそも樹木の野郎が不法侵入みてーなことしてたってことじゃねえか?)
【成る程、わかりました。では消耗が大きいという方向性で書かせていただきます】
>>主様