>>14
氷華
「フフフ……笑わせないで。
私は正義のために全てを捨てた。」
自分の事を『正義にも悪にもなりきれない中途半端な奴』と罵る桜空に対して、自分は正義のために人間としての心も、幸せだった過去も、普通の人間としての生も、自由や幸福すらも捨て去り、正義のみを求め続けた彼の言葉を聞いて、まるで話を聞いていないようだと嗤う。
そして、勝負に決着を付けようと、両腕を振り上げると、無数の氷塔が天高くまで伸びていく……それはまるで天を閉ざす氷の壁か檻のように……
氷華
「悪のいない世界を作るために捨てたモノの多さがこの結果よ。
何も捨てることが出来ないと言うのならせめて命だけでも捨てていきなさい。」
《ゴガガガガガガッ》
氷華は振り上げた両腕を下げると、天へ登っていた夥しい数の氷塔が次々と地上に激突し、周囲の大地が砕け、議事堂寸前までの広場が滅茶苦茶に破壊され、破壊された地上には息をも凍らせる冷気が吹き込む……
もはや、氷華に勝利するためには異能封じの弾丸を撃ち込まなければ近付くことさえ許されないだろう。加えて……無策で弾丸を撃ち込もうとしたところで即座に見きられ、容易く対処されてしまうだろう。
氷華
「私はもうこれ以上、無駄に時間を使うつもりはない。
二度と私には近付くこともさせないし、貴方が完全にバラバラになるまで攻めの手を緩めることもしない……」
《パキパキパキパキパキ…》
予想以上に戦いが長引いた事への微かな苛立ちから、決着を付けようと、小さな氷の足場を作り出すと空中へ浮遊しつつ、自分の周囲に無数の氷柱を形成し、少しでも桜空の姿が見えたら即座に総攻撃を仕掛けられるように体勢を整えていく。
桜空「はぁっ・・・・・はぁっ・・・・・」
《くそっ・・・・・!どうにもできねぇ・・・・・っ・・・・・ここで・・・・・終わるのか・・・・・》
(よくある少年漫画のように、絶体絶命の状況に陥ったからといって覚醒するわけでもない、現実はそんなに甘くはない・・・・・
もしこのまま、氷華の攻撃を受けて〇ねるのならば、苦しみからも、葛藤からも、全てから解放されるのだろうか・・・・・
そんな考えが桜空の脳裏に過ぎる・・・・・)
>>15