>>32
氷華
「……私は此処に来るまでに多くのものを捨ててきた……
誰かを助けようと手を差し伸べても手を振り払われ…
悪を赦そうとしても、背を向けた瞬間にナイフを持って襲い掛かる…
助けた相手が悪になる事だってあった…」
善人と悪人を明確に二分する事は出来ない。
誰の心の中にも二面性がある……氷華は誰よりも多くの卑劣な悪を見てきたため、極端なまでの人間の二面性を、邪悪さを見続けてしまっていたのだろう……
氷華
「……優しさや思いやりなんてあっても悪に付け込まれる。
そうして私は私の守らなければならなかった命を沢山目の前で喪って来た……」
氷華ほどの力があっても、全ての者を救うことは、助けることは出来なかった……人一倍正義感の強かった氷華にとって、その現実がいったいどれほど酷く心を抉り、精神を磨り減らし、正義を歪ませるのかは計り知れない……
まるで氷のように冷たい体で桜空を抱き締めながら、そう告げる。
氷華が纏うこの冷気はさながら、氷華の歩んできた冷たい世界そのものから来ているのだろうか。
氷華は独りで、この心の熱をも凍てつかせる極寒の世界を歩き続けて来たのだろう……そして、その苦悩と葛藤、絶望の果てに、今のように極端なまでの正義を抱くようになってしまった……
桜空「・・・・・そうか・・・・・そうだよな・・・・・優しさなんてのは・・・・・結局悪人にいいように隙を突かれるだけだ・・・・・」
(そう言うと、桜空は続けて「姉ちゃん・・・・・俺な、あの後孤児院に住んでたんだけど、その孤児院も失ってさ・・・・・救ってくれたのは、悪人だったんだよ・・・・・」と言う・・・・・
ここで初めて、悪人と言っても一言に悪人とは言えないということを、桜空自身の口から語り始める・・・・・)
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