右腕が、鉛のように重い。
どうしてなのかしら。気分が悪いわ。鉄臭いし、嫌になる。この臭いだけは、いつまで経っても慣れないのかもしれないと思いながら、錆びた包丁を動かす。私の武器。私の唯一の牙。
最近、ようやく中身が分かってきて、初めの頃よりも、手早く取り出せるようになってきたの。でも、それにしても、ぐちゃぐちゃしてて変な感じ。こんなものから、赤ちゃんが産まれるの?指先でつまんで、眺める。そしてポケットにしまいこんだ。優しく、そっとよ?だって、壊れちゃったらもったいないじゃない。
もっと必要かしら?分からないけれど、ともかく集めなくっちゃ。立ち上がって、歩き出す。皆があたしを見てわめく。眉をひそめる。うるさいな。黙ってよ。ああ、それとも。あたしにくれるの?それ。分かっているわよ。どうせくれないんでしょ。だから奪い取るだけよ。あたしの願い事を叶えるために、ね。
子供が欲しいの。あの人との子供。まだ産めないけれど、いつか産めるようになるわ。信じている。諦めない限り、願いはきっと叶うはずよ。もしそうでないとしたら、あたしは本当に壊れてしまうわ。子宮を取り出した後の残り物達みたいにね。そんなのは嫌よ。だから、頑張らなくちゃ。
白鳥さんネタ。書けないorz
Suki…
最高すぎる…
書けないとは?最高 良すぎる 私が神になって白鳥さんに子宮作りたい
>>71の上2行を自分なりに……
>>75の前日譚みたいな感じ。文章力がないのはどうかお許しを
「あたし、あなたのことが好きなの……! あなたの、こどもが欲しい……」
大好きな彼に想いを伝えた。けれど、彼は怪訝そうな顔をして眉をひそめると、冷たく言い放った。
「……は? お前は男だろ?
いきなり男に告白されてもな。それにお前、こどもなんて産めないだろ」
その一瞬、何を言われたのかが分からなかった。思わず聞き返そうとしたそのとき、彼は無言のまま踵を返した。反射的に伸ばした腕が空を切り、だらしなく垂れる。
『こどもなんて産めないだろ』
彼の言葉が、脳内でぐるぐると渦巻く。違う、違う、ちがう……あたしは違う。こどもを産める。産んでみせる。彼のこどもを、彼とあたしのこどもを……。
どうしたらいいのかしら。どうしたら、彼のこどもを産むことができるの? 彼に、あたしの想いが伝わるの?
しばらく、一人で考えに耽っていた。そして、暗い思考の闇の中に一筋の光が射した。
「……そうよ。あたしがこどもを産めないのは子宮がないから。それなら奪えばいいんだわ」
子宮の持ち腐れな女から奪えばいい。あたしのような想いがない人間にはあまりにも勿体ないわ。
目の前に世界が広がる。そうよ、ここには女がたくさんいる。あたしの希望を叶えてくれるモノは、ここにある。
「……待っていてちょうだい。必ず、あなたのこどもを……」
あたしは動き出した、彼のために。