>>250 独りっ子
......僕が、僕なんかが、あの人に渡してもいいわけがない、永遠の愛など、今更誓ったところで何になる? ......チェルシー。
(差し出された薔薇をじっと見つめ、周囲に初めてありのままの姿を見せる。普段の姿からは想像できないほども弱々しく、俯いては自らを咎める。自分は罪人だ、魔女が許してくれる筈がない。それに、魔女はもういない。どう愛を誓えば良い。眼鏡越しに独りっ子を見ると、そこには見慣れた赤い髪と青い瞳。思わず、亡き想い人の名を呟く。ただ虚しく。本当は、魔女に誰よりも先に薔薇を差し上げたいのに、それを自分が糾弾して許さない。)
>>251 サンカレア
異常な愛を知っていた。彼女の未来を一度見たことがあるから。それでも言わなかったのは、知らない振りをしたのは、私自身がその異常な愛を抱いたことがないから。人に対して真実の愛を抱くことができない私に、彼女にかける声などない。そう思っていた気がする、彼女の想い他人と、自身の容姿が似ている真実を知るまでは。
少し前の記憶を遡りながら、ぐっと手を握り締める。
「 愛することに遅いも早いもありませんよ 」
一度、後悔と絶望を感じたことがある。愛を含んだ其れを、誰かからもらったことがある。今思い返しても、ズン、と体が竦むような気がする。
「 私だって、生きては居ません 、… 生きては居なくても、此処にいて、記憶には残っていますよ 」
今まで誰にも言えなかったこと、“ 主人 ” に伝えられて、ずっと抱え込んでいたこと。それを今、此処で教えるしかないと思った。表情一つ変えず、口角をあげたまま、自身の体に巻きつけられた包帯へ目を向ける。軈て、一度目を瞑った後、彼女へと顔を上げて、
「 上げましょう、貴方の本当に好きな、“ 彼女 ”に 」