>>248 サンカレア
ふと、此方に話を振られ、サンカレアの方へ目を向ければ、途切れ途切れに言葉を紡ぐ相手。表情も、向けられた青いバラも気に喰わず、溜息を吐く。自身の人差し指を少し歯で切り、その血を自身の包帯につければ、瞬く間に其れを真っ赤な包装を施された箱に入る、99個の赤い薔薇へと変える。宙に幾つかの花弁が舞うのも気にせず、それを相手の前に置けば、目も合わせず、視線を落としたまま漸く口を開く。
「 … 私は貴方の若しかしたらあった人生は存じていても、過去は知りませんから。でも、その花は私宛のものではない。 」
そうきっぱりと告げ、青い薔薇を相手の手から奪い、赤い薔薇の真ん中に差し込む。そして、ゆっくりと箱ごと花を相手に近づける。
「 99本の薔薇の意味、100本の薔薇の意味、また__…なんて、存じてますよね。私ではなく、渡したい人、居るはずですよ 」
そう言って薄っすらと笑えば、それ以上何かをいうこともなく、視線も逸らすことなく、急かさずにただサンカレアの言葉を次に見せる動きを、見逃すことないように待っている。
>>250 独りっ子
......僕が、僕なんかが、あの人に渡してもいいわけがない、永遠の愛など、今更誓ったところで何になる? ......チェルシー。
(差し出された薔薇をじっと見つめ、周囲に初めてありのままの姿を見せる。普段の姿からは想像できないほども弱々しく、俯いては自らを咎める。自分は罪人だ、魔女が許してくれる筈がない。それに、魔女はもういない。どう愛を誓えば良い。眼鏡越しに独りっ子を見ると、そこには見慣れた赤い髪と青い瞳。思わず、亡き想い人の名を呟く。ただ虚しく。本当は、魔女に誰よりも先に薔薇を差し上げたいのに、それを自分が糾弾して許さない。)