…止める間なんて無かった。さながら映画のワンシーンなその情景に、俺はどうするともせずにただ固まっていた。いや、今思い返せば止められたのかも知れない。そんなことは誰にも分かるものか。何も出来ずに、白昼夢に包まれ酔わされたような俺に分かることなど1つだけだ。気が付けば捕まっていたのも、質問攻めに遇ったのもどうでも良い。結局ごたごたの中で日常に帰されたことさえ。
…俺は、心のどこかでレイに生きていて欲しいと願っていた。あわよくば自分で救いたいなんて思い上がった考えを持っていたのだろう。結果論、どうにも出来なかったが。
日常に帰されたとはいえ、俺の日常に無くてはならない1ピースが抜けていた。煩い担任、どうでもいい友達、更にどうでもいいクラスメイト、そして彼奴が殺 したと言っていた彼女。心の中を探り合う醜い大人達、それは親も入っていたりして。そんな “ 日常 ” を駆け摺り回っても、隅々まで見渡しても、「 君 」だけが。彼女だけがどこにもいない。
どんなに暑い日々に耐えようとも、過ぎ去っていく時を眺めようとも、彼奴が、レイだけが、 “ 日常 ” から抜け落ちていた。
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