>>17の続きです
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少女を中心として、暴風が吹き荒れる。
翼を掴んでいられなくなって、手を放す。親友のクルレとオレは、吹き飛ばされた。
近くにいた体格がしっかりした男性に肩を掴まれ、「大丈夫か!?」と言われる。
クルレも一緒に肩を掴まれたようだ。
二人して「大丈夫です」と答える。
「一体なんなんだ?君、あの子と喋っていただろう!?」
オレは何て言うか迷った。
明らかに、オレの方が悪いだろうし、このことも退学のことも知られてしまっては家族に顔向け出来ない。
「天使なんです、天使!!」
「え、ちょ、クルレ!?」
「だって、天使だったじゃないか!!確かに翼は歪だよ!?でも、でも、君の名前も当てたし、呪文も唱えていないのに風が……」
普通、魔術を使うには呪文を言わなければならない。
難しくなるほど呪文は短くなるが、そのぶん魔力をたくさん消費し精神が壊れやすくなる。
難しい魔術は天候関係。
たとえば今起きてる風だってそうだ。
なのに、呪文も言わないでどうして……!?
もしかして、こいつは魔力がたくさんあるのか!?才能があるのか!?
オレがどんなに望んでも神に与えてもらえなかっな才能が!?
それとも、本当に天使なのか!?
「ムカつく……」
「どうした、君」
「ロ、ロー?」
オレは男性の手を肩から払って、自称天使へ一歩踏み出した。
「おい、アルカロイドだっけか!?本当に天使なら、オレの望みを神様に届けることできるだろ!?」
そう叫ぶと、風が少し弱まった。
アルカロイドはオレを見て、その歪な翼を上下に動かした。
それだけで、風はおさまる。
汚らわしいものを見るように、アルカロイドはオレを見てきた。
「望み?」
「そーだよ、望みだよ!!お前すっげぇムカつく!!なんだよ、なんなんだよ!!天使だかなんだか知らないが、だからってなんでお前はそんな魔術を使えるんだ!!オレは出来ないのに!!」
オレはアルカロイドにまた一歩踏み出す。
「オレだって、魔術の才能が……人並みの魔力が欲しいんだ!!」
アルカロイドは歪な翼でオレのもとまで飛んできた。
オレはアルカロイドをこれでもかってくらい睨み付ける。
周りの人々は「何をしている!!」だの「この落ちこぼれが何を!!」とオレを罵る。
つまり、コイツらはみんなオレの敵だ。
アルカロイドはそのたくさんの言葉を聞いてか、悲しそうな顔をした。
「そうか、君もか。可哀想にな」
「はっ?」
アルカロイドに向かって、「がんばれ」「あの落ちこぼれを倒せ」と応援とは言えない声も聞こえる。
ただ、その中に親友のクルレの声も聞こえた。
「ロー!!」
ただ名前を呼ぶだけ。
でも、それでもソイツだけ仲間だって分かって__。
「落ちこぼれは、どこでもこんな感じか?」
アルカロイドが尋ねてきた。
オレは黙ってうなずく。
「魔術学校を卒業できないと笑われるんだ」
「そうなんだ……なら、僕にも考えがある」
アルカロイドがオレに向かって右手をつき出した。
>>18の続きです
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あの汚らわしいものを見るような目から、優しい目付きへ。
「僕はアルカロイド」
「さっき聞いた。毒だっけか?」
「そう、毒。天使なのにね。僕は落ちこぼれ。落ちこぼれの天使は、他の天使たちを道連れにしようとする毒なんだ」
そうか。だから優しい目に変わったんだ。
同類だと思って。同情して。傷を舐め合おうとして。
ムカつく。
「やっぱムカつく!!お前なんなんだよ!!あんなに凄い魔術を呪文無しで使ってオレを同類と見るなよ!!最低だ!!」
「なっ……ぼ、僕は落ちこぼれなんだ!!それに、今僕は君の願いを__」
「うっせえ、お前のどこが落ちこぼれなんだよ!!」
アルカロイドは自分の翼を撫でた。
あぁ、あの翼か。
あの歪な翼が落ちこぼれの原因なのか。
「落ちこぼれというより、ただの偏見さ。翼が歪な天使は悪魔。その考えが悪魔だと言うのに。君が僕の翼を引っ張ったとき、昔のいじめを思い出してね」
____だから発狂したんだ。
周りの人々の叫び声が煩い。
けど、小さい声でもアルカロイドの声は聞こえた。
「気づけば天界から落とされ、あの枯れ井戸の中にいた。君の投げ捨てた丸めてあった羊皮紙を見て、君のことを知った」
「同じ落ちこぼれだと思ったのか?なのにあんな……まぁ、それはいい。翼が歪でも、あんな魔術を使えるんだから、お前って凄いんじゃないのか?落ちこぼれじゃないんじゃ__」
「君も分かるだろ?今君に浴びせられている声は、僕も浴びせられた。ああいうやつらは嫌いだ。だから今報復してやるのさ。君に僕の全ての力を捧げる」
つき出された右手からどす黒い煙のようなものが出てくる。
それを見た人々はどのように解釈したのか、笑い出した。狂喜に満ちている。
そんなに、落ちこぼれが苦しむ様を見たいのか。
オレは悔しくなって下唇を噛んだ。
「なぁ、ロー・ルッタン。君に力を全て捧げるということは、僕は生きるための力さえも捧げるということ。そしたら僕は消える」
突然の言葉に、言葉を無くす。
消える?消えるだって?オレに力を全て捧げて消える?
オレのために?
右手から出てくる黒い煙は、オレの体を徐々に覆っていった。
「この黒いのは僕の気持ちを反映した力だよ。……ねぇ、お願い。僕__ワタシの力で、ああいうやつらに報復してくれ」
___復讐、してくれないかな……?
震える声でアルカロイドが言った。
そして、黒い煙は完全にオレの体を覆いつくし、周りが見えなくなる。
見えるとすれば黒だけ。
「お、おい、アルカロイド?」
呼び掛けると、震える声が返ってきた。
「僕という毒がいたことを忘れないで」
目の前が晴れる。
そこにはアルカロイドは居なく、さっきまでうるさかった人々は静まりかえって、オレを見つめている。
背中にある違和感。
背中に力を入れると、何かが動く音がする。そういう感覚もする。
背中を見れば、そこにはアルカロイドと同じ歪な翼があった。