>>10 続き
自分がテノールの命を握ってるも同然であることに、“最強”を殺すことだって出来てしまうことに。フォルテは自然と口角をあげた。何が最強だ。
「努力しても強くなれなかった……でも、俺はお前より強いんだ。だって、俺はお前を殺すことも生かすことも出来る! ザマァねぇな!!」
ぱっと手を話せば、壁にもたれて力なく崩れ落ちた。荒々しく呼吸を繰り返し、時折咽せかえすテノールを見下ろして、嘲笑った。
呼吸が整うと、真っ直ぐな酷く不快な目でフォルテを見据えて、口を開く。
「フォルテの“強さ”って言うのは、殺せる力のことなのか?」
掠れた声なのに。大嫌いなテノールの言葉なのに。妙に胸を打つ響きがあって、ひどく動揺した。
「な、なにが……」
「逆に、ヒーラーとして人の命を繋ぐことは“弱さ”なのか?」
そんな言葉なんか、聞きたくなかった。その一言一言が、余りにも核心を突いていたから。
「私はフォルテみたいに回復魔法が使えないから……救えなかった命が幾つもあった。“最強”なんて呼ばれても、誰かを護れないなら、なんて虚無なんだろうって____」
「止めろっ……!!」
勢い余って、テノールの側頭部を蹴りつけた。更に、ろくに受け身も取れずに床に倒れたテノールの腹部に蹴りを入れると、小さく呻き、咳こんだ。
なんとか体を起こそうとするテノールの手を踏みつけて、言い放つ
「それでも、それは結局成功者の妄言だっ! 強くなければ、誰も救えない……っ」
なんにも、出来やしないのだ。