>>171 の続き、です。でも、私が書きたいことを書いただけなんで、本編との関係がうっっっすいです。
番外編とか舞台裏とか、そんな気持ちで見てくれると嬉しいです。流し読みでもノープロブレムです。
.゜・ ☽。゜.
2.ヒポクラテスの月は綺麗?
「……」
「………」
「…………………。」
(……暇だなぁ)
本当に、ものすごく、暇だ。
それに加えて、途轍もなく眠い。
こんなにも眠気が私の強敵となっている。大変大変、緊急事態だ(真顔)。
今までの梅雨の冷気は嘘のように消え、体にゆるく絡むような温暖な気候があたしたちの周りに漂っている。
加えて今は、給食後の英語の授業。生徒を気にしているのか疑いたくなるような、黒板しか見ていない教師の授業、真剣に聴くのは……せいぜい4割かな。
しかも皮肉なことに、あたしの席は窓際の一番うしろ。居眠りし放題の特等席ってワケ。
……いや、しませんよ?
一応授業中ですしね? 今までもしたことないですよ?
それに、居眠りだなんてあたしの矜持が許さないよ、Maybeだけど。
「レイちゃんレイちゃん。これ、ちょっとスペル教えて。あと熟語もヘルプしてくれると嬉しいっ」
「え、あ、うん。どれ?」
隣に座る若葉に声をかけられ、我に返る。セーフセーフ、すごいボーっとしてた。
「――あー! 今初めて理解したよこの文章! 助かったぁ、ありがと!」
きちんと授業を受けている、ようでちゃっかり塾の宿題をやってしまえるのがコイツだ。要領の良さで努力を半減できちゃう、得なタイプ。
「……あ、ね、若葉」
「……」
「わーかーばーさーーーーーーーん?」
「………あ、何?」
どうやら本当に聞こえなかったようだ。してやったり、みたいな表情ではない。
「……難聴だねぇ」
「なわけあるか、このキチガイ野郎ッ‼」
――ペシンッ
あまり遠くへは響かないが、それなりに威力のある音。
平たく言えば、若葉が私の右腕をたたいた音。地味に痛いし、ジンジンしてるよ……。
「……若葉、痛い」
「私はイタイ人じゃないよー」
涼しい顔で言い放つ若葉。
とりあえず言い返す。
「あたしの腕が、痛いの」
「そっか。でもねレイちゃん、理不尽なことがたくさん起こるこの世で生きていくためには、他人よりも自分を優先することも大切なんだよ?」
なにやら英語の授業中に、名(迷)言を言い出した。
内容は分かるが、いきなりどうしたんだ。
「……つまり?」
「レイちゃんが痛くっても、私は私自身が痛くなければそれで問題ないんだよ*」
あどけなさの残る顔いっぱいに笑顔が広がる。天使とかほころびる蕾とか、そんなイメージ。
だが、その表情に隠れる本音は……アンタは魔王か、それとも悪魔なのか!?
あーもう、ここまで腹黒いと逆に清々しさを感じるね。
さいですか、と適当に話を打ち切った。
眠気と暇はどこかへ消えていた。ま、こんな風に無駄な時間が流れていくのが、中学校生活なんだと思う。
……不満を言ったらきりがないけれど、それでもあたしは十分幸せな人間の部類に入ると自覚してる。
なんだかんだいって、楽しいんだ。
あの日までは、の話だけどさ。