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こちらになります。
(>>30 スレ立てありがとうございます!)
(告知通り前回の続きです。どうしても長くなってしまったので、二回に分けて投稿させていただきますすみません)
「筆崎先輩、あれから大丈夫でしたか?」
「なんとか。心配かけてごめんね。……で、どうして君は俺のクラスに来てるの?」
二年男子、筆崎剣太郎(ふでさきけんたろう)を恵理が介抱した翌日。恵理は剣太郎の様子を見に、彼のクラスである二年E組を訪ねていた。
しかし剣太郎は、恵理の気遣いに感謝こそすれど、自分の教室にまで赴いた彼女の行為はあまり歓迎していないようだ。弱々しくも突き放すような態度が、彼のそんな心情を物語っていた。
「昨日も少し言ったけど、俺にはもう近づかない方がいい。白野さんの沽券に関わってくるから……」
「……私の沽券に関わるから、また先輩が倒れたとしても見捨てろってことですか?」
「そうだよ。君もE組にいたなら分かるだろう? この学園は成績と評判が全てを決める。必要以上のお節介は自分の身を滅ぼすだけだ」
剣太郎の言葉に、恵理はぐっと喉を詰まらせる。実際に自分がE組だったときの扱いは、他の組の生徒と比べて明らかにお座なりだった。彼の言い分は確かに正しいだろう。しかし。
「でも、体調不良の人を見捨ててまで保つ沽券の価値なんて、たかが知れてます。そんな紙切れ程度のものなら、いっそない方がマシですよ」
「!」
恵理のその言葉で、剣太郎の顔は明らかに驚愕で染まった。そうして観念したように肩を竦めると、躊躇いがちな小声で、恵理だけに聞こえるようにして話す。
「……分かったよ。お節介を続けていいとは言えないけど、忠告くらいはしてあげられると思うから」
◆ ◆ ◆
中庭の中でも日の当たりが悪い、人気がない隅の隅。そこまで恵理を連れてきた剣太郎は、ぽつりぽつりと自分の身の上を話し始めた。
「まずね、この学園には『広報部』って部活があったんだ」
「ああ、筆崎先輩が倒れたときにも、微かですが聞こえてましたね。どういう部活だったんですか?」
「学園内のイベントや功績を挙げた生徒を取材して、それを学園新聞にまとめる。謂わば学園の新聞社ってやつだね」
昨日聞こえてきていた生徒たちの話からもある程度推測できたが、かつては剣太郎も広報部の一員だったのだろう。当時の活動内容を想起する彼は、僅かだが楽しそうに見えた。生憎その表情は、その直後に見る影をなくしてしまったのだが。
「でもあるとき、当時の部長が言ったんだ。『この学園は異常だ。この異常性を学校中に知らしめる』って。反対した部員もいたんだけど、それでも部長は独自の調査と取材を続けた。それまで行われてきた処刑の詳細や……この学園を牛耳る生徒会長の秘密や、権力の実態まで」
「まさか、それで広報部は……」
「部長が掴んだ情報がどこまで真実だったかは分からない。でもどちらにせよ、部長の行為は生徒会長の逆鱗に触れてしまった。結果、広報部は強制廃部になって、部員は全員Eクラスに降格。加えて部長には処刑命令が下されて、それで……」
剣太郎が吐けた過去はそれまでだった。嗚咽に似たうめき声を上げると、口を抑えて昨日のようにうずくまってしまう。
恐らく昨日の体調不良も、宣言された処刑命令によって引き起こされたものなのだろう。彼自身の意思もあったとはいえ、全く同じ症状を引き起こさせてしまったことに、恵理は酷い罪悪感を覚えた。
(続く)