【リレー小説】学園女王【企画?】

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
81:かおり:2017/03/20(月) 12:46

 土曜日、午後二時五分。私、白野恵里は喫茶店への道を急いでいた。家から喫茶店まで十分くらいで、待ち合わせは二時半。早すぎるかもしれないけれど、相手は最上級生でA組で生徒会なのだ。遅刻が許されるわけがない。
 病院の大きさに感心しながら喫茶店へ歩く。腕時計をみると時刻は二時十二分だった。まだいないよね、と心の中でつぶやいたけれど……
「こんにちは、白野さん」
「こ、こんにちは」
 奥のテーブル席には既に安部野さんがいた。
「お早いですね、先輩」
「いえ、少し用があったので。注文どうします?」
「えっと、コーヒーを」
「分かりました」
 店のロゴが入ったエプロン姿の女性店員さんにコーヒーを二つ頼む。頑張れ、という意味ありげな目配せは首を横に振って否定する。安部野さんは気付かなかったようだ。

 先ほどとは別の女性店員さんからコーヒーを受け取り、話を再開する。
 私が一番知りたいのは、あの手帳に関すること。本当に革命派なのか。でもそんなこと、直接聞けるはずがない。そこで私はこんな質問を投げかける。
「……先輩は、あの二人について、どう思いますか?」
 革命に肯定的とも否定的ともとれる聞き方。これが吉と出るか凶と出るか……。
「何故そんなことを?」
「……学園の中でもいろんな意見があるので。強いて言えば、生徒会の方の考えをお聞きしたいな、と」
 まさか質問を返されるとは思わなかった。うまく誤魔化せただろうか。
「そうですね……生徒会としては厄介と言わざるを得ません。今まで守られてきた制度に反対されたのですからね」
「そうですか……」
 うぅ、私が聞きたかったのは生徒会としての意見ではなく安部野さん個人の意見なのに。
 あーあ、失敗。
 冷めてしまったコーヒーを飲み、小さくため息をついた。
「ああ、すっかり忘れていました」
「?」
「あなたとお会いした本来の目的ですよ」
 あ、手帳のお礼か。別にいいのに。
「本当にありがとうございます。助かりました」
「いいんです、そんなたいしたことではないですし!」
 だから頭をあげてくださいよー!
「いえ、新しいものにしようとも、難しいので。どうしようかと思いました」
「……あぁ、たくさん書き込んでありましたもんね。確かに、あれをもう一度書き直すのは大変そうです」
「……ええ、まあ」
 なんだろう、気になる沈黙だな。何か変なこと言ったっけ?
 私は先ほどの発言を振り返り、大きな失態に気づいた。
「っ!」
 たくさん書き込んであった、と。
 言ってしまった。
 それが分かるのは、手帳の中を見たひとのみ。そして……。
「いつも、手帳からカバーが外れないように折り込んでいるのですが、笹川さんから受け取ったときはそうなっていなかったんですよ。もしかして、とは思いましたが、まさか……」
「……」
 ごめんなさいと素直に謝りたいけれど、出来ない。

 どうしよう……。


(ABNさん、お願いします!私じゃ無理‼)


ABN:2017/03/21(火) 00:14 [返信]

(いきなり違う場面から始まりますが、一応>>81の続きとなっております)
(創作板の方でも予告した通り、今回は今まで張っていた伏線を一気に回収するので、今まで以上の長文かつ粗削りの文章になります。すみません;)



 白羽病院の入り口付近にある、来客専用のコインロッカー。千明からのメールで集合場所として指定されたそこに、麻衣、晃、真凛の三人は集まっていた。


「あー……天本先輩、遅くね?」

「遅いって言っても、まだ三時にはなってないわよ。もう少しで来るんじゃない?」

「それはそうだけど、日時を指定してきたのは向こうでしょ? だったらそれよりも先に待ってるのが、言い出しっぺの礼儀ってものじゃないの」

「だよなー。一体何やってんだろうなあ、天本先輩」


 三人が集合したのは午後二時四十分頃。そして現在時刻は午後二時五十八分。未だに姿を見せない相手に、麻衣はそわそわと落ち着かない様子を見せ、晃は待ちぼうけによる疲労でだらけ、真凛は待ち人の無礼に憤っていた。


「ってか、どうして集合場所が病院なんだろうな? 折角待ち合わせるなら、もっと他にも場所があっただろうに……」

「あら、知らないの? 処刑された天本千明の末路」

「ま、末路?」

「彼女は歴代の処刑対象の中でも、相当メンタルが強い人だったらしいの。けれど、そんな彼女も全校生徒ぐるみの処刑には耐えられなかったのか、最後には学園の屋上から飛び降りた……って聞いているわ」

「飛び降りって、じゃあ、天本さんは……!?」

「あんなメールが届いてる以上、少なくとも命と頭は大丈夫そうね。でも、他の五体も無事で済んでるかどうかは……」


 蒼天にそびえ立つ白羽学園の学舎。その屋上から見える地面の遠さを想像して、麻衣と晃は顔から血の気が引いた。

 あの高さから身を投げれば、命どころか体が原型を留めるかどうかすら怪しい。にも関わらず、詳細不明とはいえ一命を取り留めたのは奇跡としか言い様がない。
 しかしそれと合わせて今回の集合場所を踏まえると、恐らく千明は、未だに病院から動くことができないほどの大怪我を負ってしまったのだろう。

 麻衣の思考が千明の様態を想像するにまで至ったそのとき、午後三時を告げるチャイムが病院内に響く。それと同時に、麻衣たちに声をかける者がいた。


「あ、あの……二年の板橋先輩、ですよね?」

「はい、あなたは……っ!?」


 どこかで聞き覚えのあるその声色に、麻衣は何気なく返事をする。吊られて晃と真凛も声の方に振り向き、直後、三人は息を飲んだ。
 麻衣たちに話しかけたのは、自分たちと同じ白羽学園の一年生、白野恵里。そこまでは想定通りなのだが、彼女のすぐ背後には、黒いフードを目深に被った人物がぴったりと接するようにして立っていた。よく聞けば恵里の声は上擦っており、体はびくびくと震えている。傍目から見ても、彼女がフードの人物に対して怯えているのは明らかだ。


「おい、誰だよお前!? うちの後輩がビビってるじゃ」

「刺激しないで! あの人……危ないわ」


 フードの人物に威嚇しようとした晃を、真凛が素早く制止する。彼女の目配せに従って黒フードの手元を見ると、その手には不恰好で無機質な機械が握られていた。ドラマなどのフィクションでしか見たことがないあの先端の形は、恐らくスタンガンだろう。
 もしあれが本物で、自分たちが黒フードの機嫌を損ねるようなことをすれば、目の前にいる罪なき後輩の身は――。

 麻衣たち三人がそう悟ったのを見計らったように、フードの人物は小声で恵里に何かを耳打ちする。ひっ、と小さな悲鳴こそ上げたものの、彼女は抵抗せずにその言葉を最後まで聞くと、三人の方に顔を上げた。


「ええと……皆さんが持ってる荷物、全てコインロッカーに預けてください。スマホも、上着も、ポケットの中味も、手放せるものは全部……」

「ど、どうして? 白野さん、この人の目的は何なの?」

「それは、その……きゃっ!」


 バチッ、とスタンガンから火花が弾ける。幸い恵里が感電した様子はないが、今の電撃でスタンガンがハッタリ用の偽物である可能性は潰えてしまった。つまりこのフードの人物は、やろうと思えば本当に恵里を害することができてしまうのだ。



(続く)


全部 <前100 次100> キーワード
名前 メモ