目つきが悪い、不良だった。
「ああん?てめぇ、夕陽をどこにやったんだ!?」
ハァ!?
言いがかりだよ!
「ていうか、あなた誰?」
「てんめぇ、知らねえのかよ!」
だから、誰?
「岸原流星だよ!」
岸原流星・・・・聞き覚えがあるような、ないような。
あっ、そう言えば知ってる。
この宝津小学校1の、不良だって聞いてる。
「ちょっと、岸原くん、児童会室に来てくれる?」
岸原くんは、嫌な顔をして、
「夕陽にバレるから、行きたくねぇよ」
ペッと唾を吐く。
汚い!
「夕陽ちゃん、悩んでるんだよ。岸原くん、夕陽ちゃんの何なの?」
まぁ、赤の他人ではなさそう。
岸原くんは、つかみかかって、
「俺は、夕陽の兄貴なんだよ!」
と、吐き捨てる。
え・・・でもさ。
兄貴が、妹をずっと見てるって、ストーカーまがいの超超シスコンだよね?
私は、ガッと岸原くんの手を掴んで、児童会室に連れ込む。
「お、おいっ!」
「お兄ちゃん・・・・?」
戸惑う2人を差し置いて、こばとが言う。
「七瀬、この子は、岸原夕陽ちゃん。5年生だって!」
5年生なんだ。
こばとが、不思議そうに、
「この不良、誰?」
私は、岸原くんを指して、
「えっと・・・岸原流星。ウチの学校きっての不良だよ」
こばとが、岸原くんを凝視する。
当たり前だよね。
私は、驚いている夕陽ちゃんに堂々と言う。
「夕陽ちゃんをストーカーしてるのは、岸原流星だよ!」
夕陽ちゃんの顔が、強ばる。
それに伴って、岸原くんの顔も青ざめる。
夕陽ちゃんが、振り絞るように言う。
「・・・お兄ちゃんなんか嫌い!気持ち悪い!」
夕陽ちゃんは、フンッと顔を背けた。
「ゆ、夕陽〜〜〜!!」
児童会室に岸原くんの悲鳴が響いた。
夕陽ちゃんは、岸原くんに冷たい目を向けて、私とこばとにお礼を言う。
「ありがとうございます、ストーカーの犯人が分かって、良かったです」
と、児童会室のドアを開けて、出て行く。
岸原くんがフラフラーと、児童会室のドアに向かう。
夕陽ちゃんは、岸原くんの鼻の先で、ピシャリとドアを閉めた。
岸原くん、崩れ落ちる。
私とこばとは、目を合わせて、チョンチョンと岸原くんをつつく。
岸原くんは、起き上がらない。
死んだように、くずおれている。
「岸原くん〜、カムバーック!」
耳元で怒鳴りつけても、起きない。
児童会室は、寝る所じゃないんですけど。
ムクリと、岸原くんは起き上がる。
その目は、もともと淀んでいたけれど、今は死んだ魚のような目。
ようは、生気がない。
「岸原くん、だいじょうぶ?」
「・・・・・・・・・・・あぁん?」
そして次の瞬間、岸原くんの死んだ魚のような目は、ギラギラとなる。
「てめぇのせいで、夕陽に嫌われたじゃねぇか!」
ちょっと、八つ当たり!?
「って言うか、ストーカーまがいの行為をしていた岸原くんが悪いんでしょ!?」
それを言うと、流石に岸原くんはハッとしたようだった。
「なぁ・・・俺、相談していいか?」
私とこばとはうなずいて、岸原くんを机に座らせる。
岸原くんは、疲れたように、
「俺、どうやったら夕陽と仲直りできるんだ?」