「えっ、な、なに?なにが起きてるの!?」
混乱に飲み込まれる千春。
人混みに流され始めた時、母親の手からも外れてしまった。
「うわああああ……」
波に流されるように、飲まれていく。
どうにか、出ないと。
そう思った千春は、なんとか人混み波を潜り抜け、外へ出た。
「ふう、出て来れた……え、あれ……」
誰もいなくなったヒーローショーの会場。
そこに自分よりも小さな子供が蹲み込んでいた。
「ママ……どこ?」
「あの子!そんな!」
千春は察した。逃げ遅れたと。
そして、さらなる問題が発生した。
「おーう!ガキ一人が残ってるじゃねえか」
「あ……」
見つかった。ステージを破壊した二人組に、
子供が見つかった。
「行くぞクラッシャー!あのガキも壊せば、
人々はもっと不幸になるに違いない!」
「ぎゅううううううん!」
二人組が、小さな命に迫る。
「壊す?壊すって、あの子を……?だ、ダメ!」
千春は思わず、駆け出していた。
なぜ?子供を助けるため?
自分になにができるかも、わからないのに……?
「お、おねえちゃん……?」
「大丈夫、心配しないで。お母さん、すぐ会えるからね!」
子供を抱きかかえた、その時だった。
「あー!まだガキがいたのか!クラッシャー、二人まとめて壊しちまえ!」
「どぎゅうううう!」
同じタイミングで、二人組が距離を詰めてきた。
千春のことも認識して、ドリルの怪物が襲ってくる。
「っ……この子だけはッ……!」
子供を抱き抱えた千春は、ドリルアームに背中を向けて、
腕の中の小さな命だけでも守ろうとした。
しかし、このままでは自分がドリルに刺されてしまうだろう。
血が出る?痛い?きっともっと辛い。
一瞬の間に、いろいろなことを考えていたが……それももう、終わった。
……終わったと、千春は思っていた。
「うわっ!……なんだ?今の光!」
「えっ……?」
後ろがざわめき始めたので、恐る恐る振り向く千春。
すると目の前には、桜の羽を生やしたさらなる謎の生物が怪物に立ち塞がっている。
「……この場を切り抜けるには、あなたのその勇気が必要なの!
レイズブレスレットをあげるから、変身して!」
「わ、私?というか、えっ?」
いつの間にか、千春の右腕には大きめのブレスレットがつけられていた。
謎の桜生物は自分の姿をメダルに変えると、
ブレスレットの穴に入り込む。
「わ、わああああああ!」
ブレスレットから放たれる眩い光に、
千春は包まれていった。