>>363
プールをせき止めていた壁が壊れて、僕らは流れに逆らえずどんどん流されていった。
殺「皆さん!」
殺せんせーがマッハで飛んできて、僕らを助けてくれた。
でも、殺せんせーの触手がだんだんふやけてきていた。
殺(この先には滝がある。早く助けないと落ちて死んでしまう!)
寺坂は事態が呑み込めずに茫然としていた。
そこへ海とカルマがやって来た。
カ「何これ」
海「プールが消えてるじゃん」
海は寺坂の姿を見つけて、声をかけた。
海「あ、寺坂。これはいったいどういう状況?」
寺「俺は、何もしてねぇ……。こんなことになるなんて、聞いてねぇよ」
カ「なるほどね。自分でたてた計画じゃなくて、まんまと騙されてたってわけ」
海「この計画は誰がたてたのさ」
寺「シロだよ」
海「なっ!」
海の表情がだんだん青ざめていくのを、カルマは見逃さなかった。
カ「海」
海「え、ああ。……ちょっと待って。まさかとは思うけど、クラス全員をプールに放ったとか言わないよね?」
寺「それがどうかしたのかよ」
海「どうかしたのかよじゃない! カエデは泳げないんだよ⁉ それなのに……」
カ「海、先に行ってなよ」
海「わかった」
海は急いで滝の方へ向かって走りだした。
茅野の姿を見つけると、海はホッとして彼女に声をかけた。
海「カエデ、よかったぁ……」
茅「海ちゃん……」
周囲には何人かいた。
海はウェストバッグから大きめのタオルを取りだして、茅野の肩にかけた。
茅「ありがと」
みんなで滝の方へ歩いていくと、そこにはやはり。
海「シロとイトナ……」
イトナが殺せんせーに攻撃をしかけていた。殺せんせーはその攻撃を必死に防いでいた。
杉「殺せんせー、どうして。あれくらいの攻撃を避けるなんてたやすいだろうに」
倉「触手が水を吸っちゃったからじゃ……」
寺「それだけじゃねぇ、見ろ。タコの頭上」
奥「あっ」
殺せんせーの頭上には原さんたちがいた。
磯「寺坂。今回の計画、まさかあいつらに騙されて」
寺「あぁ、そうだよ。目的やビジョンを持たない俺のような奴は計算高い奴にいいように操られるだけだ。だけどな、操られる奴だけは選びてぇ。だからカルマ、お前が俺を操ってみろや」
カ「うん? 別に良いけど、いいのぉ? 俺の作戦、死ぬかもよ」
寺「ハッ、やってやらぁ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ?」
カ「そうだ! 原さんは助けずに放っておこう」
海「カルマ、あんたね……」
これを言っちゃうからカルマくんらしいというか。
寺「何言ってんだ、カルマ! 原が一番危ねぇだろ。へヴィで太ましいからつかまってる枝も折れそうだ!」
カルマくんは小悪魔のような笑顔を浮かべていた。
シ「さぁ、イトナ。とどめをさしなさい」
イトナくんが触手を振り下ろそうとした瞬間。
寺「おい。イトナ、シロ!」
寺坂くんが自分の着ていたYシャツを盾にしながらやってきた。
寺「よくも俺をだましてくれたな! おい、イトナ。俺とタイマンで勝負しろっ!」
殺「やめなさい、寺坂くん。君が敵う相手ではない」
寺「うっせぇ、ふくれダコ!」
シ「ははっ。シャツ一枚で健気だねぇ。黙らせろ、イトナ」
渚「カルマくん!」
カ「大丈夫だよ、死にゃしない。原さんも一見危なそうに見えるけど、あのタコが見捨てるはずないのは体験済みだし。
あのシロも俺たちを殺すことが目的じゃない。生きてるからこそ、殺せんせーの集中を削げるんだ。だから寺坂にも言っといたよ。気絶する程度の触手は食らうけど、逆に言えばスピードもパワーもその程度。死ぬ気で食らいつけって」
寺坂くんはイトナくんの触手をもろに食らってしまった!
シ「ははっ、よく耐えたね。イトナ、もう一発あげなさ……」
イ「へくしょんっ」
シ「え?」
イトナくんがまるで花粉にかかったようにくしゃみをしまくっている。
どうして?
カ「寺坂の奴、昨日と同じシャツのままなんだよ」
海「え、きたなっ!」
カ「でも、それはつまり、あの変な殺虫剤みたいなのを至近距離で浴びたってこと。イトナだって、ただで済むはずがない。で、イトナに一瞬でも隙を作れば、原さんはタコが勝手に助けてくれる」
カルマくんが合図をだす。そろそろ僕たちの出番だ。
カ「殺せんせーと弱点一緒なんだよね? だったら、それをやり返せばいいわけだ」
崖からイトナくんめがけて、僕らは飛び降りた。
水しぶきがあがる!
イトナくんの触手が水を吸ってブクブクに膨れ上がった。
カ「で、どうすんの? 俺たち賞金持ってかれるのヤだし、そもそもみんなあんたの作戦で死にかけてるし。ついでに寺坂はボコられてるし。そっちがまだ殺る気なら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
シ「イトナ、帰るよ」
イ「チッ」
シロとイトナくんは去っていった。
杉「はぁ。なんとか追っ払えたな」
岡野「よかったね、殺せんせー。私たちのおかげで命拾いしたでしょ」
殺「ヌルフフフ。もちろん感謝しています。まだまだ奥の手はありましたがね」
バシャッ
突然あがった、水しぶきの音。
海が四つん這いになって倒れていた。
渚「海っ⁉」
海「ハハッ、ごめんごめん。ちょっと緊張が解けたから安心してさ……」
カ「ねぇ、海。一つ聞きたいんだけどいい?」
海「何さ」
カ「海さ、もしかしてシロとなんかあったの?」
カルマくん?