>>362
やっと粘液地獄から抜け出せた。
僕は校舎からでると、寺坂くんを追いかけた。
渚「寺坂くん」
寺「んだ、渚」
渚「暗殺をするって、具体的にどうするの? ちゃんとみんなに作戦を教えないと、思い付きでやれるほど殺せんせーは甘くはないよっ」
寺坂くんが僕の胸倉をつかんだ。
寺「っるせぇな。俺はお前らとは違うんだよ。本気で殺すビジョンもないくせによ」
寺坂くんは僕を突き飛ばすなり、どこかへ行ってしまった。
それにしても、寺坂くんは計画に自信を持っているように見えたけど、自分に自信があるようには見えなくて。
ちぐはぐさに、胸騒ぎがした。
プール
寺「よぅし、そうやって全体に散らばっとけ」
木「すっかり暴君だぜ、寺坂の奴」
菅「ああ。あれじゃあ1、2年の頃と同じだ」
僕らは寺坂くんに言われた通り、プールにやって来た。そして、彼の指示に従っていた。
竹「納得いかないな。君に人を泳がせるほどの器量があるのかい?」
寺「っるせぇ、竹林。とっととお前も行け」
寺坂くんは竹林くんをプールに突き落とした。
殺「なるほど。みんなに武器を持たせてプール内に散らばらせる。それで君はいったい、どうやってせんせーを落とすんです? ピストル一丁ではせんせーは落とせませんよ」
たしかに、どうするんだろうか。
寺「俺はずっとお前が気に入らなかった。ずっと消えてほしいと思っていた」
殺「わかっています。この暗殺が終わったら、私と話しましょう」
少し離れた場所にて
シ「寺坂くんにはあのピストルは合図のためだと言ってあるが、それだけであのタコを落とせるわけがない。少し工夫させてもらったよ」
プール
寺(来い、イトナ!)
寺坂くんがピストルをせんせーに向けて放った瞬間!
ドゴーーーーーーーーーーン
⁉
プールがっ!
裏山
カ「あれ、海。何してんの?」
海「カルマじゃん。そっちこそ、さっきの授業サボってたでしょ」
カ「まぁね〜。で、何してんの?」
海「ああ。これ? ちょっとした実験だよ」
カ「実験?」
海が見ていたのは角砂糖に群がるアリたちだった。
海「角砂糖を置けばどのくらいの時間でアリがやって来て、角砂糖をすべて回収するのかっていう。地味〜な実験。今度陽菜乃とやろっかなぁって思ってんだよね」
カ「ふぅん」
そこへ、爆発音が響いた。
海「何、今の音」
カ「行ってみよう」
海とカルマは音のした方へ走りだした。
プールをせき止めていた壁が壊れて、僕らは流れに逆らえずどんどん流されていった。
殺「皆さん!」
殺せんせーがマッハで飛んできて、僕らを助けてくれた。
でも、殺せんせーの触手がだんだんふやけてきていた。
殺(この先には滝がある。早く助けないと落ちて死んでしまう!)
寺坂は事態が呑み込めずに茫然としていた。
そこへ海とカルマがやって来た。
カ「何これ」
海「プールが消えてるじゃん」
海は寺坂の姿を見つけて、声をかけた。
海「あ、寺坂。これはいったいどういう状況?」
寺「俺は、何もしてねぇ……。こんなことになるなんて、聞いてねぇよ」
カ「なるほどね。自分でたてた計画じゃなくて、まんまと騙されてたってわけ」
海「この計画は誰がたてたのさ」
寺「シロだよ」
海「なっ!」
海の表情がだんだん青ざめていくのを、カルマは見逃さなかった。
カ「海」
海「え、ああ。……ちょっと待って。まさかとは思うけど、クラス全員をプールに放ったとか言わないよね?」
寺「それがどうかしたのかよ」
海「どうかしたのかよじゃない! カエデは泳げないんだよ⁉ それなのに……」
カ「海、先に行ってなよ」
海「わかった」
海は急いで滝の方へ向かって走りだした。
茅野の姿を見つけると、海はホッとして彼女に声をかけた。
海「カエデ、よかったぁ……」
茅「海ちゃん……」
周囲には何人かいた。
海はウェストバッグから大きめのタオルを取りだして、茅野の肩にかけた。
茅「ありがと」
みんなで滝の方へ歩いていくと、そこにはやはり。
海「シロとイトナ……」
イトナが殺せんせーに攻撃をしかけていた。殺せんせーはその攻撃を必死に防いでいた。
杉「殺せんせー、どうして。あれくらいの攻撃を避けるなんてたやすいだろうに」
倉「触手が水を吸っちゃったからじゃ……」
寺「それだけじゃねぇ、見ろ。タコの頭上」
奥「あっ」
殺せんせーの頭上には原さんたちがいた。
磯「寺坂。今回の計画、まさかあいつらに騙されて」
寺「あぁ、そうだよ。目的やビジョンを持たない俺のような奴は計算高い奴にいいように操られるだけだ。だけどな、操られる奴だけは選びてぇ。だからカルマ、お前が俺を操ってみろや」
カ「うん? 別に良いけど、いいのぉ? 俺の作戦、死ぬかもよ」
寺「ハッ、やってやらぁ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ?」