>>379
カ「ねぇ、なんかあんでしょ。例えばイトナの転校初日。俺が海に声をかけたらさ、ボーッとしてたじゃん。それからイトナとシロが教室からあと、いきなり倒れるとか」
渚「それは、海。寝不足だって言ってたけど」
カ「じゃあ、今回のことはどう説明すんの? さっき、寺坂からシロの名前がでたとき、海はすごく青ざめてたじゃん。で、挙句。今回も倒れるし。いったい何があんのさ」
海は黙っていた。その表情は無で、何を考えているのか読み取れなかった。
やがて彼女は、フッと笑うと思い切り笑い始めた。
海「アハハハハハッ。ごめんごめん。いやぁ、シロって言われるとさ、毎回思いだしちゃうんだよね。かつて仕事をしていたときにさ、水族館での仕事だったんだけど、そこで私。間違ってシロイルカのいる水槽で溺れちゃってさぁ。それ以来、シロって言われるとトラウマがよみがえっちゃって」
カ「ふぅん」
海「あのときはめっちゃロヴロ先生に怒られたよ。あーあ」
倉「でも、シロイルカは人になつきやすいんだよ?」
海「え、そうなの?」
ふぅ。
険悪な雰囲気になりかけてたけど、とりあえず良かった。
原「ところで寺坂くんさ、さっき私のこと散々言ってたよね? へヴぃだとか太ましいだとか」
寺「えっ⁉ あ、あれはだな。状況を客観的に分析してだな……」
原「問答無用! 動けるデブの恐ろしさ、見せてあげるわ」
カ「あーあ、寺坂。そんなんだから人の手の上で転がされるんだよ」
寺「うっせぇ、カルマ。てめぇも高いところから見下ろしてんじゃねぇ」
寺坂くんは高いところに座っていたカルマくんの胸倉をつかみ、川に落とした。当然、カルマくんはびしょ濡れだ。
カ「はぁっ⁉ 何すんだよ、上司に向かって」
寺「うっせぇ、触手を生身で受け止めさせるイカれた上司がどこにいる! だいたいてめぇはサボり魔のくせしておいしいとこだけ持っていきやがってよ!」
片「あー、それ私も思ってた。よく言った寺坂」
中「これを機に泥水もたっぷり飲ませようか」
中村さんと前原くんがカルマくんを抑え込んで、川の水に頭を押しつけた。
散々言いあったりやりあったりしてたけど、そこには寺坂くんも加わっていた。僕もカルマくんもそのことが内心では嬉しくて、だからクラスみんながそのときは見逃していたんだ。
水なんかよりももっと大きな、殺せんせー最大の弱点を。
殺「今回の試験では各教科でトップ1位をとった者に触手を破壊する権利をあげましょう!」
そう言った殺せんせーの言葉に、僕らはやる気をそそられた。
奥「皆さん、頑張りましょう!」
カ「珍しく気合入ってるね、奥田さん」
奥「はい。理科だけなら私の大の得意ですから。やっとみんなの役に立てます」
プルルルル
海「誰の電話?」
杉「あ、俺だ」
杉野の携帯が鳴っていた。
杉「もしもし、進藤か? 球技大会ぶりだな」
進『やぁ、杉野。ちょっとお前が進学できるか心配に鳴ったから電話をかけたんだが』
杉「ははっ。相変わらずの上から目線で」
進『というのもな、今、特進クラスのA組が会議室に集まってるんだ。指揮をとっているのは、五英傑と呼ばれるうちが誇る精鋭たちだ』
五英傑。
たしか、国語が得意な榊原くん。英語が得意な瀬尾くん。社会が得意な荒木くん。理科が得意な小山くん。そして……。
進『生徒会長・浅野』
杉「理事長の1人息子」
進『どうやらA組の連中はE組のお前たちを本校舎に復帰させないつもりらしい』
杉「安心しろ、進藤。今の俺たちはE組脱出が目的じゃない。ただ、目的を達成するためにはA組に勝たなきゃいけないんだ」
放課後
磯「渚、茅野」
渚「磯貝くん?」
磯「明日、本校舎の図書館で勉強しないか? 実はこの日のために随分前から予約してたんだ。E組は基本後回しだから俺たちにとっちゃプラチナチケットだぜ」
茅「行く行く」
渚「うん」
海「ねぇ、磯貝。それ、私も参加していい?」
磯「いいぞ」
海「やった。サンキュ」
次の日
?「あれ〜。E組のみなさんじゃないか。君たちにとってここは、豚に真珠じゃないのかね」
中(うっわー)
茅(よりによって、例の五英傑)
彼がたしか、荒木くん。そして、榊原くんと瀬尾くん、小山くん、か。浅野くん以外は全員いるみたいだ。
海は僕の隣で黙々と勉強をしていた。
瀬「どけよ、ザコども。ここは俺らの席だぜ」
茅「何よ、勉強してんだから邪魔しないで!」
茅野が立ち上がって文句を言った。
そのとき、バサッと国語の教科書が落ちて、でてきたのは『世界のプリン大百科』
渚「茅野、本……」
僕はあきれてしまった。
磯「ここは俺らが予約してとった席だぞ」
中「そうそう。エアコンの中で勉強するなんて久しぶりだから、超天国〜」
小「忘れたのか? 成績の悪いE組はA組に逆らえないこと」
奥「さ、逆らえます!」
小「何⁉」
奥「私たち、今回のテストで各教科1位を狙ってるんです。そしたら、大きい顔なんてさせませんから」
奥田さん……。
珍しいな、こんなことを言うなんて。
小「んだと、生意気な女め。おまけに眼鏡なんてして芋くさい。なぁ、荒木」
荒「あ、ああ」
榊「やめなよ、小山。ごらん、どんな掃き溜めにも鶴がいる」
榊原くんは神崎さんに近づいて髪をなでている。
渚&茅(神崎さん、男運なさすぎ)
それにしても、と思う。
よく海はこんな状況の中で黙々と勉強をしてられるよなぁ。