>>381
殺「今回の試験では各教科でトップ1位をとった者に触手を破壊する権利をあげましょう!」
そう言った殺せんせーの言葉に、僕らはやる気をそそられた。
奥「皆さん、頑張りましょう!」
カ「珍しく気合入ってるね、奥田さん」
奥「はい。理科だけなら私の大の得意ですから。やっとみんなの役に立てます」
プルルルル
海「誰の電話?」
杉「あ、俺だ」
杉野の携帯が鳴っていた。
杉「もしもし、進藤か? 球技大会ぶりだな」
進『やぁ、杉野。ちょっとお前が進学できるか心配に鳴ったから電話をかけたんだが』
杉「ははっ。相変わらずの上から目線で」
進『というのもな、今、特進クラスのA組が会議室に集まってるんだ。指揮をとっているのは、五英傑と呼ばれるうちが誇る精鋭たちだ』
五英傑。
たしか、国語が得意な榊原くん。英語が得意な瀬尾くん。社会が得意な荒木くん。理科が得意な小山くん。そして……。
進『生徒会長・浅野』
杉「理事長の1人息子」
進『どうやらA組の連中はE組のお前たちを本校舎に復帰させないつもりらしい』
杉「安心しろ、進藤。今の俺たちはE組脱出が目的じゃない。ただ、目的を達成するためにはA組に勝たなきゃいけないんだ」
放課後
磯「渚、茅野」
渚「磯貝くん?」
磯「明日、本校舎の図書館で勉強しないか? 実はこの日のために随分前から予約してたんだ。E組は基本後回しだから俺たちにとっちゃプラチナチケットだぜ」
茅「行く行く」
渚「うん」
海「ねぇ、磯貝。それ、私も参加していい?」
磯「いいぞ」
海「やった。サンキュ」
次の日
?「あれ〜。E組のみなさんじゃないか。君たちにとってここは、豚に真珠じゃないのかね」
中(うっわー)
茅(よりによって、例の五英傑)
彼がたしか、荒木くん。そして、榊原くんと瀬尾くん、小山くん、か。浅野くん以外は全員いるみたいだ。
海は僕の隣で黙々と勉強をしていた。
瀬「どけよ、ザコども。ここは俺らの席だぜ」
茅「何よ、勉強してんだから邪魔しないで!」
茅野が立ち上がって文句を言った。
そのとき、バサッと国語の教科書が落ちて、でてきたのは『世界のプリン大百科』
渚「茅野、本……」
僕はあきれてしまった。
磯「ここは俺らが予約してとった席だぞ」
中「そうそう。エアコンの中で勉強するなんて久しぶりだから、超天国〜」
小「忘れたのか? 成績の悪いE組はA組に逆らえないこと」
奥「さ、逆らえます!」
小「何⁉」
奥「私たち、今回のテストで各教科1位を狙ってるんです。そしたら、大きい顔なんてさせませんから」
奥田さん……。
珍しいな、こんなことを言うなんて。
小「んだと、生意気な女め。おまけに眼鏡なんてして芋くさい。なぁ、荒木」
荒「あ、ああ」
榊「やめなよ、小山。ごらん、どんな掃き溜めにも鶴がいる」
榊原くんは神崎さんに近づいて髪をなでている。
渚&茅(神崎さん、男運なさすぎ)
それにしても、と思う。
よく海はこんな状況の中で黙々と勉強をしてられるよなぁ。
小「待てよ、たしかこいつら……。磯貝悠馬、社会14位。奥田愛美、理科17位。神崎有紀子、国語23位。中村莉桜、英語11位。なるほどなぁ、各教科だけなら張り合える奴もいるってわけだ」
荒「なら、こういうのはどうかな。各教科で1位を取った者がなんでも命令できるってのは」
え……。
瀬「どうした、臆したか? 俺らなら命賭けてもかまわないぜ」
瞬間、僕らはそれぞれ反応した。
僕は瀬尾くんに、磯貝くんは荒木くんに、中村さんは小山くんに、神崎さんは榊原くんに対して急所をついた。
渚「命はそう簡単に賭けないほうがいいと思うよ」
僕は思わずそう言っていた。
こんな騒がしい状況の中で、やっぱり海は黙々と勉強をしていた。
荒「お、覚えてろよ」
榊「どうなっても知らないからな!」
五英傑の人たちが立ち去ろうとしたところで。
海「待った。ちょっと、そこのえーっとなんだっけ? 五、五……あー、いいや。A組の頭が素晴らしくできてる人たち。ちょっと謝ってよ」
瀬「な、なんだよ。どうして俺たちがE組のために謝んなきゃ……」
海「僕らじゃなくて、この人たちにだよ」
海が示したのは僕らの席の周りにいる他クラスの生徒たちだった。
海「ここにいる人たちは、勉強するためにここに来たんだ。まぁ、もちろん僕らもそうだけど。君たちの勝手な都合で騒がされた挙句に謝らないのはおかしいと思う。あれ、見える?」
続いて海が示したのは、本棚にある『館内は静かに利用しましょう』の文字。
海「ルールを守れないなんて、成績以前に、人間としてどうかと思うけど。聞いたところによるとさ、A組ってみんなのお手本なんでしょ?」
海……。
茅「もしかして海ちゃん、間接的にケンカ売ってる?」
茅野が小声で僕に聞いてきた。
渚「もしかしたら、そうかも」
海はため息をついて、席に着いた。
小「お前、名前は」
海「名乗ってどうすんのさ。どうせ成績下位組の僕らのことなんて、君たちは興味もわかないでしょ。明日には忘れてるだろうよ」
海は片づけを始めた。
渚「え、帰るの?」
海「いや、ちょっと校舎に戻るよ。やっぱ数学は難しいや。せんせーに質問してくる。じゃね、みんな」
海は僕らがあっけにとられている中で、図書室をでていった。