>>648
殺「二学期も滑り出し順調! 生徒との仲もますます強固になりました。さて、今日も皆さんは私を親しみの目で見つめ……」
殺せんせーが教室に入ると、生徒たちの目は。
殺「お、汚物を見る目ぇ⁉」
前原くんが、海が持ってきた情報誌を殺せんせーに見せた。
前「市内で巨乳のみを狙った下着ドロボー。犯人は黄色い頭の大男。これどう考えたってせんせーだろ」
岡野「見損なったよ」
殺「ちょっ、待ってください! 私のせいではありません」
速「じゃあアリバイは?」
殺「はい?」
そうだ、アリバイだ。
速「この事件が起きた、一昨日の深夜。どこで何してた?」
殺「何って、高度1万メートルから3万メートルの間を上がったり下がったりしながら、シャカシャカポテトを振ってましたが」
前「誰が証明できんだよ、それをよっ‼」
村「だいたい、アリバイなんて無駄だろ」
狭「そうね。何があっても一瞬でこの町に戻ってこられるんだから」
た、たしかに……。
そのとき、声をあげたのは磯貝くんだった。
磯「決めつけるだなんてひどいだろ、みんな! たしかに殺せんせーは色々煩悩も多いけど、今までやってきたことと言えばせいぜい……エロ本拾い読みしたり、休み時間に狂ったようにグラビアに見入ったり、『手ブラじゃなまぬるい私に触手ブラをさせて』って要望葉書をだしたり……」
磯貝くんの言葉が、そこでとまった。
磯「せ、せんせー、自首してください」
殺「にゅやっ! 磯貝くんまで」
殺せんせーは絶句していたけれど、やがて決心したように顔をあげた。
殺「決めました! せんせーが清廉潔白だということを証明するために、今から職員室の机の中にあるグラビアを全て捨てますっ‼」
殺せんせーが職員室に行くのを僕らは後ろからついていった。
殺せんせーは自分の机の前に来ると、引き出しを開けてグラビア雑誌を出し始めた。
海「うっわぁ……」
海が驚くのも無理はない。そのくらい多いんだから。
そのときだった。
殺「にゅやっ!」
そこからでてきたのは、女性用の下着……。
岡野「ねぇ、みんな見てよこれっ!」
そこへ岡野さんがクラス名簿を持ってやってきた。
岡野「クラスの女子の、カップ数が書いてある!」
岡野さんが広げた名簿を、女子全員がのぞいた。
突然、茅野が叫んだ。
茅「ちょっ! 私だけ『永遠の0』って何よこれぇっ‼」
………。
ゾクッ
な、なんか急に寒気が……。
海「殺せんせー、女子の秘密を知ってるって……。しかも、私のまで知ってるとかどういう意味かなぁ? 殺されたいのぉ〜?」
う、海……。
名簿からひらりと、何かが落ちた。
前「おい、なんだよこれ。『椚ヶ丘市内のFカップ以上のリスト』って!」
⁉
殺「にゅやぁっ! そ、そうだ。今日はみんなでバーベキューをする予定でした。ほら、おいしそーで……あっ!」
殺せんせーがだしてきたクーラーボックスの中からでてきたのは……、やっぱり女性用の下着だった。
片「信じらんない」
岡野「不潔……」
その日の授業は、重く暗いものだった……。主に女子が。
殺「き、今日の授業はここまで……」
殺せんせーが去った瞬間、カルマくんが笑いだした。
カ「ハハッ。あのタコ、一日じゅう針の筵(むしろ)だったね。いづらくなって逃げだすんじゃね?」
僕は立ち上がって言った。
渚「でも、殺せんせー。本当にやったのかな? こんなシャレにならないこと」
カ「地球爆破に比べたらかわいいもんでしょ」
え、うーん……。
隣で海が呆れてる。
カ「ま、もしも俺がマッハ20の下着ドロなら、こんなにボロボロ証拠残さないけど、ねっ」
カルマくんが投げてきた物を、僕は慌てて受け取った。
それは、下着のついたバスケットボールだった……。
カ「あの怪物教師からしたら、俺らの信用を失うことは暗殺されんのと同じくらい避けたい事だと思うけどね」
僕はカルマくんの言葉に笑顔でうなずいた。
渚「うん、僕もそう思う」
そのとき、茅野が立ち上がった。
茅「でも渚、もし殺せんせーじゃなかったとしたらいったい誰が……」
不「偽よ」
え?
不破さんが不敵な笑みを浮かべながら立ち上がって力説し始めた。
不「ヒーロー者のお約束、偽物悪役の仕業だわっ‼」
え………。
不「体色、笑い方をマネしてるってことは、犯人は殺せんせーの情報を得ている何者か。律に助けてもらって犯人の手がかりを探りましょう」
律「はいっ」
カルマくんが立ち上がって、寺坂くんの肩に手を置いた。
カ「だねぇ。何のためにこんなことすんのか知らないけど、そのせいで賞金首がこの町からいなくなっても困るから、俺らの手で真犯人捕まえてタコに貸し作ろうじゃん」
僕の後ろで、茅野が燃えていた。
茅「永遠の0……」
あはは……。