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その日の授業は、重く暗いものだった……。主に女子が。
殺「き、今日の授業はここまで……」
殺せんせーが去った瞬間、カルマくんが笑いだした。
カ「ハハッ。あのタコ、一日じゅう針の筵(むしろ)だったね。いづらくなって逃げだすんじゃね?」
僕は立ち上がって言った。
渚「でも、殺せんせー。本当にやったのかな? こんなシャレにならないこと」
カ「地球爆破に比べたらかわいいもんでしょ」
え、うーん……。
隣で海が呆れてる。
カ「ま、もしも俺がマッハ20の下着ドロなら、こんなにボロボロ証拠残さないけど、ねっ」
カルマくんが投げてきた物を、僕は慌てて受け取った。
それは、下着のついたバスケットボールだった……。
カ「あの怪物教師からしたら、俺らの信用を失うことは暗殺されんのと同じくらい避けたい事だと思うけどね」
僕はカルマくんの言葉に笑顔でうなずいた。
渚「うん、僕もそう思う」
そのとき、茅野が立ち上がった。
茅「でも渚、もし殺せんせーじゃなかったとしたらいったい誰が……」
不「偽よ」
え?
不破さんが不敵な笑みを浮かべながら立ち上がって力説し始めた。
不「ヒーロー者のお約束、偽物悪役の仕業だわっ‼」
え………。
不「体色、笑い方をマネしてるってことは、犯人は殺せんせーの情報を得ている何者か。律に助けてもらって犯人の手がかりを探りましょう」
律「はいっ」
カルマくんが立ち上がって、寺坂くんの肩に手を置いた。
カ「だねぇ。何のためにこんなことすんのか知らないけど、そのせいで賞金首がこの町からいなくなっても困るから、俺らの手で真犯人捕まえてタコに貸し作ろうじゃん」
僕の後ろで、茅野が燃えていた。
茅「永遠の0……」
あはは……。
海「ゲホッ、ゲホッ……」
茅「海ちゃん平気?」
海「ゲホッ……ハハ、ごめん。ちょっと最近風邪気味でさ」
不「大丈夫なの?」
海「いやはや申し訳ない……。みんな今年受験なのにね。感染したら大変だわ」
うん?
渚「みんな受験って、海も今年受験でしょ? それとも……」
殺し屋に戻るのかと聞こうとして、ちょっとためらった。
海「あ、あー……。そういえばそうだった」
?
不「さて、到着よ」
不破さんを筆頭にして、僕らは高い塀を乗り越えた。
不「ふふん。体も頭脳もそこそこ大人の名探偵参上!」
渚「やってることはフリーランニングを使った、住居侵入だけどね……」
僕らは急いで物陰に隠れた。
寺「不破、どうしてここが次に犯人が現れる場所だってわかんだよ」
不「ふふっ。実はここで、巨乳アイドルのみを集めた合宿が開催されてるの。しかも、今日は合宿最終日。犯人がこの手を逃すはずないわっ!」
海「ふぅん。あ、あれ何?」
海が指さした方向を見ると、黄色い頭の……。
茅「こ、殺せんせー⁉」
渚「なぁんだ。殺せんせーも同じこと考えてたのか」
海「⁉」
寺「海、今度はなんだよ」
海「変な気配がする……」
カ「ん〜? あ、あれじゃない?」
カルマくんが指さした方向にはっ!
不「き、黄色い頭の大男⁉」
渚「やっぱり……」
カ「真犯人は別にいたみたいだね」
黄色いヘルメットをかぶったスーツ姿の人間が、物干し竿のあたりを右往左往していた。そして、次々と物干し竿に干されている下着を取っていった!
そこへ殺せんせーが飛びだしてきた!
殺「捕まえたぁぁぁぁっっ‼ よくも私のマネして羨ましいことしてくれましたねぇっ! 隅から隅まで手入れしてやる、ヌルフフフフフ‼」
僕らは物陰から出た。
寺「なんか、下着ドロより危ねぇことしてるぞ」
渚「笑い方も報道されてた通りだしね」
カ「でも、海。これで安心でしょ」
そういえば、変な気配がするって言ってたっけ。
僕は海を見たけど、海は依然(いぜん)厳しい表情をしていた。何があるというのだろう?
その時だった。
海「⁉ 殺せんせー、逃げてっ!」
渚「え⁉」
殺「にゅやっ⁉」
物干し竿で一緒に干されていたシーツが、殺せんせーを囲み始めた!
?「国にかけあって烏間先生の部下をお借りしてね。おかげであのタコをここまで誘い出すことができた」
この声は!
寺「シロっ!」
シ「君たちが夏休みに使った方法を利用させてもらったよ、あてるより、まずは囲うが易し。そして」
囲まれたせんせーの上空には。
不「イトナくん⁉」
イ「さぁ、兄さん。どちらが強いか。改めて決めよう」