「もう一つの part4」982続き
海の目が怪しく光ったかと思うと、すぐにやんだ。何も起きないのかと、僕が安心していると……。
海「ねぇ、磯貝くん。この人たちはあなたの知り合いなの?」
⁉
海は普段、男子は呼び捨て、女子は下の名前で呼ぶのが定番だ。その海が男子をくん付けして、挙句。五英傑を知っているはずなのに知らないフリ!
当然、小山くんは気づいたみたいだ。
小「おい待て、お前。たしか本郷海だろ。忘れてないぞっ!」
海「な、何ですかいきなり……。私の名前は本郷カイです。海は双子の兄ですよ!」
どうやら海は「カイ」という名前でこの場をやり過ごすつもりらしかった。しかも双子設定……。
岡「まぁ、双子っちゃ双子じゃね?」
渚「そうだけどさ……」
海はおどおど(しているフリを)しながら、磯貝くんの背中に寄り添っていた。きっと海の場合、誰の背中でも良かったんだろうけど。それはさておき。
榊「ごめんね、本郷カイさん。実は今、大事な話の最中なんだ。君の大事な彼、実は今。校則違反をしているんだ」
海「そ、そうなの……?」
磯貝くんは海の行動に呆れながらもとりあえず、表面上は
磯「実はそうなんだ」
と、苦笑いをしながら海の演技に付き合っていた。
実を言うと、僕も磯貝くんもみんなも。海が何をしたいのかわからなかった。
この現状を上手く変えてくれるとありがたいのだけれど。
海「で、でもっ! 磯貝くんの家は今すっごく大変なんだよっ! お願いします、見逃してくださいっ‼」
どうやら平和裏にやりこむらしかった。海にしては珍しいのだけれど。
浅「言ったろ? 僕としても穏便に済ませたいと。そうだな……、うちの学校の校風はね、社会に出て闘える志を持つ者を何より尊ぶんだ。その闘志を示すには」
後日、E組
木「体育祭の棒倒しぃ⁉」
前「そ。それでA組と闘って勝てたら、磯貝のバイトには目をつぶってくれるんだとさ」
寺「で、海はまたそれに便乗したのかよ」
海「だって面白そーなんだもん」
海は磯貝くんをかばって、何度も何度も「磯貝くんを許してほしい」と言っていた。まぁ、本気なんだろうけど、何か裏があるのは僕らには見え見えだった。
その決定打は、榊原くんの一言だった。
榊「だったらカイさん、もし磯貝くんが勝てたのなら見過ごしてあげよう。ただし、彼が万が一負けたのなら君はうちに奉公に来るといい。そんな人たちと付き合ってたら、君の人生は勿体ないよ」
そこが、海の狙いだったらしい。
五英傑が「そんな人たち」呼ばわりした僕らが、どれほどの力を持っているのか教えてやるためと、あとで海は語った。
海「でもさ、正直。人を誘うのに『奉公に来い』とか、虫唾(むしず)が走ったわー。殴り倒そうかと思っちゃった」
と言って、海は今。ケタケタ笑っている。
海「どうやらあいつら、成績とか境遇とかで友だちを選ぶみたいだね。わかってたことだけどさ、気持ち悪いったらないわ」
渚「でも、どうするの? 海は五英傑の前で『カイ』って名乗っちゃってるし。いくら海でも体育祭の棒倒しなんて、危ないんじゃ……」
海「そんなの、カイに任せるよ」
⁉
体育祭当日
相変わらずのアウェイ感……。まぁ、わかっていたことだけど。
海「でさ、俺の役目ってこれ?」
磯「あ、ああ」
そして、今回の棒倒しの作戦にはカイがいた。
海「にしても、どーして海が起こした事後処理に俺が駆りだされんだよ、めんどくせー」
渚「まぁまぁ。でも、海は言ってたよ、カイにも学校行事を楽しんでほしいって」
海の考えた作戦とは、カイをだすことだった。海曰く、カイは海よりも身体能力が高いそうだ。海とカイは同一人物なのに、そこで身体能力が違うってところが謎なんだけれど。
海「その代り、バカだけどね。でも、私以上に仲間を思ってくれるよ。言ったでしょ? 根は純粋だって」
カルマくんがカイに質問した。
カ「でもさ、よくビッチ先生の許可無しででてこられたよね。名前、呼んでもらわないとでてこられないんでしょ?」
海「海はそこらへん勘違いしてんだよ。別にイリーナの許可なくても、俺はでてこられる」
茅「そうなの?」
海「ああ。結局ストッパーってのは、俺が暴れたときにストッパーである存在が俺を正気に戻すんだ。ま、この場合正気ってのは海に戻るってことなんだけどな。ところで磯貝」
磯「うん?」
海「お前、さっきからすっげー不安そうにしてるけど」
カイは人の心の変化に敏感のようだった。たしかに、磯貝くんはカイの言った通りどこか不安そうにしていた。でも、きっとそれもそのはず。磯貝くんが不安に思うのも最もだ。僕らは気づいてしまった、浅野くんの本当の目的を。
棒倒し
菅「外人部隊かよ……」
A組に語学留学として4人の外人さんが来ていた。でも、語学留学なんて建前だ。おそらく、本来の目的は……。
磯「……よしっみんな、いつもみたいに殺る気でいくぞっ!」
皆「おぉっ‼」
小「おい、E組勝つ気ないのか?」
E組陣形―完全防御形態―
僕らの最初の陣形は、殺せんせーの完全防御形態だった。
外人さん2人が浅野くんの指示で走りだしてきた。
村「くっそ」
吉「無抵抗なままでやられっかよ!」
磯「おい!」
磯貝くんが止めるのも聞かず、村松くんと吉田くんが走りだした。が、外人2人に思い切り吹っ飛ばされた!
な、なんて力なんだっ!
海「はんっ。まともにやったらやられっぞ、これ」
外人の1人が英語で話しかけてきた。
おそらく、「亀みたいに守ってないで攻撃したらどうだ?」と言っているんだと思う。僕の隣でカルマくんがにやっと笑って。
カ「いいんだよ、これで。そんなことより、構わず来たら?」
ケヴィン「ふん。では行かせてもらうぞ!」
来たっ!
僕らは飛びあがって攻撃を避けた。そして、向かってきたA組の人たちを上から抑えつけた!
E組陣形―触手絡み―
そして、またA組の生徒がこちらに2つの組に分かれて走ってきた。
磯(攻撃をするなら、敵戦力が分散してきた今しかないっ‼)
「行くぞ、攻撃部隊。作戦は粘液っ!」
攻撃開始だ!