暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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456:凪海◆L6:2016/05/07(土) 00:52 ID:ySs

>>450

殺「にゅう……。海さん、その後のお体の調子は大丈夫ですか?」

 殺せんせーは海の進路相談の紙を見ながら聞いた。

海「……そのことなんだけど、今日も病院に行かなきゃいけないから早退します」
殺「おや、そうですか……」

 しばらくの間、互いに何も話さなかった。

海「……殺せんせー、私ね。この教室に来てから色々迷うんだ。現実と、理想の間でさ」

 海は視線を遠くの方へ向けた。

海「私は、殺し屋。でも、他のみんなは、元はどこにでもいるような普通の中学生たち。殺しが縁で集まった人たちばかりだ。私が殺し屋として生きている間に、彼らはきっと別の世界で生きていたんだなって、毎回。思っちゃうんだ……。自分と同い年の子が、こんな幸せそうな世界で暮らしているのを、羨ましく思ったり、妬ましく思ったり……。そういう現実と、自分もそういう風になりたいなっていう理想との間で、苦しくて苦しくて、しょうがないんだ」
殺「………」

 殺せんせーは黙って海の話を聞いていた。

海「私ね、未来が視えないんだ。みんなみたいに、こういう風になりたいっていう、たしかな未来が。理想と未来は全然違う。理想はこうなりたいって思うだけ、でも。未来は先の先を歩いていく。そんな気がする。どんなに未来を視ようとしても、その先が真っ暗になっちゃうんだ……」
殺「未来とは、視えるものではありませんよ。造りだすものです。あがいて、失敗して、修正して。そういうことを繰り返していくことで、未来は造られていくんです」
海「………」

 海は黙った。

殺「例えば海さんの好きなものはなんですか?」
海「好きな、もの……」

 海は目をつぶった。

?「何を読んでるの?」

 ××の声に海は顔をあげずに答えた。

海「人間失格」
?「うっわ、難しそうなの読んでるのね」
海「××さんも読む?」
?「ふぇっ! うーん、また今度ね」
海「面白いのに」

 海は××の困ったような顔を見て、からからと笑った。

海「本、かな……」
殺「では、そこから連想させてください。自分の未来を」
海「……図書館司書、とか。あとは、小説家、とか……」
殺「そうですね。そうやって、未来を描いて、造りだしていくんです」
海「でも!」

 海は思わず大声をあげていた。ハッとして、すぐに口をつぐんだ。

海「……ごめんなさい、なんでもありません。でもね、せんせー」

 海はゆっくりと顔をあげた。
 殺せんせーの目に映ったのは、悲痛に顔をゆがめた海の顔だった。

海「どんなに思い描いたとしても、叶わないものは、叶わないんだ……」

 海は「失礼しました」と一言言うと、職員室をでていった。

殺「にゅう……。これは、困りましたねぇ……」



渚side

 職員室へ向かう途中で、海とすれ違った。僕は彼女に声をかけた。

渚「海!」
海「何、渚」

 どうしても、聞いておきたいことがあった。

渚「あの、海……。海はさ、死神と会ったときどう思った?」

 そう聞くと、海はビクッと体を震わせた。

海「どう、思ったって……?」
渚「えっと……」

 どう言えばいいんだろうか。
 答えに迷っていると、海が口を開いた。


凪海◆L6:2016/05/07(土) 01:10 ID:ySs [返信]


海「死神もどき」
渚「え?」

 海の口からその名前が飛びだすとは思わず、僕は驚いた。だって、彼女はよく「死神もどき」と口にした人に対して殺意を抱くから。

海「私が殺し屋になって間もない頃、殺しの世界でささやかれ始めた、私のもう一つの名前。どうして、『死神』じゃなくって、『もどき』なのかわかる?」

 海の質問に僕は首を横に振った。

海「決して私が、『死神』にはなれないから」
渚「どういうこと?」
海「私が殺し屋になった理由、渚には話したよね?」

 僕はうなずいた。

夏休み

海「渚、私が殺し屋になった理由はね。至極簡単なんだ。私が殺し屋になった理由、それは……殺し屋を殺すため、なんだよ」

海「そのために、私は『死神』と同じくらい。あるいはそれ以上に様々なスキルを会得し、それらのスキルを高めていった。でも、決して『死神』にはなれなかった。理由は簡単。 『死神』には持っていて、私には持ってないものがあるから」
渚「……それ、って?」

 思わず、聞いていた。
 海はクスッと笑うと、

海「これだけは教えてあげない。……渚」

 海が真剣な顔になった。

海「殺しの世界は、この教室ほど温かなものじゃないよ。現実はもっと、残酷だから」
渚「う、ん……」
海「それから、カイから伝言。帽子、これからは肌身離さず持っておけ、だってさ。授業中も被っとけとかなんとか……」
渚「え、授業中も⁉」
海「よくわかんないけど、よろしくね。それじゃ、また明日」
渚「え、まだ授業残ってるよ⁉」
海「これから病院なんだ」

 そう言ってから、海は何度か咳をした。

海「それじゃね」
渚「うん。また明日……」

 海に手を振ってさよならをしてから、僕は職員室へ歩いていった。

渚「失礼します」


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 ここから渚回だけど、私も好きな回だが、原作通りになるので飛ばします( ノД`)
 場面は学園祭から! 


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