>>456
海「死神もどき」
渚「え?」
海の口からその名前が飛びだすとは思わず、僕は驚いた。だって、彼女はよく「死神もどき」と口にした人に対して殺意を抱くから。
海「私が殺し屋になって間もない頃、殺しの世界でささやかれ始めた、私のもう一つの名前。どうして、『死神』じゃなくって、『もどき』なのかわかる?」
海の質問に僕は首を横に振った。
海「決して私が、『死神』にはなれないから」
渚「どういうこと?」
海「私が殺し屋になった理由、渚には話したよね?」
僕はうなずいた。
夏休み
海「渚、私が殺し屋になった理由はね。至極簡単なんだ。私が殺し屋になった理由、それは……殺し屋を殺すため、なんだよ」
海「そのために、私は『死神』と同じくらい。あるいはそれ以上に様々なスキルを会得し、それらのスキルを高めていった。でも、決して『死神』にはなれなかった。理由は簡単。 『死神』には持っていて、私には持ってないものがあるから」
渚「……それ、って?」
思わず、聞いていた。
海はクスッと笑うと、
海「これだけは教えてあげない。……渚」
海が真剣な顔になった。
海「殺しの世界は、この教室ほど温かなものじゃないよ。現実はもっと、残酷だから」
渚「う、ん……」
海「それから、カイから伝言。帽子、これからは肌身離さず持っておけ、だってさ。授業中も被っとけとかなんとか……」
渚「え、授業中も⁉」
海「よくわかんないけど、よろしくね。それじゃ、また明日」
渚「え、まだ授業残ってるよ⁉」
海「これから病院なんだ」
そう言ってから、海は何度か咳をした。
海「それじゃね」
渚「うん。また明日……」
海に手を振ってさよならをしてから、僕は職員室へ歩いていった。
渚「失礼します」
。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。。.:
ここから渚回だけど、私も好きな回だが、原作通りになるので飛ばします( ノД`)
場面は学園祭から!
学園祭が始まった。
海「で、何これ」
海は中村さんから渡された紙袋を見て、首をかしげた。
中「海だけ特別ー」
海「どういうこと?」
僕に聞いてきたけれど、聞かれても困る……。
海「いやらしいのじゃないよね?」
中「へーき、へーき。あ、なんならここで着させてあげよっか?」
そう言って中村さんは海の服をはぎとろうと!
ここでやらないでよ!
ばしんっ
乾いた音が響いた。
海「え、うわっ! ごめん、莉桜。痛かったでしょ!」
中「いや、痛かったけど……。なんかごめん」
僕らはあぜんとして、そのやり取りを見ていた。
中村さんが海の制服に手をかけようとして、海がその手を払いのけたのだ。
海は顔を真っ青にしながら謝っていた。
海「ご、ごめんはこっちだよ。本当にごめんなさい。怪我、してないよね?」
中「何よ、海ったら。大丈夫だってば!」
中村さんはケラケラ笑っていた。一方で海は、顔をすごく真っ青にしていた……。
中「ともかく着なよ。寒がりな海のために長そでにしといたから」
海「うん?」
しばらくして、海は戻ってきた。
茅「うわぁー」
僕らは思わず見とれていた。
中「うん、似合ってる!」
海「な、なんか恥ずかしいんだけど……」
普段、男子の制服を着ている海が、長そでワンピースを着ていた。ウェイトレスの格好をして。
海「……いつまで見てんのさ」
海がにらむようにこっちを見たから、僕らは慌てて視線をそらした。
それにしても珍しいよなぁ。
カ「あれ、海。珍しいの着てんじゃん」
そう言いつつ、カルマくんはスマホをかざして海の写真を撮った。
海「げっ! ふざけんな、カルマ! それ貸せ!」
カ「やだよー」
海がカルマくんを追いかけたけど、カルマくんは軽々と避けている。先に根をあげたのは海だった。
海「あー、スカートって走りにくいっ! よくこんなの着てられるよなぁ」
茅「じょ、女子のセリフじゃないよ……」
殺「おや、海さん。珍しい格好をしていますね」
海「あ、殺せんせー。おはよー……」
殺「みなさん、そろそろ始まりますよ」
皆「はーい」
☆
で、なんで僕が……。
中「金持ちなんでしょ、あいつ。この際、手段を選ばずに接客しなきゃ」
渚「うぅっ」
僕らの視線の先には、夏休みの南の島で出会ったユウジくんがいた。