暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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515:凪海:2016/05/08(日) 23:44 ID:ySs

>>513

殺「茅野さん、君はいったい……」
茅「ごめんね、茅野カエデは本名じゃないの……!?」

突然、だった。
茅野の首から生えていた触手が、吹っ飛んだのは。
横から、対せんせー弾が発射されたのだ。

海「やっと、正体を表したね。茅野カエデ。いや、雪村あかり!!」

海が首からさげて持っていたのは、どこにでもあるような、音楽プレイヤーだった。その、本来ならイヤフォンをさす部分から、発射されたのだ。

渚「う、み……」

海はウェストバッグを地面に落とした。そこから20センチくらいの棒を取り出す。
あれは、日本刀!?
そうだ、間違いない。海がその棒にあるボタンを押すと、そこから刀がでてきた。

海「たぁっ!!」

海が思い切り跳躍し、茅野の触手に向かって刀を振りかざした。

渚「海っ!!」
茅「くっ」

海の突然の攻撃に動揺したのか、茅野はうまく反応できず、必死に避けていた。

岡「どう、なってんだ。茅野に触手……」
前「その上、海はずっと茅野に触手が生えてるのを知ってた素振りだったぞ」

僕らの間に、動揺が広がった。
そして、そのとき。僕の頭の中には、あの日の海とカイの言葉が蘇った。

夏休み

海「君には、あの教室の真実が見えていない」

体育祭

海「海はいつか、クラスメイトの誰かを殺す」

もし、もしもそれが、他の誰でもない。茅野のことだとしたら?
もし、今。海が茅野を殺そうとしているのだとしたら?
そんな、こと……。
だって、海はいつも茅野と仲良くしていたじゃないか。スイーツ店に行ったとか、このお菓子が好きなんだとか、いつも。楽しそうに会話をしていたじゃないか! それ、なのに……。

海「そのとき、お前は海の助けになってほしい。海が、誰も殺さないで済む方法を。海が、幸せになれる方法を。それが俺の、俺たちの願い。お前への約束だ」

渚「助け、なきゃ」
カ「え? な、渚くん!?」

みんなが僕に声をかけたけど、そんなの、気にしていられない。だって、あんな茅野。あんな海を、もう見たくない! 見て、いられない!!
気付いたら、僕は、2人の間に割って入っていた。

海「!?」

海が、驚いた顔をして僕を見た。けれど、振り下ろされる刀と、その向こうで同じく驚いた顔をしているのは、触手を振り下ろしている茅野だった。
頭に、強い衝撃が走った!!

海「な、渚ぁっ!!」

海が青ざめた顔をして、僕に手を伸ばしてくる。僕は、その手をつかもうと、手を、伸ばした。けれどそこで意識は途絶えた。
意識が途絶える寸前、僕はいつの日かの海との会話を思い出していた。

海「なぎ、さ……。良かった、ホントに、良かった……」

涙を流すジャンヌの顔を、僕はほうけて見ていた。
ジャンヌはいつも通りの白い、無地の着物を着ていた。その、白い布に、まるで花を咲かせたように、赤い斑点が、いくつもついていた……。


凪海◆L6:2016/05/09(月) 20:27 ID:ySs [返信]


 暗闇の中で、少女は泣いていた。僕は声をかけようとしたけれど、声がでなかった。
 その子は、口を開いた。

女「絶対に、助ける……。私の命に代えても……!」

 僕はその声を懐かしく思うと同時に、もろく崩れ去ってしまうような危うさを感じた。



 誰か、泣いてる? あの、夢の中の女の子だろうか。
 光が、差した。

海「あ……、な、渚っ!」
杉「マジで⁉」
片「渚!」
神「渚くん!」

 僕が目を開けると、そこはいつもの教室だった。
 頭に手をやると、包帯が巻かれていた。
 ほうけていると、海が僕に向かって抱き着いてきた。

渚「⁉」
海「良かった、良かったよ〜……」

 顔を泣きはらしながら、海は僕に泣きついていた。

カ「海、渚くんがなかなか目ぇ覚まさないからずっと泣いてたんだ」
渚「……あ、そう」
海「な、渚? 大丈夫? 自分の名前、わかる?」
渚「え、ああ。潮田、渚……」

 そう言うと、海はほっとしたように溜め息をついた。
 あ、そうだ! 僕は茅野と海の戦いに割りこんで、それで!

渚「茅野はっ⁉」
奥「……どこかへ、行ってしまいました」

 だんだん、思い出してきた。
 茅野に触手が生えていて、海はそのことを初めから知っていたようで。そして、海は茅野を殺そうとしていて……。

渚「僕、どうして助かったの……?」
殺「これのおかげです」

 殺せんせーが僕に見せたのは、海が僕にくれた帽子だった。ところどころ、破けている。

海「その、帽子はね。言わば超体育着と同じ役割を果たしているの。いや、むしろあの体育着よりも強いかもしれない……。銃で撃たれようと、刀でどたまをかち割られようと、絶対に壊れない、無敵の帽子。それが、あの帽子の真の役割なんだ」

 すごっ!
 てか、そんなすごい帽子をもらっても良かったのか。というより……。

渚「ごめん、壊しちゃった……」
海「いいよ。別に」

 みんなは、僕があのあとどうなったのかを詳しく話してくれた。
 僕があの戦いに割りこんだとき、茅野は触手を寸止めしたこと。でも、風圧で帽子に裂け目が入ったとか。そこへ、海は刀を止めることができずに僕に当ててしまったこと。その打ちどころが悪くて、僕は気絶したそうだ。
 茅野は慌てて飛び去り、海は茅野を追いかけようとしたが、僕のことを心配してずっと泣きながら傍にいてくれたこと……。
 茅野は、僕らの元から去る寸前、殺せんせーに「人殺し」と言ったこと……。

海「………」
木「海のことも気になるけど、殺せんせー。茅野、殺せんせーのこと『人殺し』って言ってたよ」
磯「過去に、何があったんですか?」

 僕らの視線が殺せんせーに集まった。

片「話してもらわなきゃ、殺せんせーの、過去のこと」

 僕らの間に、重い空気が流れた。
 そこへ、殺せんせーの前に立つ子がいた。

海「あなたたちは、全ての真実を知る覚悟がある?」
渚「かく、ご……」

 海は、真剣な目をして僕らに問うていた。
 僕らは、互いに互いの顔を見合わせて黙りこんだ。

海「もし、覚悟がないなら、殺せんせーの過去を話させるわけにはいかない」
殺「海さん……」

 僕は、海を見た。
 真っ直ぐに僕らを見ている、彼女の目を。僕は見つめ返した。

渚「あるよ」
カ「渚くん……」
渚「だから、聞かせてほしい。海、君の過去も」

 海は、目を閉じた。
 まるで、遠い過去を思いだすかのように。

海「殺せんせー、あんたの過去を話すのはあとだ。私が、最初に全てを話す。私が、どうして茅野カエデを殺すつもりだったのか。私が、どうしてこの教室にやって来たのか。その、全てを……」
殺「わかりました。ですが海さん、決して今回の戦いに手をださないと約束してください。クラスメイトを傷つけたり、自分が傷ついたりする行為だけは、しないと約束してください」

 海はうなずき、また目を閉じた。
 遠い、遠い過去を思いだそうとしているかのように。

雨の日

海「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。私が、絶対に、絶対に、助けるから。私の命に代えても、絶対に……、雪村あかりを、助けるから……っ」

 涙を流しながら、海は、目を、真っ直ぐ前に向けた。
 遠い、遠い日の誓いであるかのように……。


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