暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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523:凪海◆L6:2016/05/09(月) 20:27 ID:ySs

>>515

 暗闇の中で、少女は泣いていた。僕は声をかけようとしたけれど、声がでなかった。
 その子は、口を開いた。

女「絶対に、助ける……。私の命に代えても……!」

 僕はその声を懐かしく思うと同時に、もろく崩れ去ってしまうような危うさを感じた。



 誰か、泣いてる? あの、夢の中の女の子だろうか。
 光が、差した。

海「あ……、な、渚っ!」
杉「マジで⁉」
片「渚!」
神「渚くん!」

 僕が目を開けると、そこはいつもの教室だった。
 頭に手をやると、包帯が巻かれていた。
 ほうけていると、海が僕に向かって抱き着いてきた。

渚「⁉」
海「良かった、良かったよ〜……」

 顔を泣きはらしながら、海は僕に泣きついていた。

カ「海、渚くんがなかなか目ぇ覚まさないからずっと泣いてたんだ」
渚「……あ、そう」
海「な、渚? 大丈夫? 自分の名前、わかる?」
渚「え、ああ。潮田、渚……」

 そう言うと、海はほっとしたように溜め息をついた。
 あ、そうだ! 僕は茅野と海の戦いに割りこんで、それで!

渚「茅野はっ⁉」
奥「……どこかへ、行ってしまいました」

 だんだん、思い出してきた。
 茅野に触手が生えていて、海はそのことを初めから知っていたようで。そして、海は茅野を殺そうとしていて……。

渚「僕、どうして助かったの……?」
殺「これのおかげです」

 殺せんせーが僕に見せたのは、海が僕にくれた帽子だった。ところどころ、破けている。

海「その、帽子はね。言わば超体育着と同じ役割を果たしているの。いや、むしろあの体育着よりも強いかもしれない……。銃で撃たれようと、刀でどたまをかち割られようと、絶対に壊れない、無敵の帽子。それが、あの帽子の真の役割なんだ」

 すごっ!
 てか、そんなすごい帽子をもらっても良かったのか。というより……。

渚「ごめん、壊しちゃった……」
海「いいよ。別に」

 みんなは、僕があのあとどうなったのかを詳しく話してくれた。
 僕があの戦いに割りこんだとき、茅野は触手を寸止めしたこと。でも、風圧で帽子に裂け目が入ったとか。そこへ、海は刀を止めることができずに僕に当ててしまったこと。その打ちどころが悪くて、僕は気絶したそうだ。
 茅野は慌てて飛び去り、海は茅野を追いかけようとしたが、僕のことを心配してずっと泣きながら傍にいてくれたこと……。
 茅野は、僕らの元から去る寸前、殺せんせーに「人殺し」と言ったこと……。

海「………」
木「海のことも気になるけど、殺せんせー。茅野、殺せんせーのこと『人殺し』って言ってたよ」
磯「過去に、何があったんですか?」

 僕らの視線が殺せんせーに集まった。

片「話してもらわなきゃ、殺せんせーの、過去のこと」

 僕らの間に、重い空気が流れた。
 そこへ、殺せんせーの前に立つ子がいた。

海「あなたたちは、全ての真実を知る覚悟がある?」
渚「かく、ご……」

 海は、真剣な目をして僕らに問うていた。
 僕らは、互いに互いの顔を見合わせて黙りこんだ。

海「もし、覚悟がないなら、殺せんせーの過去を話させるわけにはいかない」
殺「海さん……」

 僕は、海を見た。
 真っ直ぐに僕らを見ている、彼女の目を。僕は見つめ返した。

渚「あるよ」
カ「渚くん……」
渚「だから、聞かせてほしい。海、君の過去も」

 海は、目を閉じた。
 まるで、遠い過去を思いだすかのように。

海「殺せんせー、あんたの過去を話すのはあとだ。私が、最初に全てを話す。私が、どうして茅野カエデを殺すつもりだったのか。私が、どうしてこの教室にやって来たのか。その、全てを……」
殺「わかりました。ですが海さん、決して今回の戦いに手をださないと約束してください。クラスメイトを傷つけたり、自分が傷ついたりする行為だけは、しないと約束してください」

 海はうなずき、また目を閉じた。
 遠い、遠い過去を思いだそうとしているかのように。

雨の日

海「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。私が、絶対に、絶対に、助けるから。私の命に代えても、絶対に……、雪村あかりを、助けるから……っ」

 涙を流しながら、海は、目を、真っ直ぐ前に向けた。
 遠い、遠い日の誓いであるかのように……。


凪海:2016/05/10(火) 00:17 ID:ySs [返信]


茅野side

ただ迎えに行っただけだった。積もる話をする約束で。昼間は教師をやっているお姉ちゃんが、夜に手伝っているという、研究所まで。
役者業は事務所の意向で長期休業中。町で私に気づく人もいなくなった。

あかり「今の方が気楽だなぁ、フツーに就職目指そっかな……」

正面から、人が走ってきた。避けようとしたけれど、その子と肩がぶつかってしまった。

あか「ごめんなさい!」

慌てて謝ったけど、その子はすでに走り去ってしまった。

あか「あれ?」

不思議に思って首を傾げていると……、

ドゴーーーーーーーーーーン

突然の、大爆発。
警備の人は右往左往。じっとしていられず、私は急いでお姉ちゃんのもとへ向かって走った。
やがてたどり着き、そこで目に入ってきた光景は!

あか「あ……」

息絶えた姉と、触手の怪物!
怪物が去っていくと、私は急いでお姉ちゃんのもとへ寄った。

あか「おねえ、ちゃん?」

声をかけても、返事はなかった。
どうし、て?
私はお姉ちゃんを揺さぶった。何度も、何度も。「お姉ちゃん」と連呼しまくった。
それなのに。
涙が頬を伝って、こぼれ落ちた。
視線を別に向けると、そこには書き置きがしてあった。

「私は逃げるが、椚ヶ丘3-Eの担任なら引き受けてもいい。後日、交渉に向かう」

と、あった……。
そこからの私の行動は早かった。
傍にあった触手の種を持ち帰り、自らを「茅野カエデ」と名乗り、椚ヶ丘に転入。理事長の私物を故意に破壊してE組行きを仕向け、触手を移植後、何食わぬ顔であのクラスに溶け込んだのだ……。
たとえ、自分が死んでもいい。仇さえ討てるのなら!



海「雪村あぐり」
渚「え?」

僕らの間に、再び動揺が広がった。
どうして海が、E組の前・担任の名前を知っているんだ?

海「茅野カエデの、雪村あかりの姉の名前……。『茅野カエデを殺す』というのは、あぐりさんに頼まれたことだったの……」


実の姉が、妹を殺す依頼、だって?

海「でも、その目的は……所詮は第2の目的でしかなかった」
神「第1の目的って?」
海「……それは、まだ言えない」


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