暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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606:凪海◆mc:2016/05/14(土) 00:14 ID:ySs

>>605

海「ここ、か……」

自転車を息を切らしてかっとばしていくこと、一時間半。やっと着いた。
暗い、倉庫のような建物。まるで不良のたまり場だ。

海「まさか、また殺し屋の力を使う日が来るなんてね」

まったく、呆れるよりほかない。
私はつけ爪を右手につけた。全部で5つ。この爪には毒がある。一応、死なない程度にマヒさせられる毒しか塗り込んでないけど、これで本当に大丈夫なのか。不安もあるけれど。
私が持っている棒にあるボタンを押すと、そこから刀が飛び出した。
悩んでる暇なんてない、絶対に、助け出す!

何人もの大柄な男たちが倉庫内を歩いていた。全員で……5人。
音もなく、ゆっくり近づく……。
まずは近くを通った男の首に爪をたてて、思い切り引っ掻いた。

男A「ぐおっ」
B「誰だ……」

腰にある銃でそいつの首に向かって麻酔針を放った。
あと、3人……。
なるべく、渚を人質に取られる前にかたをつけたい。あきらかに敵の警戒度があがっている。

海(俺を使えばいい……)

そんな声が聞こえたけれど、とりあえず無視しておく。もう1人の自分に……カイに頼まなくても勝てる!
それにしても、おかしい。この雰囲気、敵は明らかにプロだ。そして、空気で殺し屋だともわかる……。私がいるのに気づいているのかいないのか、果たしてどっちなんだ。
少し、揺さぶってみるか。

海「おい」
C「ヒィッ」

近くにいた男に刀をあて、倉庫内に響き渡るように、私は叫んだ。

海「こいつがどうなってもいいのかぁっ!」
D,E「⁉」

残りの男たちが全員こっちを見た。

海「てめぇらの目的はなんだ。とっとと言え!」

殺し屋が平凡な一般人を狙うわけがない。となると……。

E「ふっ。どうやらおめぇが『死神もどき』みてぇだな」

やっぱり、私か。

海「誰の指示だ」
E「そいつは言えねぇな」

あくまで仕事のいっかんか。

D「お前、殺し屋をやめてるんだってな。だったら俺らには勝てねぇな」
海「……ナメるなよ」
D「それにな、お前がどんなにイキがったって怖くもねぇぜ! 何せこっちには人質がいるんだからな!」
海「だから、嫌いなんだ……。殺し屋はっ!」

私は次の瞬間、刀を振り回した。


凪海◆L6 (=゚ω゚)ノ ―===≡≡≡ dice2:2016/05/14(土) 23:56 ID:ySs [返信]

(渚side)

 どのくらい時間が経ったのだろうか。視界が急に開けたと思ったら、そこは暗かった。もう、夜になったんだろうか。
 僕の目の前には、いつも通りの白い着物を着た少女。けど、その着物は似ているようで少し違った。

海「なぎ、さ……。よかった、ホントに、よかった……」

 そこにいたのは、ジャンヌだった。涙を流す彼女の顔を、僕はほうけて見ていた。
 ジャンヌはいつも通りの白い、無地の着物を着ていた。その、白い布に、まるで花を咲かせたように、赤い斑点が、いくつもいくつもついていた……。
 そこで、僕の意識は途絶えた。



 再び目を覚ますと、視界に飛びこんできたのは母さんと父さんの顔だった。2人とも僕のことを心配してくれていたみたいで、ずっと「大丈夫?」を連呼していた。
 目覚めた場所は、病院だった。
 医者や両親、警察の話によると、僕は廃工場で発見されたらしい。何故そこで発見されたかは不明らしいけど、というか。どのようにして発見されたかも不明だ。匿名の電話が警察にかかってきて、その匿名の電話をかけてきた人を今後調査するとか、云々……。
 でも、僕にはその匿名者が誰だかわかっていた。きっと、あの白い着物を着た少女、ジャンヌだ。
 しばらく検査入院ということで病院に泊まることになった。
 その夜。
 風の音で僕は目を覚ました。窓は閉めたはずなのにどうしてだろうと思って窓を見ると……。

渚「あ!」
海「元気?」

 そこにはジャンヌがいた。あの赤い斑点模様のついた白い着物ではなく、紫色の着物を着ていた。

渚「ウソ……、なんでここがわかったの?」
海「さぁ、どうしてでしょう」

 ジャンヌはひどく疲れているようだった。

海「今日は、君にお別れを言いに来たんだ」
渚「え?」

 僕は信じられない思いで彼女を見つめた。

渚「ど、どうしてさ⁉ そんな、いきなり……」
海「……ごめんね」
渚「ごめんって……。そんなの意味わかんないよ! 何があったっていうのさ」

 彼女は悲しそうな微笑みを浮かべているだけで何も言わない。僕はじれったくなって、思わず叫ぶように言った。

渚「行かないでよ!」
海「いくら君の頼みでも、聞き入れることはできないね」

 そうして彼女は窓のサッシに腰をかけた。そして、空を仰ぐ。僕もそれにならった。
 きれいな、満月だった。

海「……人間、別れってのは必ず来る。でもね、少年。君となら大丈夫だ」

 何を言っているのか、わからなかった。

海「私たちの運命は、きっとつながってる。いつかまた、きっと会えるから」
渚「何を根拠に⁉」
海「……私、この直感だけははずれたことがないんだ」

 ジャンヌは僕に近づいた。

海「誕生日プレゼントも兼ねて、君に贈り物をするよ。いつかまた、会えたときに目印になるように……」

 そうして彼女は微笑み、自分のかぶっていた帽子を僕の頭にのせた。そのとき、僕の頭の中に、いつだったかの彼女との会話が思いだされた。

海「かわいいね、そのヘアピン」
渚「え?」
海「少年に似合ってる」
渚「お、女物だよ⁉ それに似合ってるってあんま嬉しくない……」
海「いやいや、他の物だったら『似合ってない』って思うけど、それだったら君にすごくあってるよ」

 そう言われて、僕は顔が真っ赤になったのを覚えている。
 僕は、自分の髪に手をかけた。

渚「これ、あげる」
海「え?」

 ジャンヌはひどく驚いた顔を僕に向けた。

渚「男の僕より、ジャンヌのほうが絶対に似合うよ」
海「うーん」
渚「僕だけプレゼントもらうのも、なんだか分が悪いし……。4か月も先だけど、誕生日プレゼントとして受け取ってよ」
海「……わかった」

 彼女はほほ笑んで、僕の手のひらにあるヘアピンを受け取って自分の前髪にさした。

渚「うん、似合ってる」

 僕は嬉しくなって笑った。
 そのとき、だった。たしかに見えたんだ。彼女が、一筋の涙を流しているところを。

海「好きだよ、渚」
渚「え?」

 唇が優しく触れたのを、僕は茫然と見ていた……。


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