暗殺教室〜もうひとつの物語〜Part5♪

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627:凪海◆L6 (=゚ω゚)ノ ―===≡≡≡ dice2:2016/05/14(土) 23:56 ID:ySs

>>606
(渚side)

 どのくらい時間が経ったのだろうか。視界が急に開けたと思ったら、そこは暗かった。もう、夜になったんだろうか。
 僕の目の前には、いつも通りの白い着物を着た少女。けど、その着物は似ているようで少し違った。

海「なぎ、さ……。よかった、ホントに、よかった……」

 そこにいたのは、ジャンヌだった。涙を流す彼女の顔を、僕はほうけて見ていた。
 ジャンヌはいつも通りの白い、無地の着物を着ていた。その、白い布に、まるで花を咲かせたように、赤い斑点が、いくつもいくつもついていた……。
 そこで、僕の意識は途絶えた。



 再び目を覚ますと、視界に飛びこんできたのは母さんと父さんの顔だった。2人とも僕のことを心配してくれていたみたいで、ずっと「大丈夫?」を連呼していた。
 目覚めた場所は、病院だった。
 医者や両親、警察の話によると、僕は廃工場で発見されたらしい。何故そこで発見されたかは不明らしいけど、というか。どのようにして発見されたかも不明だ。匿名の電話が警察にかかってきて、その匿名の電話をかけてきた人を今後調査するとか、云々……。
 でも、僕にはその匿名者が誰だかわかっていた。きっと、あの白い着物を着た少女、ジャンヌだ。
 しばらく検査入院ということで病院に泊まることになった。
 その夜。
 風の音で僕は目を覚ました。窓は閉めたはずなのにどうしてだろうと思って窓を見ると……。

渚「あ!」
海「元気?」

 そこにはジャンヌがいた。あの赤い斑点模様のついた白い着物ではなく、紫色の着物を着ていた。

渚「ウソ……、なんでここがわかったの?」
海「さぁ、どうしてでしょう」

 ジャンヌはひどく疲れているようだった。

海「今日は、君にお別れを言いに来たんだ」
渚「え?」

 僕は信じられない思いで彼女を見つめた。

渚「ど、どうしてさ⁉ そんな、いきなり……」
海「……ごめんね」
渚「ごめんって……。そんなの意味わかんないよ! 何があったっていうのさ」

 彼女は悲しそうな微笑みを浮かべているだけで何も言わない。僕はじれったくなって、思わず叫ぶように言った。

渚「行かないでよ!」
海「いくら君の頼みでも、聞き入れることはできないね」

 そうして彼女は窓のサッシに腰をかけた。そして、空を仰ぐ。僕もそれにならった。
 きれいな、満月だった。

海「……人間、別れってのは必ず来る。でもね、少年。君となら大丈夫だ」

 何を言っているのか、わからなかった。

海「私たちの運命は、きっとつながってる。いつかまた、きっと会えるから」
渚「何を根拠に⁉」
海「……私、この直感だけははずれたことがないんだ」

 ジャンヌは僕に近づいた。

海「誕生日プレゼントも兼ねて、君に贈り物をするよ。いつかまた、会えたときに目印になるように……」

 そうして彼女は微笑み、自分のかぶっていた帽子を僕の頭にのせた。そのとき、僕の頭の中に、いつだったかの彼女との会話が思いだされた。

海「かわいいね、そのヘアピン」
渚「え?」
海「少年に似合ってる」
渚「お、女物だよ⁉ それに似合ってるってあんま嬉しくない……」
海「いやいや、他の物だったら『似合ってない』って思うけど、それだったら君にすごくあってるよ」

 そう言われて、僕は顔が真っ赤になったのを覚えている。
 僕は、自分の髪に手をかけた。

渚「これ、あげる」
海「え?」

 ジャンヌはひどく驚いた顔を僕に向けた。

渚「男の僕より、ジャンヌのほうが絶対に似合うよ」
海「うーん」
渚「僕だけプレゼントもらうのも、なんだか分が悪いし……。4か月も先だけど、誕生日プレゼントとして受け取ってよ」
海「……わかった」

 彼女はほほ笑んで、僕の手のひらにあるヘアピンを受け取って自分の前髪にさした。

渚「うん、似合ってる」

 僕は嬉しくなって笑った。
 そのとき、だった。たしかに見えたんだ。彼女が、一筋の涙を流しているところを。

海「好きだよ、渚」
渚「え?」

 唇が優しく触れたのを、僕は茫然と見ていた……。


凪海◆L6 (ノ>_<)ノ ≡dice5:2016/05/15(日) 10:03 ID:ySs [返信]

(海side)

 渚は茫然としていた。私はいつもなら大声で笑うところを、あえて微笑むだけにした。

海「それじゃね」
渚「え、あ、待って! どうして僕の名前っ……」

 私は窓から飛び降りてアスファルトの上に着地すると、もう一度渚を見た。彼は私を名残惜しそうに見ていた。
 でも、戻るわけにはいかない。私は走りだした。
 渚とこれ以上関わりあうと、きっと彼に悪影響を及ぼしてしまう。あの殺し屋たちは、きっと誰かに雇われたのだ。私に戦いを挑むとなったら普通は正面からやってくる。人質をとるだなんて回りくどいことは、絶対にしない。

海「要するに、誰かが私を狙ってるってわけか。いいじゃん……」

 的になってやる!



現在(渚side)

杉「誰かが、海を狙ってた?」
海「そう……。そうじゃなきゃ、誰かを誘拐したり人質にとったりだなんて、そんな回りくどいことするはずがないんだ」

 海は歯ぎしりをして、僕を見た。

海「ね、だから言ったでしょ。私たちは出会わないほうが良かったって。じゃなきゃ、あんたは怖い思いをすることはなかったんだ」
渚「僕……、怖くはなかったよ。だって、海なら助けてくれるって、信じてたから」

 海が驚いた顔をしていた。けれど、すぐに悲しそうな表情をした。

倉「結局、海ちゃんを狙っている人って誰だか、わかったの?」
海「それは……⁉ ゲホッ、ゲホッ」
渚「海っ⁉」

 海はまたせき込み始めた。

海「……だい、じょうぶ」

 海は手を握りしめていた。僕は気になって、海の手をとった。

海「?」
渚「僕さ、ずっと気になってたんだ」

 たしか、イトナくんの3度目の襲撃後。彼を追っている最中だったと思う。シロがイトナくんをさらって軽トラで走り去ったとき、海は咳をしていた。そのとき、海の手は……濡れていたんだ。
 僕は海の手を強引に開いた。

海「⁉」
片「血っ⁉」

 海の手は、血で濡れていた。

渚「ねぇ、海。この血が何を意味するのかわからないけど。1つ、質問があるんだ」

 海は慌てて僕の手から自分の手を抜いた。
 僕はそれを見ながら、認めたくない事実を、覚悟をしながら、ゆっくりと口を開いて尋ねた。

渚「ずっと、気になってた……。海って、触手持ちなんじゃないかって。茅野たちと、同じで……」

 海は驚いた顔を見せた。


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