「もうひとつの物語 part4」985の続き
カエデside
あー、緊張したぁ……。
そ、それに髪下ろしたら似合うとかっ! てっきり昨日のことを思いだしたのかと思って焦っちゃったじゃん!
すごく恥ずかしかった……。でも。
「髪、下ろそっかな……」
あー、恥ずかしいっっ!
そう思いながら山道を歩いていると
ゴンッ
鈍い音が耳に響いた。
気づいた時には、意識が薄れていくのを感じた。
だ、れ……?
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渚side
うーん……。
「どうしたの、渚くん」
「なぁんか、昨日から記憶が全くないんだけど。なんでかなぁって思ってさ」
そう言うと、カルマくんはにやにや笑った。
や、やっぱりなんかあったんだ。
男子部屋に行くと、もう布団が敷かれていた。
「にしても昨日は布団で寝なかったからなぁ。関節おかしくしちまったぜ」
「ホントだよな〜」
「ねぇ、やっぱり昨日。何かあったんじゃ」
僕がそう聞くと、そこへ
「男子、起きてる⁉」
男子部屋のドアを思い切り開けてやって来たのは中村さんだった。
「おわっ! おい、女子が男子部屋に来るなよ! びっくりしたな」
「それどころじゃないのよっ‼ ねぇ、渚」
「うん?」
中村さんはひどく焦っているようだった。後ろから数人の女子が来ていた。いったい何があったのだろうか。
「茅野ちゃん見なかった⁉」
「え? お風呂屋の外で見たのが最後だけど……」
後ろにいた神崎さんの顔が青ざめた。
「ど、どどどどどどうしましょう⁉」
奥田さんも動揺している。
い、いったい何が。
「お、落ち着いて聞いて」
中村さんが焦った顔をしながらも、とりあえず表面上は冷静に言った。
「茅野ちゃんが、帰ってきてないのよ!」
え⁉
僕らは超体育着を着て、茅野を探すために素早く行動に移した。
「まず、班でわかれよう」
磯貝くんの提案に僕らはうなずいた。彼が決めた班は、こんな感じだった。
茅野を探す班(A班)
渚、カルマ、磯貝、岡島、岡野、木村、杉野、千葉、寺坂、中村、速水、前原、三村、吉田、イトナ
教室に待機(B班)
奥田、片岡、神崎、倉橋、菅谷、狭間、原、不破、村松、矢田
各班の連絡をつなぐ
律
「A班は手分けして茅野を探す。B班はもしも仮に茅野が帰ってきたときに待機しててくれ。律は各班の連絡を取り次いで」
「わかりました」
「オッケー」
A班の僕らはすぐに出発した。
「にしても、磯貝。ちょっと気になったんだけどいい?」
「なんだ?」
校舎をでてしばらくしてから、カルマくんが磯貝くんに質問をした。
「倉橋と矢田をB班に残したのはどうして? 交渉組2人が残っているとかさ。まぁ人数を考えるとそれが妥当だとは思うけど」
あ、たしかに。
「……A班で行動でも良かったんだとは思う。けど、もしも交渉が必要になったとしたら」
そこへ電話の発信音。
「非通知です。でますか?」
僕らは立ち止まった。
「んだよ、こんな忙しいときに」
前原くんが先を急ごうと走ろうとした。
「待て、前原!」
磯貝くんが前原くんに声をかけて止まらせた。
「律、でてくれ」
画面上の律はうなずいて、すぐに受話器を取った。
「やぁ、こんにちは」
男とも女ともわからないような声だった。