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私はまだモヤモヤしている。
だって、華が渚ときっ…キスを…!
ポタッ…
あかり「あっあれっ?涙が…悲しくなんてないのに…?」
止まらない涙を見られたくなかったから、顔を覆う。
あぁ…そうなんだ…やっぱり、私は渚のことが…好きなんだ…。
私の演技で…それを伝えるんだ!
渚「茅野」
ふいに渚は私に声を掛けられた。
ビクッと身体が跳ねた。
渚「茅野は茅野らしい演技で勝負していいんだよ」
あかり「え?でも…演技だから…」
渚「…確かに演技なんだけど…、華歌ちゃんの演技は可愛い女の子…だった。それは演技では普通。でもこれはデートの演技。それなら自然体でいるのが普通なんじゃないかな?」
『渚くーん!あかりちゃーん!始まるよー!』
渚、あかり「はーい!」
そうだ…私は今、雪村 あかり。
でも普段は茅野 カエデ。
渚がよく知っているのは茅野 カエデ。
それなら、私は茅野 カエデを演じよう。
明るくてほとんど危険性のない、ムードメーカーを…
あかり「渚!」
撮影場所に向かおうとしていた渚は私のほうに振り返った。
渚「なに?茅野」
あかり「ありがとう!」
少し驚いた顔をした渚はすぐに笑顔になって…
渚「どういたしまして」
さいっこうの笑顔で私にそう言った。
『では、スタート!!』
女の子らしさもほしいけど、一番なのは私らしさ!!
たっ
あかり「渚っ待った?」
渚「あかり!ううん、今来たところだよ」
ここからはオリジナル。
私のターンだ!!
私のコーデは自分らしさでチョイス。
春らしくて自分らしくて…
あかり「このコーデ、私らしいかな?」
ザワッ
『えぇ!?自分らしい!?可愛いとか似合ってるじゃなくて…?』
華歌「!!」
渚「うん、あかりらしくて似合ってる。すっごい可愛い」
『わあっ…まるで打ち合わせしているみたい』
監督「いや、打ち合わせしているんじゃなくて呼吸を合わせているんだ。2人で最高の演技にしようと思ってもいるんだ」
華歌「これが…雪村 あかりの真の演技…」
いよいよ、ラストパート。
家の中での最後の演技。
華が渚にキスを…なら私だって!
シャッ
カーテンで皆に見えなくする。
ちょっとした華の真似。
渚「あかりは華歌ちゃんの真似をするの?」
あかり「えっ?うっ…////」
渚「華歌ちゃんはキスしてないよ」
あかり「ええ!?」
渚「フリをしただけ。あかりに演技をさせないようにするために」
あかり「私は華のワナに…?」
渚「そういうこと」
結局、私は華がキスをしたわけじゃないことを知ったので、やり返しはしなかった。