>>207の続き
「これ…血、ですか…?」
雷は驚いたようにいつもは半分閉じている目を見開く。
カタカタと体が震える。
やっぱり俺、近い内に死ぬのかな…
「おそさん、僕と出掛けませんか?」
「…?」
珍しく向こうから誘ってきたので首を傾げる。
「行きますか?」
慌てて頷く。
久々の外出だ!
その後雷は車イスを引きずりながら色々手続きをして外に出してくれた。
「今日は涼しくて気持ちいい天気ですね」
「…ん」
こくん、と頷く。
紙とペンを持ってくるのを忘れたのでこれくらいでしか
コミュニケーションが取れない。
「こっち行きます?」
こくん。
「綺麗ですね。」
こくん。
もっとマシな反応は無いのかと自分でも呆れるくらい
塩対応だ。
喋れないから仕方ないんだけどぉ…
「そうだ、本屋寄りません?」
「ん。」
何を買うのかと思いながら素直に従う。
「はい、これあげます。」
会計も済み、雷が持ってきたのは手話の本。
これで紙やペンが無くても話せるっていうことか。
その本を受け取って、パラパラとページを捲って『ありがとう』の表し方を探す。
あった…
本に書かれていることを見よう見まねで実行する。
「…!」
雷も手話を覚えているのか、何かを手話で伝え出す。
『どういたしまして。』
そうやると、やはり少し恥ずかしいのかプッと笑う。