【森】【とりあえずごめんなさい】
「…………え?」
タコツボ小隊リーダーことユーダイは、ソレを見た瞬間凍りついた。その視線の先にあったのは、困り顔の小隊メンバー、リヨコとナツメ。それと───やけに女の子らしくなった脳筋、ヒガサキの姿だった。
「こんなの……何かの冗談だろ?」
「これもひとつの別件か?」
ユーダイの横に居たタカシと、シューヘイも声を震わせながら疑問符を投げる。ヒガサキを連れてきた二人も未だに現状を理解できていないようで。
でも、それは無理は無かった。いつも手入れが行き届いていなかった髪が綺麗に梳かされてカチューシャが被さっていた。服も毎日だぼっとしたシャツとズボンだったのに、真っ白ブラウスにクリーム色カーディガン、鮮やかな赤色のプリーツスカートを身につけていた。終いに顔にはうっすら化粧が施されていて、綻んだ唇がいつもより健康的に、細めていた目元もなんとなく大人っぽくなっていた。
これではまるでどこぞの令嬢さんのようにしか見えない。
いつものヒガサキとは考えられない。
「あら……?皆、どうしたの?」
いつもはもっと低くて荒い口調であるはずの声が、五人の鼓膜を不快に震わせた。
それぞれで顔を見合わせていた視線が一気にヒガサキ(?)の方に集まる。ソレは少し首を傾げてこちらをじっと見つめていた。
ヒガサキを睨むようにしていたタカシが唐突に話した。
「おい、お前は本当にヒガサキハツミなのか?タコツボ小隊隊員、脳筋筆頭のヒガサキなのか?」
「何言ってるのタカシ?私が脳筋なんてあり得ないでしょ?」
深刻な問題を、夢の話のように笑い飛ばす。どうやら、すぐに解決できる問題ではないのだろう。
いい加減書きますぞー
>>9は森じゃなくて森ホでしたー
【>>9の続き】
「………とりあえず、今日はここで解散にしましょ。これじゃもうどうしようもないわ。」
なつめが諦めたように言った。それに四人は無言で頷いて、それぞれが家路に着いた。
誰もヒガサキと一緒に帰ろうとしなかったため、その後彼女がどうなったのかわからない。だが、全員「こいつなら家に帰るだろう」という謎の信頼を寄せていたため、恐らく何事も無く平穏に帰ったのだろう。
翌朝、ユーダイは久しぶりに一番乗りで教室に入った。支度をしている時に次々とタコツボ小隊隊員が入室し、残るはヒガサキになった時。
「昨日のあれさぁ……ヒガっちゃんの冗談とかだったりしないかなぁ……?」
「んな訳無いだろ。本物だったらタカシの発言でボロを出してるだろうし。」
「でも、ハツミってそこそこ演技上手いのよね……ヨッコはどう感じた?」
「特に。霊的なものでは無いみたいだよ。」
「まぁいつか戻るだろ。」
ユーダイを中心にして会議が始まる。全員心配そうな顔をしてはいるが、一大事とまではいかないようだった。
他のクラスメイトが大体登校してきたときにはいつの間にか会議が終了し、各々が各々で自由に過ごしていたその時だった。
ガラガラという扉が開く音の後、ガタンという大きな音が後ろから聞こえた。驚いてそちらを見ると、見慣れた脳筋がそこにいた。