>>11続き
窓一つないその部屋は、控えめな照明の割に明るかった。壁一面に巨大なスクリーンが据えられ、映された一人称視点の映像が忙しなく動いているためだ。暗視映像で緑色にこそなってはいたが、撮影者の所在地は手元も見えぬ程の暗闇であろう森の中だ。
『こちらスカウト6、目標地点に到着。対象を目視しました。これより接近します。』
「本部了解。スカウト6、レンジャーチームをそちらに向かわせている。到着まで調査を継続せよ。」
「レンジャーチーム到着まで15分です。」
"スカウト6"と名乗った撮影者と、"本部"と名乗った映像の閲覧者が事務的に連絡を執る。"本部"に補足を入れるように、理知的な女声も挟まれる。
これらは例外なく、地球防衛軍"E.D.F."の職員たちである。2025年の第二次対フォーリナー戦役より数年、多大な損害を受けた地球は、2017年戦役後にそうであったようにフォーリナーの技術を利用した目覚ましい復興の中にあった。しかしながら、2017年戦役の比ではない地球規模の損害を埋め合わせるべく、健在の都市部に人口をかき集めるという苦肉の策を講じざるを得ず、それ以外の大部分の都市は手付かずのまま放置されることが珍しくなかった。これに乗じるように、放置されたエリアでは未だに少なからぬ数の巨大生物が跳梁跋扈していた。アースイーターやマザーシップを始めとしたフォーリナーの主戦力を壊滅ないし撤退に追い込まれ、地上に取り残された形の巨大生物は独自に生き延びようとしていたのである。そしてそれが現実たりうる事は、第一次戦役の終戦した2018年から2025年までの7年を経て証明されている。
往時には及ばぬものの、軍組織としての機能を回復したE.D.F.は巨大生物の根絶を宣言、各地に部隊を派遣し復興しつつある市街地の防衛に乗り出した。そして今、山岳地帯に偵察部隊"スカウト6"を派遣しているのも、それらの任務の一環であった。
【続】