*第十話 本当にジャスミンなのか *
―アラジンはモヤモヤとした気持ちを
抱えていた。確かに自分は、ジャスミンを
心の底から…もっと言うと世界一愛している。
その気持ちは初めてジャスミンを市場で見た時から
変わっていない。なのに―噴水で久しぶりに
二人になった時何か違和感を感じた。
"本当にジャスミンなのか " アラジンの胸に
そんな疑念の気持ちが芽生えた。はぁっと一旦
溜め息をつき、モヤモヤする気持ちを落ち着かせる。
「やっぱり、こういう時ってちゃんと話した方が良いのかな?」
アラジンは呟くように言った。すると、どこに
紛れ込んでいたのか、相棒の猿、アブーがひょっこり
現れた。アラジンはフッと笑みを浮かべ、アブーの
頭を撫でる。そして今度はアブーに話しかけるような
口調で言った。
「やっぱり、話すよ。ジャスミンと。だってもう、嘘はつかないって約束はしたからね」
アブーをチラリと見ると、うんうんと言っている
ように頷いた。それを確認すると、ジャスミンの
元へ向かう。
「―ジャスミン。少し話したいことがあるんだ」
彼女はまだ噴水にいた。ジャスミンの姿をした
アカネは涙をごしごしと拭き、アラジンの方を
向く。何の話?少し身が固くなるような感覚を覚えた。
「何?」
「その、言いにくいんだけど…君は、君は本当に…ジャスミンなのか?」
アラジンは答えた。アカネはびくっとしたが、
後に笑う。
「―ドッキリ大成功ね!実はあたし、アカネなのよ!」
そんな、思いもよらない彼女の答えにアラジンは
唖然とした。
実はアカネ自身、正体をアラジンに明かそうと
していたのだ。嫌われても良い、ここから
追い出されても良い。でも、本当のことを
言わなくちゃ。愛しているなら尚更よ。泣きながら
アカネは決心していたのである。
誤字発見…
アラジンの台詞
×「やっぱり、話すよ。ジャスミンと。だってもう、嘘はつかないって約束はしたからね」
○「やっぱり、話すよ。ジャスミンと。だってもう、嘘はつかないって約束をしたからね」
すみませんでした_(._.)_
(>>31の続き)
「―ドッキリ、だって?それってどういう…」
アラジンは彼女に問う。アラジンは困惑していた。
確かに、違和感は感じたし疑問も持った。
だが…目の前の彼女はジャスミンにしか見えない。
「だって、どう見てもジャスミンにしか見えないじゃないか!どういうことなんだい?何かトリックがあるとか?」
アラジンは続けて言う。
その言葉を聞き、アカネは必死に言い訳を考えた。
まさか、貴方が大好きだから市場で出会った
"優しい魔法使い "に頼んでジャスミンの姿になったのよ!
とは言える訳もない。正体を明かそうと決心した
アカネだが、それほどの勇気はなかった。
じ、とまっすぐアラジンの目はアカネを見ている。
「あ、そ、それは…し、知り合いの"優しい魔法使いさん "に頼んでこの姿になったのよ」
アカネの頭に浮かんだ言い訳はこれだった。
"貴方が大好き "という部分は省いたが嘘はついていない
つもりである。
「へぇ、そうなんだ!それはそっくりな筈だな!だって魔法を使ったんだもの。だけど…何の為に?」
―そう。トリックが分かった今、アラジンの疑問は
そのことだった。アカネは内心ギクリとしたが
ちょうどよい言い訳を思い付く。彼女はその言い訳を
口にした。
「勿論、貴方を驚かせる為よ。それ以外に何があると思って?」
それを聞き、アラジンはぷっと吹き出した。
何だ、そんな簡単な理由だったのか。彼は思った。