「綺麗だな」
ぽつりと呟かれた言葉に、はっとする。
「そ、そうだな」
カズマのことばっかり見てたのがばれたのかと思った。未だに心臓がバクバクいっている。もう少し静かにできないのか、俺の心臓は。
周りはきらきらと、光っている。綺麗だ。それでもなんだか儚さを感じさせる。
ちらりと隣を見た。
東海林カズマ。俺の同級生。
そんでもって俺が.....
(やっやめだやめ!)
必死に変な方向にいこうとする思考を押さえる。
幸せだ。
素直にそう思った。
カズマに出会って、U20で優勝して、それから.....
それから?
「ディフライダー」
ふとカズマが呟いた。
ディフライダー、そうだ。そんなものがいて。
「ギーゼの器」
またカズマは呟く。
カズマが.....ディフライドされて.....それで?
それから?
俺は.....?
【今俺は何してるんだ?】
我ながらおかしな疑問だと思った。
けれどもおかしいのだ。なぜ、ディフライドされて失踪中のカズマと、イルミネーションなんかに来れているのか。
「なぁ.....クロノ。」
その言葉にはっと顔を上げた。
「もう理解しているのだろう.....?」
何か。
何かがおかしい。
こんなに綺麗で幸せな空間に、異物が混じっているような。
「ギアクロニクルの特異点.....」
やめろ。
「そろそろ目を覚ませ」
冷たい手が、クロノの頬に触れた。
そこにあるのは金色の瞳。怪しくゆれている。まるで蝋燭のように。
そうか.....これはカズマじゃない。ギーゼだ。
俺がいま見ている世界は.....夢。
ぽつりと頬に水滴が当たった。
雨でも降っているのかと、見上げるがなにもない。ただただ吸い込まれてしまいそうな月だけがそこにはあった。
「新導。」
いま自分を呼んだのはカズマだ。直感でそう思った。
いまも彼はギーゼと戦っているのだ。
「信じてる。」
きらりとその澄んだグレーの瞳が、まっすぐにクロノをみつめた。
「だから泣くなよ」
クロノは泣いていた。
何に泣いているのか、自分でもわからなかった。
己の無力さか。それともそんな自分を信じてくれる東海林カズマにか。
「待ってる。」
うん、何度も頷く。声は出なかった。口を開けば何かが壊れてしまいそうで。
するり。暖かい手が離れていった。
離れていく。 カズマが。
カズマは、すっときびすを返した。
待ってくれ、なんて言えなかった。
それでも。
「カズマっ!」
くるりと後ろを振り替える。その顔は【虚無】。何も写してはいない。
ライトグレーの瞳はまた金色に戻っていた。
.....それでも。いわなきゃ。
すぅっと息を吸い込む。
「おれっ.....お前のことっっ!」
ふわりとカズマの匂いがしたと思ったら、次の瞬間、とん、と唇に何かが当てられた。
妙に柔らかくて、初めての感触だった。
「それは」
「本人に言ってやれ。」
「ギアクロニクルの特異点。」
無機質な顔で、目の前にいる【君】はそう言った。
てか>>661
>>657 (未完) >>660 >>661(繋がってるけど書きたいとこだけ)